誰が為の《物語/運命》   作:音佳霰里

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第一話後半 出会い

 ちょっと(というよりかはかなり)雰囲気の悪い俺たちは教室を後にし、一面ガラス張りになっている廊下を歩いていく。

 というかもうちょいどうにかならなかったのか。このデザイン。

「なぁ……暁美さん……」

「……」

「ハァ……」

 ほんとさっきからずっとこんな調子である。いやまぁいいんだよ? コミュ障な上に覚悟ガンギマリ状態だからってのは原作知識で知ってるんだよ? でも知らん人からしたらこんなんしかとされてるようにしか見えないじゃねえか……

 そして、彼女は俺の少し前で立ち止まり、首を傾げてこちらへ向きかえりながら言ってきた。

「鹿目まどか。あなたは……あなたは、自分の人生を、()()()()()()()()()()()()()()()()()()() ()()()()鹿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ______俺は、彼女が言ったことを数瞬の間、理解することができなかった。

 

「…………は?」

 たっぷり時間を置いて、ようやくひねり出すことができた言葉はそれだけ。彼女は俺の答えを悲しそうな顔で聞き届けると、廊下の向こう側、保健室のある方向へと去って行ってしまった。

 俺が一人で教室に戻った後も()()()()()()彼女の言葉に気を取られてしまい、クラスメイトからの俺と暁美ほむらとの関係についての問いに、あまりうまく答えることができなかった。

 

 

 

 

 

「ねぇ……ほんとに大丈夫? なんか転校生に呼び出されてからずっと上の空だよ?」

 帰りのホームルームも終わり、開口一番にそう聞いてくるさやか。

「転校生になんか喧嘩でも売られた? もしそうだったとしたら、このさやかちゃんがその喧嘩、何十倍の値段で買ってやろう!!!」

「あはは……そんなんじゃねえって。それにほら、俺仮にお前がアイツの喧嘩を買ったとしてもお前が勝てるビジョン見えねぇぞ? 全く」

「何をー!? ……でもさ、アイツなんか嫌な感じじゃない? なんかいっつもクールぶってて」

「そんなこと言ってやるなよ……アイツにもなんかいろいろと苦労があんだろ。知らんけど」

「知らんのかい!!」

 そんなことを言ってさやかとじゃれあっているとさやかが、

「ねぇまどか、今日も一緒にショッピングモールに行かない? 仁美も誘ってさ」

 なんてことを言ってきた。

 

 ___確か原作だと、ここでキュウべえやマミさん、そして魔女や魔法少女に初めて出会うんだったな……

 

「ああ、わかった。行こうか」

 

 

 

 

 

「えーー!? 何ソレェ!?」

 ショッピングモール内のフードコートにて、俺が今朝暁美ほむらに言われたことをさやかに話してみると、案の定というかなんというか、そういうリアクションだった。あと声うるさい。公共の場だからな、ここ。

「文武両道で才色兼備かと思いきや、実は哲学的な中二病! くーーっ! どこまでキャラ立てすれば気が済むんだあの転校生は!! 萌えか!? そこが萌えなのかーっ!?」

 なんてことをのたまってテーブルに突っ伏すさやか。ご立腹みたいだな。

 そこに仁美が、

「まどかさん、本当に暁美さんとは初対面ですの?」

 なんて聞いてくる初対面には初対面なんだが、向こうはこちらを(一方的に)(今までの周回で)知っているし、こちらも向こうを(一方的に)(原作知識として)知っているんだが、それを素直に伝えるわけにはいかないし……かといってぼかしてもどこかしらでボロが出ることはわかっているしな……

 だから俺はあいまいに、

「いやまあ確かに、初対面っちゃあだぞ? ただなんつーかな……アイツとは初めて会った気がしないような気がするんだよなぁ……」

 と伝える。そこに仁美が食いついてきて、

「もしかしたら、本当は暁美さんと会ったことがあるのかもしれませんわ」

 なんて言っている。なんとなく気になったので、続きを促してみると、

「まどかさん自身は覚えていないつもりでも、深層心理には彼女の印象が残っていて、それが再び彼女と会ったことでぼんやりとしたイメージとして浮かんできたのかもしれません」

 なんて解説している。確かに俺の事情を知らない人からすれば、そういう考えが妥当なのかもしれない。

「それ、出来すぎてない? どんな偶然よ?」

 流石さやか。みんな(読者)の声を代弁して伝えてくれるとは。流石。さすさや。

「そうね……あら、もうこんな時間! ごめんなさい、お先に失礼しますわ」

 そういうと仁美は携帯(今はもう古きガラケーである)で時間を確認すると、そろそろお茶のお稽古が始まるからと、一人で片付けて、先に帰っていった。

「なら俺たちもそろそろ解散にするか」

 仁美の帰宅を見届けて、俺がさやかに言う。するとさやかはこちらへ顔を近づけてきて、

「ねぇまどか、帰りにCD屋、寄ってもいい?」

 なんて許可を取りに来た。

「いいぞ、また上条か?」

 なんて聞いてみると、さやかはまぁね、なんてはにかみながら笑うのであった。

 

 

 

 

 CD屋でさやかがクラシック音楽のCDを探している最中、俺は原作まどかのようにコネクトを聞く……なんてことはせずに、店の入り口付近にあったベンチに座って待っていた。

 今の俺は本を読んでいるので、はたから見ればわからないが、かなり緊張している。何せ前世ではテレビの中でしか見ることのなかった絶望の塊と、これから対峙するのだ。これがわかっていて緊張しないというほうが難しいだろう。

 

 ___しかし、俺の予想に反して、インキュベーターが俺に対して呼び掛けてくるなんて非日常的なことはなく、俺は内心で混乱しながら、いつもと同じように帰路に就いたのだった。

 

 




【次回予告】

ナレーション:鹿目まどか(cv:悠木碧)

原作が始まったが、鹿目まどかは初の魔女との邂逅を果たすことがなかった。
しかしその時、暁美ほむらに呼び止められてしまう。
暁美ほむらはその瞳に何を映すのか、そして、鹿目まどかの魔女との初邂逅は何時になるのか――?

「ほむらはさ、(鹿目まどか)についてどう思ってるんだ?」


次回、第二話。
『それはいつもの日常で』

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