手にした竜騎士と破滅が気難しい   作:アマゾンズ

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ある人物との邂逅。


第3話

受験後、遊来はペガサスに呼ばれインダストリアル・イリュージョン社に居た。ペガサス曰く電話では話せない大事な話があるとの事だ。

 

「遊来ボーイ、単刀直入に言いマス。ユーはこのままでは生活する事が難しくなってしまいマシタ。最悪の場合、母国からの説明を求められてしまいマース」

 

「え?」

 

「今までは我が社だけで情報を隠遁していマシタが、シンクロ召喚のテスターとして名が知れ渡ってしまいマシタ。当たり前の事なのデスが調査などもあって、考えが後手になってしまい申し訳アリマセーン。入念に調べた結果、戸籍などの問題も有りマース!」

 

それは失念していた事であった。いきなりこの世界に来た時には名前もあり両親もいたがその両親も本当の両親ではないらしく、この世界での産みの母が妊娠した後に離婚し、出産した後に育ての親に預けて失踪してしまい、養子縁組も出生届も出されていなかったそうだ。あらゆる調査の為に後手に回ってしまった事をペガサスさんは謝ってきた。

 

国の制度により離婚後300日以内においては、遺伝上の父の子として登録できず、そのまま出生届を出すと前夫の子と推定されてしまうため、遺伝上の父親の子として認定されるためには、前夫から家庭裁判所へ親子関係不存在確認調停或いは嫡出否認の申し立てが必要となるが、心情的に協力を求めたくない場合が多く母親が出生届を提出していない状況が散見される。という内容が調べると出てきた。

 

俺はそれ以上に最も気になる事をペガサスさんに聞いた。

 

「あの、ペガサスさんは俺が転生、もしくは次元を超えてきた人間だって知ってると言っていましたよね?それは何故ですか?」

 

この世界に来る前の知識はまだまだあるが考えないようにしていた。もしそれが本当なら認めなくてはならない恐怖があったからだ。平静を装っていても現実だと認めたくない、全てを失ってこの世界に来てしまった。帰郷の思いを押し殺していたのだから。

 

「知っているのではないデスか?私がかつてある物の所持者であった事を・・・」

 

遊来は知っている。目の前のこの人はかつて闇のアイテムと言われる千年アイテムの一つ、千年眼の所持者であった事を。

 

「もしかして?」

 

「イエス、今の私にソレはありません。ですが、所持していた当時ソレからあるヴィジョンが流れてきたのデス。転生、次元を超えるなどのキーワードと共にそして遊来ボーイ、ユーにソックリな人物の映像も・・・」

 

その話を聞いて遊来は驚きを隠せない状態になった。自分が来る事を予期されていたのだとペガサスは口にしたのだから。

 

「それで俺の事を知っていたと・・・・」

 

「その通りデス・・・心苦しいデスが元の世界に戻れる可能性は無いに等しい」

 

「っ・・・・」

 

遊来は耐えられなくなり、その場で大泣きし始めた。もう二度と自分の世界には帰れないと心と頭が認めてしまった瞬間、無意識に泣いてしまい止まる事はなかった。それはまるで家に帰りたいと泣き叫ぶ幼子のようであった。しばらくして泣き止み、ペガサスは遊来を洗面台に案内して顔を洗うように言い、洗った後はタオルを差し出した。

 

「もう平気デスか?」

 

「はい・・・ごめんなさい。見苦しい姿を見せてしまって・・」

 

「ノー、それがユーの本当の気持ちだったのデスから気にしていまセーン。それから、ユーには戸籍に関するチャンスが二つありマース」

 

「二つ?」

 

「イエス、一つはワタシの養子となってアメリカ人としての戸籍を取る事、もう一つはワタシのちょっとしたコネでで日本の戸籍を取る事デース。個人的にはアメリカの戸籍を取って欲しいのデスが」

 

「アメリカ国籍となると心情的には・・・」

 

「仕方アリマセン・・・では、少し待っていて下サーイ」

 

