東方続夢郷   作:Cross Alcanna

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どうも、Cross Alcannaです。

今回から、東方ジャンルの醍醐味が見られるかもしれません。私もしっかりと情景描写をしていきますので、宜しくお願いします。今話は準備パートです。

それでは、御伽をお楽しみ下さい。



御伽.玖 予想外には用心

[太陽の花畑]

 

 

「…と言う訳なんだけど、協力してくれないかい?」

 

 

「そうね、自然が関係するとなると、私の花畑も影響が出るだろうし…目的が同じ以上、協力するのに拒否する道理はないわね」

 

 

廻羅が最初に交渉に出向いたのは、なんと風見 幽香であった。彼女に交渉を持ち込む者もそうそういないのだが、今回に関しては適任であったと言えるだろうか。それを狙ってなのか、はたまた偶然なのかは、彼の口から語られない限りはわからない。そして、紫にここの交渉を持ちかけさせなかった辺り、紫の事を理解している証拠だろう。彼女らは相性が悪いらしく、会って早々勝負を始めてしまう事もあるようで、交渉には適さないと言える。そう考えると、彼の計算の範囲内だったのだろうか。

 

 

「…良いわ、協力してあげる。妖精が強くなっているんでしょう?ふふ、骨のある奴がいるといいけれど」

 

 

「んにゃ、助かるよ」

 

 

承諾した幽香は、既に戦いの事を考えているようで、不敵な笑みを浮かべている。それをスルーしながら動じずにお礼を言う廻羅も、中々に大概であるだろう。廻羅はそんな幽香に対し、最初より詳しく、紫達にした説明をする。表情とは裏腹に、幽香はそれをしっかりと聞いているようで、言っていることを復唱する事もあった。

 

 

「成る程、要するに妖精一体一体が強くなっているのと、長的なのが厄介って事ね?聞くまでは、言う程の異変でもない気がしたけど、聞いてからだと、かなり厄介な異変になるわね。…自然そのものが敵に回るって事でしょう?」

 

 

「その解釈で合ってるよ。彼女は自然そのものみたいな存在だしね」

 

 

「…貴方、厄介なのに目をつけられてるのね」

 

 

「そうなんだよねぇ…好意を向けられるのは悪い気はしないんだけど」

 

 

廻羅の表情を見るに、本気で複雑な感情の様だ。そんな雰囲気をぶった切るかの如く、幽香が話を切り出す。

 

 

「そうね、1つ貴方にお願いしたい事があるのだけれど、良いかしら?」

 

 

「んにゃ?ある程度のものなら良いけど」

 

 

「定期的に私と戦ってくれないかしら?貴方程、戦ってて満足する奴もいないのよ。それに、貴方は私を負かした数少ない人でしょう?」

 

 

「…まぁ、こっちにもやることはあると思うけど、その時以外で都合が良かったらで良いなら構わないよ」

 

 

「あら、貴方の事だから、てっきり断られると思ったのだけど……」

 

 

本当なら断っても良いんだけど、僕も頼み事をした身だし、何と言っても僕自身鍛錬はしておきたいっていう気持ちがあるからねぇ。

 

 

「まぁ、今回こっちは頼みに来た身だしね?」

 

 

「貴方、紫の上司なのに、紫より融通効くわね。紫も貴方を見習って貰いたいわ」

 

 

「紫は幻想郷第一主義だもんねぇ。一応僕には従ってくれるけど、僕か幻想郷かで言ったら、流石に幻想郷をとるだろうね」

 

 

「そうかしら?貴方を選ぶ可能性、結構ありそうにみえるわよ?」

 

 

等と雑談を交わす2人の雰囲気は、これから戦場に赴く者のものとは思えない程緩んでいる。

 

 

「で?私だけと交渉する訳じゃないのでしょう?」

 

 

「んにゃ、後一人交渉しないといけない人がいるからねぇ。良ければ一緒に来てくれないかい?」

 

