東方空蝉録   作:Amaryllis___

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今回はセリフ同士の改行を変えてみたんで、どっちが良いとかあれば感想ほしいな!


灰色の街

東京都、新宿。

 

見上げれば首が痛くなる程のビル群が建ち並び、それらを縫うように敷かれたコンクリートの上では、吐き気を催す程の人混みや自動車達が闊歩していた。

そこは、日が沈もうが沈まなかろうが数多の光に包まれている不夜城…

 

 

 

だったはずの街。

 

 

「本当にここ、東京?」

 

「そうだよ。()()()()日本の首都、東京」

 

 

霊夢の尽力によって結界を越えた私達は、現世へと舞い戻った。

蓮子達が言うには、ここ…つまり東京でカナと思しき姿を見かけたとの事。

 

東京といえば日本の首都。そんな事は誰でも知っている常識であろう。

 

そのはずだ。

 

しかしどうだろう、いざ数年ぶりに見た東京はお世辞にも都会とは言えない程に荒廃したゴーストタウンと化していた。

煌々と輝いていた街並みは今や廃墟と相違なき程に朽ち果てており、天高く積み上げられた石塔は足下に瓦礫を重ねるばかりである。

 

とても人の営みを感じられる雰囲気ではないが、水道は今も尚通っているのだろう。

ひび割れたコンクリートの何ヶ所からは、水が噴出している様子が見受けられた。

 

 

「こんな所に灯莉…いや、カナが?」

 

「…?そうだよ、見間違いでは無いはず」

 

 

蓮子はそう言うが、どう見てもこの街にあんな少女が居るとはとても思えない。

 

…いや、しかし霊夢が言うにはカナは騒霊…つまり霊的存在であるとの事。

そう考えれば、彼女が滅びた街に居るとしても合点が行く。

 

 

「日本って滅んだのかしら?」

 

「や、やめてよ…。」

 

 

縁起でもない事を平然と言ってのけるカメリアを一蹴し、気持ちを落ち着かせる為にいつも通り煙草に火を灯す。

 

 

「かつての…って、今はどこなの?」

 

「今の首都は京都。数年前にある事情で遷都があってね、詳しい理由は知らないけど」

 

「ちなみに東京は蓮子が産まれ育った土地でもあるんですよ」

 

「そうなんだ。なんていうか、随分と…破天荒な場所で育ったね。」

 

「いやいや、私が産まれた時はまだ栄えてたから!」

 

 

ムキー!っと分かりやすく歯をむき出した蓮子は「全くもう…」と溜息をつき、手の平サイズの珍妙な機械を取り出した。

その機械にはボタンのような物が一つ付いており、天面には透明な筒状のパーツが突き出ている。

蓮子はその筒の部分を口に咥えると、煙草を吸うかのように息を吸い込んだ。

 

 

「…なにそれ。」

 

「ぷはぁ…これはベイブっていってね。分かりやすく説明すると、煙の代わりに味付きの水蒸気が出る煙草みたいなもんだよ」

 

 

そう説明する蓮子の口からは夥しい量の水蒸気が吐き出されており、その水蒸気からは嗅いでいるだけで虫歯になりそうな程の甘い匂いが漂っている。

 

基本的にタール数を求める私からすると、そのベイブとやらからはあまり魅力を感じなかった。

まぁそれは仕方ない。ぶっちゃけ人それぞれなとこあるからね、煙草とかそういう系って。

 

そんなこんなで適当に寂れた東京を歩いている訳だが、私はふと脳裏に浮かんだ疑問を率直に蓮子にぶつけてみた。

 

 

「正直ここ廃墟と大差ないけど、まだなんの後処理もされてないってことは何かしらの用途があるの?」

 

「んー…あー…なんだろう、ホームレスとかの住処にはちょうどいいんじゃない?」

 

「…要はそれって、無意味にほったらかしてるだけってこと?」

 

「そうとも言う。あぁ、そういえばひとつ言い忘れてたけど、ここは…」

 

 

蓮子が話していると、眼前の路地裏から金属とコンクリートの擦れる音がいくつか鳴り響く。

訝しげに思う間もなく、その音の主は数秒と経たずに正体を表した。

 

 

「若い女が四人、こんなとこで何してやがんだァ?」

 

「……アウトロー達の狩り場でもある」

 

「世も末だよ。」

 

 

路地裏から現れたのは世紀末のような格好をした筋骨隆々の男達。

彼らの手にはそれぞれバットやらナイフやらが握られており、ニタニタと下品な笑みを此方に向けている。

 

