見知らぬ森の中で、静かに降り頻る雪。
先程の突風によって引き起こされた吹雪で方向感覚が大いに狂ってしまった為、私達は見知らぬ真っ白な森をただひたすらに彷徨っていた。
ショートボブの黒髪女である私と、金髪ロングのハーフ顔女。
どう見ても似合わない二人組である。
「さすが、長野の冬は寒いねー」
私は探偵のような黒いハットに付着した雪を軽く払い、既に冷たくなっているハットを深く被り直す。
隣を歩いているライトブラウンのトレンチコートを着た友人は、己を抱きしめるように身体をガクガク震わせながら私をジト目で見つめた。
「寒いなんてレベルじゃないんだけど…というより、こんな道通ったかしら?」
「来る時と違って雪が降ってるからね。そりゃ風景も変わるってものよ、お嬢様?」
「私がお嬢様なら貴女は付き人かしら?Hey Attendant、現在位置を教えて」
「スミマセン、言葉ノ意味ガ分カリマセン。…ってか、こんな天気じゃ星も月も見えないからどうしようも無いんですよね」
どうやら友人は肌を刺すような冷たい空気にだいぶ嫌気が差しているようだが、現在位置や方角がわからないのでは彷徨う他に選択肢は無い。
私は星と月を見れば現在の位置や時刻が把握できる特技を持っている…のだが、こんな大雪では分厚い雲が空を覆い隠しているせいで自慢の特技もただの飾りへと変化していた。
だから諦めて、この不明な道を模索するしか無いだろう。
「全く困ったもんじゃい、おしくらまんじゅうでもする?」
「おしくらまんじゅうって二人でやるものだったかしら…あら?」
「ん、どしたの?」
寒さで頭がおかしくなったのか意味不明な提案をする私に対して困ったような表情を浮かべる友人だったが、突如何かに気づいた様子で森の奥を指さした。
友人が指さした先にあったのは古ぼけた木造建築。
外には様々なガラクタが散乱しているが、窓から光が漏れているので人は住んでいるのだろう。
「こんな所に小屋なんてあったっけ」
「少なくとも来る時は無かったわね、やっぱり道外れちゃってたのかも?」
「…いや、私は最初からこの小屋に向かっていた。お嬢様の為に案内したんですよ」
「何言ってんだかこの子は…」
建物の玄関上には大きな看板が飾っており、そこには“香霖堂”という文字がこれまた大きく書かれていた。
玄関扉に“Sorry We are closed.”と書かれた札が吊るされている所から、何らかの店であろうことが予想できる。
つまり、ある程度この辺りに詳しい人間が住んでると言って良いだろう。
それを見た私達は互いに顔を見合わせ、図らずとも同時にハイタッチを決めた。
「「やった!」」