イギヒウヒキモドイレ。
「きもいトイレ?」
「えぇ……」
マリオとルイージは書斎で見つけた謎の文字群の解読を試みていたが、うまくいかないようだ。
「全くわからん」
マリオは諦めて紙を置く。
「本でも読むか」
「そうだね」
マリオはルイージが思いの外素直な事に驚いた。いつもなら『えぇ、兄さん!?』などと常識人のような振る舞いをしてツッコミをしてくれるからだ。
もしかして、俺に影響された?
マリオは嬉しくなった。……が、それが顔に気持ち悪い形で出た為、ルイージは一歩引いてしまった。
本棚を見る。マリオは本があいうえお順に並べられている事に今気づいた。この館の以前の所有者は随分とマメらしい。
あ行から順に見ていく。い。『イスの上のコイン』。これは主人公のキノコ族が無くしたコインを求めて見当違いな場所を探し回る話だ。あらかさまにコインが置いてあるのに気づかないのが面白いんだよな。く。『クリボーの流れ星』。これはキノコ王国の一人の女性に恋をしたクリボーがどうにか関係を作ろうと切磋琢磨する話だ。最後のシーンは泣けたな。さ。『ササニシキ』。ん、これは知らんな。
マリオはタイトルが気になったので、その本を取ってみた。あらすじを読んでみると、帝国軍ササニシキが思想の違いにより分裂した新勢力コシヒカリと土地を巡って争う話らしい。面白そうなので読んでみる事にした。
一方ルイージの方も、何か本を手に取って読んでいる。タイトルは『エレクトーンヘイホー』。
椅子に座り、二人は黙々と本を読むのだった。
◇
場面は変わってもう一つの部屋にいるクッパ。ここはキッチン。
腹が減ってきたから、何か食べ物はないか。
クッパは冷蔵庫をふと見つめる。──が流石にやめた。この館は長く使われていない以上、食べ物が入っていたとしてもまず腐っている。
諦めて辺りを見渡す。鍵は見当たらない。では何か面白いものはあるか。
適当に食器棚を開けてみたり、調理器具を手に取ってみたりした。が、クッパは料理が出来ないので、あまり面白くはなかった。
ワガハイがもし料理が上手かったら、ガスコンロの代わりにワガハイの強力な炎を使ってパフォーマンスなんてのも楽しいのだが……。そういえば前に料理人の所へ行ってやってみた事があるな。その時は食材も料理人もまる焦げになってしまった。料理とは難しいものなのだ。
そんな事を考えていると、壁にポツンと存在するボタンを見つける。
「なんだこれは……」
反射的にボタンを押す。すると……
ガタッ
「なっ……!」
ボタン周辺の床が抜けて、クッパは落下する──
◇
時は10分程経ち、マリオ・ルイージサイド。静寂に包まれていた中、本を読んでいたルイージがいきなり声を出した。
「これだっ!」
「なんだ、どうした」
マリオはルイージの元に駆け寄る。
「わかったかもしれないよ、兄さん」
「何が?」
「謎の文字群! イギヒウヒキモドイレの秘密が」
ルイージは嬉々として話す。『エレクトーンヘイホー』を読んでいた所、ある場面で主人公のヘイホーが謎を解いている所があった。ルイージはその方法を謎の文字群に当てはめてみて、ピンときたのだ。
「いやー、割とありがちなトリックだったけど思いつかなかったよ」
「どうやるんだ? 早く教えろよー」
マリオは期待する。
「この文字群をそれぞれ一つ前のカタカナに戻してみてよ」
「一つ前?」
「例えば『オ』だってら『エ』にするみたいな」
「そういうことか」
マリオは一つずつ当てはめていく。
「アガハイハカメデアル。ん? なんか変だな」
「最初のアをワにして。このイはワイウエヲのイだよ」
「じゃあワガハイハカメデアルか。我輩は亀である……うおおっ!」
「ねっ! わかったでしょ!」
マリオはピッタリとはまって気持ち良くなった。
「でもよ、ワ行ってこうじゃねぇの?」
マリオは空中で指をなぞり、『ワヰウヱヲ』と書く。
「あー。それって確か昔がそうなんじゃなかったっけ。今はワイウエオでも良かったような……」
「そうだっけ」
「まあ、もし違ったとしても、書いたのキングテレサだろうし、対して気にしなくていいんじゃない」
「そうだな!」
我輩は亀である。これはクッパ軍内で有名な小説のタイトルだ。書籍化され、少数ではあるが、キノコ王国でも流通しているらしい。それでクッパ軍に入る者がいるとかいないとか……。執筆者はカメック。自らのボスクッパの素晴らしさを伝える為に書いたらしい。マリオとルイージは以前クッパ城に訪れた時、無理矢理布教されそうになったので印象に残っていた。
「ワ……は下の方だよね」
ルイージは本棚を確認する。キングテレサが用意したと思われる『我輩は亀である』の紙。おおよそここの本棚にそのタイトルの本が存在して、そこに鍵があるだろう……。ルイージはそう考える。
これだ。ルイージは本を見つける。タイトルはしっかり『我輩は亀である』だ。横から見ると、ページとページの間に隙間がある場所がある。そこを開くと、鍵が見つかった。
「あったよ兄さん!」
「よーし、でかしたルイージ!」
二人は肩をポンと叩きあい、喜び合う。
「クッパにも知らせよう」
鍵が見つかったと教えるため、書斎を出て、もう一つの部屋、キッチンに入る。
「あれ……?」
──が、そこにクッパはいなかった。
「クッパは?」
辺りを見渡すが、どこにもいないようだ。
「どこいったんだ……?」
二人はクッパの行方を考える。まさか隠れんぼをしているわけでもあるまいし、まさかこの館を出ていった訳でもあるまいし……。どこに行ったのかさっぱりわからなかった。
その時、どこからか音が聞こえる。音がこもっているので二人はしっかりと聞き取れないが、何者かが喋っているような音だ。
「なんかさ、声聞こえない?」
「本当だな」
何やら低めの声だ。
「……クッパ?」
ルイージが小声で言う。もしかしたらこの声がクッパかもしれない。いや、きっとそうだ。二人はそういう事にした。何しろ鍵を見つけたので早く先に進みたいのだ。
クッパはきっと新たな道を見つけて進んでいるのだろう。僕達も先に進まなきゃ。
二人はクッパの事は置いといて、キッチンを出た。