手にした竜騎士と破滅が気難しい   作:アマゾンズ

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カイザーとデュエル。

カイザーが狼狽える案件。

※演出上、エラッタ前のカードを使用しています。


第8話

授業も終わり、ワンキルばかりしているせいか最近では絡まれることが少なくなってきている。

 

友人関係を築けないのは辛いが、それでもカードを守るためと自分に言い聞かせている。

 

そんな中、放課後になって珍しい相手に声をかけられた。

 

「龍谷遊来か?」

 

「え?ええ・・貴方はカイザー・・丸藤亮先輩でしたっけ?」

 

「ああ、そうだ」

 

オベリスクブルーの三年生でデュエルアカデミアのトップに君臨し、カイザーと呼ばれるほどのデュエリスト、丸藤亮が声をかけてきたのだ。

 

「俺に何か用ですか?」

 

「ああ、急で申し訳ないが、この後時間があるのならデュエルをして欲しい」

 

「俺と・・ですか?」

 

「そうだ」

 

遊来は迷ったが、特に断る理由もない。何よりも僅かな前の世界の記憶にあるサイバードラゴンを扱うカイザーと戦ってみたいというのもあった。

 

「じゃあ、少しだけ時間をくれませんか?デッキとデュエルディスクを取ってくるので、それとなるべく人が来ない場所でお願いします」

 

「分かった、申し出を受けてくれて感謝する」

 

そう言ってカイザーと別れた後、遊来は部屋に戻り一つのデッキを手にした。手にしたデッキは主に『ドラグニティ』で使われていないカードを活かす事は出来ないかと思考した末に作り上げたデッキである。

 

「・・・・本来なら早すぎるけど、仕方ないよね。ドラグニティを他に活かすデッキって言ったらコレだもの。ん?」

 

手にしたデッキの他にEXデッキとしてしまってあるデッキケースから1枚のシンクロモンスターを取り出した。何故か呼ばれたような気がしてならなかったのだ。

 

「・・・カイザーと戦うなら連れて行けって事かな?出番は無いと思うよ」

 

そのEXデッキを手にしてカイザーの待つ場所へと向かう。その場所へと向かうと亮は腕を組んで堂々としていた。まるで挑戦者を待つ王者のように。

 

「待たせてすみません」

 

「いや、大して時間は経っていない。それに・・僅かな観客もいるようだ」

 

「?」

 

「あ、バレてたか!遊来とカイザーが歩いているのを見かけて、コッソリ着いて来たんだよ!」

 

「十代!?それに翔、隼人!明日香にジュンコ、ももえまで!?」

 

十代を始めとした仲良くなったメンバーがゾロゾロと出てきた。どうやら此処に来るのを目撃されてしまっていたらしい。

 

「僕は、アニキに着いてきたら偶然に」

 

「俺はそのまま着いて来たんだな」

 

「私は一緒にどこへ向かっているのか気になって」

 

「私は明日香さんを見かけて」

 

「ジュンコさんと同じですわ」

 

仲良くなったメンバーなら仕方ないと遊来は苦笑する。そんな中、カイザーは遊来のデッキケースから自分のデッキに向けられている何かを感じ取っていた。

 

「(?なんだ・・・?あのデッキから俺のサイバー流デッキに何かを向けられている?)」

 

「こら、カイザーのデッキが気になるのは分かるけど向けるんじゃない」

 

「(?あのデッキから発せられていたのは一体?)」

 

デッキに話しかけるなんて変な奴だとジュンコとももえは思ったが、十代や明日香は遊来の性格を多少なりとも理解しているため、そんな事は思わなかった。

 

「それでは始めましょうか?」

 

「ああ、行くぞ」

 

 

「「デュエル!!」」

 

 

 

 

龍谷遊来:LP4000

 

丸藤亮:LP4000

 

「俺の先攻です。ドロー!」

 

[ドローカード]

※手札抹殺

 

 

[現在の手札・6枚]

※ブラック・ガーデン

※比翼レンリン

※ドラグニティ-パルチザン

※サイバー・ダーク・クロー

※サイバー・ダーク・カノン

※手札抹殺

 

「俺は手札からフィールド魔法『ブラック・ガーデン』を発動!」

 

