手にした竜騎士と破滅が気難しい   作:アマゾンズ

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再び夢から始まる

ガチガチにキレた遊来、闇深くカード狩りの臨時教師にブラックラ○ーン並みの口の悪さを出してしまう。


第14話

遊来はまた、夢の中にいた。自分には覚えがないのに毎回夢を見させられる。まるで、何かを思い出せと言わんばかりだ。

 

以前の戦っている場面ではなく、どこかの城に居るようで蒼い髪を靡かせながら、こちらへ近づいて来る人物がいた。その人物に関して自分には全く分からない。胸元が膨らんでいる事から女性である事は間違いない。

 

『アルタイス、遠路遥々来てくれた事に感謝するわ。こうして二人きりで会っていると私の兄がうるさいでしょうけど』

 

『いえ、私は貴女を護る盾であり剣でもあります故・・・貴女様に呼ばれたのなら地の果て、天の果てであっても馳せ参じましょう』

 

アルタイスと呼びかけられ、自分ではない自分が騎士の礼節を取った。その姿にクスクスと微笑みながら声をかけてくれる。

 

『ウフフ、本当に生真面目ね。私の前では素の貴方を出しても構わないわよ?』

 

『っ・・・それでも誓いは破れませぬ』

 

分かる・・・。この気持ちだけは理解ができる。これは片想いだ、目の前の女性に対して恋慕を抱きながらもその気持ちを伝えずに胸の中だけに閉まっている。

 

『今日は貴方に渡したい物があって呼んだのよ』

 

『渡したい物・・ですか?』

 

『そうよ、貴方にこれを贈るわ。それを使いこなせた時、貴方を近衛騎士として迎えたいの』

 

何かを手渡されたようだが夢の中ではよく見る事が出来ないもので、確認する事が出来ない。

 

『!ありがとうございます。■■■様』

 

風景が霞んでいく、どうやら肉体が目覚めるらしい。その覚醒に身を任せていき、起きる事にした。

 

 

 

 

 

「ん・・・またあの夢か。あれ?」

 

遊来は自分の手に何かを握っている感触があった。思わず右手を近づけるとその中にはデッキがあったのだ。デッキを握ったまま寝るなんて馬鹿な事をしたものだと苦笑する。

 

「俺、何のデッキを握って寝てたんだ?」

 

青色のスリーブにカードは収められており何かと見てみるとそのカード名に遊来は驚きの声を上げた。

 

「これ『氷結界』じゃないか!俺『氷結界』なんて組んだ覚えはないぞ!?」

 

そう、そのデッキは『氷結界』のデッキであった。『氷結界』は相手の行動を妨害するタイプのデッキであり、遊来の愛用するデッキとは真逆のタイプのデッキである。

 

「水属性・・・氷・・・ううっ!?頭が痛い!」

 

原因不明の頭痛が起こる。体調が悪いなんてことはない、風邪は引かないように注意しているし、休むべき時は休んでいる。なのに何だ?この頭痛は?意味が分からない。

 

『マスター!?』

 

『おい、マスター!?』

 

『大丈夫!?』

 

「あ、ああ・・・大丈夫。おっかしいなぁ・・・風邪なんて引いた覚えはないんだけど」

 

ルイン、レヴァティン、妖怪少女達に心配されてしまう。だが、頭痛はすぐに収まった為に身支度を整える。あれから数日経って、このデュエルアカデミアに臨時教師が来るらしい。授業を受けた後、購買に寄って飲み物でも買おうした時、気弱そうな一人のオベリスクブルーの女子生徒が販売機の部屋で泣いていた。

 

「うう・・・ううう!」

 

「?どうしたんだ?何故こんな所で泣いてるんだ?」

 

「あ、竜騎士様!うわーん!」

 

いきなり胸元に飛び込まれ、しどろもどろになり慌ててしまう遊来。とにかく彼女を落ち着かせようと話を聞きつつ、紅茶を自販機で購入し彼女に渡した。彼女の名前は宇佐美彰子、前の世界でタッグフォースにおける恐竜デッキの使い手だ。大人しそうに見えてパワフルな戦法を得意とするのは驚きだった。

 

「それで、一体何があったんだ?」

 

「はい、実は・・・」

 

話を聞くと臨時教師として来た龍牙という教師にデュエルを挑まれたらしい。実施授業という形だったのだが負けてしまい個人授業の報酬という形で『暗黒恐獣』のカードを取り上げられてしまったそうだ。

 

「君からレアカードを取り上げた!?」

 

「はい、それにデュエルディスクもおかしかったんです」

 

「デュエルディスクがおかしかった?」

 

