東方空蝉録   作:Amaryllis___

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だんだん東方の二次創作じゃなくなってきてないか


交差

カツン、カツン

 

鉄製の梯子を降りた先は、石畳が敷き詰められた部屋であった。

何故か天井には蒼いランタンが幾つも吊るされており、地下にも関わらず意外にも視界に制限がかからない空間が展開されている。

 

それどころか、蒼い光に照らされた室内にはソファやテーブルなどが置いてあり、つい最近まで誰かがここで生活していたであろう事が推測された。

 

 

「何かの部屋、かしらね?」

 

「…かな。本棚もある事だし、少し調べてから行こっか。」

 

「あ〜〜っ!疲れた!休憩だ〜っ!!」

 

「あら?このソファ、埃ひとつも無いのね」

 

 

ソファを見つけるなり勢いよくソファにダイブした蓮子、それに便乗して蓮子の隣に座るメリー。

 

少々不用心な気がするが、普通に生活していれば歩かないであろう長い道を歩いてきたのだ。

疲れるのもきっと当然だろう。

 

無理もない、私達がこの部屋を調べている間くらいはゆっくりさせてあげよう。

 

 

「さて、随分古ぼけた本だけど…。」

 

「こっちは…聖書かしら?ドイツ語ね」

 

 

この部屋にはご都合主義のように様々な本が置いてあった。

私は日記のような古ぼけた本を取り出し、カメリアは聖書にも見える分厚い本を取り出してそれぞれ読み始めた。

 

 

「この世界は既に涅槃へ至っている、聖絶の時を待ち焦がれる他ない…。」

 

「そっちの本は随分と物騒な内容ね?」

 

「一体どこの誰が書いたんだろうね、こんな不可解な内容。」

 

 

日記とも断定できぬ不可思議な一文に困惑しつつ、私はその本を読み進める。

気になる点は幾つも見受けられたが、私もカメリアも一先ずは黙って読書を続けた。

 

蓮子とメリーが軽く雑談をしている声と、ページが捲れる音だけが半刻ほど続く。

 

 

「…………。」

 

「…………………」

 

 

私とカメリアは、ほぼ同時にパタンと本を閉じて読んでいた本を本棚に収納した。

お互い何も語らなかったが、その表情からは本の内容が決して良い物であったとは予測できなかった。

 

 

「…私達は、とんでもない領域に踏み入ろうとしてるんじゃないか。」

 

「“超越者”、“神の落とし子”、“黄衣の王”……灯音、貴女はこれでも先に進むの?」

 

 

自分の強さに絶対的な自信を持つカメリアでさえ恐れを抱く程の存在達。

そんな常軌を逸した存在に、真人間の私が恐れないはずがない。

 

記述でしか認識していない存在に、私は気づけば冷や汗を垂らしていた。

 

 

「…それでも、いかなきゃ。」

 

「そう……」

 

 

恐れはある、しかし決意だけは揺るぎない。

私は昔からそういう性分なのだ。ある意味では頑固というべきか。

 

そんな私に対し、憂いを帯びた瞳で私を見つめるカメリア。

結局これは私個人の問題なのだ。ここから私が一人になろうと、それはそれで構わない。

 

 

「蓮子とメリーを、よろしくね。」

 

 

ここでお別れか。

書物に綴られていた内容は、それを確定付ける程に衝撃的であった。

 

しかし、正直これ以上カメリアを巻き込んでいいものかと思っていたのだ。

カメリアは私を愛してくれている、同様に私もカメリアを愛している。

だからこそ、カメリアはここまで来てくれた。それだけで充分なのだ。

 

 

「…好都合だ。」

 

 

そう言って私はカメリアに背を向け、歩き出した。

いや、歩き出そうとした。

 

その瞬間、私の五感が読み取ったのは火薬が爆ぜる音と硝煙の匂い。

それと同時に、私の足下に9mm程度の穴が空いた。

 

 

「灯音」

 

 

反射的に振り向くと、そこには煙の出ている銃口を私に向けているカメリアが立っていた。

 

 

「私から離れるなんて愚の骨頂よ?」

 

 

その底無しの闇のような深みを感じる冥い瞳からは何の感情も読み取れない。

カメリアと再開した時の状況を思い出し、私の頬に冷や汗が伝った。

 

 

「…カメリア。」

 

 

銃口を私に向けながら近づいてくるカメリア。

重そうなブーツと石造りの床がぶつかる音が規則的に響く。

 

私の心臓が喧しく脈動している。

 

カメリアはゆっくりと私の隣に立つと、銃口を天井に向けた。

 

 

「灯音の居場所は、私の隣でしょう?」

 

 

カメリアはそう言って私に手のひらを向け、天使のように微笑んだ。

 

要は自分も同行する。という事だろう。

その微笑みで漸くカメリアの意図を読み取った私は、深くため息をついた。

 

 

悪魔(てんし)め。」

 

 

私は複雑な表情でカメリアを睨みつけつつ、カメリアの手のひらをパチンと叩いた。

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