Hellsing the Blood   作:Lucas

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 HELLSINGもストブラもアニメ(OVA)知識だけですが頑張ります。



 能力は基本的にHELLSINGのキャラクターのままです。

例)古城は眷獣を持ってなくてアーカードと同じ能力。
 那月ちゃんは魔女じゃなくて銃と剣の名手。

例外)ヴァトラーさんは眷獣使い。




「ハッ、ハッ、ハッ、……」

 

 黒髪の少女が息を切らしながら、彼女の身体1つ分しかないほどの狭い空間を這って進んでいた。

 

「どこだい?」

 

 そんな少女の耳に、彼女を探す者の声が聞こえてくる。

 

「どこにいるんだい? 可愛い可愛い姪っ子。私の可愛い姪っ子。可愛い私のフロイライン。王立国教騎士団・ヘルシング機関を継ぎしうら若き乙女、南宮那月」

 

 少女・南宮那月は気取られないように、通風口の中からそっと追跡者の様子を窺う。

 

「那月、君は何もわかっていない。兄上……いや、君の父君が亡くなるまで、私は20年も待ったというのに……、なのに死に際の兄上は養女である君に当主を譲るという容認しがたい遺言を残していった。それはいけない。そんなことが許されるはずがない。ヘルシングは私のものだ」

 

 恨み言を吐き出しながら、追跡者・リチャードは自分の拳銃の遊底を滑らせる。

 そんな叔父の様子に震えながらも、那月は必死に屋敷の地下を目指して進んでいた。

 

 

 彼女の脳裡に、生前の養父の言葉が甦る。

 

「那月……、もしも……もしもお前に危機が迫った時、どうしようもない敵の勢力に追い詰められた時、地下の忘れ去られた牢獄へ行け。そこに、われらヘルシングの1つの成果がある。お前を守る術がある」

 

 

 目指す牢獄のすぐ近くに迫った那月は、通風口から飛び出し、素足のまま薄暗い地下の廊下を駆けた。

 そして、廊下の突き当たりにある重厚な扉の前まで辿り着いた。養父・アーサーの死後、誰一人として足を踏み入れていない真っ暗な牢獄に。

 格子窓を覗いても一片の光のない牢内の様子はわからない。だが、那月は扉を押した。養父の遺言に従って。自らを守る術を求めて。

 

 

ギギギギギギ…………

 

 

 当然錆び付いていたであろう鉄扉が厭な音を立てながらゆっくりと開き、牢獄に廊下の灯りの光が差し込んだ。

 中に囚われていたものの正体が那月の瞳に写る。

 

 

 死体───。

 

 

 死体だった。

 真っ黒な拘束衣に身を包み、両足を投げ出して座った体勢で、長い黒髪を振り乱し、乾ききって目も肉もなくなり、パサついた皮ばかりが辛うじて骨に貼り付いているような男の死体。

 

 

「これが……、私を守る……術……」

 

 動揺しつつも、那月は恐る恐る死体に近づく。

 

 

 しかし………

 

 

「見つけたよ、フロイライン」

 

 

バンッ!

 

 

 追いついて来たリチャードが無慈悲に放った弾丸が、那月の右肘を撃ち抜いた。

 

「アァァァァァァァァ!」

 

 悲鳴を上げ、那月はその場に倒れ込む。

 しかし、すぐさま自らの“敵”へと向き直った。

 

「叔父上……」

 

「その通りだよ、フロイライン」

 

 那月に銃口を向けたリチャードは、余裕の笑みを顔に刻みながら返答する。

 

「あなたはそこまでして、ヘルシングが欲しいのか?」

 

「またまた正解だよ、フロイライン」

 

 那月に歩み寄ったリチャードは彼女の眉間に銃口を突きつける。

 対して、那月はリチャードを睨んだ瞳を逸らさない。

 

「フッ……」

 

 

 ニヤリと笑ったリチャードが引き金を絞ろうとしたその時……

 

 

「しゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」

 

 

 “気味が悪い”という言葉を体現したような音がリチャードと那月の鼓膜を揺らした。

 

 

「ん?」

 

 リチャードが音の出どころを、那月の身体の後ろに目をやる。

 

「なっ!」

 

 その瞬間に彼の顔は衝撃と恐怖で凍てついた。

 

 

 死体が血を舐めていた───。

 

 

 那月の銃創から床に飛んだ血に、死体だったはずのものが舌を這わせていた。

 ただの穴と化していた瞼の間にはギラついた真っ赤な瞳が宿り、パサついていた皮膚は僅かながらに生気を取り戻している。

 

 

「しゃぁぁぁぁぁぁ。あ?」

 

 真っ赤な目玉が、血溜まりから、自身を見つめるリチャードへと視線を移した。

 

「うあぁぁぁぁぁぁぁぁッ!」

 

 立ち上がった“それ”は、雄叫びを上げて拘束衣を引きちぎると、不気味に口角を吊り上げてリチャードを見た。

 

「ひぃぃ!」

 

 次の瞬間、情けなく叫び声をあげたリチャードめがけて“それ”は飛びかかっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

10年後 チェダース村

 

 

 

 

 それぞれ、Simon、Eddy、Yukinaと書かれた名札を胸に付けた、男2人、女1人、あわせて3人の警察官が、シグザウエルP226を構えながら、灯りのない夜の教会へと足を踏み入れた。

