デュエルアカデミアの入学式を終えて、寮生活の為の寮に区分けされた事を伝える紙が手渡された。
此処、デュエルアカデミアでは三幻神に因んでオシリスレッド、ラーイエロー、オベリスクブルーと区分けされている。
女性は基本的にオベリスクブルーに区分けされ、男性の場合は受験結果によって区分けされるらしい。大富豪や大企業の御曹司やデュエルに関する実績があればオベリスクブルーに配属されるそうだが、基本的に受験の成績が上位でも編入となればラーイエローからスタートするそうだ。
十代はオシリスレッドに所属となり、遊来はラーイエローへと向かっている。ペントハウス風のおしゃれな建物を見つけると此処がラーイエローの寮らしい。
「これもこれで味があると思うけどなぁ・・・」
そう呟きながら遊来は寮内へと入り、割り当てられた一人部屋に入ると荷物を置き、その中から自分の世界から一緒に飛ばされてしまったカード達を見る。
中でも青眼の白龍のカードは名称だけが残っているが、イメージイラストの部分が真っ白になっていた。この世界での青眼の白龍は海馬瀬人だけが所持しているためだろう。その他のサポートカードなどは何も変化はないが使用することは難しそうだ。
「ドラグニティとデミスルインだけじゃ、流石にキツいかな。シンクロ召喚用のデッキと・・・後はこれを組んでみよう」
そう思いながらデッキを組んでいると不意に覗き込まれている感覚に陥る。そう、ルインがデッキ作りを覗いているのだ。
「精霊化してないで堂々と見ればイイじゃないか」
『いえ、実体化には大量のエネルギーを必要としますので・・・しかし、マスターと共に来たカードは強力なのが多いですね?』
「確かに強力だけど、この世界でのコンボの方が強力だよ。特殊勝利なんて簡単にできるカードがまだまだ生きてるんだから」
「以前、仰っていた宝札エクゾディアなどですか?」
「そう、無限ループデッキが此処では現役なんだ。そのデッキは組んであるけどまだ実戦では試した事は無いんだ。余程の事がないと使う気はないしね」
『そうなのですか?』
「デュエルが始まって、無限ループデッキが先攻取って勝利の為のパーツが揃ってたらどうなる?」
『あ・・・』
「そういう事だよ。だから、余程の事がないと使わないんだ」
ルインの疑問に答えつつ、遊来はデッキを完成させていく。新しいデッキは十代と同じカテゴリーであるHEROデッキではあるが、コンセプトが違っている。このデッキも何か役立つ時があるだろうと丁寧にデッキケースにしまい込む。
◇
その翌日、歓迎会などが開かれラーイエローでは普通の日本色の食事やカレーなどが出ていた。
「やあ、君があのドラグニティと呼ばれるカテゴリーのデッキを使っている龍谷遊来かな?」
「そうだけど、君は確か・・・三沢大地・・だっけ?筆記試験一位の」
「はは、そう言われるとなんだか擽ったいな。それにシンクロ召喚という新しい召喚を使っているのも見てたよ」
「ああ・・・俺はシンクロ召喚の宣伝兼実用テスターだからね」
「発表されてからまだまだカードが出ていない事もあって未知だったが、色々と聞かせて欲しい」
「構わないよ」
それから食事をしつつ三沢と遊来はデュエルモンスターズの戦略に関して話し合った。
特にシンクロ召喚に関してはデメリットとメリット、弱点や運用方法などを聞いてきたのでそれを説明する。最も、見物のカードを持っているのはこの学校では遊来一人の為、デュエルでの実践をすることはする事はなかった。
「勉強になったよ。融合とはまた違うカード、今度はデュエルで見せて欲しい」
「うん、機会があれば」
歓迎会も終わりになり、部屋へ戻る前に外の空気でも吸おうとデュエルディスクの入ったバッグと共に外へと出る。
「高校生か・・・ここに来る前は後悔だらけだったな」
ふと、自分の世界でのことを思い返す。流されるままで何もかも自分の力で手に入れられる事はなかった。言われるがままにただただこなすだけの日々、いつしか楽しむ事も自分で考える事も放棄してしまった。
全く誰も知る人間がいないこの世界に来た事は一種のチャンスなのかもしれない。それが例え、どんな形であっても。