「『ブラック・ガーデン』だと?」

 

フィールド魔法の発動と同時に太く傷つける事を厭わないバラのツルが木々に巻き付き、建物にも巻き付き、黒い薔薇を僅かに咲かせた。陰鬱としているが植物の生命力に溢れている。まるで、人の踏み込めない異郷の庭のようだ。

 

「このカードは二つの効果があります。1つ目は『ブラック・ガーデン』の効果以外でモンスターが表側表示で召喚・特殊召喚される度に発動。そのモンスターの攻撃力を半分にする。その後、そのコントローラーは、相手のフィールドに「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を攻撃表示で特殊召喚します」

 

「2つ目の効果はフィールドの全ての植物族モンスターの攻撃力の合計と同じ攻撃力を持つ、自分の墓地のモンスター1体を対象として発動できる。このカード及びフィールドの植物族モンスターを全て破壊する。全て破壊した場合、対象のモンスターを特殊召喚する事が出来ます」

 

「何!?なるほど・・・弱体化とトークン生成を併せ持つのか」

 

「更に手札から魔法カード『手札抹殺』を発動!」

 

「!?」

 

手札抹殺によって亮の手札にあった『サイバードラゴン』と『パワーボンド」のカードが墓地に落ちてしまう。これには流石のカイザー亮とはいえども歯ぎしりしてしまう。お互いの手札交換が終わり、再びカードを手にする。

 

[現在の手札・4枚]

※和睦の使者

※死のデッキ破壊ウイルス(エラッタ前)

※サイバー・ダーク・ホーン

※サイバー・ダーク・キール

 

「俺はカードを2枚伏せ、モンスターを1体セット。ターンを終了します」

 

「俺のターン、ドロー!」

 

亮へとターンが移るが、瞬間に遊来は伏せカードを発動させるボタンを押した。

 

「罠カード、オープン!『死のデッキ破壊ウイルス』!!」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』だと!?」

 

「そう、このカードは自分フィールド上の攻撃力1000以下の闇属性モンスター1体を生贄にして発動できるカード。相手フィールド上のモンスター、相手の手札、相手のターンで数えて3ターンの間に相手がドローしたカードを全て確認し、攻撃力1500以上のモンスターを破壊する!」

 

「セットしていたモンスター『サイバー・ダーク・ホーン』を墓地に送り、効果を発動」

 

「!?『サイバー・ダーク』!?」

 

「相手ターンで数えて3ターンの間、あなたのドローカードを確認させてもらいますよ」

 

「くっ・・・」

 

亮は手札にあった攻撃力1500以上のモンスターカードを墓地に送る。手札の枚数は遊来より2枚優っているくらいだが、問題はそこではない。これから3ターンの間、ドローカードをピーピングされ、情報アドバンテージを失うだけではなく攻撃力1500以上のモンスターは墓地に送られる。それはつまり『サイバードラゴン』を手札から出す事はできない事を意味している。

 

「俺は魔法カード『二重召喚』を発動!このターン、俺は通常召喚を二回行う事が出来る!『プロト・サイバードラゴン』を召喚し、更に『融合呪印生物-光』を召喚!」

 

「この瞬間、『ブラック・ガーデン』の効果を発動!召喚、特殊召喚されたモンスターの攻撃力を半分にする!」

 

「っ!」

 

『プロト・サイバードラゴン』

 

効果/星3/光属性/機械族/攻撃力1100/守備力600

 

攻撃力1100→攻撃力550

 

『融合呪印生物-光』

 

星3/光属性/岩石族/攻撃力1000/守備力1600

 

攻撃力1000→攻撃力500

 

「そして、その後にそのコントローラーは、相手のフィールドに「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を攻撃表示で特殊召喚。今回は俺の場に2体です」

 

「『融合呪印生物-光』の効果発動!このカードとプロト・サイバーを生贄に!『サイバー・ツインドラゴン』を召喚!」

 

『サイバー・ツインドラゴン』

融合・効果/星8/光属性/機械族/攻撃力2800/守備力2100

 

「この瞬間『サイバー・ツインドラゴン』に『ブラック・ガーデン』の効果が発動する」

 