「魔法を発動させようとしたら出来なかったんです・・・出来ていたら負ける事はなかったのですが」

 

遊来はおかしいと感じた。デュエルディスクの開発元は海馬コーポレーション、ゲームに関して一切妥協を許さない。同時にあの海馬瀬人の設計であり、ほんの僅かなバグさえも許さない人だ。その人が設計したデュエルディスクにバグは無いはずだ。僅かな期間とはいえシンクロ召喚の為のモーション開発を手伝っていた遊来だからこそ分かるのだ。

 

「宇佐美さん、その龍牙っていう先生に何か特徴はなかったかな?些細な事でも構わないから」

 

「うーん・・・あっ!そういえば、あの人は左手に変な指輪をしていました。アクセサリーにしては変な形をしていて」

 

「(指輪か・・・何かありそうだな)それじゃ、俺は行くよ。もし戦う事になったら必ずカードは取り返すから」

 

「はい、お願いします」

 

そういって遊来は購買を出て行った。寮へ戻ると同時に男子生徒のグループでも落ち込んでいる者がかなりいた。話を聞こうと話しかけてみると、やはり龍牙に自分の主軸でもあり主力でもあるレアカードを取り上げられたという話だった。強力なレアカードばかり狙われており、特にラーイエローとオベリスクブルーの生徒が中心に狙われているそうだ。

 

「なぁ・・・その龍牙っていう人が使っていたデッキって分かるか?」

 

「あの野郎が使っていたデッキか?確か、『恐竜族』だったはずだぜ?オマケにカイザーとは戦わないでいやがんだ!!」

 

「なるほど・・・・それにデッキは恐竜族か」

 

「遊来!!」

 

「ん?」

 

同級生に当たる一人の男子生徒が遊来の両肩を掴んできた。その目には涙が滲んでおり、悔しさが感じ取れる。

 

「癪だけど、あの野郎に勝てるのはお前か遊城十代だけだ!頼む、あの野郎から俺のカードを取り返してくれ!!」

 

「俺からも頼む!」

 

「竜騎士!頼むよ!」

 

「竜騎士様、お願いします!」

 

オベリスクブルーの男子と女子生徒に頼み込まれてしまう遊来だが、考えさせてくれとお願いした。臆病風に吹かれた訳ではなく、証拠となる事やデッキの内容なども把握しておきたいと情報に関する優位性を正直に話したのだ。

 

オベリスクブルーから去ると遊来はオシリスレッドへと向かう事にした。やはり話題はカードを取り上げられたという事らしい。オシリスレッドであってもカードの内容をよく理解すれば強力になる事が間違いなしのカードを狙われ、強引にデュエルで取り上げられたそうだ。そんな話を聞いていると十代、翔、隼人の三人がやってきた。

 

「遊来!」

 

「十代!それに翔と隼人も!」

 

「遊来くんはまだデュエルを挑まれてないみたいッスね?」

 

「みんな、龍牙っていう先生にカードを取り上げられているって聞いているんだな!特に強力なものばかりだって」

 

「ああ、俺もオベリスクブルーの同級生達から聞いたよ。恐らく次の狙いは俺か十代・・・だけど俺の可能性が最も高いな」

 

「なんでだよ?」

 

「アニキ、忘れたんッスか?遊来くんはシンクロ召喚の宣伝とテスター役でもあって更には『ドラグニティ』を持っているんッスよ?」

 

「あ、そういえばそうだった」

 

「それにシンクロ召喚で出せるモンスターは今の所、希少価値が高いんだな。それに『ドラグニティ』も格好の標的なんだな」

 

「許せねえよな、生徒からカードを取り上げるなんて!」

 

十代も十代なりに怒りを表に出している。だが、遊来だけは竜牙のデッキの考察をしていた。恐竜族という情報だけでは完全に中身を把握しきれない。それに彼がカードを奪っているという証拠となる発言も必要だ。それと同時に、彼がデュエル中にしているという指輪も気になる。

 

「(・・・・次の授業で標的になりそうな奴に録音装置を持たせておこう)ごめん、三人とも!用事が出来たからオベリスクブルーに戻るよ!」

 

「あ、おい!遊来!?」

 

「行っちゃった・・・」

 

遊来は次のターゲットになりうるオベリスクブルーの生徒達を説得し録音装置を渡した。無論、この記録装置は学園の備品庫から無断借用したものだ。生徒のカードが取り上げられているという証拠を記録したともなれば多少は目を瞑ってくれるだろう。

 

そして翌日、予想通り一人のオベリスクブルーの女子生徒が標的にされた。その女子生徒は目を赤くしていて録音装置を受け取り、自室にあるノートパソコンに接続し、ヘッドフォンを付けて音声を聞く。

