タイトルを見て、感じた方もいると思いますが、毎回"旅路行く者の記録"と付いていますが、これは0,5章扱いです。プロローグと本編の間と思っていただければ良いです。導入部と言えば良いかもしれませんね。
では、御伽をお楽しみ下さい。
[妖怪の山]
「ここから先は、立ち入らせない!」
「…あちゃあ、思ってたより面倒だねぇ」
アリスとのくだりからそこまで経っていないだろうか、妖怪の山の下の方で、何やら揉め事が起こっている様。…とは言っても、廻羅の方は溜め息を漏らしており、一方の白狼は廻羅に対し、警戒心MAXである。そんな状況に、廻羅も若干面倒になってきているのだろうか。
「あやや?何か騒がしいと思って来てみたら……椛、どうしたんですか?」
「あっ!文さん!」
そんな膠着状態の中、興味本位らしい動機で空から飛んできた烏天狗が1人。その人物の姿を見た白狼は、注目をそちらに向ける。廻羅を置いて、何やら2人で話をしているようにも見える。
「うちの椛が迷惑を掛けました。ですが、最近の妖怪の山は警戒心が強いので、それを知らなかったとの解釈でいいですか?」
「へぇ、長年見ない間にそんな事が…知らなかったなぁ」
どうやら白狼から話を聞いていたらしく、烏天狗から話を切り出してきた。その内容に、思わず廻羅は素っ頓狂な声を漏らした。
「…お伺いしますが、妖怪の山についてご存じで?」
「最近の制度的なのは知らないけど、長なら知ってるよ?」
長という言葉に、2人は打って変わって警戒心を露わにする。そんな2人に対し、彼はどうして今と言わんばかりの提案をする。
「そうだ、長に会いたいんだけど、良いかな?」
「ダメに決まってるでしょう!」
その警戒心を言葉に乗せて言うのは、白狼の方だった。一方の烏天狗の方はと言うと、警戒心を抜く事こそないものの、冷静さは保っているようだ。そんな中で何を考えたのか、烏天狗はこう切り出してきた。
「……良いですが、警戒してる事はお忘れなく」
「文さん!?良いんですか?」
「…長に判断してもらいましょう、それでわかるでしょうし」
相も変わらず2人で話を進めていく。その話も終わり、3人は妖怪の山の長がいる所へと、歩を進めた。
[妖怪の山 頂上]
「ここです、長を呼んできますので、ここで待っていて下さい。…椛、見張っていてください」
「わかりました、文さん」
そう言いながら3人の前に立っている一軒の建造物の中に入る烏天狗。その最中も廻羅に対する警戒を許さない。その証拠に、彼の隣の白狼は今にも警戒の唸り声を出さんとしている。それを見た彼も、思わず苦笑いをしながら溜め息を零している。
「重罪人くらいに警戒してるねぇ」
「当たり前でしょう、私達からしたら侵入者ですから。それに貴方、どこから来ました?」
「んえ?太陽の花畑だけど…?」
その回答を聞いて、やはりかとでも言わんばかりの表情をしながら、溜め息を零す白狼。それに続けて、気だるげに言った。
「…良いですか?太陽の花畑は幻想郷の中でも屈指の危険地帯です、そんな所から来た人を通すわけにもいかないでしょう。それに、先程その方向からとんでもないオーラを感じましたし」
「あぁ、そういう事ね。…因みに、それも僕だね」
先程の警戒の姿勢も、彼の告白により毒気を抜かれてしまうようにどこかへ行ってしまう。今まで警戒しきっていた彼女も、今となっては先程まで緊張も警戒もしていない模様。
そんな状況の中、眼前の建物の扉が開かれ、件の烏天狗が出て……
「あっ!ホントに廻羅だ!廻羅ぁぁぁ!!」
「グエッ……伊達ちゃん、これ結構危ないっていつも言ってるでしょ……」
…来る事はなかった。彼が言う伊達とは、扉から出た大天狗の名前である。廻羅が名付けたらしく、大天狗のだとての字を取って伊達と名付けたらしい。…何とも安直な名付けに思えるのは、置いておくとするが。
「だって!最近来ないって思って紫に聞いたら『廻羅様なら旅に出たわよ』なんて言うからぁ!!」
「連絡しなかったのは悪かったってば……」
そう申し訳なさげに言う廻羅の腹をポカポカ殴る伊達に、最早大天狗等の肩書きなりの威厳はとうになかった。そんな彼女の姿に、2人はポカンと口を開ける事しかできなかった。それでも尚、聞きたいという欲が出るのも無理はなかった。
「…伊達様、これは……?」
そう切り出したのは、烏天狗の方だった。この烏天狗はこの幻想郷にて記者としても活動しているからか、知りたいと思ったら危険であろうとも首を突っ込む性分なのだろう。それに対し、廻羅の方が答える。
「ホントは伊達ちゃんから答えた方が良いんだろうけど、生憎この状態だから…僕が答えるよ。伊達ちゃんは僕の親友なんだよ、僕の方が年上だから、知らないうちに妹みたいになってるけどね」
「……はい?」