『サイバー・ツインドラゴン』

 

攻撃力2800→攻撃力1400

 

「そして俺の場にもう1体「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)攻撃表示で特殊召喚されます」

 

3体の「ローズ・トークン」を標的にし、攻撃を仕掛ける前にある懸念を亮は遊来にぶつけた。

 

「一つ聞きたい、その『サイバー・ダーク』のカードをどうやって手に入れた?」

 

「本土に居た際にパックから当てました。嘘は吐いていませんよ」

 

「そうか・・・まさか、裏を見る事になるとは思わなくてな」

 

「サイバー・ダークが裏・・・?」

 

「俺も噂に聞くだけだった。俺が門を叩いたサイバー流には、裏のデッキが存在すると」

 

「サイバー流、裏デッキ・・・という事ですか?」

 

「ああ、サイバー流の理念から反した暴虐のデッキと呼ばれているそうだ。実際に見たことはないが」

 

ピクリと一瞬だけ、遊来のこめかみが動く。この『サイバー・ダーク』達が暴虐という点に疑問を持ったからだ。

 

「カイザー・・と呼ばせてもらっても?」

 

「それで構わない」

 

「ありがとうございます。それと1つ、貴方は『サイバー・ダーク』に関して勘違いしていますよ」

 

「勘違いだと?」

 

「勘違い?お兄さんが?」

 

「どういう事なのかしら?サイバー流に関する事みたいだけど」

 

「なんだ、なんだ?」

 

ギャラリー側のメンバーはデュエルしているふたりの会話に耳を傾けている。遊来はなんということはなく、平然と答えた。

 

「確かに『サイバー・ダーク』の戦いは先程も使ったウイルス系カードなどによる妨害、墓地利用などキレイとは言い難いです。ですがこの動きは『ドラグニティ』と同じ部分もあるんですよ。特に墓地利用という点と後1つの効果が」

 

「もう1つの効果・・・」

 

「デュエルを再開した時にお見せしますよ。それに『サイバー・ダーク』達は『サイバー』に対して羨望を持っているだけです」

 

「羨望・・・(あの時感じたのはそれか)」

 

「ひょっとしたらサイバー流に保管されている『サイバーダーク』達は表に出て戦いたいのかもしれません。そして嘆いているのではないかと・・・『何故、自分達を戦わせてくれない』と、ね」

 

「・・・・」

 

「さぁ、まだカイザーのターンですよ」

 

「・・・っ、『サイバー・ツイン・ドラゴン』でローズ・トークンを攻撃!エヴォリューション・ツイン・バースト!第一打!」

 

瞬間、機械の双龍から放たれた二つの光がローズトークンを飲み込み、破壊してしまう。その余波が遊来へ襲いかかる。

 

「ぐううう!」

 

龍谷遊来:LP3400

 

「『サイバー・ツイン・ドラゴン』は二回攻撃が可能!エヴォリューション・ツイン・バースト、第二打!」

 

「一体目は許しますが二体目は譲りません!罠カード、オープン!『和睦の使者』このカードにより、戦闘で発生するダメージはゼロになり、モンスターは破壊されずライフポイントも変動しない」

 

「・・・ターンエンドだ(『ブラック・ガーデン』が発動している限り、決定打を与えられはしないか)」

 

亮は今の状況が有利なのは遊来であると理解していた。こちらが高い攻撃力のモンスターを出した所でその数値を半分にされてしまう。ましてや『パワー・ボンド』を使っていれば、完全に此方が何も出来ずに負けていた。そう考えれば『手札抹殺』のカードを使われたのはありがたい事だ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※終末の騎士

 

[現在の手札・2枚]

※サイバー・ダーク・キール

※終末の騎士

 

「此処から、サイバー・ダークの恐ろしさを見せてあげます。『サイバー・ダーク・キール』を召喚!」

 

『サイバー・ダーク・キール』

星4/闇属性/機械族・効果/攻撃力800/守備力800

 

甲高い機械音声のような鳴き声と共に小さな龍を模した機械竜が現れる。だが、その姿に合わないステータスの低さに対しギャラリーのメンバー達は首をかしげた。

 

「攻撃力が800?」

 