まさに悪役。

これが学園ドラマだったら、主人公の華麗な動きでボコボコにされるタイプの風貌である。

 

片手で後頭部を抑えながら乾いた笑いを浮かべた蓮子は、もう一方の手で前方に群がる男達を数え始めた。

 

 

「いやぁ、この人数はちょっとヤバいかなー。灯音、カメリアさん、逃げ足に自身は?」

 

「逃げる気かよ姉ちゃん達よォ!一緒に遊ぼうぜオイ!」

 

「やばっ!走るよ!!」

 

 

蓮子が余りにも分かりやすく逃走の意志を見せるもんだから、勘づいた男達は私達を逃がすまいと並々ならぬ気迫を纏って迫ってきた。

 

慌てて後方へ駆け出そうとする蓮子とメリー。

だが蓮子は、全く動く気配の無い私とカメリアを見て声を張り上げた。

 

 

「ちょっとー!?捕まっちゃうよっっっ」

 

「灯音、貴女はどう思う?」

 

「そうだね…。」

 

 

彼らの走り方。

膨れ上がった筋肉に邪魔されるせいか少々がに股気味で、走行姿勢の重心は酷く不規則に揺らめいている。

 

道具はただ握っているだけ。

戦闘経験が皆無であるというわけでは無いだろうが、それらの道具には乱雑な傷が刻まれており、ただ力任せに振るっていたであろう事を顕著に表していた。

 

分かりやすいものだ、まさに平凡なアウトローでしかない。

 

 

「やろっか。カメリア、銃は無しね。」

 

「それでこそ灯音よ。暴れましょう」

 

「なるほど〜!幻想郷で暮らすと頭のネジが数本外れるのか!勉強になるなぁ〜…正気?」

 

 

これが学園ドラマなら、私とカメリアは高身長イケメンの主人公かな。

私達の実力を知らない蓮子達に、戦う女ってものを見せてあげちゃおう。

 

既に男達の中でも脚力のあるであろう一人が、私に飛びかからんと目の前に迫ってきている。

 

 

「ボーイッシュ黒髪女ァ!一匹テイクアウトだァ!」

 

「二人は少し離れてて。」

 

 

私はそう言うと、ドライブスルー感覚で私を持ち帰ろうとした男の腹に肘打ちを喰らわせ、能力で召喚した可動式のダガーを男の喉に突き刺した。

 

 

()()()から。」

 

「カハ……ッ!」

 

 

そう言った私がダガーの持ち手部分に付いているボタンを押すと、男の喉から汚らしい音と共に血飛沫と肉片が弾け飛ぶ。

喉を裂かれて絶命した男からダガーを引き抜くと、一枚しか無かったダガーの刃は三又へと変容していた。

 

三又へと変容したダガーのボタンを再度押すと左右の刃が畳まれ、元々の一枚刃へと戻った。

 

 

「きゃっ…蓮子、ここは離れておきましょ?」

 

「そ、それが一番賢明かな」

 

 

辺り一帯に飛び散る血飛沫を見た蓮子とメリーは、言われた通りに私達から距離をとった。

賢明な判断だね、いい子。

 

しかしそれを見逃さなかった一部の不良が、私とカメリアを無視して二人に飛びかかろうとする。

 

 

「逃がさねェぞ…ぐあっ!」

 

「アンタこそ逃がさないよ。」

 

 

非力な若者を怖い目に遭わせるわけにはいかない。

蓮子達に迫る男に対し、私は振り返りざまにお得意の能力で召喚した大槌を男の後頭部にぶつける。

頭蓋の破裂と共に脳漿を飛び散らせた男は、そのまま動かなくなった。まぁ当然である。

 

すると、男の無惨な姿を見た蓮子はバツの悪そうな面持ちで私を見つめた。

 

 

「えぇ…やりすぎじゃない?」

 

「もし捕まったらヤるだけヤって殺されるのがオチ。殺られる前に殺る、これ鉄則ね。」

 

「確かに…正当防衛ね!私も一発殴ってやる!」

 

「やめときなさい蓮子、危ないから」

 

 

あんな汚らわしい男達に好き勝手蹂躙された上、事が済んだらハイ人生終了…なんて洒落にならない。

いくら相手が武術に於いてのド素人だったり、少人数だったとして、武器を持って襲いかかってくる以上は加減なんてしない。

 

私達の未来は、まだ明るいのだから。

 

 

「それに、私達はあんな奴等の物じゃないでしょ。」

 