 警官のうちの1人が懐中電灯で前方を照らすと、そこにはうずくまる2つの人影があった。

 しかし、何か様子がおかしい。

 よく見ると、牧師の服装をした男が女の首筋に歯を突き立てていた。

 

「ん?」

 

 光に気付いた男が振り向く。

 歯が抜かれたことによって、女の首筋から凄まじい勢いで鮮血が噴き出した。

 そんなことは一顧だにせず、ニセ牧師が左手を虚空に翳す。

 それを合図に、椅子に隠れていた大量の人影が姿を現した。

 皆、服も皮膚もボロボロの有り様で、ホラー映画のゾンビのような姿をしている。

 

「ひぃぃ!」

 

 ゾンビたちは怯む警官たちに向かって一斉に襲いかかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何ですと?」

 

 ここはチェダース村のすぐ近くに設置された警察の拠点。すなわち、先ほど教会に踏み込んだ警官たちの仲間がいる前線基地だ。

 その中の最も大きなテントのに、フリル付きの華美なドレス姿の少女と、お付きと思しき執事の格好をした老人が入ってから数分、署長の素っ頓狂な声がテントの外まで轟いた。

 

「今、何と仰られましたかな? ヘルシング局長・南宮那月卿」

 

「聞こえなかったのか?」

 

 不本意そうな顔をしながら敬語を使う署長に対して、ドレス姿の少女……みたいな女性・南宮那月(26歳)は不遜な態度を崩さぬままに説明を繰り返す。

 隣では白髪混じりの金髪と碧眼が印象的な老人が苦笑いで控えている。

 

「グールだ。村はグールの巣窟になっている。グールとは吸血鬼に噛まれた非処女・非童貞がなってしまうゾンビ擬き。よって、村には吸血鬼がいる」

 

「ふっ……。ハハハハッ……。グール? 吸血鬼? そんなオカルト話を信じろと?」

 

 署長は那月の説明に笑いを漏らした。尤も、まともな人間に信用しろという方が間違いであるが。

 そんな時、通信係が暗い顔で伝達事項を伝えた。

 

「第2、第3捜索隊、通信途絶」

 

「何!?」

 

 隊長格の警官が驚いた様子で無線機を取る。

 

「おい! 何があった? 応答しろ! 応答しろ!」

 

 笑っていた署長の表情が見る見るうちに青くなっていく。

 

「貴様のような木っ端役人には知らされていないし、本来知らなくてもいいことだが、やつらは実在する」

 

 そんな署長に対して面白そうに那月は話し続ける。

 

「ドラクルは処女、ドラキュリーナは童貞の血を吸った時のみ繁殖するが、それ以外は餌になりグールになるだけだ。やつら相手に普通の警官や軍隊をいくら投入しても餌を増やすことになるだけ。我々、王立国教騎士団、通称・ヘルシング機関は、そいつらアンチキリストの化け物どもを狩る専門家。吸血鬼はヘルシングが狩る。既にうちの、特に対吸血鬼戦闘のエキスパートをチェダース村に送ってある。数時間で片が付くさ」

 

「い、一体、どんなやつなんです?」

 

「化け物……、特に吸血鬼に対しては、誰よりもエキスパートだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、チェダース村の林道を、1人の日本風な顔付きで白いパーカーに身を包んだ青髪の少年が、面倒臭そうに歩いていた。

 

「今夜は満月か」

 

 夜空を見上げて呟いた彼は、欠伸混じりに更に歩を進める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハッ、ハッ、ハッ、……」

 

 教会に踏み込んだ警官のうちの1人・姫柊雪菜は、2人の仲間を目の前で喰い殺した化け物たちから逃げ回っていた。

 

「逃げても無駄だ」

 

 そんな彼女に、後方からニセ牧師が声をかける。

 

「くっ……」

 

 雪菜は足を止めると、牧師を狙って拳銃を撃つ。そこそこの距離があったが数発命中した。

 しかし………

 

「銃を撃っても無駄だ」

 

 胸や腹の肉を抉られたにも関わらず、牧師には全くダメージを与えられていなかった。

 そればかりか、瞬きするほどの間に間合いを0にまで潰してきた。

 

「このッ!」

 

 雪菜は牧師の顔面に銃口を突き付けて引き金を引く。

 銃声とともに牧師の顔が後方に弾かれた。

 しかし………

 

「フフッ……、ハハハハッ……」

 

 牧師は笑い声を上げて雪菜の腕を掴まえる。

 

「俺が欲しいのは忠実な奴隷だけだ。自由意志のドラキュリーナなんぞ作りたくもない。今時、この歳で処女ってことはないだろうが……」

 

 話しながら、牧師は雪菜の胸に触り、首に舌を這わせる。

 

「ひぃっ!」

 

「犯してやろう。その後で血を吸ってやろう。俺の奴隷にしてやろう」

 

「おい、オッサン!」

 

「ん?」

 

 突如響いた少年の声が、そんな牧師の行為を中断させた。

 

「なんだ? 誰だ、お前は?」

 

 牧師が、月を背景に立つ少年に問う。

 返ってきたのは思わぬ解答だった。

 

「殺し屋だよ」

 

「殺し屋? 殺し屋だと?」

 

