オベリスクブルーに移ってからというものの、陰口や露骨な舌打ちなどまるで差別主義をこり固めたような空間でため息をついていた。
『マスター・・・』
「・・・大丈夫だよ」
ルインも心配気味で、念の為と今現在、手にしているのは先攻でも後攻でもワンターンキルが可能で、自分がいた世界では禁止カードだらけになっているワンキルデッキだ。
遊来は今、表情に出していないが怒り心頭になっている。先程も絡んできたオベリスクブルーの生徒を一人、ワンキルしてきたのだ。
遊来はワンキルデッキを滅多な事では使わない。だが、この寮では相手は負ければ悪態をついてくるし、露骨なアンティルールを勝手に強いてくるので負ければカードを奪われる状況だ。
因みに今、オベリスクブルー内で遊来が使っているのは前の世界でも、その悪名を轟かせていた『宝札エクゾディア』である。
無論『蝶の短剣エルマ』と『鉄の騎士ギア・フリード』、『王立魔法図書館』の3枚を軸に使う『図書館エクゾ』を使おうとしたのだが、遊来はあえて『暗黒のマンティコア』と『生還の宝札』、『おろかな埋葬』を取り入れた『宝札エクゾディア』を使っている。
理由は簡単でモンスターの墓地利用が出来るためだ。この世界では墓地利用が「傲慢」とされている。それ以上の傲慢さを持っているのはお前達もそうだろうと言う為であった。
「いい加減に目を覚ましてくれないかなぁ・・・」
遊来は怒り心頭であると同時に虚しさも感じていた。ワンキルばかりしていると自分が自己防衛ばかりしている錯覚に陥る。エリート意識が変な方向に向いているオベリスクブルーの男子生徒は無謀なタイプほど遊来に挑んできていた。当然、アンティルールを決めて、だ。女子生徒は何故か、ほとんど挑んでこなかった。挑んでくるのは純粋にデュエルして欲しい、ドラグニティで対戦して欲しいと言ったものばかりだった。
だが、男子生徒のほとんどの狙いは遊来の扱う『ドラグニティ』シリーズのカードだ。ソリッドヴィジョンで映るヴィジュアルなどもあるが、自分こそドラグニティに相応しい!と信じて疑わない相手ばかりが挑んでくるのだ。確かにドラグニティは遊来しか持っていない為、希少価値も高いと言えるだろう。
そんな相手に『ドラグニティ』を渡すつもりは毛頭ない。とはいえ、対策もされやすいためこうしてワンキルデッキを使用している。
今はまだ穏やかだが、導火線に火がつく寸前の所で、ルインはそれを懸念している。もしも、言葉のトリガーを誰かが引いてしまえば間違いなく感情に任せて怒ってしまうだろう。
◇
遊来は翌日の放課後、なるべくオベリスクブルーの生徒に出会わないようにしていたのだが、運悪く出会ってしまった。
「おい、貴様!ドラグニティのカードを賭けて俺とデュエルしろ!」
「またか・・・いい加減にして欲しいよ。全く」
「お前のようにただの成り上がりが希少なカードを使うなんざ、生意気なんだよ!」
「やれやれ・・・」
「インダストリアル・イリュージョン社も馬鹿だよな。こんな奴よりも、実績のある俺に任せてくれれば・・・」
「おい」
「今頃、俺は有名になって」
「おい!」
「ん?なんだ?」
「デュエルしろよ・・・!さっきから聞いてれば下らねえ妄想ばかり並べやがって!」
「妄想だと?言葉に気をつけろ!俺はオベリスクブルーのエリートだ!!」
「るせえ!!エリートだが知らねえが、お前を俺の1ターンで倒してやる!」
「!やれるものなら、やってみやがれ!」
遊来はとうとう怒りに任せたデュエルを始めてしまった。ルインも等々といった様子で遊来の様子を見ている。
◇
「「デュエル!」」
オベリスクブルー男子生徒J:4000
龍谷遊来:4000
「先攻は俺だ!ドロー!俺は『切り込み隊長』を召喚!更に効果で『切り込み隊長』を召喚する!」
『切り込み隊長』効果/星3/地属性/戦士族/攻撃力1200/守備力400
「切り込み隊長が2体・・・切り込みロックか?」
「よく知っているな?そうだ、お前はこの2体を同時に倒さなきゃ勝てねえ!カードを1枚伏せて、ターンエンドだ!」
「俺のターン、ドロー」
[現在の手札・6枚]
※成金ゴブリン
※成金ゴブリン
※暗黒のマンティコア
※魔法石の採掘
※おろかな埋葬
※無謀な欲張り
なるほど、と遊来は口にしたが喜びはしなかった。寧ろこのターンで来て欲しいカードは2枚だけである。
「俺は手札から魔法カード『成金ゴブリン』を発動する。相手が1000ポイントライフを得る代わりに俺はカードを一枚ドロー出来る」
オベリスクブルー男子生徒J:5000
「はっ、バカか?相手にライフを1000も与えるなんてな。命乞いか?」