 

「まぁ、集合場所に行っても暇でしょうし、良いわよ」

 

 

「よぅし、じゃあ行こうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[紅魔館]

 

 

「霊夢直々にここに来るなんてね、明日は槍でも降るのかしらね?」

 

 

「…いつもならぶっ叩いてるけど、私自身そんな余裕がないのよ。相手が相手だから、紫も余裕が無いみたいなの」

 

 

「……そこまでの相手が?」

 

 

いつもの姿勢でない霊夢を見て、メイド長である十六夜 咲夜が、警戒しながらも霊夢に聞く。

 

 

「そうね……()()()()()()()、って思ってくれれば良いわ」

 

 

「…冗談だとしたら、笑えないわよ?」

 

 

自然が敵になる等の霊夢らしからぬ発言に、それを冗談だと判断するレミリア。しかし、霊夢の真剣な表情と首を横に振った事を見て、それが事実である事を突き付けられる。それに、紅魔館一同が唸る。

 

 

「となると、妖精全員が敵になるのね。数が数だし、確かに厄介ね」

 

 

「…正直、それだけなら良かったのよ」

 

 

「……と、言いますと?」

 

 

幻想郷にいるからか、はたまた知恵のある者がいるからか、妖精の原理については知っている模様。妖精の数について言及していると、霊夢がそれに待ったをかける。そうして切り出されるのは、この異変の最大の難所であった。

 

 

「首謀者も妖精なのよ。それに、()()()()()()()()()()。……もうわかるでしょ?」

 

 

「ソイツの気分次第で、いくらでも戦況が変わりうるって事ね?…今までで類を見ない難易度じゃないの」

 

 

自身らも異変解決に携わった事がある紅魔組にも、異変解決についてのアレコレはあるようで、聞く情報を整理したパチュリーが、溜め息を漏らしながらそう言い放つ。

 

そんな中、美鈴がある事に気付く。

 

 

「そうなると、頼れない人も出てきますね。自然関連の能力保持者は当然厳しいでしょうし、妖精全員は敵になります。そうなってくると、魔法も多少苦難を強いられたりしませんか?」

 

 

そう、魔法も多少なりとも自然に干渉している部分が存在する。全てがそうでないにしろ、一部でも弄られるとなると、どうなるかわからない。暴発する、等と言う最悪のパターンになりうる事も考えられるのだ。

 

 

「…魔法は雑魚処理に役立つと思っていたのだけれど、そうなると厳しそうね。仮に相手が自然の力を増幅させて魔法が使えるようになっても、妖精が強くなると。…今までで一番勝算が薄いかもしれないわよ?」

 

 

「だから困ってんのよ。紫ですら余裕無さげだったし、だからあんた達に協力を頼みに来たのよ」

 

 

「……良いわ、事が事のようだし。私自身、そこまで派手に暴れられるのも嫌なのよね」

 

 

少し考えた素振りを見せ、レミリアは快諾した。それを聞いてか、紅魔組から反論や不満は出なかった。どうやら全員、レミリアの言う事に当てはまる節があるのだろう。

 

 

「…で、私達はどこに行けばいいのかしら?」

 

 

「じきに紫がここに来ると思うわ、それまでここで待っていてくれないかしら?」

 

 

「良いわ。こっちはこっちで作戦でも考えるとしようかしら」

 

 

こうして、霊夢の方も交渉を進めていたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[冥界]

 

 

「…やっ!はっ!せいっ!!」

 

 

「うふふ、相変わらず妖夢は鍛錬熱心ねぇ」

 

 

「幽々子様、どうかなされましたか?」

 

 

数知れぬ桜が咲き乱れ、死者の魂がそこらを浮遊しているここ、冥界にて。そこでは、剣術の鍛錬に励む庭師こと魂魄(こんぱく) 妖夢(ようむ)と、冥界の主である西行寺(さいぎょうじ) 幽々子(ゆゆこ)がいた。幽々子は、鍛錬中である妖夢におっとりした声で話しかける。それに凛とした声で答える妖夢。