 牧師が挑発的に声をあげる。

 

「本気か? 正気か、お前?」

 

 牧師は左手を雪菜の首にかけて背後に回り込み、右手を真横に突き出した。

 

「殺せ」

 

 指を鳴らすと同時に、牧師が短く命じる。

 周辺にいたグールたちが一斉に銃を抜いて少年に狙いを定めて引き金を引いた。

 

「あぁ!」

 

 雪菜の悲鳴とともに少年の身体に無数の穴が穿たれる。肋骨が露わになり、右腕が千切れ落ち、最後には少年が仰向けに倒れた。

 

「もう終わりか、殺し屋? フフフフフッ……、アハハハハッ……」

 

 牧師が大笑いする声が気味悪く辺りに響く。

 だが、少年の瞳からはまだ光が失せていなかった。

 

「そんな訳ねえだろ」

 

「何!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吸血鬼だと?」

 

 またも署長の叫び声がテントにこだました。

 

「そうだ」

 

 那月はあくまでも落ち着いた様子で言葉を繋ぐ。

 

「対吸血鬼のエキスパートが人間では心許ない。すぐに傷付き、すぐに死ぬ。心すら弱い。吸血鬼を滅ぼすのに最も効率的なのは、吸血鬼なんだよ。そして、我々、ヘルシングが飼い慣らしている吸血鬼は、やつらの中でも極上の部類に入る」

 

 言いながら、那月は10年前の地下牢に思いを馳せる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「名前は?」

 

 つい今し方喰い殺されたリチャードの銃を向けながら、那月は眼前の“化け物”に問い掛けた。

 化け物は拳銃には目もくれず、那月を見つめながら言った。

 

「古城……、暁古城だ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何故? 何故だ……」

 

 傷一つなく再生してみせた少年・暁古城に、牧師は驚きを隠せない様子で問う。

 

「どうして同族が人間どもに手を貸す?」

 

「うるせえよ、オッサン」

 

 古城は問いに答えることなく、パーカーのポケットから拳銃を取り出した。

 

「まずは邪魔なお前らからだ」

 

 大口径にも関わらず、機関銃と間違うほどのスピードで、古城はグールたちを次々に撃っていく。

 弾が当たったグールたちは、針で突かれた風船のように、一気に形を崩して灰と化していった。

 

「このやられ方……。その弾は……」

 

「ランチェスター大聖堂の銀十字を鋳溶かして作った13mm爆裂徹甲弾だ。コイツを食らって平気なフリークスはいねえよ」

 

 弾倉を入れ替えた古城は、手駒であるグールをすべて失った牧師に銃口を向ける。

 

「おい、待て。たった1人の生存者だぜ? 生かしておきたくないのか?」

 

 牧師は古城の視線から逃れるように、小さな雪菜の身体を盾にする。

 

「なに、簡単なことだ。俺の脱出に手を貸せ。目を瞑るだけでもいい」

 

「なあ、婦警さんよ……」

 

 そんな牧師の言葉には耳を貸さず、古城は雪菜に質問する。

 

「あんた、処女か?」

 

「えっ? はっ……、あっ、ええっと……」

 

「おい! 一体、何を……」

 

「答えろッ!」

 

「は、はいッ! そうですッ!」

 

バンッ!

 

 雪菜が答えた瞬間、13mm弾が彼女の右肺を貫き、背後の牧師の心臓を捉えた。

 声があげることすら叶わず雪菜は血を吐きながら地面に倒れる。

 辛うじて灰化しないでいる牧師も力なく数歩後方へよろめいた。

 

「終わりだ、腐れ牧師!」

 

「ぐはッ……」

 

 雪菜から離れた牧師の胸の中心に、飛びかかった古城の右拳が文字通り突き刺さった。

 灰さえも残すことなく、牧師の肉体が霧消する。

 

「さてと……」

 

 古城が地に伏した雪菜に歩み寄る。

 

「あいつを仕留めるために、あんたの肺を撃った。悪ぃが大口径の銃だ。長くはもたねえ。どうする?」

 

「……は、くっ……、は……」

 

 肺に大穴が空いた雪菜の答えは言葉にならない。だが、彼女は左手を懸命に古城へと伸ばした。

 古城はその手を優しく受け止める。

 

「今日はいい夜だな、ホントに」

 

 そう呟くと、古城は雪菜の首筋に自らの歯を突き立てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……」

 

 雪菜は見知らぬ部屋のベッドの上で目を覚ました。

 

「ここ、どこ?」

 

 まだ覚醒しきらない意識の中で、雪菜は自分の身に起きたことを思い出そうとする。

 

「ハッ!」

 

 チェダース村での一件を思い起こし、慌てて自分の右胸を探るが、そこには穴が空いてなどいなかった。

 ほっとして、悪い夢だったのだろうと思った雪菜だったが、彼女の隣から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

「よう。起きたか、姫柊」

 

「えっ……」

 

 顔を横に向けた彼女と、声の主である青髪の少年の目が合う。

 

「……キャアァァァァ!」

 

「うおぉぉぉッ!」

 

 一瞬の沈黙の後、悲鳴とともに雪菜は古城を殴り飛ばしていた。

 叫び声をあげながら、古城はノーバウンドで壁まで吹っ飛ぶ。

 

