「ところでまどかさん、今度はあなたのことを教えてほしいのだけれど」
______さて……どうするべきか……
馬鹿正直に魔術のことを話してもいいが、そうするときっとインキュベーターも食いついてくるだろう。そして、その情報をほかの個体に漏らされたりなんかしたら……
そこまで考えて、俺はあることを思い出したため、この考えを一蹴した。あいつ等は、『聞かれなかったから話さなかった』などとよく言うが、他人から頼まれたりしたことなどについては一切嘘をつかない。これなら、俺が『話さないでほしい』等と前置きしてから話せばいいだろう。
そう考えて、俺は口を開く。
「じゃあまず最初にだが……二人とも、これから話すことは他言無用で頼む。もちろんキュウべえもな」
二人は、普段見るよりも(巴先輩は気圧されただけかもしれないが)真剣な俺の表情に驚きながらも、ゆっくりと首を縦に振った。
例のごとくキュウべえも、
「分かったよ、まどか。君のその力は、僕にとっても興味深いからね」
なんてのんきに返事を返している。俺はそんな二人と一匹の返事を聞いてから、巴先輩がさっきやったように、
「なら良し。じゃあまず初めに……魔術って知ってるか?」
___魔術。その言葉を聞いた時、少しだけ奴が反応を示した。少しピクリと動いた程度の細かいものだったが、話を聞いている人達を観察しながら話をしていた俺は、その挙動の変化を見逃すことはなかった。かと言って何がわかるわけでもないが……
ほかの二人は、訳が分からないといった様子で、魔術師が聞いたら烈火のごとく怒りだすような質問を俺にしてきた。
「魔術……? 魔法とは何が違うの?」
その質問を聞いた俺は、回答を返す前に、優しく(少しの怒りを感じてはいたが)語り掛けるようにして注意をした。
「……その質問の前に二人とも、例え俺の前であっても、今後一切そういった質問はしないでくれ」
「えっ? なんで?」
俺のその言葉に、ほぼノータイムで被せるようにして聞いてきたさやか。口にはしなかったようだが、《魔法》少女を名乗るものとして思うところがあったのか、先輩もさやかの言葉に同意するようにして頷いている。俺もその言葉に答えようと口を開きかけて……
「それは、魔術は魔法の劣化版のようなもの、だからさ。そうだろ? まどか」
……確かに初心者向けに説明するならそうだ。そうなんだよインキュベーター。だが俺の台詞を取らないでくれよ……
俺は若干の怒りを感じながらも、インキュベーター説明について、補足を行う。
「……あぁ、確かにキュウべえの言う通りだ。実は魔術と魔法っていうのは、似ているようで違うものなんだよ。魔術と魔法の違いっていうのは、『その時代の文明で再現できる奇跡かどうか』ということなんだ。そうだな……例を挙げるとするなら、手から炎を出すのは魔術だが、時間旅行なんかは、魔法に分類される。なんでかわかるか?」
「それはだね……」
「おっと、キュウべえは答えるなよ。これは説明会的な奴だからな」
インキュベーターが答えようとしていたが、俺が光の速さで切り捨てた。恨みがこもっている訳では無い、決して。ないったらないのである。というか、答えを知ってる(多分)奴が答えようとするなよ……
「そうね……さっきのまどかさんの言葉を借りるとするなら……手から炎はこの時代の文明で再現できるけど、時間旅行は少なくとも、この時代の文明では再現ができない……といったところかしら?」
奇麗に百点満点の解答をして、『褒めて褒めて~』と幻聴が聞こえるような顔をしてこちらを見ている巴先輩。それと対照的に、頭から湯気が出そうな勢いで考え込むさやか。
「流石先輩ですね。百点満点の解答です。……さやかにもわかるように言い換えるとだな……今の時代に、手からじゃなくても良いから、炎を起こすには何を使うと思う?」
流石にこれ以上はまずいと思ったので、少しレベルを下げた問いをさやかに投げかけてみる。すると(数秒してから)復活したさやかは、数秒考えてから、
「……ライター、とか……?」
と恐る恐る答えを出してきた。
「そ、正解だ。じゃあ今度はだ。今の時代の科学力で、現実でタイムトラベルをするにはどうすればいいと思う?」
とすぐさま次の問いを投げかけてみる。さやかはたっぷり三十秒ほどを使って考え込んでから、少し投げやりに、
「……そんなの無理じゃん! どうやったって出来っこないでしょ!」
