戦姫絶唱シンフォギアFM~奏者と機兵の円舞曲~ 作:D-ケンタ
けど脳内に浮かんでしまったんだ!!だったら突き進むしかあるめえ!!
2114年、日本―――
「うあ〜、私呪われてるー……」
私立リディアン音楽院。海を臨む高台に建てられたこの音楽学校の寮の一室にて、本日入学したばかりの少女、立花響はぼやいていた。
「半分は響のドジだけど、残りはいつものお節介でしょ」
「人助けと言ってよ。人助けは私の趣味なんだから」
「響の場合ドが過ぎてるの」
同室の親友、小日向未来のツッコミに反論するものの、彼女はそれもバッサリと切り捨てる。
この響という少女、先述した通り今日が入学初日だったのだが、猫を助けて遅刻し、更には同じクラスの子に教科書を貸してしまうなど、今の時代において珍しくお人好しが過ぎるのだ。
だが彼女は親友の注意にもそこまで堪えてないのか、ベッドに戻ると一冊の雑誌を持ち上げて興奮したような声を上げた。
「CD発売はもう明日だっけ!やっぱカッコいいな〜翼さんは〜」
「翼さんに憧れて、リディアンに進学したんだもんね。大したものだわ」
「だけど、影すらお目にかかれなかった。そりゃ、トップアーティストなんだから、簡単に会えるとは思ってないけどさ」
そう言い終えて、響はふと服の襟を引き、自身の胸に視線を落とした。そこには、まるで音楽用語のフォルテに似た傷跡が刻まれていた。
(二年前のあの日、私を助けてくれたのは、ツヴァイウィングの二人に間違いなかった。だけど退院してから聞いたのは、日防軍の人達がノイズと戦ったことと、奏さんや多くの人々が犠牲になったことだけ……)
二年前、ツヴァイウィングのライブ会場に突如としてノイズが襲来。警備についていた日防軍の奮闘空しく、大勢の犠牲者が出た。公式な情報はこうなっている。
戦っているツヴァイウィング、彼女は見たものは幻だったのか。しかし、胸の傷がそれは違うと物語っている。
(私が翼さんに会いたいのは、あの日何が起こっていたのか、分かるような気がしているから)
◇
某所―――
草木も眠りにつく深夜の森林地帯にて、熾烈な防衛戦が繰り広げられていた。
「撃ちまくれ!奴らをこれ以上進ませるな!」
「畜生!止まれ、止まれええっ!?」
ノイズ。13年前の国連総会で特異災害として認定された未知の存在であり、人類を脅かす脅威である。
その大軍を押さえんと、日防軍特異災害対策機動部一課の部隊が出動したのだが、状況は芳しくない。
『た、隊長!やはり通常兵器では効果がありません!?』
部隊の中にはヴァンツァーの姿もあった。
21世紀中半に開発された、人型機動兵器ヴァンツァー。機動力が高く、少数でも高い戦闘能力を有し、戦場の風景を一新させた、最強の機動兵器。
しかし、そのヴァンツァーもノイズが相手では分が悪い。ノイズには位相差障壁という特性があり、これのせいで物理法則に則ったヴァンツァー含む一般兵器では、ノイズに対してゼロから微々たる効果しか及ぼすことができない。
『取り乱すな!僅かでもいい、ノイズ共の自然消滅までの時間を稼ぐんだっ!』
『そうは言ってもよ辰川、このままじゃジリ貧だぜっ!?』
『片支那の言う通りだ、あまり長くは……ぐっ!?』
彼等の言う通り、いくらノイズへと火力を集中させても、そのほとんどはノイズの身体をすり抜けていき、ノイズの進行を止めることはできない。
このままでは時間の問題。そう思われた時―――。
「
戦場に、一つの歌が響き渡った。
『な、なんだ?歌?』
『これは、まさか……』
歌が聞こえたと同時、一機のヘリが上空を通過し、そのヘリから人が飛び降りた。いや、降下したというべきだろう。その人物の身体は光に包まれ、地上に着地する頃には、不思議な武装を身に着けていた。