「恐ろしさを見せると言った割には大した事ないじゃない」

 

「本当ですわ」

 

「攻撃力が低い、幾ら『サイバー・ツイン・ドラゴン』が弱体化してるといっても無理だよ」

 

「いや、遊来は意味の無い召喚はしないんだな。きっと何かあるはずなんだな」

 

「ああ、きっとそうだぜ!」

 

ギャラリーの疑問を解決すべく、遊来は更に宣言を口にする。

 

「『サイバー・ダーク・キール』を召喚した事で『ブラック・ガーデン』の効果が発動、カイザーの場に「ローズ・トークン」(植物族・闇・星2・攻/守800)1体を出現させ、更に『ブラック・ガーデン』の効果で攻撃力が半減」

 

 

『サイバー・ダーク・キール』

攻撃力800 → 攻撃力400

 

 

「・・・・」

 

 

「更に『サイバー・ダーク・キール』の効果を発動。このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に眠るレベル3以下のドラゴン族モンスター1体をこのカードに装備させる。俺は『比翼レンリン』を選択!」

 

『比翼レンリン』が『サイバー・ダーク・キール』の下へと潜り込み本体から伸びているコードが『比翼レンリン』に装着されていく。『サイバー・ダーク・キール』は甲高く鳴いているが、『レンリン』はまるで受け入れているかのように大人しく、穏やかなままだ。

 

「更にその攻撃力を吸収し、攻撃力をアップ」

 

 

『サイバー・ダーク・キール』

攻撃力400 → 攻撃力2500

 

 

「この状況下で攻撃力2500!?」

 

「おかしいわ『サイバー・ダーク・キール』も『ブラック・ガーデン』の影響を受けているはずなのに!」

 

明日香の疑問に対し、遊来は一瞬だけ視線を向けたが説明しようと亮へと向き直る。

 

「どうしてこうなったか、説明しますよ。まず最初に『ブラック・ガーデン』の効果によって『サイバー・ダーク・キール』の攻撃力は800から400に半減します。そしてそこへ『比翼レンリン』を装備しました。更にそこで『比翼レンリン』の効果。このカードを装備しているモンスターの攻撃力は元々の攻撃力が1000になり、2回攻撃が可能になっています。最後に『サイバー・ダーク・キール』自身の効果によって『比翼レンリン』の攻撃力1500を吸収している事により、攻撃力が2500となる訳です」

 

「なるほどな・・・よく噛み合っている。噛み合いすぎてまるで『サイバー・ダーク』を助ける為のようなカードだな」

 

「・・・ローズトークンで、カイザーの場のトークンを破壊!そして『サイバー・ダーク・キール』で『サイバー・ツイン・ドラゴン』を攻撃!ダーク・ウィップ!!」

 

トークンは互いに消滅し『サイバー・ツイン・ドラゴン』を『サイバー・ダーク・キール』が尻尾を鞭のように叩きつけ、『サイバー・ツイン・ドラゴン』を爆発させ破壊した。その余波が襲いかかる。

 

「うっ!」

 

丸藤亮:LP2900

 

「更に『サイバー・ダーク・キール』の効果!このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、300ポイントのダメージを与える」

 

「何!?」

 

丸藤亮:LP2600

 

カイザーと称される亮から圧倒的に優位に立った遊来に対して、明日香、ジュンコ、ももえ、翔、隼人は驚愕の表情を浮かべており、十代は興奮を抑えきれない様子だ。

 

「亮から圧倒的優勢を奪っているなんて・・・信じられない」

 

「今まで実力を隠していたわけじゃないのね」

 

「次元が違いすぎますわ」

 

「お兄さんが追い込まれるなんて・・・」

 

「凄すぎて理解が追いつかないんだな・・・」

 

「すっげえ・・・!まるで『ドラグニティ』みたいな動きをするんだな!遊来!」

 

十代の言葉に亮はハッとした。そうだ、この動きはまるで『ドラグニティ』そのもの。『サイバー・ダーク』という形をとっているが、モンスターがモンスターを装備する効果、更には墓地をも利用する展開力、これらは全て遊来がデュエルしている際に『ドラグニティ』で見てきた動きばかりだったのだ。