「騒々しいぞ、バカ。それから、新入りドラキュリーナ」

 

 そんな様子を見ていた那月が声をかける。

 

「おぉ……那月ちゃ……、イテッ!」

 

 壁に激突した額をさすりながら立ち上がった古城に、那月は手に持っていた扇を投げつけた。

 

「主をちゃん付けで呼ぶな」

 

「あの……」

 

 雪菜が恐る恐る那月に声をかける。

 

「ドラキュリーナって……」

 

「この鏡で見てみろ」

 

 那月は手鏡を雪菜へと放る。

 受け取った雪菜は自らの顔を確認する。

 

「何だか、少し若返ってる気が……」

 

 5年分ほど若返った自身の顔をしげしげと眺めていた雪菜だったが、口を開いた瞬間に再び悲鳴をあげることになった。

 

「牙ッ!?」

 

「いちいちうるさいぞ」

 

 そんな雪菜を那月が窘める。

 

「ここは王立国教騎士団、通称・ヘルシング機関。化け物どもを狩る化け物どもの吹き溜まりだ。もちろん貴様にもここで働いてもらうぞ、姫柊雪菜」

 

 那月の声にあわせて、隣にいた老執事が雪菜に制服を手渡した。

 

「最近、怪しげなミディアンたちによる事件が続発している。吸血鬼を倒せ、婦警」

 

「はあ……」

 

 制服を受け取ったものの、曖昧に頷くだけしかできない雪菜であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「縊り殺した、その血でメッセージか……」

 

 警察によって封鎖されたとある民家の一室で、赤黒く描かれた逆十字を眺めながら、那月は苦々しげに吐き捨てた。

 

「こいつらは、我々のプロテスタントを、我々の英国を、そして我々のヘルシングを嘗めきっている」

 

 イラついた那月の指示が、ヘリで移動中の雪菜のインカムにも届く。

 

『目標はルート17号を北へ移動しながら、あらかじめターゲットにした家族を襲っている。クソ吸血鬼どもを絶対に生かすなッ!』

 

「くっ……」

 

 銃を握る雪菜の手に自然と力が籠もる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「もうすぐ俺たちは永遠に生きられるぜ」

 

「不死身のヴァンパイアね」

 

 血溜まりの中、1組の男女が歪んだ愛を語っていた。

 彼らこそ、ヘルシング機関が追っている連続殺人鬼である。

 

ブーーーッ

 

「ああん?」

 

 突如として鳴った呼び鈴に、男の方が玄関ドアに近づいた。

 

バンッ! バンッ!

 

「うあぁぁぁッ!」

 

 ドア越しに放たれた2発の銃弾に足を撃ち抜かれた男が床に膝をつく。

 すかさずドアを蹴破った雪菜が男に拳銃を突きつける。

 

「動かないでくださいッ!」

 

「このアマッ!」

 

 雪菜の制止を無視し、男はUZIを抜いた。

 

バンッ! バンッ! バンッ!

 

「ガハッ……」

 

 UZIの引き金を引く暇も与えられず、腹、胸、頭に1発ずつ銀弾を浴びた男は灰に還った。

 

「フゥ……」

 

 初めて吸血鬼を仕留めた雪菜は小さく息を吐く。

 その時、廊下の端から足音が聞こえた。

 

「ハッ!」

 

 慌てて銃を向ける雪菜。

 

「俺だよ、姫柊」

 

 しかし、そこにいたのはパーカー姿の味方だった。

 

「マスター……。もう1人の方は?」

 

「仕留めたよ。これで姫柊の初任務は無事終了ってわけだ。お疲れさん」

 

「ありがとうございます、マスター」

 

「ところでさ、姫柊……」

 

「何ですか、マスター?」

 

「その“マスター”ってのやめてくんねえか?」

 

「あっ! 失礼しました……」

 

「いや、別に謝ることは……」

 

「……我が主様」

 

「……って、違う! 俺が言いたいのは、“マスターみたいに簡略化せずにちゃんと呼べ”とかそういうことじゃないくてだな……」

 

「えっ? 違うんですか? じゃあ、ひょっとして……、ご、ご主人様……とか?」

 

「それも違うわッ! 俺が言いたいのは、もっと軽い感じで……」

 

『違うぞ姫柊雪菜、そいつは妹キャラが大の好みでな。“兄上”とでも呼んでやったら大喜び……』

 

「喜ばねえよ! 那月ちゃんまで何言ってんだ!」

 

「そ、そういう趣味だったんですか!」

 

「だから、違ぇよ! 何かもっとマシな呼び名ねえのかよ!」

 

「マスター、サー、閣下、ロード、メイン……」

 

「だから、そういう堅っ苦しいのじゃなくて……」

 

『バカ、ヘタレ、変態、……』

 

「那月ちゃん、俺に何か恨みでもあるのか?」

 

「ん……、では“先輩”なんてどうでしょうか?」

 

「おぉ、“先輩”か。それ、いいな」

 

「こんなのでいいんですか?」

 

「ああ。“マスター”なんて大層な呼ばれ方、俺なんかには似合わねえよ」

 

『おい、貴様ら。いつまでも無駄話をしてないで、とっとと次の現場へ行け』

 

「まだあんのかよ。最近、人使い荒くねえか?」

 