 

「『装備魔法『おろかな埋葬』を発動!あれ?なんで!?どうして発動できないの!?』」

 

「『おやおや、整備不良ですか?それではターン終了で構いませんね?』」

 

「『ぐっ・・・ターンエンド、です』」

 

「『私のターン!2体のモンスターを生贄に、現れろ!『暗黒恐獣』!』」

 

「『『暗黒恐獣』!?それはウサミンが持っていたカードよ!どうしてそれを貴方が持っているのよ!?』」

 

「『個人授業の報酬として頂いたのですよ、私のような教師から学べたことを光栄に思いなさい!『暗黒恐獣』でダイレクトアタック!』」

 

「『きゃあああああああ!!!!!』」

 

ライフポイントがゼロになった事を知らせる音を聞いた後、こちらへ近づいて来る靴音が聞こえる。それと同時にとんでもない事を口に出した。

 

「『さぁ、個人授業の報酬として貴女のレアカードである『暗黒界の龍神 グラファ』は頂きますよ』」

 

「『あ・・!か、返して!私のお父さんからアカデミアの入学祝いに貰った大切なカードなのよ!』」

 

「『うるさい、黙れ!敗者は黙って勝者の言うこと聞け!』」

 

パチンという音も拾えた。恐らくは竜牙がこの女子生徒に平手打ちをして暴行を働いたという事だろう。更には勝手に彼女のデッキをデュエルディスクから取り出し、デッキを見た後に目の前へ投げ捨てた音まで拾えている。

 

「『これでまた1つ、強いカードが手に入りましたね』」

 

「『あ・・・あああっ!私のデッキ!』」

 

「『授業は終了です。せいぜい、この経験を活かし精進しなさい。アーッハハハハ!』」

 

 

 

 

 

 

「ぜってえ、許さねぇ・・・!」

 

遊来はヘッドフォンを外し、怒りに燃えていた。遊来はカードを奪っている事に怒りを向けているのは当たり前だが、それ以上に親子間で大切な思い出のあるカードを奪った事が許せなかったのだ。

 

「必ず潰す!!泣いて喚こうが恨み言を言われようが!再起不能にしてやるッ!」

 

その目には怒りしかなかった。遊来は本来なら圧倒的に倒すべきデッキを使おうとしたがそれ以上に相手に取っていやらしいデッキがある事を思い出した。

 

「『氷結界』・・・・力を貸してくれ。思い出すら貪る『食屍鬼』は焼くだけじゃダメだからな。氷像にして欠片も残さず、憎悪を込めて砕いてやる!!」

 

『やっべえ・・・マスター、マジギレしてるよ・・・!しちゃいけない笑顔してるよ!』

 

『黒も黒、真っ黒で極悪な笑みですね。『妖怪少女』の子達には見せられません・・』

 

遊来は狂ってはいない。だが、その顔は楽しそうに歪んでいた。こんなに怒り心頭かつ愉快になるのは久々だと身体の中にある神経が踊り踊っている。

 

あの時、アテムではない「闇遊戯」に言われた事を思い返す。君はダークヒーローのようだと、元々そんな考えはあった。目的のためなら手段は選ばず、賞賛される事もない、光に憧れる影の存在。そんな事を考えるだけで笑いがこみ上げる。

 

「レヴァティン、ルイン・・・悪いけど今回、俺は悪党全開で行くから・・・引かないでくれよ?」

 

そんな遊来の言葉を聞いた二人は無言で彼を見ていた。もう悪党全振り状態じゃないかという事を必死に飲み込んでいる。

 

それ以上にあの優しい遊来が『悪党』としての顔を持っていた事に驚いていた。今、遊来は音声データのバックアップを作り、奪われても良いようにダミーの制作もしている。

 

「教師の立場だけじゃない・・・デュエルにおいても、社会的においても抹殺してやらぁ・・・!」

 

 

 

 

 

そして、自分も龍牙の授業を受ける日が来た。生徒達の表情は仇を見るような表情をしており、雰囲気が微弱だが殺気にまみれている。

 

「(おーおー、みんな殺気立ってるねぇ。殺気立ってるって事はカードを奪われたって事だもんな)」

 

授業終了後、遊来はすぐに帰ろうとしていた。その矢先、龍牙に呼び止められる。

 

「待ちなさい、君・・・!君は授業態度が悪い、私の個人授業を受けなさい!」

 

「はぁ?」

 

「良いから受けなさい!(コイツはシンクロ召喚のテスターだと情報にあった、ならかなりのレアカードを持っているはずだ!)」

 

