東方続夢郷   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

さて、今回はタイトルで分かる通りの妖精が登場します。意外とあっけなく終わる予感がしますが、果たしてどうなるのでしょうか?お楽しみに。

では、御伽をお楽しみ下さい。



御伽.拾参 かつては幼き絶対零度

[霧の湖]

 

 

「あぁもう!キリがないじゃないの!?咲夜!そっちは!?」

 

 

「すみませんお嬢様!少々苦戦しております…ッ!」

 

 

他方で、霧の湖では。屈強な精鋭が集う紅魔館の面々が妖精と対峙してるこの場面で、様々な者が苦の表情を浮かべている。そんな中、そこまで苦戦している様子でもない者が一人。

 

 

「アハハ!この剣でなら楽々狩れるじゃないの!ほらほら妖精!来なさいな!!」

 

 

「…あのお転婆、こっちに被弾しかねないの考えてないのかしら……?…まぁ、私達なら避けるのは苦労しないけれど」

 

 

今ボソッと愚痴紛いのソレを零したパチュリーをはじめとした紅魔組一同は、無差別に放たれる彼女の弾幕を避けながらの戦いを強いられている。一応、口には出してないものの、避ける事にはさほど神経を使う事はないそうで、流石は紅魔組とも言えるだろう。…ただ、いざという時にソレがどういった影響をもたらすのかについては、全く持って未知数である以上、意識して攻撃してもらいたい事には変わりない。

 

 

「天子!!もう少しこっちにも配慮して攻撃してくれないかしら!?いざという時に困るのよ!!」

 

 

「そう、分かったわ!けど、少しはそっちに行く事もあるから、ソレはそっちでどうにかしなさいよ!」

 

 

「意識してくれるだけで良いわ!程々に蹂躙なさい!」

 

 

ソレに見かねたレミリアが、我慢できず天子にどうにかできないか懇願をする。そう易々とソレを飲むとは誰も思っていなかったのだが、意外や意外、あっさりと飲み込んだ。一同が一瞬驚いたような表情を浮かべるも、そんな余裕がないのか、皆すぐに戦闘に戻る。

 

 

「それにしても……」

 

 

そんな中で、美鈴が戦う中で辺りを見渡す。辺りと言っても、戦っている一同の事を、なのだが。そして何か気付いたのか、一言。

 

 

「…湧き方が、少し不自然な気がしますね。意図的に湧かせてる感が、てんでないというか……」

 

 

美鈴曰く、どうやら妖精の湧き方に違和感がある模様。確かに、もしコレが誰かによる意図的な妖精の無限湧き(もとい、召喚)であるとしたら、相手が疲れているところを狙って妖精を湧かせれば良い。けれど、実際はそんな事はなく、湧く速度は少々速いように感じるものの、誰かがこちら側を確実に仕留めるような湧き速度ではない。そうなると、一体何がどうなっているのかが疑問として出てくるのだが……

 

 

「…まぁ、霊夢さん達が首謀者を何とかしてくれると思うので、こっちはやる事やるしかないんですが…ね!」

 

 

今はその時でない、あるいは考えても仕方ないと結論付けたのか、そんな思考を脳の奥に追いやり、再び意識を妖精の方へとやる美鈴だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ふっ、いつもはアタシが押されてるのに、貴女が押されてるこの状況……屈辱じゃないかしら?」

 

 

「……えぇそうね!悔しいけど、今の貴女が強いのは認めるし、現実問題厳しいわね!」

 

 

どうにもなりそうにないその実力差に、いつもはプライド高いレミリアも、今回ばかりはその差を認める。それは、自身の実力に誇りを持つ彼女を屈辱に叩き落とすのに、あまりに十分過ぎるだろう。…それでもソレを認めるその心意気、幻想郷に来てから変わったのか、はたまた。

 

 

「それでも!()()()()()()()()()()()()!私はッ!!」

 

 

この発言には、彼女の思いが詰められていた。運命を変えてでも勝つ、という事は、運命的には敗北する事が概ね決定している事を意味する。

 