『文句なら“向こう”に言え。私は知らん』

 

「ったく……。行くぞ、姫柊」

 

「はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時と場所を移して、真昼時のバチカンのとある孤児院。

 2人の男子が喧嘩をしていた。

 

「こら、止めなさーい。暴力を友達に振るうなんていけません。そんなことでは2人とも天国へ行けませんよぉ」

 

 そこへ1人の神父が仲裁にやって来た。金髪に緑の瞳の大男という厳つい風貌には似合わない満面の笑みを浮かべている。

 

「神父様……」

 

「ご、ごめんなさい……」

 

「いいですかぁ? 暴力を振るって良い相手は、化け物どもと異教徒どもだけです」

 

 そんな危ない宗教教育が行われているところに、1人の司教が近づいてきた。

 それを認めた神父の眼鏡の奥に、先ほどまではなかった鋭さが宿る。

 

「よし、じゃ2人とも、もう部屋に戻りなさい」

 

「はーい、神父様」

 

「行こ!」

 

「うん!」

 

 走り去る2人に手を振ったのを最後に、神父の顔から笑みが消える。

 

「何のご用でしょうか? 一体、どうしたと言うんです?」

 

 神父に促された司教が老いて皺だらけになった口を開く。

 

「このところ、おかしな事件が頻発しているだろ? 特に英国で」

 

「ええ。よく隠蔽しているようですが」

 

「ヴァンパイアだ」

 

「ほう……」

 

「英国内で連続して吸血鬼が出現している。その数は異常だ、明らかに」

 

「結構なことじゃないですか。英国のプロテスタントどもがたくさん死んだんでしょう?」

 

 他宗教の人間が聞けば震え上がりそうな狂信者っぷりを見せ付ける神父だったが、司教は当然のことだと言わんばかりに意に介さず話を続ける。

 

「そうでもない。ヘルシング……知ってるな? 連中、思いの外上手くやっているようだぞ。現に被害は最少に抑えているようだ」

 

「あんな素人集団、我々と比べればまだ幼稚園だ。カトリックは……、バチカンは……、そして我々は、連中より遥か昔から奴らと闘争を続けてきたのですから」

 

 そこで、神父は再び司教に問い掛ける。

 

「で、私は? 英国内の揉め事だったら連中に任せておけば良いのではないですか?」

 

「“英国なら”だ……」

 

「ほう……、すると?」

 

「今回の事件はアイルランドだ。北アイルランド、地方都市・ベイドリック。ヘルシングが動いている。我々とて、それを黙って見ている訳にはいかんのだよ」

 

「自領土だと言わんばかりに、土足で機関員を派遣するとは……。ハッ、相も変わらず厚顔無恥な連中ですなぁ」

 

「あの地はプロテスタントのものではない。我々、カトリックの土地だ。吸血鬼は我々の獲物だ。連中に先んじられる訳にはいかんのだよ、アンデルセン」

 

 アンデルセンと呼ばれた神父が唇で弧を描きながら司教に問う。

 

「ヘルシングと衝突した際は?」

 

「我々は唯一絶対の神の地上代行者だ。異端どもの挑戦、退く訳にはいかん」

 

「If anyone does not love the Lord,Jesus Christ,let him be accursed. O Lord come. Amen!」

 

 最強の狂信者の投入がここに決した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アンデルセンと司教の会話から数時間後、古城と雪菜はベイドリックのとある屋敷でグールと戦っていた。

 

 

 

バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!………………………

 

 

 

 古城の454カスールカスタムオートマチックと、雪菜のシグザウエルP226が立て続けに火を吹く。

 やがて、辺りに灰しかなくなった時点で2人から放たれる弾雨が止んだ。

 

「2階はこれで終わりか。1階もだったけど呆気ねえな」

 

「先輩、本命は最上階にいる吸血鬼なんですよ。気を抜かないでください」

 

「わかってるよ。ふわぁ~…」

 

「全く……」

 

 欠伸混じりに返す古城を雪菜が窘める。結成から僅か数日であるにも関わらず、このコンビの定番パターンとなっていた。

 しかし、いつも通り事が進むのはここまでだった。

 

「しっかりしてくださいよ、先ぱ……」

 

 不自然なところで雪菜の台詞が途切れる。

 

「ん? どうかしたのか? ……ッ! おい! 姫柊ッ!」

 

 雪菜の方を向いた古城の血相が一変する。

 雪菜の胸に、背中から1本の銃剣が突き刺さっていた。更に、前のめりに倒れようとする雪菜めがけて、6本の銃剣が飛来する。

 

「やらせるかよ!」

 

 すぐさま反応した古城が拳銃で6本全て撃ち落とした。

 

「祝福儀礼の銃剣……」

 

 倒れ込む雪菜の身体を受け止めながら古城が呟く。

 次の瞬間、どこから飛んで来たのか、何十枚もの紙が壁や窓に貼り付き出した。

 

「聖書のページ……。結界か!」

 

ミシッ…、ミシッ…、ミシッ………

 

 廊下の最奥部にある階段が軋む音が響く。

 弾倉を入れ替えた古城が待ち受けていると、血が滴り落ちる銃剣を両手に握り、裾が足首に届きそうなコートを身に纏い、ゴツい十字架を首から提げ、丸縁の眼鏡をかけた、頬に傷のある金髪緑眼の大男が姿を現した。