そう言ってペガサスは部屋を出ていってしまった。数分後、会社の弁護士に連絡がついたそうで、戸籍の他に更には調査網も使い遊来を引き取っていた育ての親の両親に出会い、親権を譲ってくれとお願いしたところ、渋られていたがある程度の金額を日本円で渡したらすんなり親権を譲ってくれたそうだ。一体、幾ら出したんだろう・・・と遊来は思わずにはいられない。

 

そして正式にペガサスの養子となった遊来は、お願いとして育ての親が使っていた家をそのまま使わせて欲しいと言った。何よりも遊城十代のお隣さんに実家がある方が良いと最初で最後のワガママを言わせてもらったのだ。

 

育ての親達はペガサスに貰ったお金で引越しを済ませており、その土地と家屋をそのまま購入しリフォームの手続きも済ませてくれたのだ。

 

「本当にそれだけ良いのデスか?」

 

「はい、これ以上甘えてしまったら抜けられなくなりそうなので」

 

「フフ、もうファミリーなのデスから気にする必要はアリマセンよ?」

 

「それでも、です!」

 

そう言うとペガサスは笑顔になり、遊来もようやく笑う事が出来た。もう自分の世界には帰れない、それでもこの世界には自分に愛情を注いでくれる人が居るというだけでも感動してしまった程だ。

 

「そうでシタ!今日は遊来ボーイにある人物に出会わせる約束をしていたのを思い出しまシタ!」

 

「え?」

 

「そろそろ到着する頃デース、一度会ってくれませんセンか?」

 

「分かりました」

 

ペガサスについてくとそこには白のコートを身に纏い、プライドが高そうに見えて誇り高い性格である事を伺える人物が応接室にいた。知っている・・・この人は海馬瀬人、海馬コーポレーションの総帥であり最強のデュエリストの一人であの武藤遊戯の宿命のライバルとも言うべき人だ。

 

「ふぅん、この俺を待たせるとはな?」

 

「それに関して謝りマース、どうしても外せない別件があったのデース」

 

「その別件がソイツという訳か」

 

瀬人の鋭い眼光に遊来は視線を逸らしそうになるが、なんとかそれを堪える。すると瀬人は意外な話を持ちかけてきた。

 

「貴様の使うシンクロ召喚、その完成形に至るまで共同開発を進めているがまだまだβ版が完成したに過ぎん。よって貴様を海馬コーポレーションの開発スタッフの一人にしてやろう」

 

「へ?」

 

「なるほど、デュエルディスクに関しては海馬コーポレーションの方が我が社よりも先を行っていマース、その為にも彼の力が必要という訳デスね?」

 

「そうだ。だが、貴様はデュエルアカデミアに通う予定だったな?長期休暇の時期に海馬コーポレーションへ来い。無論、タダでとは言わん。働いた分の対価は出す」

 

「分かりました。俺の力が役立つのなら」

 

「ふん、当然だ。それにペガサスがしていた貴様に関する調査結果にも目を通している。待たされている間、理由として書類を見せられていたからな」

 

「事情が事情デス・・・」

 

「ふぅん・・・ソイツが転生か次元を超えてきたなどと信じられん事だが、ある程度の理解は出来る」

 

「え?」

 

「戸籍の件に関してペガサスを通じて協力した、後は自分の力で切り開いて見せろ!」

 

「それって本当なんですか?ペガサスさん」

 

「本当デース。我が社の顧問弁護士を通じて身辺調査の他に海馬ボーイに協力をお願いしていたのデース。日本の事は日本人、現地の人間に任せるのが一番デシタ」

 

「あくまで貴様の戸籍を用意しペガサスの養子になれるよう手配しただけだ。これ以上を望むなら対価として先に話した開発スタッフの仕事をする事だ」

 

「はい、ありがとうございます」

 

どうやらペガサスさんは瀬人さんに頭を下げていたようだ。地位のある人、それもライバル会社の相手に頭を下げるなんて事はなかなか出来る事ではない。それを感じた遊来はまた泣きそうになったが必死に堪えた。

 

「それに貴様の扱うドラグニティというカテゴリー、是非とも戦いたいものだな」

 