彼女の〖運命を操る程度の能力 〗というものは、運命の規模に関わらずに変えることが出来るものでもなく、割と小さめの運命のみを変えることが出来る。

 

故に、自身の敗北という大それた運命は、自身の能力では変えられない。だから彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()()、という意味合いの、2度目の宣戦布告をしたのだ。彼女一番の覚悟とも捉えられようか。

 

 

「プライドを捨てて得る運命は……アタシへの敗北かしらねッ!?」

 

 

「ふん!ほざいていろ!!その表情を屈辱的なまでにひん曲げてやる!!」

 

 

そう言って、レミリアが手元に握ったのは、彼女の武器であるスピア・ザ・グングニル。その容姿に見合わぬ丈の槍であり、ソレに貫かれた者は、誰であれ軽傷で済むようなものではない。ソレを妖精相手に使う事も、レミリアにとっては想定外の事であり、普段ならプライドをズタズタにされるような事態であろう。それでも……

 

 

「…!ちっ!!存外冷静なのが…気に食わないわね!!」

 

 

「怒りに任せたところで、勝機を潰すだけだ!」

 

 

そこにいる吸血鬼は、ただ強者を屠ろうとする、高貴とは程遠い姿をしていた。が、怒りに任せて攻撃をする事もなく、しっかりと勝つ為の線を潰さずに戦う辺り、流石歴史ある吸血鬼の一族の長といったところか。

 

一方で、レミリアをこうさせた張本人であるチルノはというと、意外や意外、あれだけの言葉を投げてはいたものの、相手が相手であるが為に、かなり苦戦を強いられているようにも見える。

 

この戦いは元々、妖精対吸血鬼という対面であるのを忘れていないだろうか。力の増幅があるとはいえ、妖精が吸血鬼を相手取るのは、かなりキツイのに変わりはない。ソレが太陽と言う条件がないのであれば、尚の事である。

 

この戦いの前に、実は廻羅が天候を変化させ、吸血鬼が活動できるようにした為、レミリアもつつがなく戦えている。…首謀者は、どうやら天候はさほど気にしていないのか、天候を晴れに戻すような事はしてこない。ソレが、この対面をレミリア有利に傾けている要点の一つとも言える。首謀者が妖精一体一体に有利に働くよう、盤面を整えるような者であったならと考えると、それこそ勝機は針に糸を通す程の難易度となったに違いない。

 

 

「それなら……こんな攻撃はどうかしら!!」

 

 

「…貴女らしくない、随分と策士な攻撃なこと…!」

 

 

冷静に分析するレミリアだからこそ、今のチルノの攻撃が、いつものチルノらしからぬ頭を使った攻撃である事がわかる。チルノが相手の状態でそこそこの頭脳が求められるという状況は、幻想郷の者からしたら少々特殊な状況になる為、慣れていない環境下に置かれている事になる。

 

 

「でも!そろそろ慣れてきたわね!ここいらから反撃するわよ!」

 

 

冷静になったレミリアは、幻想郷の中でもかなりの実力を誇る。元々、彼女は頭が回る方ではあるので、焦りさえしなければ相手にとって恐怖なのだ(幻想郷の強者は殆どがその部類)。(いつものチルノならともかく)今のチルノは、それを理解するに申し分ない知能は持っていた。

 

 

「さぁ…()()()()()()()()()()()?」

 

 

「初見?…まさか!?」

 

 

レミリアの、若干意味深にも聞こえるその一言を聞き、少し考えを巡らせた彼女は、すぐさま警戒態勢をとる。そして、何故チルノがこうしたのかの答え合わせを、レミリアが行った。

 

 

──紅狗「レッドヴァンパイア包囲網」

 

 

瞬間、チルノの眼前には、彼女を覆いつくさんとする程の紅い蝙蝠型の弾幕。…そう、彼女はこの異変で戦うにあたり、()()()()()()()()()()()()()のだ。攻撃手段は多いに越した事はないと考えたのかどうか、いずれにしろ、彼女の蝙蝠の包囲網は、チルノの行き場を潰しながら、同時に隙を作りだす。

 

 

