手にした竜騎士と破滅が気難しい   作:アマゾンズ

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引退した身なのにやり直しとか辛い。


第1話

一人の青年がショップからホクホク顔で出てくる。その手にはビニール袋がありカードゲームのストラクチャーデッキと呼ばれる物がその中に三箱あった。

 

「まさか好きなカテゴリーが引退してから強化されるなんてなぁ」

 

彼は遊戯王が好きで漫画作品やアニメなども観れるときに観ていた。OCGと呼ばれるカードゲームもプレイしていた。だが、ある日を境にプレイヤーとしては引退してしまった。

 

その理由は「ついて行けない」というものであった。今現在、彼を取り巻く環境はあらゆる召喚方法が出ている。

 

チューナーと呼ばれるモンスターのレベルとその他の素材モンスターのレベルの合計と同じレベルを持つシンクロモンスターを特殊召喚するシンクロ召喚。

 

レベルが同じモンスターをオーバーレイ(重ねる)して、レベルの数値と同じランクを持つエクシーズモンスターを召喚するエクシーズ召喚。

 

ペンデュラムモンスターと呼ばれる、スケールの数値を持つモンスターをペンデュラムスケールという専用のエリアに魔法カードとして2枚セッティングすることにより、2枚のスケールの数値の間のレベルを持つモンスターを同時に特殊召喚出来るペンデュラム召喚。

 

そして最新の召喚方法として出てきたのが、モンスター複数体を素材にし、素材にした数と同じリンク数を持つモンスターをエクストラデッキから特殊召喚する事が出来るリンク召喚である。

 

彼自身、シンクロ召喚やエクシーズ召喚までは適応出来たが、展開の速さ、カードパワー、そして新たな召喚方法への適応など様々な要素が積み重なり、疲れてしまったのだ。

 

だが、僅かながらに種族や好きなカードへの情熱を捨て去る事が出来ずこうして度々カード買っては一人でデッキを作り、一人回しなどをしている。

 

帰宅と同時に箱からストラクチャーデッキを取り出し、自分の形になるように組み替えていく。

 

ストラクチャーデッキはそのままでも十分に遊べるが、三箱(約3000円以上)買う事で主軸となるカードを必要枚数分手に入れる事が出来るのだ。

 

そして、彼が今組み替えているのがストラクチャーデッキR-ドラグニティ・ドライブと呼ばれるものである。

 

『ストラクチャーデッキR-ドラグニティ・ドライブ!現在、好評発売中です!ドラグニティ好きなら買おう!(ステマ)』

 

「これは、こうで・・・こんな感じかな?すごい展開力だな・・・一人回ししてもこれだけの押し込みようだ。あ、儀式ルインも見なきゃ」

 

出来上がったドラグニティデッキをストレージボックスにしまうと儀式をメインにしたルインデッキと呼んだデッキを取り出した。

 

「ドラグニティが頼れる仲間なら、ルイン達は相棒だよな」

 

そう言いつつ、新しくなったルインとデミスのカードを見る。破滅の天使ルイン、破滅の美神ルイン。終焉の悪魔デミス、終焉の覇王デミスのカード。

 

元々、この二体が好きで使っていた事もあったがある時期に終焉の王デミスの方が世間的には強く評価されていた。後にオネストなどのカードにより光属性が見直され、ルインも戦えるようにはなったが、やはり強さは見受けられなかった。

 

「それが今ではこんなに強力になったんだ。儀式系だから扱いが難しいけど」

 

EXデッキも二つ作り、デッキもスリーブ等に入れてそれぞれに収納する。それと同時にカードが僅かに光った気がした。

 

「ん?」

 

レア度を示すホロ加工が光ったのだと思ったが、同時に光が眩しくなっていき意識を失っていった。

 

 

 

 

 

 

「い・・・ーーーい!きろって・・・・!遊来!起きろって!」

 

目覚めを促す声に目を開けるとそこには、ようやく起きたのかと言わんばかりの様子だが笑顔の青年がいた。年齢は15~16歳位だろうか?陽気で前向きな性格をしていそうな印象を受ける。

 

「今日は明後日の受験の為に調整を手伝ってくれる約束だろ?」

 

