私の趣味を詰め込んだり、暗に描写しなかったりしていますが、少しでも楽しんでいただけたらと思います。
「ただいま~。あ~、疲れた~」
「お帰り、レオ。ご飯できてるよ。また、カレーだけど……」
「全然いいって。夢美の作るカレーは美味しいから」
年の暮れが近づくある日、とある企業案件でスタジオでの収録を終えたレオは、夢美が待っている自宅へ帰ってきた。
夢美との結婚を目指し、誰もが納得する立ち位置を得るために、精力的に案件を受け続けたのもあるが、この頃になると、レオを含めたにじライブ三期生の3人は、それぞれの得意分野で企業案件を受けることが多くなり、食事は夢美が作ることもしばしばあった。
ただし、夢美の料理の腕はレオや静香等の指導により、上達しているものの、作るのはレオに教えてもらったカレーやシチューといった煮込み料理が中心であった。
「それじゃ、座って待ってて~」
「は~い」
レオの分と自分の分のカレーを夢美が用意して、食事の時間となった。
「それじゃ、いただきます」
「いただきます」
その後、食事を終えた夢美は、案件で疲れたレオを労っていた。
「今日もお疲れ様」
「本当だよ。最近案件続きだったからな。案件が有るのは嬉しい限りだけどね」
「そうだね。あたしもレオ程じゃないけど、私を指名してくれる企業案件が出始めて、嬉しい限りだよ。たまにビックリ系やリアクションを要求される案件が有るのはちょっと気になるけど」
「でも、先月歌の案件もあったじゃん」
「それはそうだけど……」
しょげている夢美をハハッと笑いながら、優しく頭を撫でた。
「ん、でさ……。最近、案件で結構忙しかったじゃん?」
「うん、そうだね。それで、夢美には迷惑かけてると思ってる」
「しっかりとした企業案件だから、私も何も言うことは無いんだけどね。最近、案件とか配信とか、裏でも色々頑張ってるからさ……」
夢美の声は、次第に真剣な声になっていた。
「ん、夏に私への気持ちを伝えてくれたけど、“きちんと周囲に納得してもらえるまで”って言って、幼馴染のままでいてほしいって言ったじゃない」
「うん、そうだな」
「でもさ……。最近、頑張っているからね。本当に頑張ってるからね」
夢美は溜めに溜めて、やっと言葉を吐き出した。
「ご褒美にさ……。明日まで、そう明日まで……。『恋人』になっても良いかなぁ~って」
夢美は真っ赤になりながらも笑顔で一日限りの関係を承諾した。
「はえ?」
「いや、だってさ、レオが毎日頑張って、ダンスレッスンしたりボイスレッスンしてる時でも、私のご飯とか作ってくれたり、私の部屋の掃除とか手伝ってくれたりしてさ。レオがメチャクチャ頑張ってるから、何かお礼というか、ご褒美をあげないとさ~って思ったんだよね」
「…………」
「今日は帰りが遅くなるからって、あたしがご飯作ったけど、まだカレーとかしか作れないし、前とかはレトルトだったり冷凍食品だったりしたし、まだまともなご飯は作れてないから。未だにレオに頼りっきりだし……。っ!?」
お礼の言葉を緊張のあまり早口になっていたところに、レオは横に回り込んで、夢美を優しく抱きしめた。
「ありがとう、夢美」
「う、うん……。で、でも、『恋人』っていう事だけど、まだ“そういう事”はしないからね。そういうのは、まだ早いし、無理矢理ってのも嫌だからね」
「わかった。夢美の嫌がることはしないよ」
「だからって、ちょっとは良いよ。だって…。『恋人』なんだからね」
「うん、わかった……」
レオは、抱きしめる強さをちょっとだけ強めた。
夢美は、レオの温もりにそっと身を寄せ、優しく抱きしめ返した。
「夢美……」
「……………」
しばらく抱きしめあった後、二人は明日の予定を立てることにした。
「明日のデートは、お互いの服を買いに行こうよ。ちょっと、遠目のショッピングモールとかでね」
「いいね。たまには、遠出するのも悪くないな」
「あと、ここだったら観覧車が有るから、買い物が終わったら、一緒に乗ろうよ。こういうリア充イベントってのも、ちょっとはね」
「デートの最後に観覧車か……」
ちょっと遠くのショッピングモールでのデートの予定を立て終えた2人は、それぞれの部屋でそれぞれの夜を過ごすのであった。
ただお互いに、次に顔を合わせた時、時間制限付きではあるが、いつもと違う関係であることに覚悟と期待が混ざり合った不思議な雰囲気を醸し出していた。
(次の日……)
「(夢美、起きているかな?。さっきアプリで既読が付いていたから、起きているとは思うんだけど……)」
身支度を整えたレオは、夢美を迎えに行くために、隣の部屋の入り口でチャイムを押した。
「………ッ!?」
「ご、ごめん。待った!?」