「待ってくださいよ、個人授業じゃ物足りない・・・放課後が空いているのですからデュエル場でデュエルしましょう。もちろん、全校生徒と教員の前で」

 

「何?」

 

「自分の実力を示せるチャンスじゃないですか。教師の方々には優秀さを、俺を倒せば生徒からは尊敬を受けられますよ」

 

相手が気持ちよくなるようなイメージを持たせて誘導する。これは心理学においても単純でありながら効き目が良い。自分が相手よりも上手だと印象づけさせる事でこちらの条件を受け入れやすくさせるのだ。

 

「む、いいでしょう」

 

「条件はそれだけです。先生の条件はデュエル場でお聞きします。では、また後で」

 

遊来は去りながら、十代達に連絡を取り全ての生徒達に呼びかけるよう連絡し、オベリスクブルーに関しては明日香に頼んで来てもらえるよう連絡した。

 

 

 

 

 

そして、放課後。デュエル場には生徒達が所狭しと座っており、教師スペースには珍しく鮫島校長とクロノス教頭が座っている。そんな中、クロノスは遊来から竜牙に関して悪い噂という話を聞いていた。だが、あくまでも生徒の噂という域を出ていない。

 

「(シニョール遊来の話によれば、シニョール龍牙は生徒からレアカードを奪い取っているというノーネ・・・もし、それが本当なら彼を教師にする訳にはいかないノーネ)」

 

「さて、龍牙先生?貴方の条件を聞きましょうか?」

 

「ふむ、そうだね・・・君が負けたのなら君の持つシンクロモンスターと『ドラグニティ』を私に渡してもらおうか」

 

「なっ!?そんな事はこの私が認められません!」

 

「俺は構いませんよ」

 

「遊来くん!?」

 

鮫島の静止を聞かず、承諾してしまった遊来に対して龍牙は内心、ほくそ笑んでいた。

 

「(バカめ、私にデュエルを挑んできた事を後悔させてやる!)」

 

「じゃあ、始めましょうか?」

 

「結構、構いませんよ」

 

「「デュエル!!」」

 

龍谷遊来:LP4000

 

龍牙:LP4000

 

「先攻は譲りますよ」

 

「なら、俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※氷結界の照魔師

 

[現在の手札 6枚]

 

※トリシューラの鼓動

※氷結界の虎将 ウェイン

※氷結界の封魔団

※氷結界の術者

※氷結界の霜精

※氷結界の照魔師

 

「俺はカードを1枚伏せて、モンスターを1体セットしてターンエンド」

 

「随分と弱気ですね?私のターン、ドロー!」

 

遊来は龍牙の左手に注目していた。随分と機械的な指輪が目に入り、あれが魔法を使えなくする細工の元凶なのだろうと予測を付け、定番の予測である[自分は使えて、相手は使えない]という考えを前に出しておく。

 

「私は『瞬足のギラザウルス』を召喚する!」

 

『瞬足のギラザウルス』効果/星3/地属性/恐竜族/攻撃力1400/守備力400

 

「通常召喚扱いではなく、特殊召喚扱いですか?」

 

「無論だ。更に私は『ガガギゴ』を召喚!!」

 

『ガガギゴ』星4/水属性/爬虫類族/攻撃力1850/守備力1000『かつては邪悪な心を持っていたが、

ある人物に出会う事で正義の心に目覚めた悪魔の若者』

 

「(手札にギラザウルスが無かったのか・・コイツは幸運だ)」

 

「『ガガギゴ』でセットモンスターを攻撃!」

 

巨大な恐竜がセットモンスターへと襲い掛かり、破壊しようとしたがセットモンスターが結界のようなもので自らの身を守っている。

 

「残念でした。俺のセットモンスターは『氷結界の封魔団』守備力は2000だ!」

 

「何!?」

 

龍牙:3850

 

反射ダメージによって龍牙のライフポイントが減ってしまった。ライフが減ると生徒達はよくやったと言わんばかりの歓声を上げる。

 

そんな歓声の中で十代、翔、隼人、三沢、明日香、ジュンコ、ももえなどの遊来との交流が多いメンバーは新しいデッキに驚いていた。

 

「『氷結界』だって!?遊来の奴、また新しいデッキを組んでたのか!」

 

「あれって、女性のモンスターッスよね?美人だなぁ・・・」

 

「一体、あのデッキはどんなタイプなのか分からないんだな」

 

「『氷結界』、水属性をメインとした物とは聞いているが、扱いが難しいとも言われている」

 

「何故かしら、私・・・遊来が使う儀式デッキもそうだけど、あの『氷結界』にも強く心を動かされるものがあるわ」

 