 

「相変わらずデュエルの見抜きや洞察力はすごいな、十代」

 

「確かに十代の言う通り『ドラグニティ』の動きと酷似しているな『サイバー・ダーク』は」

 

「似ているからこそ、使っているというのもあります。メインフェイズ2」

 

「!?(二回攻撃をして来なかった?)」

 

「『ブラック・ガーデン』と場にいるローズトークンを破壊して『サイバー・ダーク・ホーン』を守備表示で特殊召喚。ターンエンド(このまま終わったら、やりたい事ができない)」

 

遊来が攻撃しなかったのはこの場面で倒してしまえば意味はないと考えたからだ。決して相手を侮っている訳ではない。寧ろ『ブラック・ガーデン』の恩恵を受けたままでは決着がアッサリついてしまう。それでは意味がないのだ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』の効果、1ターン目。手札を見せてください」

 

「・・・」

 

亮が見せてきたのは『タイムカプセル』であった。魔法カードのためウイルスの影響は受けない。

 

「『タイムカプセル』を発動。デッキからカードを1枚選択し、裏側表示でゲームから除外する。発動後2回目の自分のスタンバイフェイズ時にこのカードを破壊し、そのカードを手札に加える」

 

「・・・何をサーチしたんだろうか」

 

「更に『サイバー・ラーバァ』を守備表示で召喚。ターンエンドだ」

 

『サイバー・ラーバァ』

星1/光属性/機械族・効果/攻撃力400/守備力600

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※竜の渓谷

 

[現在の手札・2枚]

※竜の渓谷

※終末の騎士

 

「『サイバー・ダーク・キール』で『サイバー・ラーバァ』を攻撃、ダーク・ウイップ!」

 

「くっ!『サイバー・ラーバァ』の効果、戦闘で破壊された時、戦闘ダメージをゼロにし同名カードを特殊召喚」

 

「ですが、『サイバー・ダーク・キール』のバーンダメージは受けてもらいます。ターンエンド」

 

丸藤亮:LP2300

 

「俺のターン、ドロー!」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』の効果、2ターン目。手札を見せてください」

 

「ああ」

 

見せてきたのは『サイバネティック・フュージョン・サポート』魔法カードであった。だが、遊来はその時点で恐ろしい引きだと痛感する。

 

 

「このターン、俺は『サイバー・ヴァリー』を召喚。このままターンを終了する」

 

『サイバー・ヴァリー』

星1/光属性/機械族・効果/攻撃力0/守備力0

 

此処で『サイバー・ヴァリー』とは手札に温存していたのだと遊来は思考する。攻めようにも『サイバー・ヴァリー』には三つの効果があり、どれも強力なものばかりだ。

 

一つはこのカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動できる。デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する効果。

 

二つ目は自分のメインフェイズ時に発動しこのカードと自分フィールド上に表側表示で存在するモンスター1体を選択して除外し、その後デッキからカードを2枚ドローする効果。

 

三つ目は自分のメインフェイズ時に、自分の墓地のカード1枚を選択して発動でき、このカードと手札1枚を除外し、その後選択したカードをデッキの一番上に戻す効果だ。

 

『サイバー・ラーバァ』を攻撃すれば最後の1枚が場に召喚され、ドローを加速させてしまう。

 

『サイバー・ヴァリー』を攻撃すれば攻撃対象に選択した事になってしまう為、除外されバトルフェイズを終了させられ、1枚ドローされてしまう。

 

攻撃を放棄すれば、結局はドロー加速なのは変わらない。1枚か2枚のドローは確定的になっている状況だ。

 

「俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※戦線復帰

 

 

[現在の手札・3枚]

※戦線復帰

※竜の渓谷

※終末の騎士

 

 

「俺はカードを一枚伏せて、バトルフェイズ!『サイバー・ダーク・キール』で『サイバー・ヴァリー』を攻撃!」

 

「この瞬間、『サイバー・ヴァリー』の効果を発動!このカードが相手モンスターの攻撃対象に選択された時、このカードを除外して発動。デッキからカードを1枚ドローし、バトルフェイズを終了する!」

 

