でもそこで諦める訳では無いのでご安心を。
時刻は正午
今頃会議室では説明会が開かれてるはずだ。
私は今、大本営の工廠に来ている。理由はもちろん、武器の整備を頼みに来たのだ。私の
基本的に破損した艤装は工廠に持ち込み、そこで働いてる妖精達に修理を頼むのが一般的だ。それに私の兵装は、機械弄りが好きな艦でも直せない。そもそも別の世界の兵器を、別の世界の連中が直せるわけないのだ。
直し方を知ってるのは妖精だけだ。直すだけならまだしも、調整までやってもらうのだ。後で何かプレゼントしなければ。
私は作業の邪魔にならないように隅の床に座って、艤装が修理されるところを見て、時間を潰すつもりでいる。私が説明会に参加しない理由は2つだ。
1つ目は、艦娘達の反応だ。今回の顛末を聞いて、激情して文句をぶつけてくる奴が、一人もいないとは言いきれない。それに、私が今回やった事は、大本営の仕事を横取りしたも同然なのだ。いくら御大層な理由があっても、旨味のあるとこだけ奪って、後のことを全て丸投げにしていい訳ない。そう、今回私がやった事は偽善だ。
彼女達との面倒事を避けるために、説明会には行かないと決めた。
そしてもう1つ。これは完全に自分の我儘だが、私は目立つのが好きではない。私が基本的に1人で居るのは、誰かに気を配る必要がないからだ。誰からのしがらみも、同調圧力もない。
元を正せば、私は人間のそういったものから作り出された存在だ。
大義名分を掲げても、最後には私欲に走る。
そうして利用されてきた。だから、今度は自分の足で好きなように、自分が進みたいところに行く。
自分の中でそう覚悟を決めていると、頭に軽く、攻撃された。
「・・・何をしてる」
どうやら、
全く、コイツを探し出すのは骨が折れる。
そう思い、私は目の前で体育座りをして、自分の艤装が修理されている所を見てるアホの頭に、軽めのチョップを入れ、声をかける。
「・・・なんの用?」
開口一番がこれとは、自覚があるのかないのか。
「今日の正午から説明会をすると、知らせていたはずだが?」
そう問い詰めるが、なんてことはないように
「知ってる。それが何か?」
なんて言ってきた。
「説明の後に、なんで事件を解決に導いた奴が来ないのかと、室内でちょっとした騒ぎになってな。こうして
少しの間が開き、彼女からの返答は、「・・・顔を出すつもりは無い。」だった。彼女の言い分は理解出来る。
我々は人間の我欲から生み出された兵器だ。彼女の場合はそれが顕著であり、だからこそ単独行動が多い。だが、今の彼女の行動は、逃げに等しい。「関わったのなら責任を持て。彼女達を助けたのならせめて見守るべきだ。」そう言って聞かせるが、彼女は何処吹く風だった。・・・・・これはどうやら、実力行使しか無さそうだ。
レイからの説教じみた言葉を聞き流していたら、グイ、と右足を掴まれて持ち上げられた・・・・・おい待て、何をしてる何を。
怪訝な目でそう聞くが、答えは単純だった。
「言ってもダメなら、力ずくで連れていくまでだ。」
その言葉を聞いて、私はすぐさま両手にナイフを召喚して地面に突き刺し、全力の抵抗を開始したが、唯のナイフ2本が人外のパワーに耐え切れるはずも無く、根元からバギンと折れてしまい、結局私はされるがまま、会議室まで引っ張られて行った。
「・・・何処まで行ってるのよ、レイの奴」
私は独り言のように、そう言葉を吐き出した。
レイがいなくなってから15分、会議室は静まり帰っていた。
何時まで経っても誰も入って来ないのを不審に思い、来ると言ったのは嘘だったのかと皆凹んでいるのだ。説明が始まる三十分程前に彼女に会っているので、「絶対に来てください」と念を押した筈なのに、何故?
私自身、諦めて解散にしようかと迷っていたその時だった。会議室のドアが開いたのだ。でも、ドアの向こうから見える状況が分からず、固まってしまった。しかし、この状況を皆に見せる訳にも行かないのですぐ部屋から出てドアを閉め、改めてなんでこうなってるのかを判断することにした。彼女の右足が掴まれていることから考えるに、レイが彼女をここまで引っ張って来た事は明白だった。
レイは淡々と、「工廠にいた。動くつもりがないらしいからここまで引っ張って来た。」と説明してくれたが違う、そうじゃないと心の中で突っ込まずにはいられなかった。
工廠からここまではかなりの距離がある、その状態でここまで引っ張って来た!?馬鹿なの!?