『あれは……』
『き、来てくれた!おい辰川、やっぱり来てくれたぜ!』
思いもよらぬ援軍に興奮している間にも、その人物はノイズを斬り伏せていく。
『すげえ……』
『流石は、戦場の歌姫、か……』
そして、ついに大型種のノイズすらも一刀両断し、あれほど部隊を苦しめていたノイズは、姿かたちもなくなっていた。
その光景に、一課の部隊の面々は放心するしかなく、ヴァンツァーパイロットである彼等も同じであった。
『風鳴、翼……』
ヴァンツァー隊の隊長である、辰川遼はポツリと彼女の名を呟いた。二年前、天羽奏と共に戦っていた、彼女の名を。
――――――
帰投した後、辰川は隊の宿舎にある自室のベッドに仰向けになりながら、彼女の事を思い出していた。
(結局、また聞けなかったな)
あの戦闘の後、彼女はすぐに帰投していった。辰川は初出撃となる二年前のライブ会場の惨劇の際に、彼女ともう一人、天羽奏に助けられている。彼女達と共闘しノイズと対峙したものの、結果として当時の辰川が所属していた分隊の隊長である岩山孝治、そして天羽奏が戦死し、辰川自身も病院送りとなった。
彼女達は何者なのか、何故ノイズに対抗できるのか、そして……何故天羽奏が死んだのか、辰川は知りたかった。
しかし、退院後事件のことについて調べても、公にされていることしか出てこず、更には軍上層部に不穏な動きもあり、それ以上調べることはできなかった。
このままでは埒が明かないと、彼は日防軍の中でもノイズ対策を専門とする、特異災害対策機動部一課へと転属。その甲斐あり、何度かノイズとの戦場にて、風鳴翼の姿を確認することはできた。だが、結果は残念なものであり、未だに会話どころかまともに顔も合わせてはいない。
(どうしたものか……)
「お―す、辰川。また考え事か?」
そう考えこんでいる時、部屋のドアを開け、同じ部隊の片支那健治が入室してきた。
「片支那か。まあ、な」
「そう変に考えこんでもいいことないぞ。ホレ」
「サンキュ」
そう言いつつ片支那は手に持った缶コーヒーを辰川へと投げ渡した。
片支那は辰川の同期であり、ヴァンツァーパイロットになってからも同じ分隊に配属され、更には辰川の一課転属の際にも共に転属した、所謂腐れ縁だ。
「そう言えば、金城は大丈夫か?今日が初めての出撃だったんだろ?」
「ああ。未だにショックが抜けないらしくてな、今は宮山さんが付いてるよ」
宮山信彦もまた、二人に続いて一課へと転属した仲間である。最年長ということもあり、転属後暫くは分隊の隊長を務めてきたが、今年に入り新人の金城桂が配属された際に、隊長を辰川へと譲った。以降は再び4番機の位置についている。
「まあアイツも暫くしたら慣れるだろうよ。俺やお前みたいにな」
「そうだといいな」
「まあそんなことよりもよ。お前見たか、今日の翼ちゃん!滅茶苦茶カッコよかったな!」
「はあ、またそれか」
突如切り出された話の内容に呆れた様子で返す辰川。
「またとは何だ。翼ちゃんスゲーよな、歌も上手くて、それでいて強いなんて、流石トップアーティストだぜ!」
「トップアーティストということとは関係ないと思うが……」
熱く語る片支那。彼は以前より風鳴翼の熱狂的なファンであり、辰川について一課に転属したのも、彼の話を聞き、生の翼に会えるかもしれないと思ったからと語るほどである。
「ところで、お前明日非番だったよな」
「まあ、そうだが」
そう答えると片支那は辰川に背を向けて、先程の熱さはどこへやら、トーンを抑えて語りだした。
「……実は明日、翼ちゃんの新しいCDが発売されんだよ」
「……はぁ、それで?」
片支那は振り向いて辰川の肩をガシッと掴むと、中々に迫力のある顔で言った。
「頼む!俺の代わりに買ってきてくれ!」
