#李徴のてぇてぇ   作:天音 遊一

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みなさん、この作品を見ていただき誠にありがとうございます。

この小説も、細々と続けさせていただきまして、10,000UAに到達いたしました。

本当にありがとうございます。

今回は、2日ばかりずれたバレンタインのお話で、旬を過ぎてしまいましたが、楽しんでもらえたらと思います。


ヤドリギとパイとチョコレート

「あ~。どうしようかな~」

 

 

時は2月前半……。

 

きたるべきバレンタインデーに備えて、一人配信をする場所で一人の女性‐茨木 夢美/中居 由美子‐は、頭を抱えていた。

 

いつもの夢美なら、百貨店や大型スーパー等で発売されている既製品の高いチョコレートを購入して渡すという行動をするのだけど、今年の彼女は、そういう選択肢を取ることはできない状況に追い込まれていた。

 

 

「はぁ……。なんで、この前の風紀委員会で、私だけ罰ゲームになっちゃったのかな……」

 

 

夢美は、先月の風紀委員会で「メジャーデビューして、アイドル活動をしているにもかかわらず、ゲーム配信で汚い言葉を叫んでしまった」罪として、「愛しの彼に手作りチョコレートをプレゼント」の刑に処せられてしまったため、先輩からの命令でもあるため、断るに断れないのであった。

 

 

「確かに、叫んじゃったのはわかるけど、このタイミングでなんでなんだよ……。しかも、なんだよ。“愛しの彼に”って……。仕組んだの、絶対林檎じゃん……。あの厄介カプ厨め~。あぁ~。嘆いても仕方ない。カグヤ先輩やまひる先輩からの命令なら逃げられないから、作るか……。とりあえず、作り方を探さないと……」

 

 

レオとの血のにじむような特訓で、「レシピはしっかり確認すること」を徹底的に教え込まれた夢美は、ネットで作り方の詳細な方法を探すことに、まずは着手した。

 

 

「ふ~ん……。融かして、型に入れて終わりなんだけど、色々難しいよな……。型を買ってくるのも、面倒だし……。クッキーで出来た器にチョコを流し込むってのも、有りだな……。う~ん……。今までの経験から、そこまで凝ったものは、きっとできないんだよな……。何々、クッキーとかパイに溶かしたチョコを付けて、そのまま冷やすってのもあるのか。それなら、型とかいらないし、融かして、ちょっと付けるだけで良いな。よし、これで行こう!」

 

 

両案を見つけた夢美は、財布を取り出し、いつも利用しているスーパーへと足を運んだ。

 

 

「最近は、ポテチにチョコを付けたお菓子もあるよね。あまじょっぱいのが癖になるけど、今回はシンプルにいこう。ん、これは……」

 

 

お菓子コーナーにあるクッキーの棚にで色々と見ていると、一つの商品に目が付いた。

 

その商品は、昔からずっと販売されていて、夢美も食べたことがある商品で、ハート型のパイであった。

 

 

「なるほど、これなら良いね。バレンタインなら、これで映えるでしょ。チョコは、この時期に売ってる融かして固める用のお徳用チョコレートで良いか」

 

 

目当ての商品と、愛飲しているエナジードリンク等を購入して、自室へと戻り、財布などを置いた後、すぐさま隣のレオの部屋に入っていった。

 

 

「さて、事務所で打ち合わせ中のレオが帰ってくる前に作っちゃおう。まずは、チョコレートを融かさないと……。最初は、お湯を沸かして……。えっと……。包丁で細かく砕くんだけど……。難しいな……」

 

 

チョコレートの塊に恐る恐る包丁を入れて、粗みじんではあるが、細かく砕いていき、ボウルの底を埋めていった。

 

 

「次は、えっと……。湯煎だっけな……」

 

 

そして、湧いたお湯にチョコの入ったボウルを入れてお湯の熱でゆっくりとチョコレートを融かしていった。

 

 