そんな事を考えながら歩いていると無意識に声のする方向へと歩いていたようだ。そこでは誰かがデュエルをしている様子だ。
「こんなところで巻き込まれたらたまらないな・・・」
「待て」
「ん?」
「お前、龍谷遊来だな!?デュエルしろ!」
「なんだ、いきなり?」
「俺が勝ったらお前の持つカードをすべて渡せ!」
「逆に負けたら?」
「俺が負けるはずないだろうが!俺はオベリスクブルーだ!」
「ああ・・・」
思い出した。この世界のデュエルアカデミアは階級による差別があったんだ。オベリスクブルーの生徒は変なエリート意識でラーイエロー、オシリスレッドの生徒を馬鹿にしているんだ。
「・・・分かった。負けたらカードは渡そう・・・だが、俺が勝ったら俺に近づくなよ」
「ふん、ラーイエローごときが俺に勝てる訳がないだろうが!」
「・・・・」
今回は俺が組んだHEROデッキで行こう。実戦での試運転が欲しかったところだし。
「「デュエル!!」」
時間は午後16時半、日は落ちてるけどなんとかなるだろう。
オベリスクブルー男子生徒LP:4000
龍谷遊来LP:4000
「俺が先攻か、ドロー」
手札[現在6枚]
※E・HERO シャドー・ミスト
※マスク・チェンジ
※増援
※リロード
※ダメージダイエット
※E・HERO ブレイズマン
「まずまずか・・・防御に偏ってるけど。先ずは魔法カード『増援』を発動!デッキからレベル4の戦士族モンスターを手札に加える。『E・HERO エアーマン』を手札に加えそのまま召喚。エアーマンの効果発動!このカードが通常召喚または特殊召喚に成功した時、次の二つの効果から1つを選択して発動する事ができる」
「一つは自分フィールド上に存在するこのカード以外の「HERO」と名のついたモンスターの数まで、フィールド上に存在する魔法または罠カードを破壊する事ができる効果」
「もう一つは自分のデッキから「HERO」と名のついたモンスター1体を手札に加える効果。俺は二つ目のサーチ効果を発動。その効果により、『E・HERO ソリッドマン』を手札に加える。更にカードを3枚伏せて・・・!ターンエンド」
『E・HERO エアーマン』星4/風属性/戦士族・効果/攻撃力1800/守備力300
「E・HEROだと?あのオシリスレッドの遊城十代の真似か?ハハハハ!俺のターン、ドロー!」
相手は遊来を見てニヤリと笑う。自分は必ず勝てるといった感じの笑みだ。
「俺に渡す準備をしておけよ!俺は不屈闘士レイレイを召喚!」
『不屈闘士レイレイ』星4/地属性/獣戦士族/攻撃力2300/守備力0
「下級アタッカーとして高レベルのラインに入るカード・・・」
「覚悟しろ!バトルだ!!レイレイでザコHEROにアタック!」
「っ・・・!」
レイレイが咆哮を上げつつ、エアーマンに殴りかかってくる。遊来は一瞬だけ、思考したが切り替えてリバースカードを発動させるボタンを押した。
「速攻魔法発動・・・!マスク・チェンジ」
「マスク・チェンジだと!?」
「マスク・チェンジは自分フィールドの「HERO」モンスター1体を対象として発動する事ができる。そのモンスターを墓地へ送り、そのモンスターと同じ属性の「M・HERO」モンスター1体を融合デッキから特殊召喚する・・・!エアーマン、変身!!」
「変身?」
ソリッドヴィジョンの演出なのか、新たなマスクとベルトが現れそれがエアーマンの腰に巻き付き、光り始める。その光に包まれたエアーマンはバイザーの上に新しい仮面が装着され姿を変えていき、黄緑色のアーマーに赤い複眼のマスク、更には白いマントを羽織った新しいヒーローの姿へと変身した。宛ら其れは特撮作品の演出と似ていた。
咆哮と気合の入った声と共に新しいヒーローが遊来の目の前に腕組みをしながら立った。
「『M・HERO カミカゼ』変身召喚!!」
『M・HERO カミカゼ』星8/風属性/戦士族・融合/効果 攻撃力2700/守備力1900
「こ、攻撃力2700だとぉ!?」
「更にこのカードは戦闘では破壊されず、このカードがモンスターゾーンに存在する限り、相手はバトルフェイズにモンスター1体でしか攻撃できない。更にこのカードが戦闘で相手モンスターを破壊し墓地へ送った時に発動できる。俺はデッキからカードを1枚ドローする事ができる」
