#李徴のてぇてぇ   作:天音 遊一

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今回は、私が某ライバーとのカップリング小説を考えていた時の設定を使った小説です。

今回の主役は、獅子島レオでも茨木夢美でも白雪林檎でもなく、にじライブの第一期生「竹取かぐや」であり、彼らの所属会社の統括部長の「諸星香澄」です。

彼女の過去の約束と、謎のプレゼントが紡ぎだす一つのお話を楽しんでもらえたらと思います。


Ephemera of Paris daisy

「うわっ。これが竹取かぐや宛に送られるファンからのプレゼントか。流石、にじライブを引っ張ってきたVだけはある……。あたしもプレゼントは貰ったことあるけど、これだけの量は見たことないや」

「いっつも、こんだけ仰山貰っても困るんやけどな」

「でも、流石です」

「それにしても……。ちょっと恥ずかしい所を見られちゃったかな。自慢してるみたいでさ」

 

 

事務所での打ち合わせがたまたま済んだ諸星、レオと夢美の3人は、事務所の机の一角を牛耳る様に高く積まれた“竹取かぐや”宛のプレゼントを見て、感嘆の声を上げていた。

 

 

「本当はもっと有るんだけど、電子機器とか食料品に関しては、申し訳ないんだけど捨ててるんや。規則できっちり決まっているからな」

「わかります、諸星さん。俺もアイドル時代にそういったプレゼントは、処分しているって話はありましたよ」

「おっ、流石経験者」

「え~勿体ないな~。電子機器とか高そうなのに~」

「夢美、電子機器こそ今の時代怖いんだぞ。盗聴器や隠しカメラが仕込まれている可能性だってあるんだから。そこから、身バレすることだってある。食料品なんかは、誰がどうしたかわからないものを食べるんだぞ。もし、それに毒とか仕込まれていたら……」

「確かにそうだよね……。勿体ないって気持ちはあるけど、それが毒だったらと思うとね。盗聴も怖いし」

 

 

「だから、気をつけろよ」とレオは優しく釘を刺しながら、プレゼントの一つ一つを見ていた。

 

 

「ん?あれ?これは……。栞?」

 

 

レオは、詰まれたプレゼントの山の麓にさりげなく置かれている一枚の栞に気が付いた。

 

その栞は、マーガレットの花が描かれ、ラミネートされた如何にもお手製のものであった。

 

 

「栞のプレゼントってのは、見たことが無いな……。なんじゃこりゃ?。30-2-11、45-12-3……?」

 

 

レオがその栞に手を伸ばし、栞の裏を確認したが、その裏には、数字の羅列が書かれているだけであった。

 

 

「諸星さん、この栞は何ですか?」

「あ~、それは貰っておくわ……。もうこんな時期か……

「そ、そうですか、どうぞ」

「ありがとな。それじゃ、私はこれから仕事に戻るわ。配信頑張りや」

「わかりました。頑張ってください」

「頑張ってください~」

 

 

諸星は、レオから受け取った栞をスーツの裏のポケットにしまい、仕事に戻っていった。

 

 

「何だったんだろうな、あの栞……」

「ん?栞が何だって?」

「いや、大したことじゃないんだけどさ。あの栞はなんか普通のプレゼントとは違うんだよね。裏に変な数字が書かれてたし、諸星さんが何も確認もせずに、スーツの裏側のポケットにしまったんだぞ」

「確かにちょっとおかしいよね。内容は確認するくらいはするよね。特に竹取かぐやレベルの人となると、そういうのって人一倍気にしないといけないよね」

「謎の栞の事なら、あれは約3年ぐらい前から、定期的に事務所にファンレターと一緒に送られてきたプレゼントなんだよね」

 

 

「そうなんだよ」と言うレオの後ろで、かぐやのマネージャーの飯田が2人に声をかけてきた。

 

 

「飯田さん、お疲れ様です。その話って本当ですか?」

「獅子島さん、本当だよ。毎回同じ人から送られてきてて、印象的なんだよ。ファンレターの内容は普通で、栞も市販の機材でラミネートされたもので、変な数字の羅列以外は変な所は無いから、そのまま渡しているんだけどね」

「へぇ~、変わったプレゼントですね」

「そうだよな。別にバンチョーが本を読むなんてこと、あんまり配信でも言っていないし、わざわざ“栞”を贈るってのはおかしい。しかも“定期的”なのが、もっとおかしい」

「本当にそうなんだよね。勿論、諸星部長も読書はするから、栞は使うだろうけど、定期的に送ってくるのも不思議で、会社内では「送り主は、諸星部長の恋人」だなんて、噂が流れたくらいですよ」

 

 

「まぁ、その噂も部長の圧力で、誰も話さなくなったから、有耶無耶になったんだけどね」と、飯田は軽く鼻で笑いながら、最後に添えた。

 

 