「瀬人さんはお忙しい身でしょう?」

 

「ふん、デモンストレーションなどいくらでも戦う機会はある」

 

「確かに・・・」

 

「俺は行くぞ。この後、重要会議があるのでな」

 

そう言って瀬人さんは帰ってしまった。海馬コーポレーションは世界的な大企業だ。それゆえに多忙なのだろう、その合間の時間で来てくれたのだから更に感謝しかない。

 

「さて、遊来ボーイ。アカデミアへの入学準備もあるでショウ。これから準備しに買い物へ行きませんカ?」

 

「はい、是非とも!」

 

 

 

 

その後、入学準備を終わらせアカデミア本校へ行く船の中でペガサスさんからメールが来た。ペガサスさんも多忙な身だ。その合間で入学準備の手伝いと養子縁組の手続きをしてくれた事には感謝しかない。メールには見送りに行けない事に対しての謝罪とアカデミアでしっかり学資生活を楽しみながら勉学に勤しむようにとの事が書かれていた。それを見て少しだけ笑みが浮かぶ。

 

もう、元の世界には帰れない。それを考えると少しだけ暗い気持ちになるが仕方ない事なのだと割り切るしかないと言い聞かせる。帰郷願望が無い訳ではない、出来る事なら帰りたかった・・・だが、それは叶わない、それならばこの世界でしっかり生きていこうと思う、それが一番だ。

 

「どうしたんだ?遊来」

 

「ああ、十代・・・ペガサスさんからのメールを見てただけさ」

 

「えぇ?マジ!?すっげえ!!」

 

「ふふ、これから学校生活だな」

 

「ああ、デュエルアカデミア・・楽しみだなぁ!!」

 

こうして自分を気にかけてくれる友人と恩人がいる。そして何よりこの世界で一番の大きい出来事はドラグニティのレヴァティンやルインと出会え、会話が出来る事だ。アカデミアに向かう前、こちらの世界の実家にカードが沢山あった。俺が飛ばされた際に一緒に持ち込まれていたモノだったのだ。そのカードの中から俺は必要枚数以上に持っているカードの内、HERO関連のカードを二枚取り出して十代に渡した。

 

「十代、このカードを受け取ってくれないか?」

 

「え?・・こんなカード受け取れねえよ!レアカードじゃんか!」

 

「俺はもう三枚以上持ってるから、中学から一緒に居てくれたお礼って事で」

 

「うーん、分かった!サンキュー!後で俺も何か渡すからさ!」

 

「ああ!」

 

受け取る事を渋りつつも、十代は遊来からカードを受け取り笑顔になった。十代にはHERO関連のデッキに関して自分の世界で使われていたやり方を暈しながら、そんなルートも有ると船の中で会話し続けた。

 

その途中、遊来は十代からHEROデッキを組まないかと聞かれたが、組むパーツが揃えばとだけ返事をした。

 

実際、遊来にはHEROデッキのプロトタイプに近い40枚の束にしかなっていない物がある。使うとすればE-HERO(イービルヒーロー)の方になってしまい、使う事はできない。かと言ってE・HEROを使えば十代と被るデッキになってしまう事になる。もし使えるとしたらM・HERO(マスクドヒーロー)の方になってしまい、寧ろそちらの方が強力になってしまう故に組もうとしないのだ。

 

自分の元居た世界、それも未来のカードでデッキを組んでいるのだから強力なのは当たり前なのだが、この世界では強力なコンボがまだまだ息づいている時代だ。パーツさえ揃ってしまえば安易にワンキルやソリティアなどのデッキも出来上がってしまう。

 

この世界でのワンターンキルは許容範囲に僅かに入るが、特殊勝利などは認められていないに等しい。

 

「お、そろそろ着くみたいだぜ」

 

「そっか」

 

デュエルアカデミアがある孤島に目を向ける。新しく、そして一からの高校生活が始まるのだと思うと自分の世界での記憶が僅かにある遊来は少し複雑かつ、嬉しさもある不思議な感情出てくるのだった。




ここまでで、次回は所属場所です。

「不知火」と「魔妖」は登場させるべきか?

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