「おい、見つけたぞ!」
タンスを調べていたクッパが鍵を見つけた。引き出しの中にポツンと無造作に置かれていたようだ。クッパは鍵を持ち、ドアに向かう。
「よし、開いたようだな」
マリオ達は別の部屋に進む。
「ここは……居間か?」
テレビにテーブル。そしてその周りにはソファが並んでいる。後あるものはガラス棚、植物ぐらいなものだ。取り敢えずスイッチを探して電気をつける。
「次のドアは……まぁ閉まってるよな」
マリオはがちゃがちゃとドアノブを回して確認する。どうやらこの部屋でも鍵を探さないと進めないようだ。
「こっちも閉まってるよ」
もう一つのドアをルイージが試す。鍵が見つかった場合、行先は二つに増えるかもしれない。
「チッ、つかないか……」
「クッパは何やってるの」
ルイージはテレビの前でカチカチと音を立てるクッパを見る。どうやらテレビをつけようとしているみたいだ。
「ふん、こんなソファとテーブルを見たら、誰もが寛いでテレビでも見たくなるではないか」
「いや、それは無いよ! そもそもここ見知らぬ館だし……」
ルイージは否定する。
「わかるぞ〜クッパ! ちょっと休むか!」
「兄さん!?」
──が、マリオは乗り気のようだ。
「まぁルイージ。探し物をしてる時ってのは、結構心にくるんだ。さっきはすぐ見つかったから良いようなものの、考えてもみろ。何か物を無くした時、中々見つからないと焦ってくるだろ? そして次第に誰かがわざと隠したんじゃないか、神隠しにあってるんじゃないか、と自分でないものに責任転換し始める。こうなったらもうおしまい。心に余裕がなくなり、どんどん疲弊していくぞ」
ルイージはマリオの説明が理解は出来てしまう事がもやもやした。
「そうだぞルイージ。のんびり探せ。気負う必要はない」
──でも鍵って多分キングテレサがわざと隠してるよね……。もう、変な所で気が合うんだなぁ。この人達は……。
ルイージはそう思った。なんだか一人だけ探すのは馬鹿馬鹿しいと、ルイージもソファに座る。
──しかし、確かに気負わない事は大事だな……。兄さんとクッパの楽観的な所は正直羨ましいよ……。
ソファで休みながら考える。
──鍵、金属探知機なんかがあればすぐ見つかるんじゃね? 無いけど。
──ソファ……気持ち良いのだ……
一方楽観的な二人はボーッとしながらソファにもたれかかっていた。
◇
「あいつら、ソファでゴロゴロしてるじゃねーか!」
何処からか見ているキングテレサが手をパタパタさせる。
「オレはあいつらを休ませる為に呼んだ訳じゃねーぞ!」
そう喚くキングテレサを横目にピーチ姫は悠々と窓から見える月を眺める。海水浴の砂浜にありそうな白く丸いテーブルと椅子に座る姿はやたら様になっている。とても囚われの姫とは思えない光景だ。
「ハァー。オマエ、随分と余裕なんだな」
「焦ってもしょうがないもの。どこかの大魔王さんのせいでこういうのは慣れているのよ」
「こ、これが『プロ』なのか……」
ピーチが放つ貫禄にキングテレサは怯んだ。
◇
「さて、探そう……うわっ!」
「おいおい、大丈夫か?」
ソファから起き上がろうとしたルイージは、体重の掛け方でソファとソファの間に落ちてしまう。
「ガハハハ! 以外と間抜けだな」
「う、うるさい! ……あっ」
「どうしたルイージ」
ルイージはふと自分が落ちた所を見ると──
「鍵だ! 鍵だよ兄さん」
「マジ?」
嬉々として拾った鍵を二人に見せる。
「よくやったルイージ!」
「うむ。探し物とは時にふとした拍子に見つかる事もあるのだ」
ルイージはドアの所に行き、鍵を開ける。そしてもう一つの方も試してみると、開いた。
「じゃあ俺とルイージはこっちを見てみるわ」
「よし、ではワガハイはこっちだ」
それぞれ二手に分かれる。マリオとルイージは入ってみると、その部屋は本が沢山並んでいた。書斎だ。
「うへー、これ、本の中に鍵が隠れていました、とかだと骨が折れるぞ」
マリオは頭を掻く。
これ、本にヒントとか無いかな。
ルイージはそう思いながら一冊本を手に取ってみる。パラパラとページを捲る。
特に、何も無い……。
ルイージは本を戻す。
どうするべきかなぁ。ただ一冊一冊見ていくのはなぁ。
困惑していると、マリオの声が聞こえる。
「おい、なんか紙が置いてあったぞ」
「えっ、キングテレサのかな」
紙を見てみると、こんな事が書いてあった。
『イギヒウヒキモドイレ』
二人はさっぱり分からなかった。寧ろ不可解な文字がこの館にあった事に気持ち悪さを感じた。