「諸星さんは、ライバーとしても社会人としてもきっちり分別の付けられる方ですし、立派な社会人ですし、もしその噂が本当だとしても、別に良いんじゃないんですか?」

「レオからそんな言葉が出るなんで意外」

「そりゃ、推しに恋人がいるんだったらショックだけど、諸星さんなら恋人がいても全然不思議じゃない年齢ですし……」

 

「おっ、誰に恋人がいるって~」

「!?」

「ヒッ!」

「あっ……」

 

 

レオの背後から諸星が静かにやってきて、レオの左肩に手を載せていた。

 

その顔は笑顔ではあるが、そこから明らかな怒気がにじみ出ていた。

 

 

「獅子島レオさん~。女性のプライバシーに踏み入るなんて、躾がなっていないんとちゃうんか?」

「いえいえ……」

「それに、飯田ァ?。まだ、仕事が残っとるんと違うんか?。こんな所で油売ってる時間なんてないやろ?」

「すみません!!」

 

 

諸星の濃厚な怒気を含んだ優しい声は、レオを黙らせ、飯田は足早に仕事場へと返した。

 

 

「はぁ~。また、変な噂流しよって」

「諸星さん、すみません。変な噂にのってしまって」

「別に構わんよ。確かに“竹取かぐや”のイメージとしては、“栞”のイメージは付きづらいから、変に勘違いされるのは分かってたんやけどな」

「そ、そんなことないですよ。それにマーガレットのイラストなんて、送った人は可愛らしい人ですね」

「そやな。嫌味ばっかりだけどな……

 

 

その後、事務所を後にしたレオと夢美は、自宅に帰るついでに、事務所の最寄り駅の駅の近くの大型書店へと足を運んだ。

 

 

「何、この行列は?」

「凄い人だな……。ん、何々?。『赤鮫シエル』サイン会が開催されているんだって」

「赤鮫シエルって、あの「迷探偵ヤンキーガール」の?」

 

 

目的の書店に到着した2人は、目の前の大きな列に驚きの顔を露わにした。

 

 

「そうそう、あの作品だね。一度バイト先の人から借りて読んだことが有るんだけど、不良少女と迷探偵のコンビがまた絶妙に噛み合ってて、お互いの足りない所を支えあいながら、事件に立ち向かっていく姿は、笑いあり涙ありでかなり読み応えのある作品だったよ」

「推理小説か……。私には難しそうだな」

「そうでもないよ。文章やトリックに関しては、奇をてらいながらも、きちんとわかりやすい説明をしていたから、なるほどっと思わせてくれたよ。それが受けて、アニメ化が決定したみたいだし、新刊の宣伝も兼ねてのサイン会だね。なんか懐かしいな」

「レオもやっぱりそういう事してたの?」

「ああ、サイン会が終わった後に、裏で結構ボロクソに言ってたよ。客の態度が悪いとか色々とね。痛い思い出だよ」

 

 

若干、苦虫を嚙み潰したような表情をしながら、過去の行動を反省するレオであった。

 

 

「うわぁ……」

「だからこそ、今があるってことだから、前向きにね」

「そうだね、人生前向きにね」

「それじゃ、買い物を済ませたら、早めに帰るぞ。今日の夜は、配信有るんだから、準備を済ませないといけないだろ?」

「は~い!」

「今日は夢美の好物を作るから、楽しみにしろよ」

「やった~!」

 

 

バラレオの2人は、通常運転でてぇてぇを振りまきながら、目的の本を探しに向かった。

 

 

 

 

一方、その頃……

 

 

「もうこんな時期か……。やっぱり、あいつはキザすぎるんだよな……」

 

 

仕事を一通り片づけ、休憩している諸星は、プレゼントの栞を見つめながら、過去を思い出していた。

 

 

 

 

これは、10年前の遠き日の思い出……

 

 

「なんか複雑に奇をてらい過ぎて、全くわからないし、文章が分からりずらい」

「中学時代からあなたの事は知っていますが、やっぱりあなたのセンスは狂ってるんすね」

「なんやと!」

「痛い、痛い!殴らないで!」

「うっさいわ、ボケ!」

 

 

薄汚れた部屋で男性の執筆した作品を女性が読んで、品評していた。

 

また、男性側の煽りに腹を立てた女性、彼の腹部にパンチを入れていた。

 

 

「あなたがこういう文章を読み慣れていない知ってたからこそ読んでもらいたかった。色んな人に読んでもらうためにね」

「ま、そんなとこやろうな」

「それは半分で、もう半分はこの文章を読んで、頭を抱えるあなたの姿を見たかったんですけどね、ハハハ!」

「あ゛っ!」

「痛い痛い!」

「お前みたいな性悪が書いた本なんか、一生売れないぞ」

「言いましたね……。じゃ、私が売れたら、どう落とし前つけてるんですかね?」

「そうだな……。それじゃ、土下座でもしてやるよ。『私の見当違いでした』ってね」

「わかりました。それじゃ、私が売れたら土下座してもらいましょう。それじゃ、ゴールラインはどうしましょう?。あなたのことだから、ゴールラインを後ろにずらされて、結局土下座しないっていう事にはされたくないですからね。さて、どうしましょうかな……」