 

 

「そうねぇ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

「…紫様ですか。幽々子様ならともかく、私が同席する必要があるんでしょうか?」

 

 

「あくまで勘なのだけど、今回は妖夢にも関係ありそうなのよね。だから一応、ね?」

 

 

「……わかりました」

 

 

この会話を聞いて解る人は解るだろうが、幽々子は()()()()()()()()()()のだ。紫が来る事も、妖夢に関する話を持ち込んでくる事も。長い付き合いがあるからこその勘ともとれるが、後者に関してはエスパーでないかとも言える気がする。

 

そんな話をしていると幽々子の宣言通り、紫の使うスキマが現れ、紫が姿を現した。

 

 

「貴女、エスパーにでもなるつもり?そこまで当てられたら、こっちとしては変な気持ちなんだけど……」

 

 

「でも、話は進みやすいでしょう?紫?」

 

 

紫が変な気持ちを抱くのも無理ない話だが、それで話がスムーズに進むのも、また事実。それで何度、紫が話を円滑に進められたのか、数える事も馬鹿々々しいだろうか。

 

 

「そうね、今回ばかりはありがたいわ。私も今回の件では焦っているのよ」

 

 

「紫様が……?一体どんな異変です?」

 

 

紫の様子から、話してもいないのに異変と察する妖夢。言葉にしていないだけで、恐らく幽々子もそれを察している事だろう。紫が焦る事と言ったら、幻想郷になんらかの影響が及んでいる時である。そこから推測したのだろうか。

 

 

「首謀者が()()()()()()()()。妖精…いえ、自然が敵よ」

 

 

「あらあら、それは厄介な事になったわねぇ。あの人が帰ってきたのがトリガーになったのかしら?」

 

 

「恐らくね。昔から廻羅様に対して異常な感じだったのは、今でも鮮明に覚えているわ」

 

 

溜め息交じりにそう言う紫も、中々珍しいように思えるが、その状況を作る事が出来るのが、今回の首謀者であるのだ。そして、2人程話には参加していないものの、内容を噛みしめる様にしている妖夢。それを見て幽々子が、こう切り出してきた。

 

 

「私達に戦力になるように交渉しに来たのでしょう?私達は構わないわよ~」

 

 

「あら、話が早くて助かるわ。もう少し骨が折れるかとばかり思っていたのだけど」

 

 

「アレは私も厄介だと思うからね。廻羅さんがいるなら、これを機にしばらくおとなしくして貰いたいのが本音だけど」

 

 

紫も幽々子も、今回に関しては利害が一致しているようで、異変解決に前向きな様子。一方の妖夢も、主がやる気である事を確認してか、やる気に満ちているように見える。

 

 

「紫、私達はどこに行ったら良いのかしら?」

 

 

「そうね、今からスキマで繋げる場所で待機して貰いましょうか。まだ私も交渉しないといけないのよ」

 

 

そう言いながらスキマを繋げ、2人が入っていくのを見送った紫は、また新たなスキマを出し、別の場所へと向かっていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[とある集会室]

 

 

「よいしょ…っと、あり?僕が最後かぁ」

 

 

「お疲れ様です、廻羅様」

 

 

何やら自分が最後であった事に、何処か納得のいかない表情を浮かべる廻羅。そして、そんな廻羅を労う紫。それを見て驚く者がちらほら。

 

 

「廻羅、そんなに交渉が難航したの?」

 

 

「ん〜、どちらかと言うと僕が誰かを話すのに時間をくった感じかなぁ」

 

 

霊夢の一言に、どこか複雑な表情でそう言う廻羅はコホンと咳き込み、ここにいる全員にまず一言告げる。

 

 

