遊来、羨望と嫉妬をする。
隼人の親父さんが来訪する当日、隼人は最後までデッキの回し方を自らやっていた。教えられていても自分で理解したいと初めて思ったからだ。十代、翔も起きており、わざわざオベリスクブルーから遊来も来てくれている。
「皆が協力してくれたこのデッキ、俺の一生の宝物なんだな」
「すげえよ、隼人のデッキ。俺のE・HEROも負かしたデッキだもんな!」
「うん、本当に強いよ!」
十代と翔も今の隼人の『コアラの仲間達デッキ』と名付けられた隼人のデッキと対戦して黒星を刻まれていた。隼人自身のプレイングも遊来からのアドバイスで少しずつ改善されており、ラーイエローの生徒ならば互角以上に戦えるレベルになっていた。
このデッキは種族統一デッキとなっており、隼人がどうしても抜きたくないと言った『デス・コアラ』のカードに対して遊来が一言。
『「それならいっそ、種族を統一させればいいんじゃないか?少し待っててくれ!」』
そう言って、自分の自室へ戻り自分が持っているカードの中から獣族だけを厳選して持ってきたのだ。魔法カードや罠カードなどは基本に忠実にバランスよく配置し、奇襲もかけられるようにしてある。
「このカード、使い方がやっぱり難しんだな・・・」
「ああ『森の番人グリーン・バブーン』のカードか」
これは、隼人がデッキに入れるのを渋っていたのを、遊来が奇襲戦法の一つとして入れるのを説得したものだった。隼人としてはこんな凶暴そうな奴は嫌だと言っていたが遊来がこのカードは名前の通り、森の番人であり森に生きる動植物達を傷つけられたら許さない奴なんだと説得した。コアラが倒されれば一気に出てくる。頼もしい味方なんだと。
「そのカードの使い方のアドバイスだ。ライフポイントが減るのを恐れちゃダメだぞ?削られるのと支払うのじゃ全然違うからな」
「ああ、わかったんだな!」
そして、隼人の親父さんが校長室にいると聞いて全員で向かった、本来なら仲の良い十代と翔だけが来れるのだがオベリスクブルー所属の遊来がきたことに校長である鮫島は驚いていたのだが、遊来は友達だからという理由を最もらしく伝えて納得してもらった。
オベリスクブルーの生徒がオシリスレッドの生徒と仲良くするのを許さなかったのがクロノス教頭先生だったのだが、遊来はタイタンの事をチラつかせて黙らせた。
◇
その後、隼人の親父さん、見届け人の大徳寺先生、友達の十代、翔、遊来が簡易な道場で隼人のデュエルを見ようと来ている。
「行くぞ!隼人!」
「デュエル!!」
「いざ、デュエル!!」
前田熊蔵:4000
前田隼人:4000
「先行は俺なんだな!!ドロー!俺は・・・モンスターを1体セット状態で出して、更に魔法カード!『迷える仔羊』を発動!!」
「む!?」
「え?」
「お?」
「ふふ、俺が教えた基本の使い方をいきなり披露か」
父親の熊蔵、二人の友人である翔と十代の三人だけは隼人のプレイングに驚き、遊来だけは口元に薄く笑みを浮かべていた。
「『迷える仔羊』の効果で、俺は「仔羊トークン」(獣族・地・星1・攻/守0)を2体、守備表示で場に特殊召喚するんだな!!」
先攻で手札消費は二枚、それに加えていきなり三体のモンスター展開、コレには大徳寺先生も花丸をあげたいですニャと言わせてしまうほどであった。
「カードを一枚セットして、ターンエンド」
隼人の頭の中に遊来のデュエルに関するアドバイスが蘇ってくる。先程見せた効果的なカードの使い方を教えてくれた会話、手札を公開した状態で行う仮想デュエルでの事を。
「俺は『デス・コアラ』を攻撃表示で召喚なんだな!」
「ストーーーーップ!隼人、『デス・コアラ』はリバース効果モンスターだぞ!?セット状態で出さなきゃせっかくのバーンダメージが与えられないじゃないか!」
「う・・・」
「姿を見たい気持ちもわかるけど、そこはグッと堪えて・・・!ん?この手札で先攻なら『デス・コアラ』をセットして『迷える仔羊』を使えば理想的な展開だよ」
「?なんでなんだな?」
「こうするとリバース効果モンスターだって事は十中八九バレる。だけどモンスターを三体、展開出来るから展開が得意なデッキじゃない限り必ず壁は残る。同時に2体残れば上級モンスターを呼ぶ事も出来る。それとこうやって使える速攻魔法や罠カードが1枚でもあれば必ずセットする事、分かったかい?」
