戦姫絶唱シンフォギアFM~奏者と機兵の円舞曲~ 作:D-ケンタ
まさか二話連続で出ないとは……話の進行上、仕方ないのです!
「ようこそ!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!」
「「……は?」」
時間は少し遡る―――
二課の職員に連れられて車で向かった先に、辰川達と一緒にいる響には見覚えがあった。
「……ここは」
「何で、学院に?」
連れられてきた先は、彼女にとってなじみある場所、私立リディアン音楽院であった。そのまま車を降りると校舎の内部へと歩を進める。
暫し校内を進んでいくと、中央棟と呼ばれる場所まで来ると、その一角にあるドアを開き、一向は中へと入っていく。まるで密室のようだったが、先導した二課の男性が端末をかざすと、なにやら仰々しい装置がせり出してきた。
「な、なんだぁ?」
何ごとかと片支那が辺りを見回すと、ガラス張りになっている所の奥にある壁が上の方へと動いているのに気づいた。
「エ、エレベーターだったのか……?」
「さあ、危ないから掴まっていてください」
「危ないって……うおっ!?」
言われるまませり出した手摺を掴む辰川、片支那、響の三人。その直後、部屋が大きく揺れ、三人はバランスを崩しそうになった。
「のああああああああっ!」
「これは……!」
「ヴァンツァー程じゃないが、結構……!」
そして急降下すること暫く、少し慣れたのか、先程悲鳴を上げたのが恥ずかしくなったのか響は愛想笑いを浮かべたが……。
「愛想は無用よ」
翼がバッサリとそう言い放った。
(……なんか感じ悪いな)
(そうか?クールな翼ちゃんもいいと思うが)
(お前なあ……ん?)
ふと窓の外に視線を向けると、そこには広大な空間が広がっていた。壁面には何やら不思議な文様が描かれている。
「お、おお」
「なんだありゃあ……」
外の光景に驚愕する辰川達だったが、それをよそに翼は更に言い放った。
「これから向かうところに、微笑みなど必要ないから」
「……」
その言葉にどのような意味があるのかは分からないが、辰川はひそかに警戒心を強めた。
暫くして、エレベーターの降下が終わった。
(どうやら着いたようだな。……何事もなければいいが)
そう思いつつ、辰川はさりげなく腰のホルスターに手を添える。片支那も同じ、いつでも動けるように身構えていた。
そして、ドアが開いた先で待ち受けていたのは―――。
パンッパパンッ
「「ッ!!?」」
乾いた破裂音が響き、反射的に二人の身体は動いていた。
辰川は響の襟首を引いて後ろに退げながら庇うように前へ立つと、すぐさまホルスターから銃を抜いて音の方向へと構える。
片支那も同じく、姿勢を低くしつつ響の側へと寄り、慣れた動作で銃を構えた。
いつでも撃てるように身構えていた二人だったが……。
「ようこそ!人類守護の砦、特異災害対策機動部二課へ!」
視線の先では、ハットをかぶった筋骨隆々な男性が歓迎の言葉を辰川達へと投げかけ、更に職員らしき面々が拍手で迎えていた。
「「……は?」」
それを見た二人は銃を構えた姿勢そのままに目を丸くし、素っ頓狂な声を上げてしまった。
「さあさあ、そんな物騒なもの下ろして、お近付きの印に記念撮影でも」
「あ?」
呆けている辰川、片支那、響の三人に近づいてきた白衣の女性が、二人が構えている銃を押し下げると手に持ったスマートフォンのインカメラを彼らに向ける。もちろん、自分も入るように。
「い、イヤですよぉ!手錠をしたままの写真だなんて、きっと悲しい思い出として残っちゃいます!」
「思い出はともかくとして、俺達は写真を取りに来たわけじゃないからな。まあ、アンタみたいな美人とのツーショットは大歓迎だぜ?」
「あらやだお上手ね」
サラリと口説き文句を言った片支那に代わり、前に出た辰川が話を進める。