「戦闘前にバトルフェイズ終了させられた為、モンスターを破壊していません。よってバーンダメージもありません。ターンエンド」

 

「俺のターン、ドロー」

 

「『死のデッキ破壊ウイルス』の効果、最後のターン。手札を見せてください」

 

「・・・・」

 

見せてきたのは『融合』であった。『死のデッキ破壊ウイルス』のピーピングを全て躱しきり、更には『サイバネティック・フュージョン・サポート』と融合が揃ってしまっている。この後、何が起こるかは遊来自身も簡単に想像できてしまう。

 

「そして、二回目のスタンバイフェイズ『タイムカプセル』を破壊し、除外していたカードを手札に加える。戻したのは『異次元からの宝札』このカードの効果により、お互いにカードを2枚ドローする」

 

「・・・」

 

[ドローカード]

※調和の宝札

※ドラグニティ-ファランクス

 

「そして、『サイバネティック・フュージョン・サポート』を発動!ライフポイントを半分支払い、俺は墓地に眠る3体の『サイバー・ドラゴン』を除外し『融合』を発動!『サイバー・エンド・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!」

 

丸藤亮:LP1150

 

 

『サイバー・エンド・ドラゴン』

星10/光属性/機械族・効果/攻撃力4000/守備力2800

 

「サイバーエンド・・・」

 

遊来はその圧倒的な三つ首の機械の究極竜を見ている。重圧はあるがそれ以上に自分の中で何かが燻っている感覚を味わい、『サイバー・エンド・ドラゴン』が何かを炊きつけようとしているような、そんな予感がある。

 

「とうとう出たわ『サイバー・エンド・ドラゴン』」

 

「カイザーの代名詞なんだな・・・」

 

「おおっ!あれがカイザーのフェイバリットカードかぁ!」

 

ギャラリーも盛り上がっている中、亮は容赦のない攻撃を仕掛ける。

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』で『サイバー・ダーク・ホーン』を攻撃!エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

「うあああああ!!!」

 

龍谷遊来:LP200

 

守備表示の『サイバー・ダーク・ホーン』を破壊され、貫通効果によって1ターンでライフポイントの差を逆転されてしまった。一撃を受ければ終わってしまう。その状況で遊来は心の中で楽しいという感情が出てきていた。ほとんどデュエルから身を引いている心境であり、挑まれたら作業のようにしていたデュエルとは何かが違う。

 

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

 

「お、俺のターン、ドロー」

 

[ドローカード]

※闇の誘惑

 

[現在の手札・5枚]

※竜の渓谷

※終末の騎士

※調和の宝札

※ドラグニティ-ファランクス

※闇の誘惑

 

「手札から魔法カード『闇の誘惑』を発動。カードを2枚ドローし手札にある『終末の騎士』を除外する」

 

[ドローカード]

※サイバー・ダーク・クロー

※サイバー・ダーク・カノン

 

「更に『調和の宝札』を発動。手札にある攻撃力1000以下のドラゴン族チューナーモンスター『ドラグニティ-ファランクス』を捨て、カードを2枚ドロー」

 

[ドローカード]

※ガード・ブロック

※ラビードラゴン

 

[現在の手札・5枚]

※竜の渓谷

※サイバー・ダーク・クロー

※サイバー・ダーク・カノン

※ガード・ブロック

※ラビードラゴン

 

「手札の『サイバー・ダーク・クロー』を手札から捨てて効果発動。『サイバーダーク』と名の付く魔法か罠カードを手札に加える。『サイバーダーク・インパクト!』を手札に。更に『サイバー・ダーク・カノン』を手札から捨てて効果発動。デッキから機械族の『サイバーダーク』モンスターを手札に加える。デッキから『サイバー・ダーク・エッジ』を手札に加えます」

 

「手札交換か?」

 

「サイバーエンドが・・・カイザー、貴方の言うサイバー流の光なら・・・。俺はその裏、サイバー流で言う闇を見せましょう」

 

「闇だと?」

 

「そうです。更にフィールド魔法『竜の渓谷』を発動!」

 

黄昏の空と竜達が飛び交う渓谷、このフィールド魔法は遊来の代名詞になっていると言っても過言ではない。

 

