艦娘であり艦娘ではない   作:コロタン

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今回は電視点で話がそれなりに進みます。(流石に全部電は無理でした)
それっぽくはしてみますが何がおかしなところがあればじゃんじゃん感想等でコメントしてください。




絶望から希望へ

天龍さんのことばを皮切りに、怒りの炎が一気に広がって、事件解決の真相を話す部屋は一気に彼女を責め立てる部屋へと変わってしまいました。なんで皆さんは彼女を責め立てるばかりでお礼の一つも言わないのでしょう。皆さんの怒りは分かります。私もその当事者なのですから。でも、そうやって助けてくれた相手を悪者にして、罵詈雑言を浴びせるのは違うはずなのです。そう周りに言いたいけれども私は弱気な性格の為、皆の前で堂々とそう言うことが出来ません。何より、周りの怒りを自分だけで静められる自信がありません。そうして何もできずにただみてるだけしか出来ず。彼女の顔を見ると、目が合いました。そのグレーの瞳は、真っ直ぐこちらを見ていました。まるで、私に何か、やって欲しいような、そんな目をしていたのです。でも一体、何をすればいいのでしょうか?

その答えは、すぐに見つかりました。

彼女はこちらを見て一度、頷くだけでしたが、それだけで私に何をさせたいのか、すぐにわかりました。彼女が求めているのは外側(アウトサイド)からの言葉でなく、内側(インサイド)からの言葉。つまり、私に彼女に対する意識を変えろということ。でも、果たして私にそんな大役務まるでしょうか?もしそんな大事な役目を果たせなかったら、と悪い方向へ考え始めた時、彼女の声が頭の中から聞こえたのです。

 

 

(あー、あー、こちら被害者達から謂れのない罵詈雑言を浴びてる者だが、聞こえるか電?)

(・・・・待って下さい!?どうして貴方の声が聞こえるんですか!?というより、何をしたんですか!?)

(いやなに、頼み事をしたいから通信したんだがな?)

(通信って他の艦に聞かれでもしたら(その心配はないぞ)・・・え?)

(私達が今行っている通信は、耳小骨を直接振動させるものだから周りには聞こえん。最も、私が勝手に相互通信をしてるだけなんだがな)

(貴方って本当は何でもありな艦だったりするんじゃないですか?)

(失礼だな。流石の私でも出来ないこともあるぞ。それより頼みたい事がある(私が、皆に話せばいいのですか?貴方を悪く言うのは間違ってると)どうやら、さっきのあれは理解した様だな)

(でも、どうやって皆さんを静かにするつもりですか?)

(荒業だが、考え無しという訳でもないさ。合図を出すから後の説得は任せる)

(ちょっとm)ブツッ

自分勝手過ぎるのです。まだ何を言えば皆さんを止められるか分からないのに、少しくらい考える時間が欲しいのです。どうやって説得するか考えてると、3回程乾いた音がしました。彼女の手には、憲兵さん達が持っている拳銃と呼ばれる物と同じのが握られていました。上に向けて撃っている事を考えるに、これがさっきの合図でしょうか?皆さんの怒りは未だ消えていませんが、動揺の方が大きかったらしく非難の声は無くなりました。

彼女はチラリと私を見てから、「電から話があるそうだ」とだけ言って、皆の視線を私に集めました。合図って、もっと何か工夫できないのですか?