 

 

男性は思案にくれながら、この勝負のゴール地点を考えていた。

 

 

「上等ッ!」

「それでは、新刊が出る度にあなたに栞を送り付けましょうか」

「はぁ?なんで、栞?」

「そこは考えてください。そして、栞が10枚溜まったらってのは、どうでしょう?」

「つまり、新刊を10冊出したら、そっちの勝ちってことか。まぁ、ええやろ」

「それでは、首を洗って待っててくださいね。土下座が楽しみだ~。ハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これで6枚目か……。これで、折り返し地点は過ぎたんやな。あいつも頑張ってるんだな」

 

 

帰宅し家で寛いでいる諸星は、仕事用鞄から栞を取り出し、小さく呟いた。

 

その左手には、通販サイトの梱包用封筒が握られていた。

 

 

「さて、あいつがどんな作品を書いたか、見てやらんとな」

 

 

封筒から「迷探偵ヤンキーガール」の新刊を取り出し、ソファーに座り、その本を読み始めた。

 

 

「あいつ、私が新刊を買うことを見越して、必ず必要になる栞を送り付けたんやろうけど、何故、竹取かぐや宛に送りつけたんや?。それに、あいつに竹取かぐやの事なんて、言っていないんやけどな……。もしかして、私のことを調べてた?。まぁ、あいつのことだから、声で見抜かれちゃったんだろうな。それに今の職場にいることも、あいつに言ってたからな」

 

 

黙々と読み進めながら、ふと、それを止めて、メモ帳とペンを取り出し、栞と小説を交互に見ながら、再び読み始めた。

 

そして、メモ帳に文字を記入し、一しきり終えると、その文字列に目をやった。

 

 

「さて、あの性悪野郎の残した暗号は、なんやろな……。えっと……」

 

 

ゆふぐれは

雲のはたてに

ものぞ思ふ

天つ空なる

人を恋ふとて

 

 

「…………。なんや、今回は和歌かいな……。自分は平安貴族にでもなったつもりか。調子に乗りやがってな。それにそんな和歌送られたって、気持ち悪いだけやん」

 

 

呆れた表情をしながらも、その頬はどこか赤らめていた。

 

 

「それにしても、栞の裏の謎の数字は、ページ数と行数、上からの文字数を表しているなんて、ちゃんと本を買わないと分からんやろが……。性悪なあいつらしいわ……。中学時代からの腐れ縁やけど、本当に性悪やな」

 

 

彼女の瞳は、どこか遠くの何かに想いを馳せていた。

 

 

「また、こっちもファンレターで返してやるかな。それに私は知ってるんやぞ。「迷探偵ヤンキーガール」の主人公の不良少女のモデルが私だってことも。なんや、あいつただのツンデレか。それにやり方が回りくどいし、言葉が一々面倒くさい。言葉選びもクサい」

 

 

呆れた表情で、ダメだしの言葉を並べ立てた。

 

 

「でも、女としては、売れっ子作家に言い寄られるなんて、嫌な思いはせぇへんかな。ゲームや漫画の世界みたいやしな。もっと直接的な言葉で言い寄られたら、コロッといってしまいそうやけどな~」

 

 

諸星は、思いを寄せられている殿方が作った栞を見ながら、物思いに更けていた。

 

その後、本はベッドの下の布製のブックケースに収納されるのであった。誰かのお手製の栞を挟んだ他の5冊と一緒に……。




「Ephemera」=栞(の用途として用いられた不要なパンフレット等)


「Paris daisy」=マーガレット

マーガレットの花言葉:「恋占い」「真実の愛」「信頼」


原作者曰く、竹取かぐやのモチーフが、某か〇みとハイブリットとのことなので、「赤鮫シエル」のモチーフは、某パワポ以外は完璧な探偵をモチーフとしています。

お互い煽ったり、煽られたりの関係だけど、そこにはお互いのラインをきっちり守ってくれるからこその信頼関係がきっちりできているからこその関係だと思っています。

私としては、お互い好き同士だけど、臆病な自尊心と尊大な羞恥心が邪魔をしてお互い素直になれないみたいな関係をイメージして書かせていただきました。

あと、作中の和歌は古今和歌集に載っている和歌で、ざっくりとした意味としては「高嶺の花となってしまったあなたを愛している」という、売れたとは言っても、まだ売れ始めた小説家から、会社の統括部長でV業界を牽引している諸星さんに対しての愛の言葉という意味合いで使いました。



拙い文章ではありますが、原作者様、筋は通させていただきました……。

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