「出た!遊来くんの代名詞のカード!!」

 

「これが・・・!」

 

「遊来さんの代名詞・・・」

 

「やっぱり『ドラグニティ』関連のカードはすげえぜ」

 

ギャラリーは騒いでいるが亮は口元に笑みを浮かべながら、遊来に声をかけた。その目は純粋にデュエルを楽しんでいる目だ。

 

「お前の全力、見せてみろ!」

 

「『竜の渓谷』の効果を発動!手札を一枚捨てて、更にデッキからドラゴン族のモンスター『ドラグニティーパルチザン』を墓地へ!更に『サイバーダーク・インパクト!』を発動!墓地の『サイバー・ダーク・ホーン』手札の『サイバー・ダーク・エッジ』フィールドの『サイバー・ダーク・キール』をデッキに戻し、融合デッキから融合召喚扱いで『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』を攻撃表示で召喚!!」

 

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』

星8/闇属性/機械族・効果・融合/攻撃力1000/守備力1000

 

「レベル8で攻撃力が1000?」

 

「『サイバー・ダーク・ドラゴン』の効果。このカードは墓地に眠るドラゴン族をレベル制限無しで装備可能!俺は『竜の渓谷』で墓地に送った『ラビードラゴン』を『サイバー・ダーク・ドラゴン』に装備!」

 

『ラビードラゴン』に『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』が自身の身体へと装着するかのようにのしかかり、コードを繋いでいく。嫌がる素振りを見せる『ラビードラゴン』を無視し、攻撃力を吸収した『サイバー・ダーク・ドラゴン』はより一層高くともくぐもった鳴き声を上げる。

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』

攻撃力1000 → 攻撃力3950

 

「攻撃力3950!?」

 

「でも、サイバーエンドには僅かに届いてない!」

 

「まだ、効果は続く!俺の墓地に眠るモンスター1体につき攻撃力が100ポイントアップ!俺の墓地には7体、よって700ポイント更に攻撃力アップ。よって攻撃力は」

 

『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』

攻撃力1000 → 攻撃力3950 → 攻撃力4650

 

「これがサイバーダークの力の形・・・!サイバーエンドを陽とし、それと対となる陰のサイバーエンド・・それが『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』」

 

「『サイバー・エンド・ドラゴン』の攻撃力を上回った!この攻撃が通れば!」

 

「亮をここまで追い込むなんて・・・」

 

「カイザーが・・・本当に信じられない・・・」

 

「まさか・・・としか言えませんわ」

 

「お兄さん・・・」

 

「遊来がまた圧倒的優位に立つんだな・・・」

 

ギャラリー達はこの学園のトップであるカイザーが黒星を刻まれるかもしれない、そんな予感が走る。それも入学してきたばかりの新入生に、である。

 

「龍谷遊来、礼を言う。俺もまだまだ道半ばだという事を知る事が出来た。そして、サイバー流の二面性をも。否定するのではない、忌避するものでもない。弱さは誰もが持っているもの・・・それを持って前へと進む事が必要なのだと」

 

「弱さを・・・否定せず受け入れる」

 

翔は兄の言葉に何か思うことがあったのだろう。何度も口にし続けている。

 

「ええ、ですが勝利をもぎ取らせてもらいますよ。『鎧黒竜-サイバー・ダーク・ドラゴン』の攻撃!」

 

「だが、俺も唯では負けられん!最後まで足掻かせてもらう!罠カード、オープン!『決戦融合-ファイナル・フュージョン』!」

 

「!?そのカードは!」

 

「そう、このカードは自分フィールドの融合モンスターが相手フィールドの融合モンスターと戦闘を行うバトルステップに、その融合モンスター2体を対象として発動する事が出来る。その攻撃を無効にし、お互いのプレイヤーはその融合モンスター2体の攻撃力の合計分のダメージを受ける。だが、迎撃はさせてもらうぞ、『サイバー・エンド・ドラゴン』!!エターナル・エヴォリューション・バースト!」

 

「『サイバー・ダーク・ドラゴン』!!フル・ダークネス・バースト!」

 