等と、割とまともで現実的な解答をいただいた。それもそうだ。俺だって前世でも今世でも、結局のところ一度もタイムマシーンなんて見ることはなかった。まだ十四歳にもならない少女が、夢も見ていないのに『タイムトラベルはできる』なんて言い出したら、誰だって頭を疑う。というか俺もそうする。というか俺、それを
「そう、出来ないんだ。つまり、今の時代の科学で再現できない奇跡を、総じて『魔法』と呼んでいるんだ。そして逆に、素人でも素材さえ用意すれば再現可能なのが『魔術』ということなんだ」
「へぇー……ねぇ、結局この話なんだったの?」
………………あ。
「これは……えっと……そう! あれだ! 魔術と魔法の認識についてだっ!」
「ふーん、あたしにはまどかが忘れてたようにしか見えないんだけど」
そういうさやかにジト目でみられる俺。………………実際そうだったけどさ……
「ま、まどかさんはこの話を念頭に置いて、これからの話を理解できるようにしてほしかったんじゃないかしら?」
と、暗に俺に話の続きを促してくれる巴先輩。ナ、ナイスアシストっっ!! このまま逃げ切れば……
「そ、そういうことださやか! こういうのって用語がわかんないと一瞬で置いて行かれるからな!」
と早口でまくし立てる俺。さやかは面倒な奴を見るような目でこちらを見て、
「はいはい、ならそーいうことにしといてあげるわよ」
……訂正、面倒な奴を見る目、だけじゃなかった。これ酔っ払いに対する対応と同じだわ。ひでぇよ……
「ありがとな。んじゃまた新しく自己紹介をば……俺の名前は鹿目まどか。中学二年生で、魔術
「魔術
そう聞いてくるのは巴先輩。
「そうですね……魔術師が
と俺は話しているが、別の人がこの事について語るとするのならば、もっと違った解釈になるだろうし、実際の意味は俺が話していることとはまた違った意味になることだろう。この事を黙って聞いていた二人に話すと、さやかが別の問いを投げかけてきた。
「そうなんだ……これって
なるほど、確かにそうだ。人手が多いほうが効率もいい、これはよく言われていることだ。だが、これは魔法少女と魔女の関係にも関わってくるのだ。
「なるほどな……確かにそうだ。だがなさやか、魔術師……いや、魔術っていうのは、体内で生成されるオドっていう小さい魔力と、神秘によって生まれる、マナっていうとても大きい魔力の二種類を用いて使うんだ。この話はマナのほうだけについてしか話さないが、もし、神秘によって生み出されているマナが、多くの人に存在が知れ渡ったとする。そうすると、その神秘性はどうなる……?」
そうすると、さやかはハッとしたような表情になり答える。巴先輩は話についてこれず、おろおろと戸惑っている。
「無くなっちゃう……!」
「そゆことそゆこと。巴先輩のために、魔法少女と魔女を例にして考えてみるか。……もし、もしですよ? 魔女やその結界が、一般人にもがっつり見えていたら、そういうことになると思います?」
「えっと……どうなるのかしら? ごめんなさいね、私にはわからないわ」
そういうとシュンとなってしまうマミさん。
「いえ、全然大丈夫ですよ。これに関してはほんと俺の持論なんですが、
そう、人間という生き物は、良くも悪くも慣れてしまう生き物なのである。魔女や、魔女の振りまく絶望に慣れてしまい、油断して魔女によって殺される。そんな悪循環ができてしまうのかもしれない。魔力も同じように、人々が慣れてしまうと、それは神秘として認識されず、その存在が消え去ってしまう。そんなことを巴先輩に話すと、深刻な表情になり、
「そうだったの…でも、それならなぜ私たちに、魔術について話したの?」
それは___
「そう…ですね…二人とも、俺の信用に値する人物だから…じゃあダメ、ですかね?」
俺がそういうと二人とも優しく微笑んで、もちろん、と言ってくれたのだった。
そろそろいい時間だろうと考えて、俺は、最後に質疑応答で締めようとする。
「なら…最後に質問とかあるか?ないなら…」
そこまで行ったとき、ずっと口を閉じていたインキュベーターが、俺に向かって冷ややかに告げてきた。
「どうして君が
…そんなこと?いったい何のことだ?と思っていたら、二人とも同じことを思っていたようで、
「そんなことってなんなの?キュウべえ」
と巴先輩が聞いている。頭の上に
「?まどか、君は
__________は?
説明会で、自身の扱う魔術について説明をした鹿目まどか。だがしかし、そこでキュウべえに意図しないような言葉を投げ掛けられることになる。
そんな中、鹿目まどかは、もう1人の魔法少女、『佐倉杏子』と出会う――
「アンタは
次回、第六話