「分かった、覚えるまでもう一回頼むんだな!」
「よしきた!」
◇
「父ちゃんのターンなんだな」
「分かっておる!ドロー!」
熊蔵はほんの少し、息子に対して舐めていた事を恥じた。先攻での理想的な防御展開、更には誘い込みも上手くなっている。これは後の先を取らんばかりと言える状況だ。
「『酔いどれタイガー』を攻撃表示で召喚!そして、仔羊トークンへ攻撃!『泥酔パンチ!』」
酔っ払った親父のような虎が仔羊トークンを猫パンチで破壊する。だが、守備表示の為、ライフポイントに影響はない。
「うううっ!」
「落ち着いていけ、隼人」
「う、うん!わかってるんだな」
「!(あの少年が隼人を成長させた張本人に間違いなさそうだな)メインフェイズ2『治療の神 ディアン・ケト』を2枚発動し、おいはこれでターンエンド」
前田熊蔵:LP6000
熊蔵は遊来に視線を向け、真剣な表情でこちらを見ているがその表情は息子を成長させてくれた事に感謝する父親の顔でもあった。
「俺のターン、ドロー!」
「俺は『デス・コアラ』を反転召喚!リバース効果によって相手の手札1枚につき400ポイント、ダメージを相手ライフに与えるんだな!父ちゃんの手札は3枚、よって1200ポイントのダメージを受けてもらうんだな!」
「ぬううううう!!?」
前田熊蔵:LP4800
「出た!隼人君のコアラバーンだ!」
「ああ、あれは厄介だぜ!」
「父ちゃん、しっかり聞いて欲しいんだな。俺・・・夢が出来たんだな!」
「夢?」
「そうだ、でっかい夢だ。同時に俺は思い知った、デュエリストにはなれないんだな。そもそも、十代や遊来と違って俺には合ってないんだな。それなら別の道でデュエルモンスターズに関わっていきたい!俺はカードデザイナーになりたいんだな!!!!」
「!!」
「父ちゃん、俺を笑うか?何を馬鹿な事を・・!って。お前には無謀すぎるって!」
「む・・ぅ」
隼人の真剣な剣幕に熊蔵は言葉を詰まらせる。息子の成長は嬉しいが親としては安定した道に進ませてやりたいという思いもある。カードデザイナーという職業に対しての偏見は多少なりともある。華やか仕事の裏には後ろめたいことになる出来事もある。それをして欲しくないという思いからだ。
「だけど俺はまだ、この学園に居たい。だから、このデュエルで俺の夢を父ちゃんにぶつけるんだな!俺は『デス・コアラ』と仔羊トークンを生贄にして『ビッグ・コアラ』を召喚!!」
『ビッグ・コアラ』通常/星7/地属性/獣族/攻撃力2700/守備力2000{とても巨大なデス・コアラの一種。おとなしい性格だが、非常に強力なパワーを持っているため恐れられている]
「更に手札から永続魔法『一族の結束』を発動!」
「なんとぉ!?」
「ほほぅ・・・?」
「『一族の結束』!?隼人の奴、そんなカードをデッキに入れてたのか!!」
「どういう事ッスか!?アニキ」
「翔、俺が十代の代わりに説明しよう。『一族の結束』は自分の墓地の全てのモンスターの元々の種族が同じ場合、自分のフィールドのその種族のモンスターの攻撃力は800アップするカードだ。種族を統一させたあのデッキには必須になったって訳さ」
「入れるように勧めたの遊来だろ?」
「さぁ、て・・・ね」
「俺の墓地には獣族の『デス・コアラ』だけがいる。そして、俺のモンスターは全て獣族で構成されているんだな!よって『一族の結束』の効果により俺の場の獣族『ビッグ・コアラ』の攻撃力は800ポイントアップするんだな!!」
『ビッグ・コアラ』攻撃力2700→攻撃力3500
「攻撃力3500!?」
「うーん、素晴らしい動き方ですニャ!」
「これが、俺に新しいデッキの扱い方を教えてくれた遊来への恩返しなんだな!『ビッグ・コアラ』で『酔いどれタイガー』を攻撃!必殺!!『ハイパワー・ユーカリ・ボム』!!」
『ビッグ・コアラ』に掴まれ、地面に叩きつけられた『酔いどれタイガー』が砕け散り、その余波が熊蔵へと襲いかかってくる。
「ぬおおお!?」
前田熊蔵:3100
「俺はこれで、ターン終了なんだな!」
「まだまだぁ!おいのターン!『酔いどれエンジェル』を召喚!」
