毎日更新できる作者様には頭が下がる思いです
一人称視点の小説は、ほぼ初めてなので上手く表現できているのか、ちょっと不安です
夢を見た……。
幼い時のあたしが一人で泣いている夢……。
周りは暗くて、何も見えなくて、誰もいなくて……。
どれだけ泣いても、何も変わらなくて、それが悲しくて、また泣いて……。
泣き続けていると、黒いナニカが目の前に現れて、あたしを包み込んだ。
夢は包み込まれた瞬間に終わってしまう……。
「眠れない……」
レオとの夕食の後、定期的にしている音ゲー配信を終え、眠りについたのは良いものの、さっき見た夢で突然目が覚めてしまった。
「こういう時は、エゴサして眠たくなるのを待てばいいんだけど、明日は打ち合わせだから、しっかりと寝ないといけない……」
眠ろうと気持ちを落ち着けようとするも、さっきの夢で眠りにつくことができなくなっていた。
「ん~、こういう時は何か温かいもの飲むとぐっすり眠れるんだけど、あたしの部屋にそんなものは……。って、冷蔵庫にはエナジードリンクと飲みかけのジュースとかお菓子ぐらいしかなかった。牛乳とか飲みきれなくて腐らせちゃうって、レオに言われたっけ……。あっ、そうだ。レオの部屋なら何かあるかも。牛乳は有ると思うから、ホットミルクは作れるかな……」
ゆっくりベットから出て、レオの部屋の鍵を暗闇から探し出し、あたしの部屋の戸締りをしてから、隣のレオの部屋へと向かった。
レオの部屋に入ったあたしは、家主を起こさないように、こっそりと冷蔵庫から目的のものを探していた。
「有った有った……。あとは、コップを取り出して……」
「はえ……? 夢美、何してるの?」
「ヒッ! 起きてたのか、驚かすなよ……」
電気が落ちた部屋から、静かにレオが出てきた時は、心臓が止まるかと思った。
「驚いているのは、こっちだって。泥棒かと思ったよ」
「起こさないようにしてたんだけど、起こしちゃって、ごめん」
「気にしないでくれ。夢美は喉乾いたの?」
「ちょっと眠れなくてね……。それで寝つきがよくなるようにホットミルクを飲もうかなってね」
「そういうことなら、ホットミルクよりも寝つきが良くなるもの作るから、座って待ってて。俺も変に目が覚めたから、2人分作ろうっと……」
「ありがとう……」
レオに促されて、いつも食事に使っているクッションに座って、レオが来るの待った。
レオがとっておきのものを作っているまでの時間は、真夜中のせいなのかいつもと違うように思え、とっておきを作ってくれる嬉しさであたしの心がこそばゆくなっていた。
「夢美、お待たせ。はい、特製ミルクココア」
「美味しそう。ありがとう」
レオから手渡されたカップには、温かいミルクココアが注がれていた。心なしかカップから伝わる温かさは、いつもと違った温もりを感じた。
「眠れない時はいつもこれを飲んでる。ホットミルクでも良いんだけど、なんかこっちの方が体に合っててさ」
「そうなんだ。それじゃ、いただきます」
「いただきます」
レオが作ったミルクココアがやっぱり甘く、牛乳も多く入っているのもあってか、ココア特有のほろ苦さが上手く包み込まれて、優しい味がした。
「久しぶりに作ったけど、おいしい」
「うん、おいしい。ホッとする……」
「それにしても、珍しいな。こっそり部屋に入って、夢美が何か作ろうとするなんて」
「うん、今夜が初めて。ちょっと怖い夢を見ちゃってね。それが変に頭に残って、眠れなくって……」
「そうか……。俺も怖い夢で眠れなくなることって、アイドル辞めた時とか結構あったから、他人事とは思えないな」
「色々あったって言ってたもんね。詳しくは聞かないけど」
「ありがとう」
レオのどこか浮かない顔をあえて見ないように、ミルクココアを飲み進めていた。
「飲んだからもう寝るけど、カップは明日洗うから流しに置いておいて。それに明日は打ち合わせなんだから、早く寝ろよ」
「は~い」
レオはベッドに入り、しばらくするとレオの寝息が静かに聞こえるようになった。
「は~、おいしかった……。それに、温かかった」
ココアの余韻に浸った後、あたしは眠っているレオに視線を移した。
「レオ、いつも、あたしを助けてくれてありがとう……。二日酔いが酷かった時に看病してくれたし、食あたりにあった時は危険なベランダから部屋に入って助けてくれたり……」
レオが眠っているという気の緩みなのか、ココアのお陰で少し眠気が来たことによる心のリミッターが外れたのか、今までのレオへの気持ちを思わずこぼしていた。
「レオはあたしが背中を押してくれたって感謝してるって言ってたけど、感謝してるのは、こっちの方だよ。ったく、人の気持ちも知らないで、呑気に寝ちゃって……。そんなライオンには、お仕置きが必要だな、そうに違いない」
あたしはベッドの空いている所に上がり、レオの顔を覗き込み、彼の頬を指で軽くくすぐった。
「ほ~ら、起きないと、くすぐっちゃうぞ~」
「んっ……」
「ふふっ……。可愛い……」
くすぐった後の反応を楽しんでいたりして、しばらくレオの顔を眺めながら楽しんでいた。
「これなら、どうだ……。こしょこしょ……」
頬以外にも、鼻や耳を指先でくすぐって、レオの反応を楽しんでいた。
そして、ひとしきりくすぐり終えると、あたしはレオの寝顔を覗き込んでいた。
「本当に可愛いな……。可愛い……。可愛い……」
レオの寝顔を見ていると、あたしの心は温かくなっていき、次第に意識が遠くなっていき、あたしはレオのベッドの上で眠りに落ちてしまった
「Zzzzz……」
「ん……。なんか、身体が重いな……。!?」
レオは目覚めた時に感じた身体の違和感の正体に目をやると、そこには自分に寄り添うように穏やかな表情で眠る一人の眠り姫がいた。
「俺が眠っている間にベッドに上がって、そのまま眠ったのか。特に何もされてないから、ちょっと遊んでやろうって思ったんだろうな。さて、そろそろ朝食を作ろうかな」
夢美を起こさないようにゆっくり体を起こし、朝食をつくるべくキッチンへと向かった。
「ん……。レオ……」
眠り姫の穏やかな寝言は、部屋に小さく響いたが、誰にも届くことはなかった。
夢を見た……。
あの時見た悪夢と同じ……。
真っ暗な場所で幼い時のあたしが1人で泣いている……。
黒いナニカがあたしの前に現れて、あたしを包み込んだ……。
でも、今回は違った……。
周囲に獣の咆哮が響きわたり、暗闇と黒いナニカは霧のように消え、周囲は光に溢れ、目の前には雄ライオンが1匹、あたしを見守る様に立っていた。
その姿を見て、あたしはどうしようもなく安心して、さっきまでの悲しみの涙は嘘のように消えて、自然を笑みを浮かべていた。
「ナイトメア」=「悪夢」:Nightmareと「騎士の馬」:KnightMareのダブルミーニング。
夢美の「レオがいなくなることへの恐怖」とレオの「夢美を守る思い」を同時に示す言葉となっています。(騎士の馬から守る思いへとつなげるのは、こじつけっぽいですけど)
私の解釈の話になりますが、感情のベクトルは「夢美←→レオ」ではなく、「夢美→←レオ」となっていて、「お互いがお互いを特別な存在と認識している」が、あくまで同期としての仲間としての感情が先に出ている一種の「共依存」に近いものと解釈しています。
最後までお読みいただき、誠にありがとうございます。