「このバカの言うとおりだ。それに、なんで初めて会うアンタらが、俺達の名前を知っているんだ?」
「お、おおぉ……!」
そう言って視線を向けた先には、何故か辰川達の名前が書かれたプレートが天井からぶら下がっていた。
ちなみに片支那は先の口説き文句を言った後、辰川からハンドガンのグリップで叩かれ、現在悶絶中。
「我々二課の前身は、紛争時に設立された特務機関なのでね。調査などお手の物なのさ。それに、君達は二課でも有名だからね」
マジックステッキに花を咲かせつつそう答えたのは、先程歓迎の言葉をかけた筋骨隆々の男性だ。
特務機関、更には自分たちのことを知っている口ぶりに、辰川と片支那は再び警戒心を高めるが、またもすぐに気が抜けてしまった。
「のああーっ!?私のカバンっ!?」
なぜなら、その男性の横で先程の白衣の女性が彼女のカバンを持っていたのだから。
カバンを取り返しに行った響の姿に、肩の力が抜けるのを感じた二人は、手にした銃を下げるのであった。
そして―――
ガタン
「あ、ありがとうございます」
「いえ、こちらこそ失礼しました」
ようやく手錠を外してもらった響。開放感につい安堵のため息を漏らした。
「では、改めて自己紹介だ。俺は風鳴弦十郎、ここの責任者をしている」
自分を親指で指しながら彼、風鳴弦十郎は爽やかな笑顔でそう名乗った。
「そして私はぁ、できる女と評判の櫻井了子。よろしくね」
続いて彼女、櫻井了子も名乗りながらバチコーンとウインクをかました。
「こちらこそ、よろしくお願いします」
「自分は、日防軍特異災害対策機動部一課都市防衛機動部隊所属アイアス隊隊長、辰川遼准尉です」
「同じく、アイアス隊2番機、片支那健治曹長」
響はお辞儀を返し、辰川と片支那は敬礼をしつつ、所属と階級も含めて名乗り返した。
「君達の活躍は、我々も耳にしている。ここに来た理由も理解しているつもりだ。だがまずは……響君」
「は、はい?」
「君をここに呼んだのは他でもない。協力を要請したいことがあるのだ」
「協力って……あ」
そう言われて響は先のことを思い出し、弦十郎へと問いかけた。
「教えてください。あれは、一体何なんですか?」
弦十郎は横にいた櫻井へとアイコンタクトを送り、代わりに彼女が話しながら響へと近づく。
「あなたの質問に答えるためにも、二つばかりお願いがあるの。最初の一つは、今日の事は誰にも内緒。そしてもう一つは……」
そう言うと彼女は響の腰に手を回し軽く引き寄せると、更に言った。
「とりあえず脱いでもらいましょう、か」
「「ブッ!?」」
「だからぁ……」
彼女の口から出たとんでも発言に、つい二人は吹き出してしまい、響も涙目になりながら叫んだ。
「なぁんでぇえええええっ!?」
その後、響は特に変なことをされることはなく、メディカルチェックを受けた後に、彼女の住む寮へと帰って行った。その姿は心なしかものすごく疲弊していたように見える。
そして、残った辰川と片支那、そして二課の司令である弦十郎、そして技術主任の櫻井との対話が始まった。
「さて……先程も言ったが、君達がここに来た理由については、こちらも理解している」
「なら話は早い。教えて下さい、シンフォギアとは何なのか、二年前、何故天羽奏は死んだのかを」
響がいた時とは打って変わった重苦しい空気が、この場を包む。
「まずはシンフォギア・システムについてだが……開発者である了子君から説明してもらおう」
「シンフォギア、正式名称FG式回天特機装束。私が提唱した【櫻井理論】に基づき、遺跡等から発掘された聖遺物、その欠片から生み出された装備よ」
「聖遺物……」
「ってなんだ?」
聞き慣れない言葉に、片支那は首を捻り、辰川は静かに次の説明を待つ。
「分かりやすく言えば、オーバーテクノロジーの塊ってところね。でも経年による破損が著しくて、よくても欠片しか手に入らないわ」