これ以上考えても仕方ないので、私は思った事をそのまま口に出しました。「・・・・・違うと思うのです。助けてくれた相手を悪者にして、罵声を浴びせるのは。確かに、彼女は私達を弄んだかもしれません。でも、 何も確証が無いのにそう言うのはおかしいのです。もしかしたらあの放送で、漸く事態を把握したかもしれないのに。」

そう言って周りを見渡すと、もう怒りの炎は消えていました。

天龍さんや木曾さんはまだ納得していない様ですが、頭に上った血は抜けたらしく、少なくともこれ以上何かを言う事はなさそうです。

私が彼女へ顔を向けると、同じように視線が彼女へ戻り始めました。

「・・・・そういう事だ。憶測だけで物事を考えるのは関心しないな。」

そう言われた皆さんはバツの悪そうな顔をしていました。

「だが、その意見自体を否定するつもりは無い。実際、結果的に今回私のした事は大本営の仕事を横取りした形になる。だから、私が信用に値するかどうかは自分の目で判断しろ。それでもと言うのなら、拳でも何でも交えてやる。だから今は、どうかそれで納得して欲しい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

だから、私が信用に値するかどうかは自分の目で判断しろ。それでもと言うのなら、拳でも何でも交えてやる。だから今は、どうかそれで納得して欲しい。」私がそう締めくくると、罵声はもう何処からも聞こえなかった。

電の説得が効いたらしく、大多数の艦が納得してくれた。私は続けて「それは兎も角としてなんだが」と言いかけた時だった。大本営勤務の1人が部屋に駆け込んで来た。何事かと思えば、「君達に、いいニュースと、悪いニュースがある。」と息を切らしながら言ってきた。全員が不思議に思っていると彼は続けて「良いニュースは、君達のボスだった男だが、仮釈放なしの無期懲役が決まった。」と言った。話を聞くに、どうやら上は大本営としての三島の処遇と、奴の裁判とその判決を同時進行で進めていたらしく、(たった数時間。しかも同時並行でやるとは恐れ入る)裁判員は彼を全員一致で有罪判決とし、二度と外に出て来れないようにしたらしかった。これを聞いた皆は、はち切れんばかりの歓声を上げていた。当然だ、これで漸く開放されるのだ。喜ばない方がおかしい。

だが、悪いニュースも聞かねばならないので、残った弾丸を天井に撃ち放つ。それで再び静かになった所で話を再開してもらう。「悪いニュースだが、三島の奴、とんでもない事を口走りやがった。」この一言でさっきのお祭りムードは完全に消え、全員の顔が強張る。当然だ。あいつの置き土産何て録なものじゃないのは目に見えている。

報告に来た男は少しの間躊躇ったが、結局口にした。「あいつ、君達の身体にナノマシンを注入してやがった。」とそれを聞いた私は

「・・・やはりな」と言葉を漏らした。

 

 

 

「ナノマシン?何だそれは」と長門が発した質問に簡潔に答える。

「ナノレベルの大きさの機械装置の群れを、人間の血液中に注入し、それらを電気信号によって制御することで人の手では決して行えない体内環境の監視・制御をリアルタイムに行うことができる技術だ。」

「そんな技術聞いた事ないぞ」と私に詰め寄る長門を止めたのは、先程報告に来てくれた男だった。「ああ、この世界の技術の推移を集めても完成には程遠い試作品が限界の代物だ。だが、何故か奴はそれを所持していた。」私はレイと顔を見合わせる。元々ナノマシンは、我々がいた(こちら側の)世界で使われてた物だ。それがこの世界にあるとは・・・・

2人で思考の海に溺れかけた時に、鈴谷から疑問の声が上がった。

「所であんた、さっき鈴谷達に何か言おうとしてたよね?。それをまだ教えて貰ってないじゃん。」

「いや何、ひとつ聞きたいことがあったからな。あの鎮守府に着任、もしくは建造された時、注射か何か打たれなかったか?」私の質問に、全員が目を丸くしていた。中には「何で知って・・・」と言葉を漏らした奴もいた。

「打たれたよ。」そう答えたのは響だった。

「建造された後すぐに執務室へ呼ばれて、注射を打たれた。あいつ曰く、「この注射は何処の鎮守府に所属しているかを確認出来るようにする為の物だ。既に他の鎮守府でも使われていて、効果は立証されている。安全面でも規定をクリアしているから大丈夫。」なんて言われてね。それから暴行とか受けても、反抗出来なくなった。」他の艦も同様らしく、暗い顔をしていた。「でもなんで、注射を受けてない貴方がそんな事を?」