「怪我とかさせてないでしょうね?」とレイへの怒り半分、彼女の心配半分で聞いてみるが。
「そんな事で傷付く程、我々艦娘は柔じゃない。それに、もし彼女がこんな程度で怪我したら、我々はとっくの昔に深海棲艦に敗北している。」なんて意味の分からない返答をされた。「どういう意味よ?それ」と聞くが、それ以上答えるつもりはないようだった。「それより良いのか?彼女達を放って置いて」と言われてようやく、何故外に出たのか思い出した。
私は彼女に、「大丈夫?」と声をかけて、手を差し伸べようとしたが、レイがそれを手で制した。まるで気遣いは必要ないと言うように。そのことに対し疑問を覚えるが、彼女はそのまま立ち上がり、軽くはたいて服に付いた汚れを落とすと、軽く溜息をついて「先にどうぞ。」とだけ口にした。確かにこのまま彼女が入っても、不審に思われるだけだろう。なら、先に私が入って彼女の事を伝えた方が動揺も少なくなる。そう思っての言動だと理解した私は、もう一度部屋に入り、彼女が来たことを伝える。
そうして彼女に目配せすると、彼女はそのまま部屋に入って来た。
1度部屋を出たミズーリさんが戻ってきて、彼女がやっと来た事を伝えてくれたのです。1度彼女を見ているらしい吹雪さんや、叢雲さんはなんだか青い顔をしていますが、一体何があったんでしょうか?そうして入って来た人は、レイさんと顔が似ていて、やはり近寄り難い雰囲気がするのです。違いを上げるなら、彼女はセミロングの髪を、纏めてない位でしょうか。2人は彼女の顔を見るなり、「ヒッ」と短く悲鳴をあげてました。・・・本当に何があったのでしょう。
そうして最後にレイさんが戻ってきて、話の続きが始まろうとしたその時でした。
1番後ろに座っていた天龍さんが、彼女に対して声を荒らげたのは。
私が説明を始めようとした瞬間に、後ろの方から怒鳴り声が響いた。
声を荒らげた方を見てみると、1人の艦娘が立ち上がっていた。
黒い髪に金色の瞳という出で立ちをしてるのは私の知る限り一人しかいない。軽巡洋艦であり龍田との姉妹艦でもある艦娘、天龍。
どうやら彼女が、声を荒らげた張本人らしい。私は彼女を直視し、疑問を投げる。「先程、私に対して納得がいかないと言ったな?それはどういう事だ?」天龍はどうやら、頭に血が上っているらしかった。私の言い方の何が琴線に触れたか知らないが、彼女はさらに表情を険しくし、声を大にして叫び始めた。「どうゆう、だと?決まってんだろ!!あのクソ野郎を速攻でどーにか出来るだけの力があんのに、何で最初からそれをしなかった!!」
天龍の言葉は続く。「あの腐りきった鎮守府の内情は知ってたはずだろうが!!テメェ程の力があれば、あのいけ好かない野郎共をさっさと縛りあげて、もっと早く解決できたはずだ!!・・・・・なのに、何でそれをしなかったかって聞いてんだ!!」
天龍の顔は憤怒に染まり、まるで仇でも睨むかのような、鬼の形相と言っても差し支えないほどに歪んでいた。
私はそれを、黙って聞いていた。
それに続いて、同じ軽巡洋艦の木曾が吠える。「・・・そうだ。全部、天龍の言う通りじゃないか・・・お前が、真の黒幕じゃないのか!?あの状況を愉しんで、俺達が苦しんでるのを嗤って、弄ぶだけ弄んで、最後に自分を良く見せる為の踏み台にした!!お前のやってる事なんてただの偽善だ!!
あいつ等を鎮圧したのだって、大本営の奴らに美味しい所を取られたくなかっただけに違いない!!」
2人の言葉を皮切りに、他の艦娘達からも「外道め!!」「あなたがいなければ苦しまずに済んだのに!!」「人でなし!!」など非難の声が上がり始めた。
彼女達の怒りを否定するつもりは無い。私は大本営の仕事を奪った。これは純然たる事実だし、彼女達がそう捉えても仕方の無い事だ。今ここで否定をしても、聞き入れないだろう。一度物事を決めつけると、その一点しか見れなくなるのは、人間も艦娘も変わらないものだな。
・・・・だから、ここには来たくなかった。上層部への報告は全て済ませてあるし、それを元に説明した方が私を連れて来るよりよっぽど信頼がある。例え、私が来ないのが逃げだとしても、不要な衝突を起こさないということが何より大事な筈だ。
心配そうな顔をして、ミズーリがこちらに視線を送ってくるがどうでもいい。今は兎に角、どうにかしてこいつ等を黙らせる方が先だ。
もう一度、怒り狂った群衆に目を向けると、1人だけこちらを不安気な目で見てる艦がいた。・・・・間違いない、電だ。彼女だけがこの中で落ち着いている。あの地獄で何を経験したかは知らんが、何であれ客観的に物事を見れるというのは実は難しい事だ。ただ見るのではなく、しっかりと観るという事が出来る者は少ない。感情は自分のペースを乱す最大の敵だ。特に怒りは我を忘れ、視野が一番狭まる。常に冷静である事。軍人としてのの基本だ。だが今はそんな事を言ってる暇はない。私の言葉は届かずとも、
言ってしまえばこれは、相当分の悪い賭けだ。パスはおろか、降りる事さえ許されない綱渡り。最悪の場合、彼女も一緒に責められる事になる。だが、もしこれが上手く行けば、誤解を解く鍵になる。
すまないが電、君をダシに使わせてもらう。恨み辛みは後でキッチリ聞いてやる。だから今は、どうか私の指示に従って欲しい。
如何でしたか?
一体主人公は電をどうするつもりなんでしょうか?
そして、電の選択や如何に!?