思わずそんな声を出してしまうのは、白狼の方だった。思いもよらない衝撃のカミングアウトによって、今まで我慢していたのだろうが、それも叶わずとうとう出しゃばり始めた。それに対して、とうとう伊達の方から切り出す。
「本当だぞ!私よりも前からここにいたし、私と廻羅は親友なんだからな!」
フンス、と聞こえなくもなさそうに、ふんぞり返りながらそう言う姿は、さながら子供そのものである。不敬にも、烏天狗と白狼の2人もそう思っているようである。そうとも知らず、伊達は続ける。
「そうだ、2人の名前、廻羅は知ってるの?」
「ん?この2人か?知らないけど」
その返答に、先程とは打って変わってしっかりした雰囲気で2人の紹介をする伊達。曰く、烏天狗の方は
「椛~?私前から廻羅が来たら何事もなく通すようにって言ってたわよね~?ちゃんと外見とかも教えたはずよ?」
「あ……あの……」
それからは伊達の椛に対する詰問時間が続いた。文と廻羅はと言うと、それが終わるまでインタビューをしていたそうな。勿論その後に、羨ましがった伊達によってお叱りを受けたのだった。
「廻羅ってさ、この後どうするとか考えてるの?」
「一応、幻想郷中を回ろうかと思ってるよ。どこか新しめの所ってない?」
「だったら守屋神社が近いと思うよ、博麗神社と一回いざこざがあったらしいけどね」
へぇ、と興味ありげに声を漏らす廻羅。思い立ったら吉日なタチらしく、もう既にそこに彼の姿はなかった。
「…言わない方が良かったかなぁ、むぅ」
一緒にいたかった伊達としては、言わない方が少しでも彼と一緒にいれる可能性があったのではと思ったのか、後悔と少しの嫉妬を胸に孕み、頬を膨らませた。
[守屋神社]
「という事で来てみたわけだけど……」
「どうした?攻撃しないのかい?」
「どうしてこう、戦闘狂が多いんだか…」
守屋神社に辿り着いた彼はと言うと、また戦闘状態に。遠巻きに見ている緑髪の巫女である
「いい加減あんたの攻撃も見たいんだけど…ね!!」
「いや、疲れてるんだけど…?」
「嘘だね、アタシの攻撃をここまで最小限の動きで避けれるんだし、攻撃くらい造作もないだろう?」
その支離滅裂な一言に、呆れとも言える溜め息を漏らす。やはり神と言う種族は、どこか可笑しい持論を1つは持ち合わせているのか。はたまた基準が高すぎるだけなのか……それはともかくとして、その溜め息に続けて、彼は言い放った。
「…1回だけね、ホントに疲れてるんだから」
「ケチだねぇ、自分が倒されるかもしれないだろうに…出し惜しみかい?」
『自惚れるなよ、未熟者』
『!?』
彼の雰囲気や口調等の全てが豹変し、一言神奈子に放つと、それは神奈子だけでなく早苗と諏訪子すらも旋律させた。それにたじろいでいるのか、神奈子は一歩下がる。それに目も向けず、廻羅は手にエネルギーを溜める。それは弾幕の光のようにも見えるが、それの放つオーラや衝撃波は並みならぬものであり、その場に立っているのも困難な程である。…放たれていないのにこの状態という時点で、2人の実力には埋まらない程の差があるとわかるだろう。
『実力差を噛み締めると良い』
その一言の後に放たれたそれは、的確に神奈子のみを飲み込んだ。神奈子は意地の抵抗を見せるものの、それに飲まれてしまう。…この勝負の結果は、最早言うまでもないだろうか。
「いやぁ~強いねぇ、廻羅!」
「すまない、イライラするとああなるんだよ」
件の戦いが終わり、守屋神社内で談笑を交わす2人。…と、扉の奥で怯え切っている2人。その2人には談笑している2人は触れていない様子。
「あれってスペルかい?」
「一応そうなるのかな?」
どんな名前なんだい?と聞く神奈子は、どこか無邪気さを帯びているようにも感じる。それに対して、特段隠すこともないと思ったのか、廻羅は素直に名前を言った。
「確か…蝕餓「山呑み黒明砲」とかじゃなかったかな?何分名付けてから使わなかったスペカだったからねぇ」
そんな感じの談話が続いている中、廻羅が目的の話題を切り出す。
「そういや、今は色々と回っているんだけど、何処かないかな?」
その一言に、声をあげて悩み始める神奈子。…そうしているうちに、神奈子は何かを思いついた様な表情を浮かべる。
…彼女が告げた場所は──
「地底、なんてどうだい?」
──読んで字の如く、文字通りの地獄であった。
という事で、御伽.伍が終わりました。
今回は妖怪の山編でした。次回は地底編です。もうすぐで本編に入ると思いますので、それまでこの小説で簡単に幻想郷の復習をしましょう。
次回『御伽.陸 旅路行く者の記録 〜幻想の裏側に〜』
オリジナル要素について
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設定集出して!
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その都度書いてくれれば良い