「翼の持つ天羽々斬も、刃の欠片、極一部に過ぎない」
弦十郎の言葉に合わせ、翼は首にかけられたペンダントを取り出す。
「あのペンダントが、もしかして」
「そう。あれは聖遺物から出来ているわ。特定振幅の波動、つまりは歌の力により、欠片に残った力を増幅させる……言わばヴァンツァーで言うターボバックパックのような物よ」
「なる程、分かりやすいな」
「だがちょっと待ってください。あの娘はそんなもの身に着けてはなかったはずです」
彼女の説明に片支那は頭を頷かせているが、その説明に疑問を持った辰川が彼女に問い掛けた。
「そこなのよね。まだ調査の結果が出てないから何とも言えないけれど、彼女の身体に何かあることだけは確かよ」
「そう、ですか」
響に何が起こっているか、現段階では何もわからない。その事実に、辰川は奥歯を噛む。
「聖遺物を起動させ、シンフォギアを纏う歌を歌える僅かな人間を、我々は適合者と呼んでいる」
「適合者……」
「……奏君も、その一人だった」
ついにその名前が出た。息を呑んで続きを待つ辰川の視界の端では、翼が自身の拳を痛い程に握り締めていた。
「彼女の場合は、投薬により後天的に適合者となったのだが……」
「……そのせいで、ギアからのバックファイアを軽減しきれなかった」
「どういう、事なんだ……?」
奏の名前が出たからか、先程とは違い、彼らの表情は暗いものとなっていた。
「……【絶唱】」
「ぜっ、しょう……?」
「何、なんだ……それは?」
固唾を飲み込み、二人は続きの言葉を待つ。
「ある歌唱により、ギアのエネルギーを極限まで引き出す、最大最強の攻撃手段のことよ」
「だがその反面、それを使用した適合者への反動は凄まじい、諸刃の剣だ」
(……まさか、あの時の歌が?)
ふと、辰川は2年前のことを思い出した。当時の隊長である岩山が戦死し、自身もヴァンツァーを失った、まさに絶体絶命の状況で、天羽奏が歌った歌を。
そしてここで、黙ったままであった翼が口を開いた。
「あの時、奏はノイズを殲滅する為に、絶唱を使った。そうしなければ……」
「……俺の、せいか」
翼の言葉を聞き、辰川はポツリとそう言った。
「あの時、俺がヘマをしなければ、あの娘をしっかりと守っていれば……天羽奏は、彼女は死ななかった」
「お、おい辰川っ」
そこまで言ったところで、辰川はふらっと体勢を崩しそうになり、片支那に支えられる。
その表情は青ざめており、目の焦点も定まっていない。
「……もしそうだったとしても、君を責めるつもりは、俺達にはない。君達がいなければ、更に多くの犠牲が出ていただろう」
「だとしても、俺は……」
「それに、今の君の活躍を聞けば、きっと彼女も浮かばれるだろう」
「……そう、ですか」
弦十郎の言葉は本心であったが、今の辰川はそれを聞き、素直に受け入れられるような心境ではなかった。
それを察してか、弦十郎は別の話題を出した。
「それにしても、響君も君に二度助けられるとは、妙な縁もあるものだな」
「?どういう、ことですか?」
話の意味がよく分からなかったのか、辰川は首を傾げて問返す。
「気づいていなかったのか?あの娘、立花響くんは二年前、君と奏君が助けた子供だ」
「……え?」
突如明かされた事実。その衝撃により、辰川は一瞬思考を停止させた。
用語・設定解説
レオソシアル/レオノーラ・エンタープライズ社製マシンガン。O.C.U.圏では標準的なマシンガンであり、普及率は高い。何故か1stと5thで見た目が少し違う。
今作では型落ち品であり、一課のヴァンツァー隊のみ装備している。
ライトシールド/霧島重工製シールド。性能は標準的。名前の割に特別軽量というわけではない。
O.C.U.諸国への輸出もされており、その扱いやすさからO.C.U.陸防軍では2114年現在も装備している部隊も確認されている。