 男は2本の銃剣をクルクルと器用に操りながら口上を述べる。

 

「我らは神の代理人。神罰の地上代行者。我らが使命は、我が神に逆らう愚者を、その肉の最後の一片までも絶滅すること」

 

 銃剣を十字に組み、擦り合わせて火花を散らせると、遠雷が響き渡るのに合わせて叫んだ。

 

「Amen!!!!!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 時は少しだけ遡って大英帝国王立国教騎士団の本部。

 執務室の椅子に座った那月の前で、青ざめた顔の部下が報告を行っていた。

 

「バチカンの情報官からの報告です。ローマが……、バチカンが……、バチカン特務局第13課・イスカリオテ機関が動いています」

 

「イスカリオテ……」

 

 那月の顔に苦々しげな表情が浮かぶ。

 

「バチカンの非公式特務実行部隊であり、バチカンの持つ唯一にして最強の戦力。エクソシズム、異教弾圧、異端殲滅のプロフェッショナル。存在しないはずの、ユダの名を持つ第13課……。で、兵力は?」

 

「派遣兵力はただ1人……“パラディン”アレクサンド・アンデルセン神父」

 

「アレクサンド……アンデルセン神父だとッ!」

 

 那月の顔が今度は驚きで染まった。

 

「やつが古城たちと鉢合わせになったらどうなる!?」

 

「アッ……」

 

 那月の言葉に部下が思わず息を飲む。

 

「私もベイドリックへ行く! 銃と剣、それから護衛を2名用意させろッ!」

 

「ハッ!」

 

 部下が頭を下げるのを確認することもせず、那月は隣に控えていた執事にも命を下す。

 

「ヴァトラー、バチカンとの交渉はお前に任せる!」

 

「かしこまりました」

 

 ディミトリエ・ヴァトラーは那月に恭しく頭を下げると、アンデルセン神父についての情報を反芻する。

 

(“パラディン・アンデルセン”、“殺し屋・アンデルセン”、“バイヨネット・アンデルセン”、“首切り判事・アンデルセン”、“エンジェルダスト・アンデルセン”。人種、出身、年齢、全てが不明。わかっているのは、この数々の渾名の他に1つだけ、彼が化け物専門の戦闘屋であるということ。我々にとって、化け物に対する切り札が“暁古城”であるように、彼もまたバチカン第13課の切り札……)

 

「フッ……」

 

 自嘲気味に笑ったヴァトラーは最後に声には出さず呟いた。

 

(もっと若い頃に会いたかったな……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 再び時計の針を進めて、ベイドリックの屋敷の廊下。

 両手に銃剣を携えたアンデルセン神父と、右手に拳銃を握った古城が対峙していた。

 

「いい月だな、化け物ども」

 

 挨拶替わりにそう言ったアンデルセンは、古城に一歩ずつ近づきながら、足元の雪菜に目を向ける。

 

「随分とまあ……、可愛らしい声をあげて苦しむのだね、お嬢ちゃん」

 

 彼の言葉通り、胸に刺さった銃剣の所為で、雪菜は呼吸もままならない様子だった。

 

「だが、そんな程度では貴様たちは死ねんよ。心臓はちゃんと外しておいたのだからね。久しぶりの吸血鬼だ。楽しませていただかなければ!」

 

 心底楽しそうな様子で語るアンデルセンに古城が口を開く。

 

「バチカン第13課・特務機関イスカリオテ……」

 

「その通りだ、ヘルシングの犬ども」

 

 あっさりと肯定したアンデルセンはゆっくり近づきながら古城に話し掛ける。

 

「貴様が暁古城か? ヴァンパイアの分際で人間に味方し、吸血鬼を狩る、ヘルシングのゴミ処理屋……」

 

「ここにいた吸血鬼はどうした?」

 

「始末した。とんだ雑魚だった。楽しむ間すらありはしない……」

 

 アンデルセンが古城と手が届くほどの距離にまで接近する。

 身長が低い古城を見下ろし、気味悪く弧を描いた口で告げた。

 

「残ってるのは貴様らだけだ」

 

「そうかよ」

 

 下から見上げる形で睨み返した古城は短く返す。

 

 

 両者が沈黙したまま数秒の時が流れた。

 

 

「ハァァァァイヤァァァァッ!」

 

 先に動いたのはアンデルセン。

 奇声を発しながら、銃剣で古城に斬りかかる。

 しかし、1歩下がって楽々と躱した古城が、アンデルセンの眉間を撃ち抜いた。

 派手に脳漿を飛び散らせたアンデルセンの身体が後ろへ運ばれ、壁に背中を打ちつけてやっと静止する。

 吸血鬼でもないアンデルセンに対してはオーバーキルもいいところだ。

 

「正面から吸血鬼に飛びかかって敵うわけねえだろうが」

 

 そう吐き捨てた古城は銃をしまう。

 

「せ……んぱ、い……」

 

「喋るな。今、抜いてやる」

 

 苦しげな雪菜の銃剣を抜くべく、古城はアンデルセンの死体に背を向けた。

 次の瞬間………

 

「グハッ!」

 

 古城の胸を2本の銃剣が刺し貫いた。

 

「嘘だろ……」

 

「ハハハハッ……」

 