「『ドラグニティ』の印象が強いだけに、アイツが他のデッキを使うと新鮮ね」

 

「まるで、色々とデッキを変えるなんてRPGゲームの主役の殿方みたいですわ」

 

 

 

 

「(カードを巻き上げてるコイツに敬語使うのも馬鹿らしくなってきたわ)おい、まだターンは続けるのか?」

 

「っ・・!私はカードを2枚伏せてターンエンド!」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※氷結界の舞姫

 

[現在の手札 5枚]

 

※氷結界の術者

※氷結界の霜精

※氷結界の照魔師

※氷結界の舞姫

 

「相手の場にモンスターが存在し、俺の場に『氷結界』と名の付くモンスターが居る事により俺はこのカードを特殊召喚する!来い!『氷結界の虎将 ウェイン』」

 

『氷結界の虎将 ウェイン』効果/星5/水属性/戦士族/攻撃力2100/守備力400

 

「馬鹿な!?生贄無しで星5モンスターを場に出しただと!?」

 

「あのカード『サイバー・ドラゴン』と似たような効果を持っているのね」

 

遊来の展開はまだまだ終わらない。しかし、龍牙はある事に気づいた。遊来の展開を見ていると魔法カードを一切使ってこないのだ。

 

「(まさか、この私の指輪の事を知っているのか?いや、コイツとは戦うのは初めてだ。知るはずもない!)」

 

「俺にはまだ、通常召喚の権利が残っているんだよぉ!『氷結界の照魔師』を召喚!」

 

『氷結界の照魔師』効果/星4/水属性/魔法使い族/攻撃力1700/守備力1000

 

「更にバトルフェイズ!『氷結界の虎将 ウェイン』で『瞬足のギラザウルス』を攻撃!氷結の刺突!!」

 

ウェインの持った短刀に貫かれ『瞬足のギラザウルス』が断末魔の咆哮を上げながら破壊される。

 

「ぐうう!?」

 

龍牙:LP3150

 

「メインフェイズ2『氷結界の照魔師』の効果発動。1ターンに一度、2つの効果の中から一つを選択し、それを使用する!手札を1枚捨てて、効果発動。デッキから『氷結界』のチューナーモンスターを1体を特殊召喚する!来い!『氷結界の術者』!」

 

「チューナーモンスター!?あのデッキもシンクロ召喚を可能にしているのか!?」

 

「俺はこれでターンエンドだ」

 

遊来は仮面を被るのが嫌になってきており、懐からココアシガレットを取り出してまるでタバコを吸うかのような仕草をした。その顔は『悪党』がする狡猾な笑みを浮かべていた。

 

「私のターン!ドロー!デュエル中になんだ!その態度は!?教師に対して失礼極まりない!!」

 

「そうナノーネ!それに生徒が喫煙なんて言語道・・・!」

 

「クロノス先生、これはココアシガレット。ただのお菓子ですよ」

 

遊来は空箱になったココアシガレットをクロノスへ投げ渡すと確かに駄菓子と書かれており、タバコを隠しているような細工も一切なく、匂いを嗅げばお菓子特有の甘い香りがしている。

 

「紛らわしい事をするんじゃないノーネ!それと口に含んだ物以降、お菓子は禁止ナノーネ!」

 

クロノスからの注意を素直に聞き、ココアシガレットを地面に置いてもう持っていない事をアピールする。

 

「それと、龍牙センセよ?いい加減に取り繕ってんの止めな。最もらしい理想的な教師のフリをしてえんだったら、ちょっとは色をつけて話せ。そんな正常位じゃ誰もイけねえよ?」

 

カリッと口元に咥えていたココアシガレットを僅かに噛み砕き、また喫煙者のような仕草をする。言葉は悪いが遊来は龍牙の真意を見抜いており、こんな男に学問を教わりたくはないという雰囲気を出し続けている。

 

「貴様ぁ・・・!」

 

「それとな、このデュエルは王侯貴族様のような優雅な決闘じゃねえ、穢れた犬同士の共食いなんだよ。どうだ言い当て妙だろ?ククク・・・」

 

「ぐっ・・・・!」

 

顔芸とも言える遊来の凶悪な笑みに龍牙はもとより、デュエル場に居る生徒全員が恐怖を抱いていた。ライトノベルやゲーム、アニメの主人公のような崇高な「竜騎士」のイメージから一転、今の遊来はヒロインを喪ったり、力を求め続けた事に代表される「闇堕ちした竜騎士」のイメージにほかならない。

 

「どうした?笑えよ、笑うところだろ?此処は」

 

「ならば私は魔法カード『超進化薬』を発動!『ガガギゴ』を生贄に『暗黒恐獣』を召喚!」

 

