20m程離れて対峙する二人。拳を握り締めながら、睨み合う。
「これはもうどちらが勝つにしろ、庭の整備は免れないわね……」
頬杖をついてはぁ、とため息をつくピーチ。ピーチはルイージと一緒に城の正門の所で見守っていた。
「ふん! マリオ。どうだ、先に地面に倒れた方の負けって事にしないか?」
「おう、いいぜ」
少しばかりの静寂が訪れる。そして──
「そんじゃ行くぞ!」
「こい!」
戦いの幕が切って落とされる。マリオはクッパに向かって一直線に走り出し、スピードを上げていく。
「ウガー!」
それに対し、妨害するようにクッパはマリオの顔ぐらいの大きさの火の玉を吐き出す!
「よっ」
火の玉を見たマリオは足に力を入れ、クルッと一回転しながらジャンプをして避ける。クッパは目と鼻の先だ。マリオは渾身の右ストレートをクッパに向かって放つ!
「ふん!」
クッパも拳を握りしめ、マリオの拳に合わせるようにぶつける!
「ク……ク……」
両者、歯を食い縛りながら拳を押し合う。
「ワガハイに力で叶うと思うなーー!!」
クッパがより力を入れ、マリオが押される。このままでは吹っ飛ばされる──
マリオは拳を引き、左に重心を移しつつクッパの拳を避ける。それと同時に足を踏み込み、クッパの懐へ──
「チィッ」
右足の蹴りを叩き込む……!
「ぐ……お……ぉおーー!!」
クッパも負けじと蹴りを入れているマリオに至近距離で火炎放射をする。
「ク……あ……ちい……」
マリオは急いでクッパから退く。
「はぁ……はぁ……いきなり全開じゃねぇか……」
「それはお前が全開で来たからだろうが……ゼェ……」
両者戦闘体制を維持しながら、荒れた息を整える。ピーチとルイージも手に汗握りながら、見守る。
「ねぇ、ルイージ」
「? なんだい」
「ルイージは一緒に戦わないの? 二人で戦えばほぼ確実に勝てると思うのだけど……」
ピーチはルイージにふと思った疑問をぶつける。確かにそうだ。折角マリオブラザーズが揃っていて、クッパも部下を引き連れていないのだから、二人でかかれば勝てるのに、と。しかし、ルイージは首を横に振った。
「あぁそれはね、兄さんのプライドなんだ」
ルイージは前にクッパと対峙した時の事を話し始めた。なんと、前に二人で戦う事を試みたのだという。──が、それに対しクッパはこう言った。『今回は弟を連れてきたのか。マリオ、お前が考えている事を当ててやろうか! 数年の時を経て、さらにスーパーにパワーアップしたワガハイに勝てる自信が無いから! お前一人じゃワガハイに勝てないから! 弟に頼ろう──』と。
「それが兄さんの頭に来たみたいで、兄さんはクッパとはサシでやる事にしたんだって。兄さんこういう挑発に弱いからなあ……」
「そう……。でもそれで私が攫われるか攫われないか決まるのに、迷惑な話よね……」
はぁ、ともう一度ため息を吐くピーチにルイージは『ははは……』と苦笑いする。
「今度はワガハイから行くぞ!」
クッパはマリオに向かってドスドスと歩みを進める。どうやら息が整ったらしい。マリオは小刻みに移動し、クッパとの間合いを保とうとする。
「ウガー!」
勿論クッパも簡単にそれを許すことはせず、火の玉をマリオに連発する。
「あっ、火が!」
マリオは火の玉を一つずつ避けていくが、大量に放たれたせいか、運悪く草がある場所に着火し、燃える。
「おい! 燃えてんぞ! その攻撃はやめろ!」
「うるさい! つべこべ言うな! 炎はワガハイの象徴だぞ! そんな事いって吐くのをやめたら、攻撃してくるだろう!」
口論するマリオとクッパ。
「ああ……場所が悪かったよ……」
「ちょっと! ほっといたら火事になりかねないわ!」
頭を抱えるルイージと、慌てるピーチ。
「ルイージ! 消火頼む!」
「わ、わかった!」
マリオは何処からか取り出したポンプをルイージに投げ渡す。
「全く、本当好き勝手やりやがる……!」
マリオとクッパは戦いを続ける。そしてルイージは、二人の戦いに巻き込まれないように気をつけながら──
「ウガー!」
「当たらねえよ!」
「あっ……。うわー! 僕も燃えた!」
──気を、つけながら、水を撒いて消火をした。
◇
暫くの時が経つ。マリオとクッパ、そしてルイージもボロボロになっていた。
「はぁ……くそ……中々決着がつかねえ……」
「ワガハイも……腕を上げたつもりだったが……これでも互角か……いや……お前も腕を上げたのか……」
「ヘッ……そうだ……何もいっつも……ピーチとルイージと……のほほんとしてる訳じゃ……ないんだぜ……」
やっとの思いで喋る。最早二人に戦う気力は殆ど残っていなかった。
「少し、休憩だ……」
マリオはそう言い、地面に座る。クッパも無言で了承し、後ろにへたり込む。一方ルイージも度重なる消火活動で既に疲れ切っていた。
「もう嫌だ……。やめにして欲しい……」
ルイージがボソッとそう言う。もう日が傾き、夜になりかけていた。正直マリオ達も当の目的など忘れて戦っていた。家に帰って寝たい気分だった。ずっと見ていたピーチも疲れている。
──そんな時を狙ったかのように、何者かがピーチの脇を掴んで持つ。
「きゃあっ!」
「……! ピーチ姫!」
ピーチの悲鳴に気づく三人。マリオは立ち上がろうとするが、上手く立てない。ピーチは持ち上げられたまま、どんどん上昇する。
「ギャハハハハ!」
ピーチの後ろから不気味な笑い声が聞こえる。
「誰だ!」
クッパが大声で言う。その声に反応したように、白い物体がもやもやと現れる。ピーチの後ろにいて見えにくいが、白くて丸っこい体、青白く出した舌。そして黒みがかった目元に、光る目。
「あ……アイツは……キングテレサ!」
ルイージは指を刺す。キングテレサ。以前マリオとルイージを騙し、お化け屋敷騒動を引き起こしたオバケだ。ルイージは額縁に入れられたマリオを助けるため、屋敷内を駆け巡ったのだ。キングテレサはルイージを見て、また笑う。
「随分とお疲れのようだなァ! このお姫様は貰ってくぜ」
「おい、待て!」
キングテレサはそそくさとピーチ城から離れようとする。すぐにでも引き止めたいが、皆力が出ずに動けない。
「返して欲しけりゃ、北の洋館に来な!」
「こらーっ! ピーチ姫はワガハイのものだぞーっ!」
クッパの雄叫びも無視して、キングテレサは消えていった。
ピーチ城には、ただ虚しく風が吹き抜けるのであった。
マリオのポンプはサンシャインのアレです。いきなり出したのは、スマブラの↓Bみたいなノリです。