今度は酔っ払っている天使の男がフラフラになりながら現れた。隼人は何か『酔いどれエンジェル』に対して感じているものがあった。
「(隼人、もしかして精霊の声が聞こえてるのか?)」
「さらに永続魔法『お銚子一本』!更に永続魔法『ちゃぶ台返し』!そして『ちゃぶ台返し』の効果発動!!」
巨大なちゃぶ台が現れ、『酔いどれエンジェル』はお銚子に気を取られたままだ。熊蔵はちゃぶ台に手をかけるとかつての頑固親父ののように巨大なちゃぶ台を思いっきりひっくり返してしまい、お銚子と『ビッグ・コアラ』が破壊されてしまった。
「どぅおりやああやああああああ!!」
「うああああ!」
熊蔵の場に残っているのは『酔いどれエンジェル』と『ちゃぶ台返し』隼人の場には『一族の結束』と伏せカードが一枚だ。
「うはははは!見たか!?永続魔法ちゃぶ台返し』は自分のフィールド上に「酔いどれ」と名のついたモンスターが表側表示で存在する場合、自分フィールド上に存在するこのカード以外のカードを全て破壊する事ができるのだ。この効果によって破壊し墓地へ送ったカードの枚数分だけ、相手フィールド上のカードを選択して破壊する。この効果を使用する場合、このターン自分は通常召喚をする事ができないがな。今回は『ビッグ・コアラ』を破壊したが次はその厄介な『一族の結束』を頂くでごわす!」
「父ちゃんは都合が悪くなるといつもそうなんだな!」
「うははは!家長の思い通りにならない事など何もないのだ!」
場には『酔いどれエンジェル』がお銚子を探して愚痴っている。
「あれ?なんで『酔いどれエンジェル』が場に残ってるの!?『ちゃぶ台返し』で破壊されたんじゃあ!?」
「ふっ、甘いぞ!隼人!!『酔いどれエンジェル』のモンスター効果を教えてやろう。それは[『ちゃぶ台返し』の効果では破壊されない]だ!」
「な、何ィ!?」
「更に永続魔法『お銚子一本』が破壊され、墓地に送られた事により魔法効果が発動!お前は500ポイントのダメージを受ける!」
酒気のような煙が隼人へ襲い掛かり、隼人は思わず鼻を押さえる。
「うううっ!酒臭い!!」
前田隼人:LP3500
「隼人!落ち着いて自分を見つめ直せ!」
「っ!?遊来・・・?すぅ・・・ふぅ・・・!むんっ!」
遊来の言葉に隼人は深呼吸し手札を見た。自分は今『ちゃぶ台返し』の効果によってモンスターを破壊され失った。改めて手札を見ると其処には今朝、説明されたカードがあった。
「父ちゃん、薩摩示現流は一撃必殺こそが至高だよね・・・?」
「無論だ。何が言いたい?」
「ならば俺は[隙を生じぬ二段構え]を見せるんだな!俺のフィールドに表側表示で召喚されていた『ビッグ・コアラ』が相手のカードの効果によって破壊された事により、ライフポイントを1000ポイント支払ってコイツを特殊召喚するんだな!!現れろ!森を守護する獣人!『森の番人グリーン・バブーン』を特殊召喚!!」
前田隼人:LP2500
『森の番人グリーン・バブーン』効果/星7/地属性/獣族/攻撃力2600/守備力1800
唸り声と共に巨大な棍棒を持った二足歩行する獣人が隼人の場に現れた。
「なぁ・・・何ィィィ!?」
「隼人君の場に・・・レベル7のモンスターが生贄無しで現れた!?」
「それも、ライフコストだけで召喚するなんてすっげえ!」
「とうとう使いこなしたのか、すごいぜ隼人!」
「おおっ!?例え一太刀目を外されても、すぐに二太刀目へと移る。正に[隙を生じぬ二段構え]だニャー!!」
隼人の追撃とも言える『森の番人グリーン・バブーン』の召喚に全員が驚愕した。コレには教師をしている大徳寺先生も思わず拍手してしまい、十代達三人も驚き続けている。
「ば、バカな!?二段構えだと!」
「父ちゃん、忘れてないよな?俺の場には『一族の結束』がある!これにより『森の番人グリーン・バブーン』の攻撃力は800ポイントアップしているんだな!」
『森の番人グリーン・バブーン』攻撃力2600→3400
「む・・・むむむ!『酔いどれエンジェル』を守備表示に変更してターンエンド!」
「エンドフェイズ時に速攻魔法!『サイクロン』を発動!!このカードは相手の場にある魔法・罠ゾーンのカードを一枚破壊できる!俺は『ちゃぶ台返し』を破壊するんだな!」
