東方空蝉録   作:Amaryllis___

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極寒、閑古鳥が鳴く

昇る陽は分厚い雲と白銀の雪達によって隠され、冷たい風が針のように私の肌を刺していた。

そして今私の目の前にいるのも、これまた白銀が特徴的な男性、森近霖之助である。

ここに来るのは、幽香がいつかの香霖堂を襲撃して以来だろう。

 

そう、あれ以来一度も顔を出していないのだ。

 

 

 

「心配かけてごめんね、霖之助さん。」

 

 

「心配なんぞしていない。」

 

 

 

少し顔を俯かせながら眼鏡を直す仕草、やはり霖之助は変わっていない。

その事実が、私に強い安心感を与えてくれた。

感謝をされるとすぐに顔を赤くする、不変であるのはとても善いことだ。

 

あまりの寒さに私は、開け放していた窓を閉めてストーブの前に陣取った。

 

 

 

「それより、あのあと大丈夫だった?」

 

 

「問題ないよ、あのあと霊夢が来たんだ。」

 

 

「霊夢が?」

 

 

「そう。」

 

 

 

私とカメリアが命からがら逃げ延びたあと、取り残された幽香と霖之助のもとに霊夢が現れたという。

幽香は行く手を阻む霖之助を躊躇無く殺そうとしていたようだが、その残酷な未来は霊夢によって回避されたようだ。

 

霊夢は店内を荒らすことなく鮮やかに幽香を追い出し、当の霊夢も間もなく出ていったとのこと。

流石は天下の霊夢様である、ありがたやありがたや…。

 

 

 

「それにしても、タイミング良すぎない?」

 

 

「おや忘れたのかい?霊夢の勘は、未来予知と言っても差し支えない程の高みまで到達しているんだよ。」

 

 

「そういえば言ってたなそんなこと…。」

 

 

 

今代の博麗の巫女、博麗霊夢。

彼女は“空を飛ぶ程度の能力”を持っているが、霊夢はその他にも個人の特性として極上の勘を持っていた。

異変が起きた時、真っ先に首謀者の元へ辿り着くのも、その勘によるものと聞いている。

 

そういえば霊夢は特に強い勘を持っているのだけれど、歴代の博麗の巫女もまた強弱様々な勘を持っていたらしい。

もし博麗の血がそうさせているのであれば、恐らく燻莉はもちろん、私にも多少なりともその力が宿っているのではないだろうか。

 

思えば私の勘も結構当たるんだよね。

恐らく私は、これから煙草に火を灯すでしょう。

 

すると私は流れるような動作で煙草とジッポライターを取り出し、煙草に火を灯して煙を大きく吸い込んだ。

 

 

 

「ふぅ…、私も良い勘してるね。」

 

 

「何を以てそう言っているのかは知らないけど、多分違うと思うよ。」

 

 

 

煙をフゥーっと吐き出しながらそう言った私に、苦笑いしながらツッコミを入れる霖之助。

普段ならここで軽く毒を吐くものだが、今回に関しては全く以て霖之助の言う通りである。

実際こんなの私の匙加減で決まるものだし、到底勘なんぞと呼べるような代物ではない。

当たり前ですよねぇ?

 

そんなしょーもない事を考えていると、香霖堂の玄関扉がカラカラと音を立てて開いた。

その音に反応した私は反射的に扉の方に振り返り、店員としての歓迎の言葉を投げかける。

 

 

 

「いらっしゃい…お、噂をすれば何とやらだね。」

 

 

「灯音、久しぶり」

 

 

「おーっす!」

 

 

 

開いた扉の先に立っていたのは、いかにもめでたそうな紅白の巫女と解釈一致な感じのとんがり帽子をかぶった白黒の魔法使いであった。

一人は眠そうな面持ちで、もう一人は元気いっぱいといった面持ちで私に挨拶を返してくれる。

 

巫女の名は博麗霊夢、魔法使いの名は霧雨魔理沙。

一見すればイタいファッションセンスの女子にしか見えないが、ここは幻想郷だ。

ここでは一見しようが二見しようが普通の存在でしかない。

 

とはいえ、この二人は今までに沢山の異変を解決してきた実力者だ。

舐めたらあかんで?

 

 

私は一先ず、二人に温かいお茶を振る舞うことにした。

相変わらず今日も外は寒いし、あまり客が来ることもないだろう。

こんな天気の日にわざわざこんな寂れた店に来る人間なんぞ、それこそイカレているというものである。

 

 

 

「今日は多分、早閉めかな。」

 

 

 

私は咥え煙草をする事で器用に両手を使い、お茶を淹れながら窓の外を眺めたのであった。

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