「戦闘破壊耐性に攻撃制限、更にはモンスターを戦闘破壊をした時にドロー効果だと!?インチキもいい加減にしろ!!」
「・・・・・れ」
「ん?」
「黙れよ・・・ザコとか言ってるその口を」
遊来は静かに怒っていた。自分が使っているカードを馬鹿にされるのはいい。だが、友人が信じてやまないカテゴリーを馬鹿にしているのは我慢が出来なかった。確かにザコや使えないと言われて、使われなくなったカードは前の世界でも多数ある。どうしても使いたいと知恵を絞って使えるようにしたデュエリストもいた。デッキに入る可能性が低いというだけで、捨てられる訳ではなかった。無論、完全に未練をなくして捨ててしまった者も中にいるだろう。それでも、この世界で最初に仲良くしてくれた友人を馬鹿にされているようにしか聞こえなかった。前世が大人だったとしても遊来自身、そこまで聞き分けられる性格ではなかったのだ。
「なんだと!?ふん、ラーイエローの分際で!戦闘を中断・・カードを一枚伏せてターンエンドだ」
「もういい・・・完全に倒す。ドロー」
[ドローカード]
※マスク・チャージ
[現在の手札・四枚]
※E・HERO シャドー・ミスト
※E・HERO ブレイズマン
※E・HERO ソリッドマン
※マスク・チャージ
「先ずは手札から魔法カード『マスク・チャージ』を発動。このカードは墓地にある『HERO』モンスター1体と『チェンジ』の速攻魔法1枚を対象として発動でき、そのカードを手札に加える。よって『E・HERO エアーマン』と『マスク・チェンジ』を手札に加える」
「更に『E・HERO ソリッドマン』を召喚。このカードには二つの効果が有り、二番目の効果は1ターンに1度しか使用できない。一つ目はこのカードが召喚に成功した時、手札からレベル4以下の「HERO」モンスター1体を特殊召喚する事が出来る」
「二つ目はこのカードが魔法カードの効果でモンスターゾーンから墓地へ送られた場合、「E・HEROソリッドマン」以外の自分の墓地の「HERO」モンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを守備表示で特殊召喚する効果だ」
「俺は一つ目の効果で手札から『E・HERO ブレイズマン』を特殊召喚。このカードの効果も1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。一つ目はこのカードが召喚・特殊召喚に成功した場合に発動できる。デッキから『融合』1枚を手札に加える」
「二つ目は自分メインフェイズに発動できる。デッキから『E・HEROブレイズマン』以外の『E・HERO』モンスター1体を墓地へ送る。このカードはターン終了時まで、この効果で墓地へ送ったモンスターと同じ属性・攻撃力・守備力になる。この効果の発動後、ターン終了時まで自分は融合モンスターしか特殊召喚できない」
ここまでの展開、更には『マスク・チャージ』によって墓地にあった『マスク・チェンジ』が再び遊来の手札に戻ってしまった事にブルー男子生徒は歯ぎしりする。
「E・HERO ブレイズマン』の効果で『融合』をデッキから手札に加え、俺は再び『マスク・チェンジ』を『E・HERO ソリッドマン』に対して発動。ソリッドマン、変身!」
再び変身の過程が行われるが、エアーマンとは違い風ではなく大地を象徴する岩がソリッドマンに張り付いていく。中から光が溢れその手には槍を持ち、青いマントをなびかせ兜を被った西洋騎士のような姿をしたヒーローが張り付いた岩の中から飛び出してきた。
「『M・HERO ダイアン』変身召喚!」
『M・HERO ダイアン』星8/地属性/戦士族・融合/効果 攻撃力2800/守備力3000
「な、上級モンスターが二体!?」
「バトルフェイズ!カミカゼでレイレイに攻撃!神風波!」
「ふん、罠カード。『和睦の使者』を発動!このターン、モンスターは破壊されず戦闘ダメージはゼロだ」
レイレイが使者の作り出す防壁に守られ相手は全くの無傷であり、モンスターも健在だ。
「防がれたか・・・」
[現在の手札・2枚]
※E・HERO シャドー・ミスト
※融合
「ターンエンド・・・」