陽と陰、異なるようで対極の位置に居る2体の機械竜は性質の違うエネルギー波を発射し拮抗している。その余波が亮と遊来を襲い、『決戦融合-ファイナル・フュージョン』の効果によってお互いのライフポイントに合計8650のダメージを受けた。

 

「うおおお!」

 

「うあああ!」

 

丸藤亮:LP0

 

龍谷遊来:LP0

 

「ひ、引き分け!?」

 

「意外な結果なんだな・・!」

 

翔と隼人が驚きを隠せない中、亮は遊来に近づき、手を差し出した。その手を遊来は掴むと立ち上がった。

 

「ありがとう、良いデュエルだった」

 

「こちらこそ、けど・・・あんな自爆のような力押しをしてくるとは思わなかったですよ」

 

「ふっ、負けたくはないからな」

 

「そうですね」

 

笑みを浮かべて一通り会話すると十代が遊来の肩に腕を回してきた。興奮した様子で笑っている。

 

「すごいデュエルだったな!まさか、カイザーと互角に戦うなんて!くぅーーー!俺もカイザーとデュエルしてえ!!」

 

「いやいや、俺が押されてたんだから」

 

「それでも圧倒的に優位はとってたじゃんか!」

 

「アハハ、まあね」

 

「本当に貴方の強さはどうなっているのかしらね。知識も豊富なのは認めてるけど」

 

「そこまで強くないさ、勝ってもいないし」

 

「亮とデュエルをしてそんなことが言えるのは貴方くらいよ」

 

ジュンコとももえを伴って明日香も遊来に声をかけてきた。だが、遊来の発言に少々呆れているが嬉しそうな目で見ている。作業ではなく、少しでもデュエルを楽しみたい心が遊来にあると分かったからだろう。

 

「龍谷遊来」

 

「?」

 

「これからもデュエルの相手をしてくれないか?それに『サイバー・ダーク』に関しても学びたいからな」

 

「俺でよければ、構いませんよ。ああ、そうだ!それと相談が」

 

遊来はオベリスクブルーになってから、アンティデュエルや陰口などで居心地が悪いという旨を正直に話した。

 

それを聞いたジュンコとももえは罰が悪そうな顔をし、明日香からは謝罪、十代はそんな事になっていたのかと驚かれ、翔と隼人も十代と同様に驚いていた。

 

「なるほど、お前がワンキルデッキでオベリスクブルーの生徒を相手にしていた噂の背景にはそんな事があったのか」

 

「『ドラグニティ』を守るためでしたからね」

 

「それならば今回の件が役立つかもしれないな。俺に任せてもらえるか?」

 

「?」

 

それからというもの、翌日から遊来に対して挑んでくる者は居なくなっていた。デュエルは挑まれるが大半は『ドラグニティ』を見せて欲しいというものや対戦して欲しいという感じでアンティルールを強いて来る生徒はほとんど皆無であった。だが、それと同時に。

 

「竜騎士様が来たわ!」

 

「竜騎士様~!」

 

「竜騎士だ!竜騎士が来た!」

 

「なんでさ・・・?」

 

そう、遊来はオベリスクブルーの生徒達から「竜騎士」と呼ばれるようになってしまったのだ。本人としては恥ずかしい事この上ないのだが、生徒達はその呼び方を止めようとはしない。

 

カイザー亮とデュエルした日からすぐに亮は遊来は自分と同等以上の実力を持っているデュエリストである事を肯定する旨を生徒達に話したのだ。

 

また、カイザーと互角に戦えるデュエリストであり『ドラグニティ』という竜の背に乗って戦う戦士達を扱う姿から呼び名を名付けた生徒が居たそうで、一度だけ恥ずかしいから止めてくれと頼んだのだが、皇帝と並び立つ竜の騎士が居るという意味を込めているので止めるつもりはないと念を押されてしまった。

 

「今度は別の意味で気苦労だよ・・・」

 

嬉しいやら恥ずかしいやら、そんな複雑な思いを抱きながら遊来は軽くため息をついていた。




引き分けの方法を思いついたのがこれでした。これ以上、浮かばなかったのも事実です。

カイザーが狼狽える案件というのは『サイバー・ダーク』の事です。

では、次回。

「不知火」と「魔妖」は登場させるべきか?

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