夜。一室の空き部屋にクーロンとフェルミ、そして千冬もいた。
「さて、アリスちゃん、用意はできてるね?」
「ええ、いつでも行けるわ。」
「じゃあよろしくね〜。」
フェルミの声を聞きアリスが向こう側で操作する。しばらくして天井に空間が開きそこから一人の人間が落ちてくる。
「あいたた.....誰だぁい僕の邪魔をするのはァ......ぁ。」
「随分とやらかしてくれたよねウィン....いや、ダーウィンさん?」
「いや、あの、あれは、その、ね....だからその....フェルミが持ってるそのロープは何かなァ!?」
いきなり転移させられ、最初に出会った顔が激おこクーロンとフェルミ。千冬はすでに何かを察したのか静かに部屋の外に出た。
「さて、千冬さんも察してくれたみたいですし....。」
「ひゃ....や....やめ.....!!!」
このあと数分、絶叫と怒声が響くこととなる。
そしてその怒声が収まったのを見届けた千冬は再度部屋に入った。が、
「.....いやほんとに何をしたんだ?」
千冬が見たのはぐるぐる巻きにされて伸びてるダーウィンと呼ばれた少女とその上に乗って動きを制限しているフェルミ、そして一息ついたクーロンと哀れんだ目で見ていたモニター上のアリス。
『まあ、約束通りすでにイギリスからの全IPのBAN処理は完了してるわ。けど、クーロン、目的はそれじゃないでしょ?』
「まあね、さぁ、ダーウィン、セシリアとの関係を洗いざらい吐いて貰おうじゃない!!」
「グェェ.....離して、離して、喋るから!とりあえず開放して!!」
「もっかいチャパネピリビリしとく?」
「わかったこのままでいいからそれだけはやめて!?」
結局ダーウィンが折れた。
「おいちょっと待て、サラッと流したが封鎖の件は私が預かったはずだが?」
「私が勝った時点で封鎖許可信号が飛ぶように細工しました。すでにイギリスは全ネットワークを封鎖され完全に途絶状態でしょうね。」
「.....お前らは、国が滅ぶのを何とも思わないのか?」
「少なくとも国家代表になるような人物にああいう教育をさせてない国は滅んでいいと思ってます。それに、私達はIPBANなどの権限をすべて個人裁量で任されているのであまり口出しはしないでいただけませんか?」
「.....むぐぅ.....。」
「始まりはあのイギリスの列車事故の後からさ。」
そうボソボソとダーウィンは告げ始めた。
「セシリアで良いのかな?あの子の親子はほぼ毎日僕と研究していたけどその日は珍しく来なかったんだ。気になって調べてみたらあの事件。そして同時期にAlice/Warが発生した。」
「たしかそれって....。」
「ああ、終戦後に一部アカウントが誤BANされた事件もある嫌な戦争だよ。そのときにその親子も誤BANされた。まあ、ここまでなら今のアカデミアたちが解除動作をしてくれるんだが、問題はここからだった。」
「.....確か列車事故の原因、ATSの誤作動だったよね?」
「ああ、フェルミの言うとおりだが、ここにも誤BANが関わってくるのさ。当時そのATSを制御していたシステムが間違って誤BANされてね、それでヴェーダとの管理を受け付けなくなったシステムは故障し誤作動、あの事故が起きてしまったってわけさ。」
「.....じゃあセシリアの親子が亡くなったのって....!!」
「....まあ僕達が原因になる、かな。」
あまりの事件の真相に全員が言葉を失う。セシリアに重い過去があった事自体を知らなかった千冬。自分たちが原因でセシリアにつらい思いをさせてしまったことを強く恨むクーロンたち。モニターで聞いていたアリスも自分たちがしでかした過ちに気づき涙を流していた。
「......ねぇクーロン、セシリアだけ解除しても良いんじゃないの?」
「今更ひっくり返せるわけ無いでしょ!!!.....ん?待てよ、確かセシリアってあのとき.....。」
そうクーロンはいい数時間前を思い出す。
〜『.....ウィン、ダー.....さん、....う....えな....んで...ね....。』〜
「.....ダーウィンちゃん、セシリアちゃんとアカウントシェアすれば?」
「ハァッ!?」
突然の提案にダーウィンがロープにぐるぐる巻きにされたままジタバタする、がフェルミの重みでまったく動けない。
「アカウントシェア?何だそれは。」
「あ、千冬さんはそういえばコイツのちょっとした特技を知らないんでしたね。ダーウィンはあちらの世界において【アカウントシェア】と言われる特殊な特技を持ってて、主にそれを使って移動を繰り返していました。というのも、」
「ぼくァ、元々コロンに幽閉されていたからね、当初は外に出るのも億劫で適合者にアカウントシェアしてついていっていたのさ。まあ要は体内に入り込むって感じかな。」
そう言うとダーウィンは頭をフェルミの腕に寄せると光り輝き消えた。ぐるぐる巻きにしていたロープはその姿を失いボトリと落ちる。
「あ、せっかく拘束してたのに。」
「あまりにも苦しくて仕方なかったんだよっ!.....全く、人のことも考えてくれァ.....。」