「なぁっ!?」
「おおおっ!?」
「上手いぜ隼人!」
「エンドサイクか!この状況だと強い!それに狙いも上手い!」
「エンドサイク?」
「[エンドフェイズに《サイクロン》を発動する事]を略した言葉さ。本来なら[速攻魔法・罠カードを相手ターンに発動するためにはセットした次のターンまで待つ必要がある]ってルールだけど、隼人は最初の1ターン目に伏せておいたカードが速攻魔法である『サイクロン』だった訳だ。だから相手のターンで発動可能だったのさ」
翔の疑問に遊来が答えるが翔は思い出したようにポンと手を叩き、仮想デュエルを思い出した様子だった。
「改めて俺のターン、ドロー!」
油断はしない。勝てると思った時こそが相手に隙を与えてしまうと、デュエルの中で友人達に教えてもらったのだから。
「俺は『吸血コアラ』を召喚するんだな!」
『吸血コアラ』効果/星4/地属性/獣族/攻撃力1800/守備力1500
「『一族の結束』の効果により『吸血コアラ』も攻撃力が800ポイントアップするんだな!」
『吸血コアラ』攻撃力1800→攻撃力2600
「ぬ・・・ううう!」
「『吸血コアラ』で『酔いどれエンジェル』を攻撃!」
額にコウモリのマークを刻んだコアラは『酔いどれエンジェル』に飛びかかるとその爪で引っかき、倒してしまった。
「これが俺の、夢への想いだーーーー!『森の番人グリーン・バブーン』でダイレクトアタック!『ハンマークラブ・デス』!チェストォォーーー!!」
「ぬおおおおお!?」
前田熊蔵:LP0
「か、勝った・・・?父ちゃんにデュエルで勝ったんだんだな・・・」
緊張が途切れたように隼人はその場で脱力して座り込んでしまった。父親に勝利した、男に生まれた身としてこれ程までの達成感はなかっただろう。
「隼人・・・」
「父ちゃん」
隼人は立ち上がって真っ直ぐに父である熊蔵の目を見つめる。その目は以前とは違って決意に満ちた「男」の目であった。それを見届け、熊蔵は背を向けて道場を出て行こうとする。
「父ちゃん!」
「隼人、友達を大切にするべし。忘れるんじゃなか」
「うん!」
「それと、辛くなったらいつでも帰って来い。なるべくならお前が酒を飲める年齢になった時が良か」
「ありがとう、俺頑張るんだな!」
「ん、精進せい!」
◇
その後、熊蔵は帰る船に乗ろうとする前に遊来を呼び出していた。どうやら隼人の件で話があるような様子だ。
「君が隼人に火をつけてくれた少年か?」
「火を付けたかは分かりませんけど、新しくした隼人のデッキの調整や回し方を教えたのは確かに俺です」
「あいがともさげもす、これで隼人も立派な男になった。あれほどごっだましくなるとは思わんかった!」
いきなり頭を下げられ、遊来は戸惑ってしまう。だが、不器用なだけで良いお父さんなんだと思う。
「これからも、隼人の友達でいてやってくれ」
「はい」
そう言い残し熊蔵は船に乗って帰っていった。それを見届けた遊来は羨ましくあり、隼人に嫉妬していた。
「がむしゃらに夢を追いかけられる決意・・・か。隼人、俺はお前が羨ましいよ・・・」
そして、その羨望の思いが自分の中に渦巻く「闇」が増幅している事に遊来は気づくことなく、精霊達だけがその予感を感じているのであった。
ここまで引っ張ってんだから十代と遊来、戦うんだろ?と思いの皆さん・・・・。
当たりです。二人は戦います。遊びではなく異世界編に近いデュエルです。
ですが、まだ戦う場面にはなりません。遊来の闇が暴走した時、戦います。
セブンスターズとの戦いで光の境地の欠片(とあるシンクロモンスター)が手に入ります。
隼人を勝たせた理由は「親父を超えた時どうなるのか?」と思ったためです。
それに、隼人のデッキは獣族統一型にしたら絶対強いと思ったので。
コアラバーン・・・うっ・・・・頭が・・・
「不知火」と「魔妖」は登場させるべきか?
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登場させる
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登場させない