「おお……。とけるとける。きちんと混ぜ合わせて、後は付けるだけっと……」

 

 

完全に融かしきったチョコレートにパイを沈めて、手早く、クッキングシートの敷いたお皿に載せた。

 

パイにチョコレートを全部つけ終えて、残りのチョコは、スプーンですくって食べ終えたりして、片付けを終えた。

 

 

「証拠写真を撮ってから、ラップにかけて、その上にフリーペーパーをかけてっと……。タッパーとかで隠しておけば、大丈夫でしょ。あ~、慣れないことして、疲れた……。寝よ……」

 

 

自室に戻り、ベッドでひと眠りついた。

 

時を同じくして、入れ替わる様に、打ち合わせを終え、スーパーで夕ご飯の買い物をしてきたレオが帰宅してきた。もう一つの手には、事務所で貰ったであろうチョコレートの入った紙袋が握られていた。

 

 

「ん、あれ、乾かし台に洗い終えた食器がある。夢美が使ったのかな? ボウルとか鍋とか、何に使ったんだ……」

 

 

小さな疑問を残しながら、レオは冷蔵庫を開けて、買ってきたものを冷蔵庫に入れようとした。

 

 

「ん? なんか変だな……。タッパーの位置が変わってる。いくら夢美でもタッパーに入れている常備菜を昼飯として食べたとしても、ここまで散らかることは無いだろうし……。それに、常備菜の量も減ってないからな……。それに、このフリーペーパーは……。いかにも、“何か隠してます”って言ってるもんじゃん……。!?」

 

 

冷蔵庫内のフリーペーパーを捲り、隠しているチョコレートパイをレオは見つけ出した。洗い終えた食器と見つけ出したチョコレートパイから、夢美が作ったものだという結論に至るのは、そこまで難しくはなかった。

 

 

「……。なんだよ、夢美……。あの風紀委員会の罰ゲームはしっかりしたんだな。エライ子だな。さて、夕食を作るとしますかね」

 

 

約2時間後に目を覚ました夢美と、夕ご飯の調理を終えたレオは、いつもの様に一緒に食事を取り始めた。

 

 

「「いただきます」」

「今日もおいしい食事ありがとう」

「良いってことよ」

 

 

バラレオは、今日の夕飯に舌鼓を打ち、2人での食事を楽しんでいった。

 

 

「あれ、レオ? そこの紙袋は、何?」

「ん、これはバレンタインのチョコレート。今日、会社の人達から貰ったんだよ」

「ふ~ん。そういえば、事務所に袁傪たちからのチョコレート来たんでしょ?」

「うん。箱一杯のチョコは何度見ても壮観だった。でも、そういうのって、申し訳ないけど、事務所の人達に処分を任せたよ。メチャクチャ嬉しいんだけど、色々有るからね」

「もったいないけど、色々有ったって言ってたもんね」

「そうそう」

 

 

食事を終えた2人は、いつもの様にまったりしていった。

 

 

「食後のお茶もおいしい」

「はは、淹れた甲斐があるよ」

 

 

2人は、他愛もない話を続け、暫しまったりとした空気を味わっていた。

 

 

「んでさ、今日はバレンタインってことじゃん?」

「ん、そうだけど?」

「それに、私が風紀委員会の罰ゲームを指示されたって知っているよね」

 

 

夢美は唐突に話題を切り出した。

 

その顔は、緊張でちょっと紅に染まっていた。

 

 

「そうだけど?」

「私、作ったんだ……」

「何を?」

「わ、わかるでしょ! チョ、チョコレート!」

「は、はえ?」

 

 

全てを理解していたレオは、演技で驚いた表情を見せた。

 

 

「本当は百貨店とかのお高いチョコの方が喜んでくれると思ったんだけど、風紀委員会とかの罰ゲームも有るからさ。初めて、一人で頑張ってみた。お菓子にチョコを付けただけなんだけどさ。生チョコとかいきなり難しいし……。!?」

