今回、新たな挑戦として、東方の小説を執筆する事を決めました。前から書こうと思っていましたが、今になり書こうと決心し、書いた次第です。原作もプレイしておらず、設定も完璧に把握していませんが、私もこれから学んでいこうと思っていますので、どうか温かい目で見守っていただけると幸いです。
では、御伽をお楽しみ下さい。
御伽.壱 とある1つの幻想世界
[???]
「……はぁ」
とある神社にて。賽銭箱を見て溜め息をつく者が1人。紅白の巫女服に身を包み、大幣(おおぬさ)を手に持つその女性は
「…ま、いいわ。さっさと掃除でもすませましょうか」
そうして神社内の落ち葉掃除を始めようとする。ここまでの一連の流れが、この博麗神社の1日の始まりであった。
…しかし、そんな穏便な一日の始まりは、ここで終わりを告げようとしていた。突如、霊夢の正面の空間が裂け、目玉だらけの空間が垣間見える。これには流石に驚いたのか、霊夢も思わず「わっ!?」と声を上げて後ろにのけぞった。そこから、1人の女性が上半身を出す。
「霊夢!緊急事態よ!今すぐ来なさい!!」
金色の髪を持ち、紫色のワンピースに身を包み、焦燥が顔にも声にも出ているこの女性は
ここまで切羽詰った彼女を見たことがないらしい霊夢は一瞬驚きを見せる。いつもならさっさと追い返す霊夢も、この焦りようを見て、ただ事ではないのだろうかと思い始める。
「な、何よ?あんたらしくないじゃない。一体何があったのよ?」
「話は後にするわ!異変とかではないけれど、それ以上に大変なのよ!」
異変以上に?と謎が深まるばかりの霊夢に、紫はこう告げた。
──
[八雲家]
「ここって…あんたの家じゃないの」
霊夢が紫に連れてこられたのは、八雲一家が住む家であった。といっても、八雲 紫と
そして、相変わらず焦りを抑えられていない紫が、再び霊夢に一言放つ。
「こっちの部屋にいらっしゃるのよ!貴女も早く入りなさい!」
「はいはい…」
気だるそうに返事をする霊夢が紫の指定する部屋に入る。するとそこには……
──1人の男性がいた
「いやぁ~久々だね、紫」
「数千年…いえ、それ以上振りですね」
このやり取りだけで、霊夢が驚いた表情をしている。そう、あの妖怪の賢者が
「紫、あんた何で敬語なのよ?はっきり言って気持ち悪いわよ?後、こいつ誰なのよ」
「霊夢ッ!この方に"こいつ"と言ってはダメよ!!」
その違和感に耐えられなかった霊夢が、思わず紫に聞くが、この男の呼称について怒声を上げられる事に。しかし、当の男はというと…
「いや、良いよ。堅苦しいのは嫌いだからね」ハッハッハ
「しかし…」
良いと言って譲らない男に折れたのか、紫はその事については何も言わなくなった。それと同時に、男がまた話し出した。
「自己紹介がまだだったね。私は
「……はい?」
思わぬ一言に、素っ頓狂な声を出す霊夢。それを見た紫が、廻羅の言葉に付け足すように言う。
「廻羅様は、幻想郷になる前のこの土地の土地神様よ。私達幻想郷の住人は、この人の了承を得てここに住んでいるのよ」
「ちょちょ!?そんなの初耳なんだけど!?…え!?」
「ははは、少し落ち着くといい。別段急いでるわけでもないからね」
今になってパニックになる霊夢を、笑いながら落ち着くよう言う廻羅。しかし、しばしの間霊夢が落ち着くことはなかった。
「…で?紫、この廻羅って人…いや神か。についてはわかったけど、どうして私を呼んだのよ」
ようやくと言っていい位時間が経ったが、いい加減本題に入るようだ。それに発破をかけたのは、少々苛立っている霊夢であった。
「このお方が博麗の巫女について、興味をお持ちになったから呼んだのだけど…ちょうど良いわ。貴女には、私達しか知らない且つ貴女が知っておくべき事を話そうと思うわ」
「それだけ?だったらこんなに急じゃなくても良くない?」
一見焦る程でもないような用事にも見える。が、当の紫はそうは行かない様子。やはり、彼らの関係が鍵なのだろうか。
「本当ならね。でも、異変になりかねない事態の懸念もあると廻羅様が仰ったから、貴女にも聞いてもらおうと思ってね」
「う~ん…何か腑に落ちないけど…まぁ良いわ」
どうやら不本意ながらも納得した模様。その反応を見た紫は、早速話を始める。
「まず、異変についてなんだけど…最近、境界に干渉した痕が残っていたわ。恐らく、ここに侵入しようとしたのか、あるいは何かをここに送り込もうとしたのかのどちらかと考えられるわ」
「…外来人が来ている、とかはないのかしら?」
「いえ、そんな報告は今のところ来てないわね。…聞いてないだけで、いるかもしれないけれど」
ここ幻想郷では、あっちの世界(所謂外の世界)と幻想郷と隔てる境界上に、"博麗大結界"なるものが存在している。その結界を管理するのが博麗の巫女の役割であり、外の世界と幻想郷を隔てる境界を管理するのが紫の役割なのだ。この2人にはまた別に役割があるのだが、それはまた後日。
「それに、干渉痕が大きかったわ。恐らく、ここに用があったと考える方が妥当よ」
「境界に干渉…相当な奴ってこと?」
「かもしれないわ。いかんせん、情報が足りなさ過ぎるのが現状なの。今の段階で結論付けてしまうのは早計だと思うわ」