「(『氷結界の封魔団』の効果を使う訳には行かないか。それに、この野郎・・・奪ったカードを堂々と使っていやがる!)」

 

「『暗黒恐獣』は相手フィールド上に守備表示モンスターしか存在しない場合、相手プレイヤーに直接攻撃できる!だが、今はそのモンスターを攻撃する『暗黒恐獣』!『氷結界の虎将 ウェイン』へ攻撃!」

 

だが、突進してくる前に『暗黒恐獣』の足が凍りついてき、攻撃ができない状態になっていた。

 

「な、なぜだ!?何故、攻撃出来ない!?」

 

「はーい、二回目の残念でしたーーー!『氷結界の術者』の効果。自分のフィールドに他の『氷結界』モンスターが存在している限り、レベル4以上のモンスターは攻撃宣言できない!俺も出来ないけどなぁ?」

 

「ぐぐ・・・・ターンエンドだ!」

 

「俺のタァン、ドロー!」

 

[ドローカード]

 

※氷結界の紋章

 

[現在の手札 4枚]

 

※氷結界の術者

※氷結界の霜精

※氷結界の舞姫

※氷結界の紋章

 

「さぁて、魔法カード『氷結界の紋章』を発動ぉ!あれぇ?おっかしいなぁ?魔法カードが使えないなぁ?」

 

「(こ、コイツ!わざとらしく・・・!いや、知っているのか!?)おや?整備不良ですか?」

 

ポーカーフェイスを保ちながら辿たどしく言葉を紡ぐ龍牙だが、下品とも言える顔芸の笑みを浮かべたまま遊来は発動できなかった魔法カードを手札に収めたままデュエルを続行する。

 

「ククク!魔法が発動できない程度で俺が止まるとでも思ってやがるのか?だったらこの状況でどう動くのかを見せてやるよぉ!!俺はレベル5の『氷結界の虎将 ウェイン』とレベル4の『氷結界の封魔団』にレベル2の『氷結界の術者』をチューニング!!」

 

 

5+4+2=11

 

 

『氷結界の虎将 ウェイン』と『氷結界の封魔団』が『氷結界の術者』が開いた光の輪を潜り抜け、その2体も一本の星の柱となり輝きが溢れ出す。

 

 

[推奨BGM 遊戯王GXより『カミューラのテーマ』]

 

 

「氷壁へと封印されし古の槍よ、その力を持って善悪すらも貫け!シンクロ召喚!!顕現せよ!『氷結界の還零龍 トリシューラ』!! 」

 

『氷結界の還零龍 トリシューラ』シンクロ・効果/星11/水属性/ドラゴン族/攻撃力2700/守備力2000

 

細かな氷の粒をまき散らしながら遊来の傍に降り立つ三つ首の氷龍。その氷柱を思わせる鋭角なフォルムと見開かれた赤い目は全てを破壊しようとする意思が溢れていた。この氷結の名を冠する三つ首の龍は暴走状態であるとされ、今の遊来の心を表しているかのようだ。

 

「な、なんだ!?このモンスターは!?レベル11だと!」

 

「『氷結界の還零龍 トリシューラ』の効果発動!このカードがシンクロ召喚に成功した時、相手フィールドのカードを三枚選んで『除外』する!!」

 

「『除外』だと!?」

 

「そうだ、アンタの場にある伏せカード二枚と『暗黒恐獣』の3枚をすべて『除外』する!ゲームから取り除くから蘇生は出来ねぇぜぇ?」

 

伏せていたのは『生存本能』と『リビングデッドの呼び声』であった。最早、壁モンスターも無くなり伏せカードもない、龍牙は目の前の現実が信じられなかった。

 

「ば、馬鹿な!こんなイカサマにも程がある!!」

 

「くっ、ククク・・・アーッハハハ!イカサマだってよ!それじゃあまるで自分がイカサマをしているような言い草じゃねえかよ、なぁ!おい!?」

 

龍牙はそれが失言だった事に気づいていなかった。遊来はイカサマなどしていない、彼はシンクロ召喚という名の先を行く召喚方法が現実にあるのだとアピールするのと同時にその力を教える先駆者だ。

 

「俺がなんでこんなクソと言われるような『悪党』の真似をしてるか分かるか?それ以上のクソが目の前に居るからだよ。覚悟は出来てんだろう?教師のアンタには馬の耳に念仏だろうが、この言葉を覚えておけよ『因果応報』ってな!トリシューラの攻撃!氷結の暴風怒濤!!『氷結界の照魔師』も続け!!」

 

「ぐわああああああああ!!!」

 

龍牙:LP0

 