「へ?」

 

「だから、デュエルアカデミアを一緒に受験しようぜ!って言ってたじゃん!」

 

「え・・あ・・ああ、そうだっけ」

 

デュエルアカデミアと聞いて、彼はある事を思い出す。ここは恐らく遊戯王GXの世界だろう。何かの拍子に転生したか、次元を超えるといった漫画やアニメ、SF作品のような事が現実に起こってしまったのだ。

 

「(状況を整理したい・・・今、どんな状況なんだ?)」

 

『今、貴方の名は龍谷遊来。この世界では両親同士が仲の良い関係で此処、遊城十代の家に泊まり込みに来ている所だ。そして、共にデュエルアカデミアの受験の為にデッキを調整し合おうという話の流れのようだ。マスターは乗り気ではないようだが・・・』

 

「ああ、そうなんだ・・・え?」

 

『ん?』

 

「・・・・・・」

 

『・・・・・・』

 

誰かが現状を教えてくれて納得するが、その相手と目が合う。巨大な戦斧に似た槍を手にし、美しい銀髪の髪を持ち、その青い目は見る者全てを威圧しかねない、オーラを持っている。

 

「うわあああああああああああああ!!!??」

 

「ど、どうしたんだよ!?急に叫んで!」

 

「あ、あ・・・あれ!あれ!」

 

「?幽霊でも見てるのか?何も無いじゃないかよ」

 

「へ?」

 

十代の言葉に目を丸くする。自分が指を指している方向には何もない、だが確かに今そこに「破滅の美神ルイン」が薄い姿でこちらを見ているのだ。

 

『む・・・失念していた、マスターを驚かせてしまったか。先ずは我々が見える事を説明すべきだった!』

 

『しっかりしてくれよ?ルインの姐さんの方が説明上手なんだから』

 

揃って現れたのが「破滅の美神ルイン」と「ドラグニティアームズ・レヴァティン」の二体だった。彼、遊来は「なぁにこれぇ」と言いたげな様子で全員を見ている。コホンと咳払いをしたルインが美神から「破滅の女神ルイン」の姿となって遊来に話しかけた。

 

『会話するのは初めてですね。我がマスター、私はルイン・・・既に姿はご存知かと思いますが』

 

「え・・・あ、ああ」

 

『ドラグニティアームズの一人、レヴァティンだ。よろしく頼むよ!』

 

カードのイメージイラストのキャラクターから話しかけられ混乱してしまっていたが、GXの世界では有り得る事だというのを僅かに思い出す。

 

『カードの精霊の事を僅かに思い出したようですね。そう、私達は貴方が持っているカードの精霊です』

 

『こうして会話出来るのは嬉しいけど複雑だね。マスターはデュエルをやらないんだろ?』

 

「!!・・・ああ」

 

この世界ではデュエルは物事を決めるのに重要な役割を果たしている。プロリーグまであるとわずかに覚えている記憶にあった。デュエルをやらないという事は何も物事に対して意見すら言う資格もないのだ。

 

寧ろ遊来は自分の世界でのデュエルに疲れ切ってしまっていた。自分の世界では無限ループ、ワンターンキル、ソリティアと言われるものが流行る程たった1ターンの動きで勝利をもぎ取れてしまう環境であったからだ。新たな召喚方法も要因ではあるが一つの出来事でしかない。

 

特殊勝利に代表されるエクゾディアを1ターンで揃えられてしまう環境。そんなものをこの世界で披露したらどうなるか見てみたい気持ちもあるがそれを抑えた。今は精霊達の話を聞くことが先だからだ。

 

『マスター、私達を使ってデュエルに復帰して下さいませんか?』

 

「けど、俺のデッキはこの世界には無い召喚方法があるから・・・」

 

『それに関しては心配は無用ですよ』

 

「へ?」

 

すると突然、家の電話が鳴り響いた。十代が電話に気づいて扉に視線を向ける。

 

「あ、電話だ。俺ちょっと出てくる」

 

「わかったよ」

 

十代が電話をとると電話の相手が龍谷遊来は居るかと聞いてくる。電話の相手はインダストリアル・イリュージョン社の社員であり、十代は非常に驚いた様子で遊来を呼んだ。

 

