サイド3 ジオ・マッド社研究所
やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。
年末にキシリアが五月蝿かったので、正月はメイと一緒にデギンの所へ挨拶に行ってきた。初めは難しそうな顔をしていたデギンだったが、
「ギレンさん……。いえ。お父さんには施設で苦しんでいる所を助けて貰いました。おじいちゃん、どうかこれからよろしくお願いします!」
メイがそう挨拶すると、おじいちゃんと呼ばれたデギンはまんざらでもなさそうな顔をしていた。まあデギンはガルマにもベタ甘だから、ガルマと同じくらいの歳の女の子におじいちゃんと呼ばれれば甘い顔をするだろうと思っていた。
またガルマにもデギンと会う前にこっそりと話をして、「ザビ家の男たるもの女性には優しくあらねばならんぞ。」とささやいておいたので、
「やぁ、メイ。これからは僕とも仲良くしてくれ。」
と、精一杯紳士的に振る舞っていた。ふっ…チョロい。
さて、今日はミノフスキー博士に依頼していた小型核融合炉が完成したとの連絡を受けて、メイと一緒にジオ・マッド社の研究所に来ていた。
「凄い!凄い!これがモビルワーカー!?」
原作と同様にモビルスーツへ興味津々なメイと俺をミノフスキー博士が直々に案内してくれていた。
「これはその試作機で、YMS-02モビルワーカー01式と言います。主に月面やアステロイドベルトを開発するための作業用機械として開発しています。」
「ねぇねぇおじさん!これ触っても良い?」
「こらメイ。ミノフスキー博士をおじさん呼ばわりするものではない。」
「ははは。おじさんで構いませんよ。好きに触って貰って構いませんが、動力炉のスイッチだけは入れないよう気をつけてください。」
「はーい!」
メイが元気にコックピットに潜り込んでいくと、ミノフスキー博士からモビルワーカーの開発状況について報告があった。
「現在開発中の後期型では、落盤等の事故からパイロットを保護するためコックピットの周りに装甲を配置して安全性を確保できるように改良しています。また、腕部マニピュレーターを換装する事で様々な用途に使用できるようにしていく予定です。」
「ふむ、そろそろ鉱山開発などでは十分に使えるようになってきたか。よかろう。後期型についてはある程度形になったら量産して月面開発に投入し、データ収集に入れ。」
「わかりました。しかし本当に開発を秘匿しなくてもよろしいのですか?」
「今はまだ、その段階ではない。むしろ大々的に作業用機械を造っている事をアピールするべきだ。」
隠せば隠すほど人は知りたがるものだし、連邦の情報部は優秀だ。全ての情報を隠しきれるはずがない。であるならば流して問題ない情報は逆に出来るだけ多く流して混乱させるべきだ。
「YMS-03 ヴァッフの開発についてはどうなっている?」
「最大の懸念だった動力用融合炉の小型化については既に完了しており、現在は流体パルスシステムを応用した駆動系の開発に入っています。此方も開発の目処はたっておりますので試作機が完成する日もそう遠くはないでしょう。」
「そうか。ヴァッフについても同様に、試作機が完成次第デブリ回収やコロニーの整備等に投入しデータ収集に入れ。ただ、此方は動力系をバッテリー方式に変えてからテスト運用に入り、小型核融合炉の情報が漏れる事のないよう細心の注意をせよ。」
「はっ。」
こちらについても、ミノフスキー・イヨネスコ型熱核反応炉の情報さえ漏れなければ問題はない。
「そう言えば、ギニアスはどうしている?」
「現在は第3研究室においてメガ粒子砲の研究に専念しております。既にレールガンを遥かに上回る射程と威力の獲得に成功しており、現在は更なる威力の獲得に向けて研究を進めております。よろしければご案内致しましょうか?」
さすがはギニアス。このまま続ければ山をも貫く超威力のメガ粒子砲を開発してくれるだろう。だが現時点で急ぐべきは様々なミノフスキー粒子関連技術の開発だ。
「いや、それには及ばん。だが、ひとつ言伝を頼む。
メガ粒子砲の威力の向上は確かに重要な課題だが、ミノフスキー粒子にはまだまだ他の可能性がある。メガ粒子砲の拡散化や小型化、ミノフスキー・エフェクトを利用した重力下浮遊システム等のな。他にもメガ粒子砲を防ぐための研究なども必要となるだろう。
様々な視点をもって研究し、ひとつの事にこだわりすぎないように伝えてくれ。」
「……。はっ…。必ずやお伝えいたします。」
何故か一瞬難しい顔をした後、ミノフスキー博士は了承の返事をした。
「うむ。さて、メイ。そろそろ帰るぞ。」
なかなかコックピットから出てこないメイに声をかけると思いもよらない言葉がかえってきた。
「博士!この機体の制御プログラム、ここの部分がちょっとおかしい気がするんだけど?」
「なんですと?」
勝手にコックピットの機材へ自分のパソコンを繋げたメイが、ミノフスキー博士を呼びながら自分のパソコンを指さしていた。
「ほら。プログラムのここの部分、二重命令になってるから無駄に処理してるんじゃないかな?」
「これは…確かに……。」
「フム、まあ試作機ならば多少のプログラムミスもやむを得まい。」
「いえ、これは下手をすると機体が緊急停止する恐れがあります。至急直させましょう。」
「そうか。よくやったぞメイ。」
「うん!」
流石原作でプログラミングだけでモビルスーツの性能を底上げした才媛である。味方にいて良かった。
そう言えば、メイの力を借りれば俺がやりたいアレを作る事が出来るんじゃないか?
一一一一一一一一一一一一
side メイ・カーウィン
「私にモビルワーカーの操縦シミュレーターを作って欲しい?」
「正確にはモビルスーツの操縦シミュレーターだ。」
研究所から家に帰るとギレンさんが突然、そんなお願いをしてきた。
「今のままだとモビルスーツの操縦訓練は実機で訓練するしかない。だが専用の操縦シミュレーターがあれば、まだ完成していない機体の操縦訓練さえ可能となるだろう。
今日メイがモビルワーカーのプログラムミスを見つけたところを見て、メイならば作る事が出来るのではないかと思ってな。」
うーん…。プログラムを作るのは好きだし、さっきこっそり貰ってきたデータもあるから作れそうな気もするけど、何分初めての事だからちょっと自信がない。なので正直に「作ってみるのは良いけど、上手く作れるかわからないよ?」と言ってみた。
するとなんとビックリ「なに。それでかまわん。上手く作れるまで私が使ってテストしてやる。」なんていう返事がきた。
「エーッ。ギレンさんがテストするの!?」
「ウム。これから多数のパイロットが使う事になる訓練シミュレーターなのだ。ザビ家の長男である私がテストしないで誰がテストするというのだ!」
……。普通に考えて操縦シミュレーターのテストは政治家の仕事じゃないと思う私は変なのかな?まあどうやら本人がやりたいみたいだし突っ込まないでいてあげよう。
「わかったよ。それじゃ今から早速作業にかかるからデータとりはよろしくね。」
「任せておけ。必要なものがあればなんでも言うがいい。最優先で揃えさせる。」
珍しく楽しげなギレンさんを見て、前に素敵なクリスマスを貰ったお礼に頑張ってみるかなと思いながらパソコンを立ち上げる私なのでした。
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