 驚愕する古城の背後で、銃剣の柄を握ったアンデルセンが嗤う。

 そのまま柄を回転させ、更に傷口を広くしてから肉を抉りとるように引き抜いた。

 支えが消えた古城は、前に倒れ込むが、床を手で殴りつけて空中へ踊り出ると、上下が逆さまのまま再び拳銃を抜いてアンデルセンに13mm弾を一弾倉分見舞う。

 更に身体を上下に半回転させて着地した古城は、弾倉を入れ替えながらアンデルセンの様子を窺う。

 

「ウゥゥラァァァァァァァッ!」

 

 一拍置いて、雄叫びをあげたアンデルセンが一直線に古城めがけて突進した。

 

「効いてねえのかよ!」

 

 アンデルセンを躱して身体を入れ替えた古城は、後方に跳んで再び距離を確保する。

 

「セェェェルァァァァァァッ!」

 

 どこから取り出したのか、新たに6本の銃剣を握ったアンデルセンが振り向きざまに投擲した。

 窓ガラスが割れるほどの衝撃波を発しながら飛来する銃剣を古城は拳銃で迎撃する。

 

「ハァァァァァァァァァァッ!」

 

「うおッ!」

 

 銃剣を排除した古城だったが、そこへアンデルセン自身が突撃した。

 躱し切れなかった古城を廊下の奥まで突き飛ばすと、すかさず銃剣を両の掌に差し込んで壁と縫い付ける。

 

「ハアッ!」

 

「グハッ……」

 

 それでは足りないとばかりに、アンデルセンは無数の銃剣を古城の胸や腹に突き刺した。

 

「フゥゥゥァァァ……」

 

 更に新たな銃剣を構えたアンデルセンが不気味に息を吐きながら古城に迫る。

 その身体からは、古城に撃ち込まれた銃弾が次々に吐き出され、銃創は時間を巻き戻すように塞がっていった。

 

「リジェネレーター……」

 

 アンデルセンを見た古城が、口から血を零しながら言う。

 

「そうだ! 我々、人類が貴様らと戦うために作りだした技術だ!」

 

 誇らしげに答えたアンデルセンが、銃剣を握った手を後ろに引く。

 

「Amen!!!!!!!!!」

 

 気合い一閃。

 アンデルセンが真一文字に振り抜いた銃剣によって、古城の首が宙を舞った。アンデルセンを遥か飛び越え、グシャリと厭な音を立てて廊下に叩きつけられる。

 

「フゥゥゥゥゥゥゥゥゥッアッハッハッハッハアッ! アァッハッハッハアッ!………」

 

 目一杯身体を後方に仰け反らせ、アンデルセンは嗤笑する。

 

「これが? こんなものがヘルシングの、切り札? 奴らの飼う最強の吸血鬼だと? とんだ茶番だ! まるでお話にならない! これだからプロテスタントのやることは………、ん?」

 

 アンデルセンの笑い声が止まった。彼の緑色の瞳が薄暗い廊下を写す。

 そこには、転がっていたはずの古城の首も、倒れていたはずの雪菜の姿もなく、血溜まりと一振りの銃剣があるばかりだった。

 

「ほう……。自力で祝福儀礼の銃剣を抜くとは……、少々あのドラキュリーナを甘く見ていたか……。ハアッ!」

 

 甲高い金属音とともに銃剣を握り直したアンデルセンは、獲物を求めて廊下を進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「先輩………」

 

 アンデルセンの隙を狙い、古城の首を拾って逃げ出した雪菜は、その青い頭を胸に抱えながら廊下を進んでいた。

 

「ひどいですよ……。私を置いていかないでください……」

 

 呼びかける雪菜の声に、古城は応えない。

 悲しみに沈む雪菜の心を現実へと引き戻したのは、とある神父が放った銃剣だった。

 雪菜の胸の中から首を攫ったそれは、再び古城を壁と縫い止める。

 

「どこへ行こうと言うのかね?」

 

「ハッ……」

 

 廊下の闇の中からアンデルセンが姿を現した。

 

「どこにも逃げられはせんよ」

 

「くっ……」

 

 迫り来る脅威に対して、振り返った雪菜のP226が火を吹く。

 

「ハッハッ! この状況で尚も攻撃して来るとは、なかなか素敵なお嬢ちゃんだ。だが、そんな豆鉄砲ではどうにもならんよ」

 

 銃創を再生させながら、アンデルセンが更に雪菜に迫る。

 

「Dust to dust. 塵は塵に……。塵に過ぎないお前らは、塵に還れッ! Amen!」

 

「くっ……」

 

(先輩……)

 

 銃剣を振りかぶったアンデルセンが跳びかかり、雪菜は思わず目を閉じた。

 

バンッ! バンッ! バンッ! バンッ! バンッ!

