ここから毎日投稿じゃなくなるかもしれません。
現と冥府の境界
ふと、私は覚醒する。
覚醒した私の眼前には、視界を埋め尽くさんばかりの星々が冥き夜空に煌めいていた。
例えるならば…超高性能のカメラで雲一つない星空を撮った写真、それを遥かに凌駕する程には星々がハッキリと輝いている。
そんな美しい空間の中、私の身体は地に足をつけることなくフワフワと浮かんでいた。
浮遊。人間みな一度は夢見るであろうもの。
しかし浮遊しているのはいいが、今の私はどう着地するかすら分からない。
これはある意味最も怖いことでは無いだろうか。
すると突然、誰も居なかったはずの背後から幼い声が聞こえた。
「私に、会いたい?」
「えっ……?」
その声を聞いた私は反射的に後ろを振り返ったが、そこには誰も居なかった。
辺りを見回しても周囲には何も無く、私の周りは完全なる闇に包まれていた。
完全なる闇…?
「…?なんで…。」
つい先程まであったはずの無数の星々は、忽然とその姿を消していた。
いつから無かった?いや、いつまであった?
あんなに明るかった世界が突然こんな変貌を遂げれば、いくらボーっとしていても気づかない方がおかしい。
ということはおかしいのは私?
実はさっきの声も幻聴?
これは夢?それなら納得できるかもしれない。
納得できるわけがない。
じゃあ今私に機能している五感をどう説明する?
さっきの灯莉の声も、どう説明する?
全て夢?灯莉の存在も?
「何…?何なの…?」
頭を抱えて項垂れる私。
ふと頭を上げると、私の眼前の空間に数多の裂け目が生まれていた。
私がそれに気づいた瞬間、その裂け目達の全てがギュギュッという鈍い音を立てて開かれた。
開かれたその裂け目達は内部に二つの紅い円を描いている。
数多もの紅い重瞳が一斉に私を見つめていた。
「全部、見テルよ」
「灯莉…?灯莉だよねっ!?」
再び聞こえた妹の声に過剰反応し、私は声を荒らげた。
今度はすぐ横から聞こえたはずの声。
それなのに私がどれほど声の主を探しても、辺りには数多もの紅い重瞳が私を見つめているだけであった。
「オねえチャんはナニモ守レナイ、母親ゴロシ。アハ、アハハハハハッ!!!」
今度は背後でも横でもなく、己の頭の中から声が聞こえてきた。
まるで頭の中に何かがいるような感覚。
甲高い笑いを反響させたその声は酷く不快で、私の感情を容易に揺さぶった。
私はついに頭を抱えてその場に倒れ伏してしまった。
「やめ…て、灯莉…嫌…ッ!」
永劫とも感じられるその悪夢によって、私は血の涙を流しながら呻き続けていた。
誰も助けてくれない、この場所で。
もう限界だ。
こんな悪夢を見続けるくらいなら、脳漿と血液を撒き散らして死んだ方がマシである。
私はいつの間にか手に持っていたリボルバーの銃口を己の頭蓋に当て、血涙を流す瞳を閉じて躊躇無く引き金を引いた。
「…っはぁ…はぁ…っ」
私が己の頭蓋を撃ち抜いたと思った瞬間、見慣れた天井が私の視界を支配する。
汗はびっしょりと布団に染み付き、私の枕は多量の涙によって濡れていたのであった。