東方空蝉録   作:Amaryllis___

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桎梏編はここから東方要素がほとんど無くなります
まぁ桎梏編に関してはオリジナル作品だと思って気楽に読んでくれたらアマリリス嬉しいな


無量の深淵へ

後方でのんびりしていた蓮メリが陰から私達をこそこそと見ている。

その目から見てとれる感情は、怯えというよりは戸惑いに近い。

蓮メリは顔を見合わせて何やら小声で話しているようだ。

 

 

「えっ、あんな躊躇いもなく恋仲に銃向けれるものなの?」

 

「なんなら発砲してたわ…私達の常識では測れない何かがあるのねきっと…」

 

 

コソコソ話も静かなこの空間では明瞭に聞こえるものだ。

2人はどうやら、先程のカメリアを見て戸惑っているようである。

 

いや、至極当然の感情だよね。

仮に軍人だとはいえ、味方への発砲はもちろん、銃を向ける事すらもそう簡単にはしないから。

カメリアがバグってるだけだから。

 

…は?カメリアのことバカにすんなよ?私の恋人だぞ?

 

いや、情緒どうした。

 

 

「…カメリア、ひとまず二人を安全な所まで送りに行こっか。」

 

「そうね、あの子達だけでは少し不安だものね」

 

 

閑話休題

この先は蓮子とメリーにはあまりにも危険すぎる。

先を急ぎたい気持ちもあるが、今は二人を安全な所まで護衛するのが先決だろう。

戦場を生きていた私達は命のやり取りなんぞ慣れっこであるが、二人は何の変哲もない一般人なのだ。

 

いや確かにどことなく普通じゃない雰囲気はあるけど、それは別としてね。

 

 

「蓮子、メリー。ここから先は私達だけで行くから安全な所まで送るよ。」

 

 

そう言って、私とカメリアは陰に隠れている蓮メリのもとへ歩を進めた。

 

すると突然鳴り響いた異音と共に、私は強引に体を引き寄せられた。

 

 

「灯音ッ!大丈夫?」

 

 

どうやらカメリアに肩を引き寄せられたようで、カメリアは酷く焦ったような表情を私に向けている。

 

 

「えっ、大丈夫だけど…。」

 

 

状況がよく理解出来ず、ふと自分がさっきまで居た地点を見た私は絶句した。

 

 

「何…………。」

 

 

見るとそこには、大きなヒビが入っていた。

 

それだけならまだ良い、まだ理解できる。

 

そのヒビの中は無限を疑うほどに奥まで続いており、数多の小さな光が煌めいていた。

 

その光景は、まさに───

 

 

「宇宙………。」

 

 

床下に宇宙が広がっている。

不可解極まりないその光景に、私は絶句した。

 

それ故に、判断が遅れてしまったのだ。

 

 

「ッ!カメリアッ!」

 

「灯音…ッ!」

 

 

そのヒビは瞬く間に通路全体を支配し、私は手を伸ばす暇も与えられずに()()()()()()()()()()

 

 

近くにいたはずのカメリアは、既に天上で小さくなっている。

 

たった一人、宇宙によく似た奈落に落ちてゆく。

 

この瞬間、私の脳裏に過ったのは今朝の夢。

儚く美しい、しかしそれでいて何処か不気味な空間。

そんな景色に囲まれながらも不可視の存在によって囁かれる恐怖の記憶。

 

決して良いものでは無い。良いものでは無い…はずなのだ。

なのに何故か私は今、今朝の夢にもこの状況にすらも言いようのない心地良さを感じてしまっていた。

 

 

「……あはは。」

 

 

宇宙のような奈落なのか、はたまた奈落のような宇宙なのか。

皆目見当もつかないその空間で一人、私は不可解な笑みを浮かべていた。




“柊 灯音”としての物語はクライマックス
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