東方空蝉録   作:Amaryllis___

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夜の縁側にて、月を望む。

皮肉な異種格闘技戦を終えてから、私達は永遠亭へ向かった。

妹紅が鈴仙を担ぎ、私がカメリアに肩を貸して歩いた10数分。

 

そして永遠亭に着いてから事情の説明や治療などを受けてそれぞれが床に着いた時、時刻は既に0時を回っていた。

 

相当疲れは回っていたが私はなかなか寝付けず、縁側で星を眺めながら煙草を吸っていた。

身体中に固く巻かれた包帯が邪魔で動きづらいが、その分痛みはだいぶ楽になった。

 

 

 

「永琳には感謝だね。」

 

 

 

冷たい空気と共に、重いタールを孕んだ煙が天に昇ってゆく。

 

誰もいない縁側で今日の濃い一日を思い出す。

気がつけば霧の湖に血塗れで倒れていたり、アリスと鈴仙が助けてくれたり、店に戻れたと思ったらカメリアと戦う羽目になったり…

あまりにもイレギュラーな事態に、私の体と心が全く追いついていないような気がする。

 

 

 

「色々と、聞きたいことが多いな。」

 

 

 

そう呟いた私は消音器付きの拳銃を召喚し、誰もいないはずの後方に銃口を向ける。

 

 

 

「ね、カメリア?」

 

 

 

「ふふっ、さすが灯音ね」

 

 

 

銃口の先には浴衣に身を包んだカメリアが立っていた。

カメリアは対して驚いた様子も見せずにニコニコと私の傍まで歩いてきた。

呆れによるものか、疲れによるものか自分でも分からないため息をついた私は、構えていた銃を消した。

 

 

 

「隣、いいかしら?」

 

 

 

「いいよ。」

 

 

 

そう言うと、カメリアは足を庇うようにゆっくりと私の隣に座った。

浴衣の裾から露出した白い腿には包帯が巻かれている。

 

いつの間にかフィルター近くまで燃えていた煙草を消し、私は新しい煙草に火をつけるついでにカメリアに煙草を一本差し出した。

ありがとう。と言って煙草を咥えるカメリアに火を渡しながら、私はカメリアと目を合わせずに呟いた。

 

 

 

「…足、大丈夫?」

 

 

 

「ふふっ、大丈夫に見える?……貴女こそ、大丈夫なの?」

 

 

 

お互いがお互いにやった事だ。こんな事を聞くこと自体野暮というものだが、どうしても聞かずにいられなかった。

元々は大切な友人だったはずなのだ、何故あんな戦いをしなければならなかったのだろうか。

 

…それでも、私は強がって冗談を言うしかなかった。

 

 

 

「全然大丈夫じゃない、やっぱり折れてたし。」

 

 

 

「そう…。」

 

 

 

私がそう言うと、カメリアは何処と無く寂しげな笑みを浮かべて俯いた。

何故そんな顔をするんだカメリア、苦しくなってしまうじゃないか。

 

虫と風の声、草木と煙草の匂いだけが包む夜に、永劫にも感じる沈黙が続く。

その沈黙を最初に破ったのはカメリアだった。

 

 

 

「ねぇ、灯音。」

 

 

 

艶やかなカメリアの唇から発される、聖水のように透き通った声。

哀愁を孕むその声に、私まで感情を揺さぶられる。

2、3秒の感情を捨て、私はなるべく普段通りの口調で返した。

 

 

 

「なに?」

 

 

 

「貴女を襲ってしまってごめんなさい。友人まで巻き込んでしまって…」

 

 

 

ごめんなさい。

何となく、そう言うのは想像がついていた。

けれど、私にはもっと他に聞きたいことがたくさんある。

友人…ね。本当ならカメリア、君も同じはずなんだよ。

 

 

 

「…どこで私の能力を知ったの?」

 

 

 

一つずつ、焦らずに聞いていこう。

そう思って1つ目の質問を投げかけると、カメリアは更に申し訳なさそうにして答えた。

 

 

 

「それが…よく覚えてないのよ。気づけば幻想郷にいて、気づけば貴女の能力を求めていたの…」

 

 

 

覚えていない、記憶喪失ということなのだろうか?

知らぬ間に幻想郷に来て、すぐに能力を使いこなすなど普通ではない。

それがいくら戦闘センスのあるカメリアでも、だ。

つまり、能力の事をカメリアに教えた存在がいるはずだ。

 

待て、記憶喪失なら私も最近置かれた身ではないか。

 

 

 

「今朝、私霧の湖で倒れてたんだけれど何か知ってる?」

 

 

 

「霧の湖…?どちらにせよ、知らないわね…」

 

 

 

結局その事件は謎のまま、か。

とうとう三本目の煙草に火をつけ、カメリアにもう一本煙草を渡す。

困ったものだ、記憶喪失なんて幻想郷では日常茶飯事なのだろうか?

 

思考を巡らせていると、私達の煙草とは違った煙草の匂いが漂ってきた。

その匂いを感知したと同時くらいに、聞き覚えのある頼もしい声が耳に届く。

 

 

 

「そりゃあ、陰謀を感じるねぇ」

 

 

 

声のした方を見ると、白髪イケメン美少女の妹紅が煙草を吸いながら庭から歩いてきていた。

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