「執務室に置いてある大金庫、その中に注射した艦の名前と一回限りの緊急通信コードの書かれた紙が入っていた。私の中にもナノマシンが入っているからな。それで電の固有周波数に合わせて通信をして説得して貰った訳だが、それ以外の事は箝口令を敷かれていてな、残念ながら話す事は出来ない。」

全く、これでは信頼されたくないと言ってる様なものだな。電の説得が無意味になってしまう。そう心の中で呟き、自嘲的な笑みが零れそうになった時だ「・・・分かった。信じるよ」響がそう言ったのは。

「・・・いいのか?この短時間で、私は電の説得を無駄にしかけたんだぞ?」

「自分の目で判断しろ。そう言ったのは貴方だろ?何で電が皆を説得したか知れただけでも充分さ。それに、疑ってばかりじゃ何も始まらない。皆はどう思う?」

その言葉を聞いた皆はこの考え自体に異論は無いのか、何も異議を唱えなかった。天龍は「しょうがねぇなぁ」とか言ってるが、不満はないようだ。

「そのナノマシンですが、あの、取り出す方法はあるんですか?」

吹雪が(私を見て)逃げ腰になりながら聞いてきた。

「残念だが、それは出来ない。」

そこにレイが入り、説明を始めた。

「一度ナノマシンを体内に入れると、取り出すことは出来ない。君達に打ち込まれのとは別の、抑制用のナノマシンを注入するのが精々だ。」

 

 

会議室全体が重い雰囲気に包まれる。私は報告に来た男に「大本営の資料保管室にナノマシンは?」と聞くが、「あるにはありますが、如何せんどんな機能を有しているか分からないですし、使うとなるとうち(大本営)だけじゃ決められません。」という返答が返ってきた。

 

無理もない。これは極秘にされてる事だが、ナノマシンは全世界で二百本位しか確認されてないオーパーツだ。それを使って悪事を働いていたとなれば日本の信頼は一気に失われ、艦娘の運用にも絶対に支障が出てくる。

だが、それを回避し穏便に済ませる事は不可能に等しい。何せナノマシン自体の機能はまだ解明されてない部分の方が多く、どんな機能を持っているか分からないのだ。彼女達が反抗出来なくなったと言う証言に基づけば、恐らく入れられたのは上官たる提督の命令厳守や情報漏洩の防止といった特定の行動を阻害し、外部に漏らさないよう統制するのに特化したものだろう。もし仮に抑制用のナノマシンがあったとしても、そう易々と使う事は出来ない。ナノマシンを完全に外に出すには、体内に流れている血液を一滴残らず全て体外に出さなければならない。そんな事は不可能だ。手詰まりだ。ここにいる誰もがそう思っていた。

 

だが、希望は何時だってあるものだ。私とレイは顔を見合わせて頷き、ナノマシン通信を使って、ある人物に連絡をとった。事情を話し、通信を終了する。そしてその結果を報告する前にさっきの男に一つ質問する。「こいつらに撃ち込まれたナノマシン、予備か何かあるか?」

「ええ、1本だけ未使用のものが。しかしどうするつもりですか?」私は先程の通信の結果を提示した。

「上手く行けば抑制用の物が作れるかもしれん。」

私のその言葉に、皆が驚愕する。技術の推移を集めても作れないと言われている代物をどうやって作るのか。その答えはただ一つだ。

この世界で作れないのなら、我々の(こちらの)世界の技術で作ればいい。私達(メタルギア)の中には超弩級の亜種がいるのだから。

 





如何でしたか?
ナノマシンやこの下りを入れたいが為に自ら難産にしていくスタイル。
次は主人公の言ってた通り、新キャラをだします。
もう少しキャラが出て来たら纏めて紹介とかしたいですね。


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