 

私は蓮子達にそう言うと、何人もの男を黒いマチェットで叩き斬っているカメリアに加勢する。

蓮子と話していたほんの数秒程度だが、いつの間にやらその数秒で男達の半分が血の海に倒れ伏していた。

 

優雅にマチェットを振り回し続けるカメリアは、戦闘中にも関わらず横目で私を見つめながら妖艶な笑みを浮かべていた。

 

 

「良い事言うじゃない灯音、私は貴女のモノだもの」

 

「何言ってんの……私もカメリアの、だけど。

 

 

いつもいつも惚気けた事を言ってくるカメリアだが、まさか戦闘中に言ってくるとは思わなかった。

カメリアにとっては口癖のようなもので、嘘では無いにしろ軽口のつもりで言っているのだろうが、それでも私としては胸キュンなので毎度の事ながら動揺を隠せない…から辞めて欲しいものだ。

 

すると戦っている私達の背後から、蓮子とメリーの騒ぎ声が聞こえだした。

 

 

「見てメリー!百合よ!百合の華が咲いてるわ!」

 

 

めっちゃめちゃ茶化されてて草どころか森、なんなら森鴎外。は?何言ってんだ私は。

命のやり取りをしているんだからあまり騒がないで欲しいものである。

まぁこの男達、全然強くない…というか正直言って雑兵と相違無いから良いのだけど。

 

 

「そうね蓮子!私達も咲かせましょう!ね!そうしましょう!」

 

「そうね!…ん?それってつまり…ん?」

 

「今、同調したわね?蓮子、貴女は私のモノよ」

 

「ちょ、待って!でも私達は友人で…いや、しかし友人と呼ぶには些か親密すぎるか…?それならいっそ此処でもう少し踏み込んだ関係に移行しても……」

 

 

どうやら新たな百合の華が咲きかけているようだ。

もしコイツらが目の前でイチャつき出したらカメリアと一緒に煽り散らしてやる。

 

いや待て、カメリアの場合「百合の華?他人の恋愛なんて興味無いわ。それより灯音、ハグしましょ?」とか言いそうだな。

うん、そう言われたら速攻で抱き締めるからいいんだけど…どうやってからかうかが問題だ。

 

 

「うーむ…悩ましい…。あれ?」

 

 

そんなくだらない事を考えながら襲い来る男達を殺していたわけだが、気がついたら襲いかかってきていた男達は誰一人として立っていなかった。

 

なんだろう、久々の戦闘回だったのに戦闘描写全然無いのやめてもらってもいいですか?

 

 

「灯音、あの穢らわしい蛮族共の血が付いてるわよ」

 

「ん……ありがと、カメリア。」

 

 

カメリアはトレンチコートのポケットからハンカチを取り出すと、私の頬に飛び散った返り血を丁寧に拭き取ってくれた。

すごい優しい。嫁にしたい、嫁にするか。

 

あんなに激しく戦っていたのにも関わらず、カメリアの真っ白な髪や肌には返り血どころか一切の汚れも付着していない。

これが数百…?数千…?年もの生きた証か。流石カメリア、基本のスペックが違いますよ。

 

戦闘が終わったのを確認したのか、少し離れたところに居た蓮子とメリーが歩いてきた。

 

 

「灯音さん、カメリアさん、助かりました」

 

「大丈夫。この街、案内してもらうんだしさ。」

 

 

相変わらずお淑やかなメリーは、行儀良く両手をおへその辺りで揃えて一礼した。

いやそこまでしなくていいんだからね、逃げようとしてたのに私達が勝手に戦ったんだから。

 

 

「あの人数相手にたった二人で無傷って…アンタ達、何者なの?妖怪?」

 

 

私達の戦闘を訝しんだのか、少し不信感を見せる蓮子の表情はどことなく霊夢に似ていた。ような気がした。

 

 

「私達は歴史の深い戦闘民族、サイヤ…いたっ」

 

「やめてよ消されるでしょ…私は元傭兵、カメリアは元軍人。素人相手なら心配無いよ。」

 

 

平気で妙ちくりんな嘘を吐くカメリアの頭を治すために右斜め45度のチョップを放つ。

 

 

「雑魚専ってこと?」

 

「叩くよ?」

 

 

どうやら蓮子にも右斜め45度の秘技を放たなければならないらしい。

 

ギャーギャーと騒ぎながら逃げ回る蓮子を追いかけつつ、私達はカナに会う為に再び歩き出すのであった。

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