東方空蝉録   作:Amaryllis___

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失礼な黒髪、清楚な金髪

めちゃめちゃ寒い冬日の香霖堂。

私達がストーブを囲んでのんびりと過ごしていると、不意に扉を叩く音が店内に響いた。

既に店は閉めているのだが、やはり幻想郷の人々にとってはそんな事関係ないようである。

 

まぁそんな事だろうと思っていたので、私は扉を開ける為に重い腰を動かして立ち上がった。

ちなみに服は未だ乾いていないので、下着姿に毛布を被っている状態のままである。

一般的に考えればただのビッチだが、幻想郷に住む人々の殆どが女性ということもあり、その辺のガードは緩いのだ。

 

 

 

「コンコン、優しくノックして〜」

 

 

 

コンコンコンコンと止まないノックを続ける来訪者に多少の苛立ちを覚えつつも、私はかつて現世で聴いた曲を口ずさみつつ玄関扉の閂を外す。

 

施錠が解かれた瞬間、バンッという音と共に扉が開け放たれた。

 

 

 

「お邪魔します!えっ!痴女!?」

 

 

「は???」

 

 

「こら蓮子、失礼でしょ…」

 

 

 

なんだコイツは

開け放たれた扉の先に立っていたのは、如何にも図々しそうな黒髪の女性。

そしてお淑やかそうな金髪の女性であった。

 

意外にも見知らぬ顔ぶれに私は目をぱちくりさせ、バタンと扉を閉める。

 

そして再び勢いよく開け放たれる扉。

 

 

 

「すみません!入れてください!後生ですから!」

 

 

「なんなのこの子…。」

 

 

 

黒髪の女性は焦ったように頭を下げ、赤くなった手を擦り合わせていた。

私はポリポリと頭を掻きつつも、扉を開けたままではあまりにも寒いのでとりあえず中に入るように促す。

 

 

 

「すみません、私の蓮子が失礼なこと言って…お邪魔します」

 

 

「ちょっとメリー、私はみんなの物なのよ?」

 

 

「まるで反省していない…。」

 

 

 

反省する素振りも見せずに楽しそうにする彼女だが、いっそ清々しくて咎める気も失せるというものだ。

それはさておき、どうやら黒髪の女性は蓮子というらしい。

金髪の女性はメリーと呼ばれているが、予想通りというか、やはりハーフであった。

 

 

 

「それで、こんな悪天候に何の用?」

 

 

 

私なら雪の降る寒空の下で、わざわざこんな辺鄙な店に来ようとはとても思わない。

本当によほどの用事が無ければ、だ。

私は手の平を天井に向け、首をこてんと傾けながら蓮子達に問いかけた。

 

すると、二人は顎に手をやりながらう〜んと考える素振りを見せる。

悩んだ結果か、先に答えたのは蓮子であった。

 

 

 

「私達って、境界暴きっていうそれなりに悪い事をしてる人なんだけどさ…」

 

 

「はぁ、さいですか…。」

 

 

 

早速聞き慣れない単語が出てきて余計に謎が増えた訳だが、まぁひとまずそれは置いておこう。

質問は話が一段落してから。

これは人とコミュニケーションをとるにあたって非常に大切な事である。

 

多分ね。

 

 

 

「で、境界暴きの為にメリーと山を散策してたわけなんだけど、まぁ〜ものの見事に遭難しちゃってね」

 

 

「そうなんだ。」

 

 

「…上手いこと言ったつもり?まぁそうなのよ。それでたまたま見かけて、駆け込んだ山小屋がここだったってわけ!」

 

 

「なるほどねー……。」

 

 

 

蓮子の隣ではメリーがうんうんといった様子で頷いている。

そもそもここは山ではないのだから、遭難してたとすれば最早脱出済みと言っても過言ではないが…。

 

 

 

「ちなみに、蓮子達はどこから来たの?」

 

 

「京都だよ!都会人に長野の山はキツかったよ〜」

 

 

「…?京都?長野?」

 

 

 

蓮子から発された京都、長野という単語。

分からない訳では無い、勿論私のよく知っている単語だ。

しかしここは幻想郷、日本の地名である京都と長野という単語が出るのはおかしな話なわけで。

まぁ、つまりそういう事なのだろう。

 

 

 

「なるほど、二人は外来人なのか。」

 

 

「んぇ?外来人?」

 

 

「そ、外来人。」

 

 

 

おそらく二人は、長野でハイキングを楽しんでいる時に、何らかの原因で幻想郷に迷い込んでしまったということだろう。

そんな事ってあるの?と思いつつも、そういえば私も似たような境遇であることに気がついた。

どこの森だかは忘れたが、私もまた“迷い込んだ”人間なのである。

 

 

 

「外来人について説明するには、まずこの世界について説明する必要があるね。」

 

 

 

未だ状況を掴めていない様子の二人に、私は幻想郷について知りうる限りの事を話すのであった。

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