「ちっ!鬱陶しいわね!だったらこっちもきらせてもらうわ!!」

 

 

──氷帝「フロストカタストロフィ」

 

 

その一言の後に放たれたそのスペルカードも、新しいモノだった。チルノ(氷の女帝)を中心に、辺り一面が銀世界に染まり、先程まで数多存在していた蝙蝠の弾幕は凍結したのか、ソコに姿はなかった。

 

 

「ふっ、アタシのコレをきらせたのは褒めたいところだけど、随分あっけなく消えたわね?」

 

 

「…あら?流石の貴女も解らなかったのかしら?」

 

 

──それ、時間稼ぎの為のヤツよ?

 

 

チルノが、その弾幕の真意を知りえなかった事を逆手に取り、彼女は笑いながらそう言い、()()()()()()()()を繰り出した。

 

 

──紅獄「カレイド・ブラッドファントム」

 

 

それを遠巻きで見た廻羅曰く、彼女の新技は、万華鏡のように様々な紅い弾幕が入り乱れ、綺麗と思ったとの事。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…そろそろ私含めて、大分力を消耗してきたみたいね……」

 

 

一方で、パチュリーをはじめとした雑魚妖精討伐班は、その数も相まって流石に息を切らし始めている(天子は例外的にまだ張り切っている)。だが、流石紅魔組と言ったところか、疲弊しても尚、弱音を吐こうとしない。プライド高いところは、やはり主人に似るのだろうか。

 

 

「咲夜、もう本格的にやっても良いんじゃないかしら?いい加減その辺の事考えて攻撃するのも大変だと思うんだけど」

 

 

「私もそう思います。ですが、お嬢様からの許可がないとなんとも……」

 

 

そう、緊急時とはいえ、ここら一帯は(自称?)レミリアのテリトリーである為、主の許可なく暴れるのは、従者としては気が引けるのだ(フランと天子は何食わぬ顔で暴れているが)。少し遠くで戦っている美鈴も、恐らくそういう気持ちがあって遠くの方でのみ、激しめの攻撃をしているとみれる。そんなこんなで、いよいよ本格的に攻めあぐねるかというタイミングで…

 

 

〔あ~、あ~!聞こえるかしら?咲夜〕

 

 

〔!お嬢様!〕

 

 

予め廻羅が懸念していた連絡手段として、河童こと河城(かわしろ) にとりに作らせた特性のトランシーバーから聞こえてきたのは、お嬢様ことレミリアの声だった。コレの存在を忘れていたのか、咲夜とパチュリーは少々ビックリしているように見える。

 

 

〔チルノはどうにか抑えられそうだから、そっちもそろそろあたり気にせずやっちゃいなさい!〕

 

 

〔分かりました!〕

 

 

そのやり取りだけが行われると、レミリアの方が早々と通話を切った。その後、二人は互いを見る。

 

 

「…許可が下りたのね?」

 

 

「はい。あたりを気にしないでやれ、との事でした」

 

 

「そう。…美鈴の方が少し煩くなったから、皆にも伝わってるのね。…咲夜、こっちもやっちゃいましょうか」

 

 

「はい!」

 

 

そう言って二人は、スペルカードを構える。その二人の表情は、どこかこれから楽しみだと言わんばかりの顔である。そうして瞬く間に、二人の大声が辺りに響いた。

 

 

──七曜「セブンス・カオス」

 

 

──時幻「朽ちぬ幻想、過ぎるは我」

 

 

高らかに宣言されたスペルカードの名は、新たな技の名であった。そこから紅魔組(+天子)の反撃が始まったのは、言うまでもないだろう。

 




という事で、御伽.拾参が終わりました。

今回は霧の湖での戦闘でした。フランの出番がない事には、反省しています。ただ、フランが妖精相手に苦戦するビジョンが見えなかったので、描写しづらかったのもあります。いつかしっかりと出番を設けようと思います。

そして、活動報告にて、かなり重要なお知らせを上げましたので、一読お願いします。

次回『御伽.拾肆 古の闇出づる時』

オリジナル要素について

  • 設定集出して!
  • その都度書いてくれれば良い

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