合計4400のダメージを受け、デュエルが終了した。遊来は膝から崩れ落ちた龍牙の胸元を乱暴に掴むと冷たい目をしたまま詰め寄った。

 

「おい、生徒の皆から奪い取ったレアカードを全て返しな・・!」

 

「な、なんの事だ!言いがかりはよせ!」

 

「ああ、そう・・・んじゃ、これでもシラを切るのか?」

 

遊来は龍牙から手を離すと放送用のマイクがある教員用の観客席へと近づいていく。一体何用かと声を掛けようとする前に遊来が許可を貰いたいと話しかけた。

 

「クロノス先生、マイクをお借りして構いませんか?それと音量を最大にしてもらいたいのですが」

 

「?何をするノーネ?」

 

「『証拠』を流そうと思いまして」

 

マイクを借り移動した影響でマイクがハウリングするが、構わず遊来は懐から音声を流せる機器を取り出し、それの再生ボタンを押してスピーカーにマイクを近づけた。

 

 

 

「『装備魔法『おろかな埋葬』を発動!あれ?なんで!?どうして発動できないの!?』」

 

「『おやおや、整備不良ですか?それではターン終了で構いませんね?』」

 

「『ぐっ・・・ターンエンド、です』」

 

「『私のターン!2体のモンスターを生贄に、現れろ!『暗黒恐獣』!』」

 

「『『暗黒恐獣』!?それはウサミンが持っていたカードよ!どうしてそれを貴方が持っているのよ!?』」

 

「『個人授業の報酬として頂いたのですよ、私のような教師から学べたことを光栄に思いなさい!『暗黒恐獣』でダイレクトアタック!』」

 

「『きゃあああああああ!!!!!』」

 

「『さぁ、個人授業の報酬として貴女のレアカードである『暗黒界の龍神 グラファ』は頂きますよ』」

 

「『あ・・!か、返して!私のお父さんからアカデミアの入学祝いに貰った大切なカードなのよ!』」

 

「『うるさい、黙れ!敗者は黙って勝者の言うこと聞け!』」

 

「『これでまた1つ、強いカードが手に入りましたね』」

 

「『あ・・・あああっ!私のデッキ!』」

 

「『授業は終了です。せいぜい、この経験を活かし精進しなさい。アーッハハハハ!』」

 

 

 

デュエル場全体に響く龍牙と一人の女子生徒の音声。それを流された龍牙は顔を真っ青にして青ざめていった。

 

「ち、違う!!これは私じゃない!!」

 

「こ、これはどういう事ですか!?」

 

「シニョール遊来、詳しく聞かせて欲しいノーネ」

 

クロノスからの催促に遊来はこの音声の詳しい経緯を事細かく話した。龍牙のデッキに入っている『暗黒恐獣』も一人の生徒から奪い取ったカードであり、大勢の生徒が被害に受けていた事も。

 

「お、俺も奪われたんです!『カイザー・グライダー』のカードを!」

 

「わ、私は『カオス・マジシャン』のカードを盗られました!!」

 

次々に観客席にいた生徒達が被害を訴える。龍牙は逃げ出そうとしていたが、いつのまにか観客席から降りていた遊来との交流が深い十代達全員が出口を塞いでいた。その顔は怒り心頭になっており、いつもは能天気な十代も流石に堪忍袋の緒が切れている様子だ。

 

「アンタ、最低だな!生徒達からレアカードを奪っていたなんて!」

 

「そうッス!!」

 

「許せないんだな!!」

 

「龍牙先生、大人しく生徒にカードを返してあげて下さい」

 

「その通りです!」

 

「う・・・うううう!」

 

デュエルモンスターズが生活の一部とも言える程に浸透しているこの世界で、レアカードを他人から奪うのは重罪だ。最も、普通に考えれば窃盗罪で問われるくらいなら安いのだが龍牙はこの学園の殆どの生徒達からレアカードを奪っている。間違いなく悪質だと判断されるだろう。

 

「シニョール龍牙、貴方を招き入れた事は大間違いだったみたいナノーネ」

 

「ま、待ってください!私とデュエルしたアイツが捏造したという可能性も!」

 

遊来と共にクロノスもやって来て、龍牙に詰め寄る。そんな中、遊来は龍牙に近づくと左手から指輪を外した。

 

「こんな機械的な指輪、趣味ですか?」

 

「あっ!か、返せ!」

 

三沢が龍牙を羽交い締めにしてくれている間、遊来はジュンコに近づき気になっていた事を全校生徒の前で明かそうと協力を仰いだ。

 

「ジュンコ、デュエルディスクを起動してくれるか?」

 

「え?いきなりなによ」

 