「インダストリアル・イリュージョン社からだって・・さ」

 

「マジか・・・もしもし?」

 

「君が龍谷遊来くんかな?」

 

「はい」

 

「我が社の会長が君に会いたいそうだ。明日、時間を取れないかな?学校の方には会社から連絡しておこう。迎えもこちらで用意するとの事だ」

 

「分かりました」

 

要件だけを伝えられると電話が切れた。十代はニコニコしながらこちらに話しかけてくる。

 

「一体何だったんだ?」

 

「ん、明日会社の方に来てくれってさ」

 

「ええ~良いなぁ」

 

「遊びに行く訳じゃないからな?」

 

「分かってるって!」

 

そう言いながら、遊来は十代のデッキと自分のデッキを見ながら受験に備えての調整を行う事にした。

 

「やっぱりこのカードを入れるべきだろ?十代はHeroメインなんだし」

 

「えー、これを入れたら回転悪くならないか?」

 

「鬼ドローしまくる癖に何を言ってんだよ」

 

ある程度の調整を済ませると夕食とお風呂を頂き、就寝した。泊まり込みはお互いの両親が快諾しているようなので大丈夫だったらしい。

 

翌日、朝の8時半位に高級車が迎えに来てインダストリアル・イリュージョン社へと向かう事になった。そこで、名誉会長であるペガサス会長と出会った。

 

この人はこの世界の大企業である海馬コーポレーションを買収しようとしていた。だが、それは若くして亡くなられた恋人の姿をもう一度見たいという思いからだった。そんな人が俺にコンタクトを取ってくるのが非常に珍しい。

 

「OH、ユーが遊来ボーイデスね?」

 

「はい、そうです」

 

今この場は二人きりだ。ペガサスさんも砕けた様子で話してはいるが目は真剣そのものだ。

 

「ユーは今の姿の変化に気づいていまセンね?」

 

「え?」

 

そう言ってペガサスさんは俺に全身を写す鏡を見せた。そこには20代を超えていた姿ではなく、10代半ば、つまりは十代と同じ年齢の自分が立っていた。

 

「(俺、若返ってる!?)」

 

「そしてユーが持つカード、それが引き金となってこの世界に来てしまったのかもしれまセン」

 

「・・・もしかしてこれですか?」

 

白い枠があるカードをペガサスさんに見せる。それはシンクロ召喚によって呼ばれるカード達だ。

 

「未知のカードを持つユーに関しての知識はワタシは持っていマース!恐らくはワタシの過去の出来事に関連しているのデショウ!ユーは転生、もしくは次元を超えてやって来た・・・違いマスか?」

 

「!ええ・・・その通りです。それで、俺に何をさせようと?シンクロ召喚に関してですか?」

 

「イエス!ユーの持つシンクロモンスターカードを一枚、研究用に預からせて欲しいのデース!先ほど聞いたシンクロ召喚、この召喚方法を是非とも広めたいのデース!」

 

「それは構いませんけど・・・」

 

「それとユーに特別仕様のデュエルディスクを提供しマース。シンクロ召喚のデータを組み入れて渡しマスので明日までには間に合わせまマース!」

 

俺はデッキから「ドラグニティナイト―トライデント」のカードをペガサスさんに渡した。

 

「お願いします」

 

「忘れる所デシタ、遊来ボーイ。ユーにも手伝ってもらいたい事がありマース!」

 

「俺に出来る事であれば」

 

そう言って今日一日、シンクロ召喚に対応する為のデータ作りを手伝う事になった。海馬コーポレーションへの協力要請も忘れずに連絡し、シンクロ召喚のモーション、モンスター画像などなど、あらゆる物をテストと運用、バグの修正、実演テストを数十回以上こなした結果、シンクロ召喚のβ版のデータが出来上がったのだった。




気まぐれの遊戯王の物語です。

主人公はデュエル熱がまだまだ低い状態です。

ドラグニティと儀式ルインですのでGXでは未知となりますがリンクが無いので騒ぐほどではありません。

「不知火」と「魔妖」は登場させるべきか?

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