「俺のターン、ちっ!モンスターをセット、カードを一枚セットして・・・ターンエンドだ!」
どうやら引いたカードが良くなかったようだ。苦虫を潰すような顔をしている。
「俺の・・・ターン、ドロー」
[ドローカード]
※E・HERO リキッドマン
[現在の手札・3枚]
※E・HERO シャドー・ミスト
※融合
※E・HERO リキッドマン
「・・・・俺はE・HERO リキッドマンを召喚・・!このカードの効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。一つ目はこのカードが召喚に成功した時、『E・HEROリキッドマン』以外の自分の墓地のレベル4以下の「HERO」モンスター1体を対象として発動でき、そのモンスターを特殊召喚する事が出来る」
「二つ目はこのカードが『HERO』融合モンスターの融合召喚の素材になり、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動できる。自分はデッキから2枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる効果だ」
「俺は手札から『融合』を発動!場のリキッドマンとブレイズマンを融合する」
「融合だと!?」
「全てを凍てつかせる極寒のヒーロー!『E・HERO アブソルートZero』融合召喚!」
『E・HERO アブソルートZero』星8/水属性/戦士族・融合/効果 攻撃力2500/守備力2000
「なっ!?」
「そしてリキッドマンの二番目の効果を発動『HERO』融合モンスターの融合召喚の素材になり、墓地へ送られた場合または除外された場合に発動。自分はデッキから2枚ドローし、その後手札を1枚選んで捨てる」
[ドローカード]
※E・HERO ボルテック
※フォーム・チェンジ
[現在の手札・3枚]
※E・HERO シャドー・ミスト
※E・HERO ボルテック
※フォーム・チェンジ
「その後、手札一枚を捨てる」
[現在の手札・2枚]
※E・HERO ボルテック
※フォーム・チェンジ
手札は二枚となるが、これが融合を多用するデッキの最大の弱点である。展開の為に大量に手札を消費するのだ。運良く上級モンスターを出せてはいるが、決める時に決めなければガス欠を起こしてしまうのだ。
「バトルフェイズ、カミカゼでセットモンスターを攻撃!神風波!」
「く、モンスターは『ジェネティック・ワーウルフ』だ!」
「カミカゼの効果でカードを一枚ドロー」
[ドローカード]
※E・HERO オーシャン
「Zeroでレイレイに、ダイアンでダイレクトアタック!」
「うああああ!」
オベリスクブルー男子生徒LP:1200
「く、くそ!俺のターン、ドロー!くっ、また!」
ドローしたカードを手札に加え、何度も見直している。逆転の一枚か、モンスターカードを引けずに勝てる要素が無いのだろう。
「ち、ちくしょう。ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー」
[ドローカード]
※E・HERO フォレストマン
[現在の手札・4枚]
※E・HERO ボルテック
※フォーム・チェンジ
※E・HERO オーシャン
※E・HERO フォレストマン
「モンスター3体でダイレクトアタック」
「ぐわああああ!」
オベリスクブルー男子生徒LP:0
デュエル終了と同時に相手はひざをから崩れ落ちた。ブツブツと何かをつぶやいている。
「オベリスクブルーの俺が負けた?ラーイエロー相手に・・・」
「約束だ。もう、俺に近づかないでくれよ」
別の場所も静かになっている所を見るとデュエルが終わったか、中断して帰ってしまったのだろう。遊来も急いで寮に帰宅することにした。
「やっぱりHEROデッキ・・・難しいかも」
そう思いながら、明日はオシリスレッドに足を運ぼう。そう考えながら部屋の扉を開けて入っていった。
長くなってしまった。カードの説明を入れるとどうしても長くなってしまうんですよね。
次回はヒロイン(作品的な意味)との邂逅。
「不知火」と「魔妖」は登場させるべきか?
-
登場させる
-
登場させない