 

 

おずおずと話し続けている夢美の頭をを、レオは優しく撫でた。

 

 

「ありがとう。その気持ちだけで、お腹一杯だよ」

「うん……」

「例え、どんな高級なチョコよりも、夢美から貰ったチョコの方が嬉しい」

「ありがとう……」

 

 

2人は優しく笑いあい、二人だけの空間を存分に味わっていた。

 

 

「じゃ、チョコレート持ってくるね」

 

 

ちょっと名残惜しそうに離れた夢美は、冷蔵庫から自分のチョコレートを取り出した。

 

 

「はい、どうぞ」

「じゃ、いただきます」

 

 

レオは、パイの一つを取り出し、口に運んだ。

 

ゆっくりと咀嚼して、その味と込められた気持ちを丹念に味わった。

 

 

「おいしい。メチャクチャおいしい」

「ま、まぁ、チョコを融かして、パイに絡めただけだからね」

「それだけじゃないよ。今日貰ったチョコにはない気持ちがこもっているから」

「ふふ~。でしょ?」

 

 

誇らしげに胸を張る夢美をみて、レオは優しく微笑んだ。

 

 

「じゃ、次は食べさせてほしい」

「えっ」

「ほら、あ~んして」

「う、うん……。あ、あ~ん……」

 

 

ハート型のチョコレートパイを一つ手に取り、レオの顔の前に差し出し、それをレオはそのまま口に含んだ。

 

 

「うん、おいしい」

 

 

その後、レオも夢美に食べさせたりして、全てのチョコレートパイを食べ終えた。

 

 

「まださ、料理とか全然上手じゃないから、あんまりおいしいご飯作れないけど、きちんと付き合うことになったら、もうちょっと頑張るから、待っててよ」

「わかった。しっかりと教えるし、夢美が納得できるくらいまで有名になって、みんなを納得させてみせるよ。ん?」

 

 

ふと、夢美の口元に融けきっていないチョコレートが付いていることに、気が付いた。

 

 

「ん、レオ、どうした?」

「いや、大したことじゃないよ」

「ふ~ん……」

「口元にチョコがついてるよ」

「へ!? どこ!?」

「ここ」

「へ!?」

 

 

チョコが付いていることを指摘して、夢美が口を拭おうとする前に、レオが顔を近づけて、キスと共にすぐさま優しく舐め取った。

 

 

「も~!」

「怒った顔も可愛いし、チョコもおいしかったよ」

「いきなりは、怒るよ!」

「夢美になら、怒られても良いかな」

「李徴、いい加減にしろよ」

「ハハハ」

 

 

突然のレオの行動に怒った夢美だったが、その表情は満更でもなかったみたいだった。

 

 

「今年は“幼馴染”として迎えるバレンタインだけどさ、来年は“恋人”としてのバレンタインを迎えたいかな」

「私も“茨木 夢美”として、もっと案件を取って、レオにも負けないように頑張ります」

「そうだな」

 

 

幼馴染以上恋人未満のバラレオのバレンタインの夜は、この後も静かに、でも少し情熱的に過ぎていくのであった。

 

 

なお、この後、このバレンタインのことは、まひるやバンチョー経由でしっかり妖精たちに暴露されて、林檎たちカプ厨は、てぇてぇで胸を抑え、ツウィッターのトレンドに乗ったりと、祝福とてぇてぇへの感謝の声で埋め尽くされたのであった。

 




チョコレートに関しては、大学生時代に「自演チョコ」としてチョコムースを自分で作って、ネットに上げていたり、融かしたチョコを転写させて、アニメのキャラを書く痛チョコを作っている時期がありました。

こういうお菓子作りもなかなか面白いものですよ。ぜひ、皆さんもどうぞ。

ヤドリギの花言葉:
・「私にキスして」
・「私は困難に打ち勝つ」

レオ視点、夢美視点どちらも意味も解釈できるのは、てぇてぇですな~


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