 

 雪菜の身体に刀身が触れる寸前、いきなり鳴り響いた銃声がアンデルセンの銃剣を砕き散らせた。

 

「その娘は我々のものだ。何をしてくれる、アンデルセン?」

 

 名を呼ばれたアンデルセンが視線を向けると、そこにはドレス姿の少女が、スーツ姿の男2人を従えて立っていた。

 

「ヘルシング局長、サー・南宮那月。噂通り、まるで少女のようにおわ……」

 

「黙れ」

 

「ハッハッ! 局長自らお出ましとは、精の出ることだ」

 

「アンデルセン、これは重大な協定違反だぞ。ここは我々の管理下のはずだ。直ぐに退け。でなければ、我々とバチカンの間で重大な危機となる。いくらあの13課と言っても、こんな無理は通らん」

 

「退く? 退くだと? 我々が? 我々、神罰の地上代行イスカリオテが? 第13課が?」

 

 那月の通告に対し、逆にアンデルセンの闘気が高まる。

 

「貴様ら、穢らわしきプロテスタントに退くとでも、思うか!」

 

 叫んだと同時にアンデルセンが銃剣を構えて突撃する。

 銃撃をもろともせず、瞬きするほどの間に2人の護衛を縊り殺すと、那月を狙って銃剣を振り下ろした。

 

キーンッ!

 

 那月は素早く剣を抜くと、アンデルセンの一撃を受け止める。

 圧倒的なまでの体格差と体力差に顔を歪めながら、那月は苦々しく吐き捨てた。

 

「生物工学の粋をこらしたリジェネレーション……。おまけにヒーリングか……。化け物め……」

 

「お前たち、揃いも揃って弱すぎる」

 

 嘲るようにアンデルセンが那月に返す。

 

「お前らご自慢のゴミ処理屋、首を落としてやった。縊り殺してやったぞ」

 

「首を落とした?」

 

 アンデルセンの言葉を聞いた那月の表情が変わる。

 しかしそれは、アンデルセンの予想とは真逆の変化だった。

 

「それだけか?」

 

「何!?」

 

 アンデルセンを嘲るような表情を浮かべた那月に、聞き返そうとするも、彼の背後から遊底の滑る音がした。

 

「南宮局長から離れてください、アンデルセン神父!」

 

 雪菜がアンデルセンに銃口を向ける。

 

「貴様に勝ち目はないぞ、殺し屋」

 

「何を馬鹿な! 貴様ら纏めて今……」

 

「なら早くすることだ。もたもたしてると、縊り殺したはずの者が蘇るぞ!」

 

「何!?」

 

 その時、雪菜の頭に優しく掌が置かれた。彼女が驚いて振り返ると、パーカーのポケットに右手を突っ込んだ青髪の吸血鬼が1人。

 

「よく頑張ったな、姫柊」

 

「先輩!?」

 

「何だと!?」

 

 気づいたアンデルセンも、那月から離れて振り返る。

 

「よう、オッサン」

 

「暁古城……。フッ! ハアッ!」

 

 驚きもそこそこに、アンデルセンが古城に斬りかかる。

 対する古城は、雪菜を左方へ退けると、ポケットから出した右腕を身体の横へ突き出した。見え見えの誘いだったが、それも承知でアンデルセンは銃剣で古城の右腕を切り落とす。

 

「ヌゥッ!」

 

 そのまま古城の後方へと駆け抜けたアンデルセンだったが、刹那に元通りになった右腕を見て驚愕の声を上げた。

 

「どうするよ、オッサン? まだやるなら付き合うぞ」

 

「なるほど、確かに、今の装備では殺し切れん……」

 

 そう言うと、アンデルセンは懐から聖書のページを取り出して、自分の周囲にバラ撒く。

 

「また会おう、ヘルシング。次は皆殺しだ」

 

 アンデルセンの身体を覆い隠したページが焼け落ちると、彼の姿は跡形もなく消えていた。

 

「ハア……。やっと帰ったか……」

 

「無事か、暁古城?」

 

「おう。首を落とされたのなんて久しぶりだけどな。イスカリオテのアンデルセン神父か……。また、めんどくさそうなのが出てきたな……」

 

 そう言って頭を掻く古城だったが、小さな影に突き飛ばされて床に倒れる。

 

「うおッ!」

 

「もうッ! 先輩の馬鹿ッ!」

 

 古城を押し倒した雪菜は、彼をポカポカ叩いて涙ながらに思いを吐き出す。

 

「生き返るなら生き返るって、先に言ってから死んでください! 私がどれだけ不安だったか……」

 

「わかった、わかった。悪かったって」

 

「ほ、本当にわかってくれましたか?」

 

「ホントだって! もう姫柊を1人になんてしねえから……」

 

「せ、先輩……」

 

 古城の言葉に、雪菜の頬に赤みが差す。しかし、次の一瞬で後悔することになった。

 

「……あんな危ないヤツの前じゃ」

 

「……はい?」

 

「いや、だから……。アンデルセンみたいなヤツ相手に1人ぼっちになって不安だったんだろ? もう、そんな目に遭わせたりしねえから大丈夫だって」

 

「先輩……」

 

「ん?」

 

「反省してくださいッ!」

 

「うおッ!」

 

 再び雪菜に突かれ、古城が床に後頭部を強かにぶつける。

 プイと顔を背けた雪菜は、床が抜けてしまいそうな足取りで、その場から姿を消した。

 

「何だってんだよ……」

 

「ハア……」

 

 那月の溜め息は何者に聞かれることもなく闇夜へと吸い込まれる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「諸君、計画を進めよう。次の戦争のために。次の次の戦争のために……」




 こんな感じで進んで行きます。
 これからどんどん日本名のキャラクター増えていきますが気にしちゃダメですよ。

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