「タネ明かしをするんだ、何故・・魔法カードを使えなくなったのか?というな」

 

訳が分からないといった表情のジュンコにデッキから魔法カードを発動するよう頼み、遊来はある程度指輪を弄ると仕掛けを理解した。

 

「これを左に回すと・・・ジュンコ、魔法カードを使って」

 

「分かったわ。・・・あれ?使えないわよ?」

 

「で、逆に右に回すと・・・もう一回、使ってくれ」

 

「あ!使えたわ!」

 

するとデータが読み込まれ『大嵐』が使用された事を示す表示が出ている。どうやら、指輪の正体は特殊な電波か何かでデュエルディスクの機能を阻害するための装置だったようだ。

 

「あ・・・あああ・・・・っ」

 

「言い逃れは出来なくなりましたな・・・龍牙先生」

 

鮫島校長の一言でその場で泣きそうになる龍牙に対し、遊来はデュエル中に見せていた『悪党』の笑みを浮かべて視界に入るよう顔を近づける。

 

「幼い時にさ。怖ーーいおじさんにこんな事を言われたことがある。『役立たずが手前の低能さを棚上げして、愉快に生きようと思ったら、あっという間にマーチ好きのバカが一匹出来上がる。どこに行っても変わらねぇ法則だ』ってな・・・今はそれがよーーーく理解できたよ」

 

「っ・・・う」

 

何だ、この生徒は?ただの男子生徒じゃない。まるで、人生の中で裏も表も覗き込んできたような人間だ。そんな、龍牙に遊来は畳み掛けるように言葉を紡ぐ。

 

「それにな?正義なんてもんはなくても、地球は回るんだぜ?この場でアンタに出来る事は何一つねぇよ・・・・祈れ、生きてる間にアンタが出来る事は唯一それだけだ。もっとも、アンタの信仰してる神は休暇取ってベガスに行ってるかもしれねえけどな・・・?」

 

『悪党』に成りきっている遊来の顔を見た十代達は引き気味になっていた。それ以上に普段は怒ったとしても多少、口が悪くなるだけだった。だが、今の遊来は完全に怒りを通り越して『悪党』そのものだ。そうでもしなければ自分を保っていられない程に怒り心頭なのだろうと三沢が冷静に分析する。

 

「ごめん、みんな・・・怖かったよな。俺許せなかったんだ・・・家族から貰ったカードを奪う奴が。クロノス先生、鮫島校長・・・好きに処分してください」

 

素に戻った遊来は自分と交流が深いメンバーに頭を下げた後、教師の二人にも頭を下げた。

 

「シニョール遊来、確かにアナタは生徒としては許されない事をしていたノーネ」

 

「しかし、このような事態が起きていた事を知らないまま放置していたのは我々、教師の落ち度です」

 

「よって、貴方には一週間の自宅謹慎、つまり寮から出ないようにするノーネ!」

 

「クロノス先生・・・」

 

「生徒達の大切なカードを取り戻そうとした事を考慮に入れての処分ナノーネ」

 

「そうだぜ!なぁ、みんな!遊来が悪い事をしたか!?」

 

「アニキ・・・」

 

「十代」

 

十代が観客席に居る生徒達に大声で呼びかけると、そうじゃない!と言った声や助けてくれたんだ!取り返してくれてありがとう!と言った声が飛び交っている。

 

「みんな・・・」

 

「必要とあれば署名だって集めるわ。アナタは皆の大切なものを取り返そうとしてくれたのよ」

 

「明日香・・・」

 

「そうよ、アンタが居なかったら解決できなかったんだから!」

 

「騎士のように真面目な遊来さんの荒々しい一面が見れた気がしましたわ」

 

 

 

 

 

 

それから龍牙は教師を辞めさせられ、本土へと強制的に戻されたそうだ。生徒から奪っていたレアカードは持ち主全員に返す事になり、先生や十代達が中心に返して歩いているらしい。

 

「『氷結界』・・・どうして今回はこんなに上手く回ったんだろう?」

 

そんな疑問と共に遊来は現在、部屋の中で過ごしている。時折、クロノス先生からレポートや反省文を書くように指示が来るが、それは課題みたいなもので謹んで受けている。

 

「けれど・・・『悪党』やるのって疲れるんだな」

 

そんな呟きと共に遊来はペンを走らせ、レポート書く事に集中するのだった。




今回は『氷結界』を使用しました。

『悪党』の遊来君の煽りに関しては参考にしてるキャラクターがいます。

前世の遊来君が片想いしていた相手は青い髪と『氷結界』と言った時点で気づいている方もいらっしゃるのかな?

「不知火」と「魔妖」は登場させるべきか?

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