「・・・・ドロー」
[ドローカード]
※生還の宝札
[現在の手札・6枚]
※成金ゴブリン
※暗黒のマンティコア
※魔法石の採掘
※おろかな埋葬
※無謀な欲張り
※生還の宝札
此処で、エンジンとなるカードを引き込んだ。まるで早く勝ってしまえとデッキから後押しされているかのように。
「もう一枚『成金ゴブリン』を発動し、ドロー」
オベリスクブルー男子生徒J:6000
[ドローカード]
※手札断殺
[現在の手札・7枚]
※暗黒のマンティコア
※魔法石の採掘
※おろかな埋葬
※無謀な欲張り
※生還の宝札
※手札断殺
「更に手札から『生還の宝札』を発動。続けて『おろかな埋葬』を発動する。このカードの効果でデッキから『暗黒のマンティコア』を墓地に送る」
「デッキから自らモンスターを落とすだと?ハッ、バカな事をしやがる」
「俺はメインフェイズからバトルフェイズに移り、そのままエンドフェイズに入る」
「モンスターを引けなかったようだな!?なら、このまま倒してやる!俺の」
「待ちな、まだ俺のカードは生きているんだよ」
「なんだと!?」
「俺が墓地に送った『暗黒のマンティコア』は・・・このカードが墓地へ送られたターンのエンドフェイズ時に自分の手札・フィールド上から獣族・獣戦士族・鳥獣族モンスター1体を墓地へ送る事で効果を発動できる。俺は手札にある『獣戦士族』の『暗黒のマンティコア』を捨てて、墓地にある『マンティコア』を墓地から特殊召喚する」
『暗黒のマンティコア』星6/炎属性/獣戦士族/攻撃力2300/守備力1000
キメラモンスターに代表されるモンスターの暗黒のマンティコアが墓地より蘇生し、咆哮を上げる。
「星6のモンスターを生贄なしで!?」
「更に発動してある『生還の宝札』の効果を発動。マンティコアが墓地から蘇生したことによりカードを1枚ドロー。更に墓地へ行ったマンティコアの効果を発動。フィールドに居るマンティコアを墓地に送る事で、墓地にあるマンティコアを特殊召喚。更に『生還の宝札』が再び発動、カードを1枚ドロー。また墓地へ行ったマンティコアの効果を発動。フィールドに居るマンティコアを再び墓地に送る事で、墓地にあるマンティコアを特殊召喚。更に『生還の宝札』が再び発動し、カードを1枚ドロー」
遊来の行動にオベリスクブルー男子生徒Jは、気付いてはいけない事に気付いてしまった。いや、気付くのが遅すぎたのだった。
「ま、待て!お前、そのループはまさか!?」
「そうさ、無限ループそのもの。デッキを最後の一枚になるよう引き切るまで続けるよ」
遊来は宣言通り、デッキを最後の1枚でドローを止めるとその中から五枚のカードを抜き出してデュエルディスクへとセットした。
そこに現れたのは魔法陣で両腕両足を鎖で縛られた魔神が現れ、その鎖を引き千切り、四肢を強引に自由にした。
そう、完全復活のエクゾディアそのものである。
「エ、エクゾディアだとおおおおお!?」
「怒りの業火、エクゾード・フレイム!」
デュエルモンスターズ界の中でレアカードに位置し、更には手札に揃うと同時に勝利条件を達成してしまうというエクゾディアのカードを遊来は揃えてしまったのだ。
完全復活のエクゾディアの前ではロックもライフポイントも無意味に等しい。オベリスクブルー男子生徒Jはその場で膝をつき、信じられないといった様子になっている。
遊来自身、本来はこのデッキを使いたくはない。だが『ドラグニティ』のカードを狙う輩が居るからには守らなければならない。一緒に飛ばされてきたカードの中に1枚ずつ『エクゾディア』のパーツカードがあったのだ。
ワンキルデッキとして組んだ後は研究用として十代達に解説するために使ってはいたが、防衛しなければならないこの寮では戦闘を解禁している。
「本当にいい加減、ウンザリなんだよ。頼むから目を覚ましてくれ」
それだけ言うと遊来は自分の部屋に入ってしまった。負けるのが怖いからだとか、度胸もない奴だとか言われるが叩きのめしても、次から次へとしつこいので次第に相手にしなくなっていった。
今回はここまでで、ワンキルデッキはこの回だけです。
次回はカイザーとデュエルですが、不満があるドラグニティの面子が黒のアイツ等と徒党を組みます。
アキュリスとブランディストックとパルチザンが、です!
「不知火」と「魔妖」は登場させるべきか?
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登場させる
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登場させない