彼女らの一連の会話から分かる通り、境界に干渉するという事は、今現在の科学では(恐らく)出来ない芸当であり、奇想天外な存在とも言える妖怪の中でも、境界に干渉できるものというのはほぼいない。それこそ、紫の専売特許と言っても良いだろう。少なくとも、境界に干渉できる者が外の世界にいるのは確定だと言える。
「これに関しては、追々なのだけれど…次は貴女に知ってもらうことよ。これは廻羅様から話したいとのことだから…廻羅様、お願いします」
「ん、あいわかった」
先程の会話に我関せずの姿勢だった廻羅が、自分の話す番になると、纏う雰囲気を変える事もなく、悠々と話し始めた。
「霊夢、だったかな?君達博麗の巫女には、博麗大結界の維持と幻想郷の治安維持の役割があるのは、知ってるかい?」
「当たり前でしょ?当人なんだから」
「だろうね、そうでないと困るけども」ハハハ
少しわかりづらい冗談を交え、話を進める廻羅。しかし、今度は真剣さを帯び、話を切り出した。
「…実はね、それに似た役割を担ってる者がもう1人、この幻想郷にいるんだ」
「…え?……ちょっと待って?可笑しいわよ、私ですら感知できないなんて」
博麗の巫女というのは、そういった類では群を抜いて特出しており、感知が出来てもおかしくない、というより寧ろ出来てない方が可笑しいのだ。それを1番自覚している霊夢は、当然の焦りを感じていた。
「それは仕方ないさ。何せ、
「…は?どういうことよ?第一、私がいるから要らないじゃない、そいつ」
当然とも言える戸惑いを見せる霊夢。それもそうだろう、現在は博麗の巫女が治安維持を担っているため、実質警察的役割が2人存在していることになる。それに、霊夢は勝負には滅多に負けず、霊夢に引けを取らないレベルで無いと、もう1人のいる意味がわからないのだ。
「そうだね…霊夢、仮に君が死んだとしよう」
「いきなり不謹慎ね」
「仮にだから…ね?で、君が死んでしまったとなると、後継者を見つける必要があるだろう?」
「まぁ、そうね」
少々不謹慎な例え話にツッコミを入れた霊夢も、ここではそうだと言わざるを得なかった。事実、博麗の巫女というものは、幻想郷の中ではかなり重要なシステムであり、それが欠ける事は、避けるのは無理であっても、極力短時間でなくてはならない。その事を、霊夢も自覚しているようだ。
「そういう緊急時に動く人がいないといけないだろう?だから、そういうシステム…って言っていいのかな?を作ったんだよね」
「…ん?だったら何で貴方がいないと動かないような設定なのよ?」
「そのための紫さ。彼女にもそういう役割を担ってもらってる」
合点がいったのか、そうかと言わんばかりの表情を浮かべている。幻想郷において、紫は"幻想郷の管理者"という立ち位置にいる存在だ。それは彼女自身が豪語しており、管理者という事は、幻想郷を防衛する事も場合によっては厭わない、という事を暗に意味している。所謂、管理責任といったところだろうか。
「そういう事さ。まだわからなかったら、その都度説明するから、今のところはここまでにしとこうか」
これ以上話すと次に控えた話が出来ないとの懸念からか、自身(に関連する事)についてはここで切り上げるようだ。と言っても、次に話す事というものに心当たりがない様子の紫。どうも気になって仕方ないのか、ついに紫は彼にそれについて伺った。
「廻羅様?他に何かありましたか?」
「うん。彼を紹介しておこうかと思ってね」
「…彼?誰の事よ?」
「ほら、今さっき言った君の役割を担ってるもう1人の事さ」
「あぁ~、成る程ね」
そんな不安も、彼の一言で消し飛ぶ。合点がいった2人は、お互いに顔を見た。互いの顔を見た2人の心境は、誰にもわからない。
「じゃあ、行こうか。紫、霊夢はそっちのスキマに入れてくれないかな?」
「わかりました。さ、霊夢、行くわよ」
グイグイと霊夢の背中を押す紫。そんな紫に押され戸惑っている霊夢の様子を見るに、行く分には構わないのだろうが、1つの不安要素が拭えていないのだろう、こんな事を聞いた。
「ちょ、ちょっと!…第一、どこに行くのよ!?」
「ふふ…無名の丘よ」
「……はい?」
どこに行くのかわかったのはいいものの、相も変わらず霊夢は不安そうな顔をしている。そんな霊夢を見てしびれが切れたのか、紫の押す力が強くなり…
「は~い、無名の丘に行くわよ~」
「ちょ、ちょぉぉぉ!?!?」
スキマと呼ばれるなんとも不気味なソコに押し込まれた霊夢の断末魔紛いのソレは消えていく。そしてスキマは、廻羅を残して閉じた。
「…さて、僕も行くとしようか…な」
瞬間、傍に置いていた双刃刀を持ち、
3人がいなくなった八雲家の一室には、静けさだけが残っていた。
という事で、御伽.壱が終わりました。
どうでしたでしょうか?お話は、まだまだこれからではありますが、文才も言う程持ち合わせておりませんので、至らぬ点もあったかと思います。そういった際は、是非コメントにて指摘や評価を書いて下さればと思います。
私自身、満足した出来ではないので、皆さんの目にどう映るかが不安ではあります。しかし、こうした最初のプロローグ部分は私の苦手な箇所ですので、これからのお話は問題ないかと思います。
次回『御伽.弐 忘れられた反逆者』
廻羅
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その都度書いてくれれば良い