「まず1つ、確認の意味を込めて言うけど、君達が異変解決にあたった事があるかもわからないし、どれだけの難易度の異変を解決したかもわからない。でも、今回の異変はそのどれをも上回る難易度と捉えてもらって構わない」

 

 

その一言で、ここにいる者が一気に表情を険しくする。ここに来るまでに説明はされているものの、その言葉がこの場全員を戦慄させるには事足りる。幻想郷は世界が世界なので、どうしても強さの基準が一般のソレとは程遠く、幻想郷で強いと言われる者は、大方どこへ行っても心配はいらない程に実力を持つ等とも言われていたりするとか。廻羅は自覚がないが、幽香や紫はそのレベルに達している。

 

 

「首謀者は自然そのものだ。彼女は天候や妖精の強さを自在に変えてくるだろうし、常に自身が有利になるような状態にしうるだろうから、外的要因までもが敵に回る事が懸念されるだろうね。ただ、念頭において欲しい事が1つ」

 

 

そこまで言った彼は、息を吐き、一呼吸置いてからこう告げる。

 

 

「彼女の狙いは僕だろう。幻想郷全域で住人に妖精が襲ってくるだろうけど、恐らく急な力の増幅による興奮からのものと捉えてもらって構わない。彼女と戦う際に、彼女が他の妖精と一緒に対峙してくるかおしれないけど、それ以外の妖精は彼女の指示では動いてないだろうね」

 

 

「つまり、今回の異変の唯一の好条件は、相手に計画性がないって事かしら?」

 

 

「そ。まぁ、そこ以外は頭可笑しいレベルで大変だろうけど」

 

 

廻羅の事細かな解説に、そんな確認を取るのは、紅魔館の主であるレミリア。その確認に対し廻羅は、肯定しつつも、今回の事態に苦笑いを浮かべる。そんな中で、集められた者の1人である比那名居(ひなない) 天子(てんし)がこんな事を口にした。

 

 

「にしても、霊夢ならまだしも、紫がそこまで焦るって、私初めて見た気がするんだけど?どうしてそんなに余裕がないのよ?」

 

 

そう、これはここにいる者の一部が気になっていた事でもある。事実、紫が焦る事自体が稀であり、彼女が焦る事は大方幻想郷の存亡に関する事くらいだ。そんな紫が、今まで以上に余裕がないと来たら、幻想郷の者は不思議に思う他ないだろう。

 

 

「…幻想郷が誕生してから少し経って、彼女の異変を一度だけ止めた事があるの。勿論、廻羅様もいたし、他にも協力者はいたわ。その時に痛感したの」

 

 

廻羅と同様に、こちらも一呼吸置いてから、次の言葉を紡ぐ。

 

 

「……正直、()()()()()()()()()のよ。強力な妖精は無限に湧くわ自然依存の能力がまともに運用できないわ彼女の能力自体が狂ってるわで、あれは地獄絵図だったと、今でも鮮明に覚えてるわ」

 

 

今はこれだけの人員がいるからまだいいけれど、と付け足し、発言を終えた紫。それに合わせるかのように心配そうな表情を浮かべ始める面々。その雰囲気をぶち壊すかのタイミングで、廻羅が皆に話を切り出した。

 

 

「まぁ、不安要素が多いのは事実だけど…今回は比較的地獄絵図にはならないんじゃないかな?何せ、メンツがメンツだからね。さ、そろそろ現地に向かうとしようか」

 

 

そんな廻羅の覇気があるとは思えない号令を合図に、様々な不安を募らせた面々は首謀者の下へと向かっていった。

 




という事で、御伽.玖が終わりました。

この小説を執筆する際、一番苦労したのがどんな異変にするかでした。既存の異変に似る事は避けたかったので、それを1人で一から作るのには、大変な労力を要しました。これからが読みどころになってくると思われますので、私も全力を尽くしたいと思います。

次回『御伽.拾 弱小と、侮るなかれ』

オリジナル要素について

  • 設定集出して!
  • その都度書いてくれれば良い

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