その後、おずおずと出てきた夢美は、化粧も薄いながらもしっかりとされていて、服もいつもの夢美とは考えられない程の気合の入ったものであった。
「ちょっと、準備に手間取って……」
「いいよ、そんなに待ってないから。でもちょっと、待ち遠しかった」
「うっ……。ありがとう……」
「それじゃ……。行こうか」
「う、うん……」
差し出されたレオの手をそっと握り、2人は目的地のショッピングモールへと向かった。
どこか慣れないのか、2人の間にはちょっと緊張した空気が流れ、電車の中では時々お互いが無言になっていた。
目的地のショッピングモールに到着した2人は、それぞれの服見繕い始めた。
「う~ん、レオには黄色とかブラウンとかの色が良いよな……」
「夢美はいつもピンクだったり、清楚な服が多いから、たまには路線の違った服を着させたいな……」
レオには黄色のラインが入ったパーカー等を数種、夢美には薔薇の刺繍がワンポイントに入った薄手のセーター等を数種購入した。
この頃には、お互いの緊張が解けて、いつもの2人の雰囲気に戻っていて、柔らかい雰囲気に戻っていった。
「ハッハハ!。いや、も~。本当にすごい昔話だよね」
「笑うなよ、由美子……。結構傷ついているんだけど……」
「ごめんごめん」
レストラン街で、半個室のレストランで夕食を食べながら、談笑を続けていた。
「よし、次に料理を教えるのは、ハンバーグにしようかな。材料を混ぜて、焼くだけだし、餃子とかミートボールとかの応用に使えるからな」
「お~し、頑張るぞ」
「俺も頑張って、教えるぞ」
「わ~い!」
食事を終えた2人は、最後の目的地である観覧車へと歩を進めた。
2人は腕を組んで並んで歩いていたが、その手のひらは冬にも関わらず、緊張のために手汗がうっすらと浮かんでいた。
「なんか、いつも二人っきりなのに、なんか緊張するね」
「ああ、そうだな」
「『恋人』と一緒に観覧車に乗るなんて、ライバーを始める前には考えられなかった」
「俺も、最初は大きなステージ歌を歌いたいって思ったから、ライバーを始めたのに、今ではこうやって『恋人』とデートできる」
2人は、上昇し続けている観覧車の中で、隣同士で座り、優しく微笑みあった。
今は仮初の恋人であっても、二人の絆はもう既に恋人以上とも言える深い絆で結ばれていた。
「夢美、あの時の言葉をもう一度言うぞ」
「うん」
「俺は諦めない!。夢も夢美も由美子も、全部だ!。案件が少ない?。ならバンバン取ってきてやるよ!。メジャーデビューだってすぐにしてやる!。夢美、当然お前もだ!。周りの迷惑なんて気にならないほどの利益を出してやればいいんだよ!。傲慢な考えかもしれない。強欲な考えかもしれない。それでも俺は全部手に入れる覚悟を決めたんだ!」
レオは、あの時のベランダでの誓いの言葉を、再び告げた。
「うん、わかった。じゃ、私もあの時の言葉を言うよ」
「ああ」
「まだ時期じゃないってだけの話だよ。一年くらい経てば公式の仕事ももっと増えてあたし達も安定すると思う。だからさ、まだ幼馴染でいてよ、拓哉」
夢美は、あの時の条件付きの了承の言葉を、再び告げた。
「わかってる。だから、案件を着実にこなしてる。チャンネル登録数も着実に増やしていて、周囲に夢美との関係を認知してもらいつつあって、にじライブの企画でも、夢美とセットで呼んでもらったりしている」
「うん。感覚的だけど、もう目の前になってると思う。だから、レオの願いはもうすぐ叶うと思う。だから、今日はちょっとだけ、レオの想いに報いようと思ったんだよね」
「ありがとう、夢美」
上昇し始めていた観覧車もそろそろ頂上へと向かいつつあった……。
「でね、レオ。こうやって、買い物行ったり食事に行ったりって、いつもしてたりするじゃない?」
「ああそうだな」
「それって、あたしたちの日常じゃない?。でも、それじゃ、『恋人』っていう事って感じはしないよね……。だからね、これもご褒美。どう取るかは、レオが選んで……」
夢美は、レオの方を向き、静かに目を閉じた。
これが、何を指し示すか、わからないレオではなかった。
「夢美……」
頂上へとたどり着いた観覧車の中で、二つの影が静かに重なった……。
その後、2人の間には静寂が包み、二人きりの時間は終わりとなった。
「夢美、最高のご褒美ありがとう」
「ど、どういたしまして……///」
その後、レオの部屋に戻った2人は、言葉もなく優しく抱きしめあった……。
この温もりを忘れないように……。
再び、この温もりを味わうと心に誓いながら……。
「リワード」=「reward」(褒美)と「Re:word」(再び言葉にする)のダブルミーニング
暗に描写されていない部分は、読み手の想像力にお任せします。