アカウントシェアを実際に見せたダーウィンは再びその姿を千冬たちに見せる。だが、その姿は先程とは少し異なっていた。
「あれ、EvS持ってきてたんだ。」
「本物の僕に託されたからね、いつでも持ってるさ。それに、これもね。」
そう言って一枚のチップのようなものを手渡したダーウィン。もちろんそれを二人は知っている。
「新しいEvSのチップ!?」
「ちょおっと違うかなァ。これは【EvSExtra】、僕達だけでなく一般の人にでも適応できる超画期的な機械さ。これはその第一号機。僕はこれをあいつに贈りたいと思う。」
「.....ほう?変なものならただではおかないぞ。」
千冬が目を光らせるがそれよりも早くフェルミたちが声を荒らげていた。
「.....わざわざそうする必要なんてあるの?今やイギリスはどこからも隔離された存在。いつか滅びゆく国なのになんで手助けるの?」
「.....逆に言えば、セシリアをこちら側に取り込むチャンスでもある、ということさ。」
「....?」
「僕達にはISの知識は殆どない、それにディザスターたちもISの中に消えてしまった以上知識がある人間が必要不可欠。それを引き入れるまたとないチャンスじゃァないか。」
「.......まさかセシリアのISを通して探知するとかそういうことじゃないでしょうね?」
クーロンがなにか予測できたのかダーウィンにそう問うとダーウィンは満面の笑みで首を上下に降った。フェルミはもう一回拘束した。
「私達の問題に彼女まで巻き込むことはないでしょう!?」
「でもアイツのせいで二人の機体には余剰スペースが無いんだよ!!」
「......あーーー。」
言われて見ればそのとおりである。二人の機体はその性質上スパコン並みの処理速度を誇る代わりに拡張領域ですらパンパンなのだ。キャロルのクーロン達を思う気持ちが逆に今回は仇となったのだ。
「.....アリス、キャロルを呼んでくれない?」
『.....別に構わないけど何を考えてるの?』
「.....確か私達の機体を作ってたときに何個か没になった射撃武器があったじゃない?あれを送るように伝えてもらえる?」
「.....クーロンちゃん、もしやそれって〜?」
『.....甘くなったね。』
「ダーウィン、ちゃんと最後まで責任取りなさいよ。」
「.....わかってるさ。」
「....ということで先生、明日セシリアをここに呼んでください。私達はこいつを天井に吊るしておくんで。」
「ちょっと対応が甘くなったらこれだよ!!ほんとに容赦ないねクーロンァ!」
一旦の話の決着がついたことでその日はお開きとなった。ダーウィンはこのまま暫定的にここに泊まることになりその日はフェルミとシェアして寝た。
次の日。
「と、言うわけで織斑、お前が代表だ。」
「なんで!?」
「クーロン達は亜のまま進めば怪我をさせかねないということで失格。イギリスはネットワーク環境が全途絶したことによる国家崩壊が起こりセシリアは代表候補生の任を解かれることになった。それにより繰り上げでお前となった。」
「ちょっと待って下さい!?任を解かれたってそんな.....。」
セシリアが驚きのあまり席を立つ。その顔は焦りに焦っているようだ。
「ああ、お前が負けた時点でイギリスの全IPがALICEの権限によりBANされ国家は崩壊した。それによりその肩書も意味をなさなくなった、ということだ。」
「......そんな。結局、私は.....!!」
「....ついでに言っておく。今日の放課後に職員室に来い。見せておくものがある。」
「.....?」
セシリアは千冬から告げられたその謎に頭をフル回転させながら一日を過ごすこととなる。一方で一夏はその重責に倒れ伏し案の定拳骨を食らった。
そして放課後、
「.....織斑先生、来ましたわ。見せたいものとは....?」
「付いてこい、後々わかる。」
そう言い職員室を出て寮の方へ向かい始めた。セシリアもそれについていく。数分歩いただろうか。セシリアが住まう階層じゃないところに連れてこられた時点でだいぶ怪しいのだが8874の寮番号で千冬はその足を止め扉をノックした。
「私だ。」
「良いですよー!」
千冬は扉を開けて中に入っていく。セシリアもそれに釣られるように部屋の中に入っていった。入って3秒、セシリアは面子に驚くことになる。
「.....う、ウィンさん!?!?!?」
「.....ヤ、ヤア....グェェ。」
そこには天井照明からぐるぐる巻きにされて吊るし上げられていたウィンと、
「やっと来たんだね〜、【ただの】セシリアさん?」
そこにはパーカーを外したフェルミの姿があった。
屋上
夜に誰もいないはずの屋上。そこにはクーロンともうひとりの彼女がいた。
「.....姉はどうしたの?」
「.....どこかにいるはず、だけど行く宛がない。」
「.....アリスちゃんに相談しなきゃ....。」
クーロンはまたもや胃を炒めることになるのである。
To be continued......
最後の少女は誰でしょうかねぇ。