「自分で買えばいいだろ」
「俺明日巡回任務なんだよ!次の非番の日にゃ、初回特典付きの奴は全部売り切れちまってるに決まっている!だから頼む!」
果てには涙を流しながらの懇願に、辰川は折れるしかなかった。
◇
「ありあとざまっしゃー」
「……俺もお人好しだな」
翌日、片支那に頼まれた特典付きのCDを手にCDショップを後にする辰川の姿がそこにあった。
「しかし、巡回任務以外で街に出るのも久しぶりだな」
ふと、辰川は足を止め、街の風景を見渡す。2年前の惨劇の後も、日本では騒乱が続いた。惨劇の生存者へのバッシングや、日防軍横須賀基地での爆発事故。更には軍強硬派によるクーデター。これは失敗に終わったものの、先の事件と合わせ、世間の日防軍への風当たりは強くなった。しかし、それも過去の話と言わんばかりに人々は元の生活を取り戻しつつある。
「俺ももう少し転属するのが遅かったら、巻き込まれてたかもな」
タイミングがいいのか悪いのか、日防軍関連の事件が起こったときには、辰川たちは既に特異災害対策機動部へと転属していた。その為クーデターにも巻き込まれず、世間からの風当たりも比較的マシであった。
「そういえば、一連の事件にはU.S.N.も関与してたんじゃなかったっけな……あ?」
当時の事について思い起こしていた辰川だが、曲がり角を曲がった先で視界に飛び込んできた光景に、思考を止めてしまった。しかし、それも仕方ないだろう
道路の上に、
「な……んで」
それが意味することをすぐに理解した。何故なら2年前に遭遇して、転属してからは幾度となく対峙してきたのだから。
「いやあぁぁあっ!?」
「っ!?くそったれっ!!」
すぐさま悲鳴がした方向に走りだしながら、端末を取り出して今現在巡回任務中の仲間へと繋げる。
「片支那っ!今どこだっ!?」
『いきなりどうした?丁度スカイタワーの下辺りだけど。てかお前、翼ちゃんのCDは』
「ノイズの痕跡を発見した!恐らく今現在も民間人が襲われている!」
『何だとっ!?』
突如告げられた緊急事態に、片支那は口調を荒げる。
「お前は一課の本部に報告してくれ!規模は分からないが、下手すればかなりの被害が出るぞ!!」
『お前はどうすんだ!?』
「俺は民間人の救助に向かう!ポイントは端末のGPSから割り出してくれ!!」
『分かった、すぐに助けに向かうからな!死ぬんじゃねえぞ!!』
それを最後に通信を切り、辰川は声の元へと急ぐ。その時、彼の脳内には、2年前の光景がフラッシュバックしていた。もはや一刻の猶予もない。
「間に合ってくれよ―――っ!!」
用語・設定解説
世界観/基本的な歴史はフロントミッションに準拠。そこにのシンフォギア世界を組み込んでいる(特異災害対策機動部が日防軍内の部署になっているなど)。
ヴァンツァー/正式名称はヴァンダー・パンツァー(WAP)。21世紀から22世紀にかけて急速に発展した人型機動兵器。パーツの組み替えによる高い汎用性と戦闘能力から、最強の名を冠していた。(詳しくはフロントミッションシリーズをプレイしてください)
しかし、如何なヴァンツァーと言えど、ノイズには対抗手段がなく、民間人の避難完了までの壁にしかならないというのが現状である(強制地獄の壁状態)
日防軍/自衛隊を前身とする組織であり、国防三軍と国防統合軍から成る二重の指揮系統を持つ。
ライブ会場の惨劇の後、色々やらかした(詳しくはフロントミッション3rdをプレイしてください)。
なお、今作では特異災害対策機動部も日防軍所属ということになっているが、任務の内容から半ば独立している。
こんな感じで、作中の設定をちょこちょこ載せていきます。
質問は随時受付中です!批判も大歓迎!
……万人受けしないと自分自身がよく理解しているしね。