サイド3 ジオ・マッド社研究所
やあ…諸君。新年あけましておめでとう。
最近シリアスなシーンが多いのでそろそろアイナ嬢にセクハラのひとつもしてみたいギレン・ザビである。
というかずっと同じ家で暮らしているのに、屋敷が大きすぎて着替えシーンに遭遇とかが一度もないので大きいのも考えものだ。
昨年アステロイドベルトを出発したア・バオア・クーが、今月の初めにサイド3宙域に到着した。
ちょうどキシリアから連邦の情報部がジオ・マッド社周辺をうろついているとの報告が上がっていたため、開発拠点をア・バオア・クーに移す事が決まり、現在引っ越し作業の真っ最中である。
「忙しいところにすまんな、ギニアス。」
「とんでもありませんギレン閣下。閣下がお呼びとあればどこへでも喜んで参りましょう。」
「アイナといい貴様ら兄妹には世話になってばかりだな。今後とも頼りにさせて貰う。」
「過分なお褒めの言葉をいただき、身に余る光栄でございます。今後も全力で努めてまいります。」
「ウム、まあ体に無理のない程度にな。さてそれでは現在の状況について説明してくれ。」
「はっ。まず此方が今回完成した連邦のセイバーフィッシュのデータを基に開発した全領域型多用途戦闘機『F-1 セイバードップ』です。」
そう紹介されたのは上から見れば「山」の字に見えそうなドップとは似ても似つかぬ航空機だった。というかあの両翼の端についてる巨大な板状のものは何だ?
「装備の換装により宇宙、地上問わず運用が可能なうえ、防空、対艦、偵察等あらゆる任務に対応可能な機体となっております。
また、閣下のアイデアから開発したムーバブル・バインダーにより高い機動力の獲得に成功し、地上における垂直離着陸さえ可能となっております。」
「ムーバブル・バインダー?」
「はい。セイバードップは機体の両翼端にガトリング砲1基とスラスター2基を内装したバインダーが取り付けられており、このバインダーのフレキシブルな可動により、従来の航空機とは比較にならない様々な挙動をとることが可能となっております。」
どうやらセイバーフィッシュの設計図を渡す時にギャプランの話をしたのがこうなった原因のようだ。
まあギャプラン改と似たような設計なのに強化人間専用機とかにならなくて良かった。
「性能はどうなのだ?」
「運動性こそモビルスーツには及びませんが、機動性ではMS-04を上回るものとなっております。」
「それはかなりのものだな。よし、それでは至急量産体制に入れ。モビルスーツの開発についてはどうなっている?」
「ご案内します。」
案内された先にあったのは、どことなく狼をイメージさせる細身のシルエットのモビルスーツだった。
「此方がエースパイロット向けに開発中のYMS-05 ヅダになります。
MS-04をベースに旧ツイマッド社のチームが開発した木星エンジンを搭載する事でMS-04の2倍程度の機動力の獲得を目指しています。
ただ、現時点では機体の耐久力がエンジンの出力においつけておらず、先日のテストで危うく自損しそうになってしまったため現在再設計中です。」
「ウム。時間をかけても構わないのでヅダる事のない機体に仕上げてくれ。」
「?…。ヅダるでありますか?」
「あまりの加速に耐えられず、機体が自壊したりすることがないようにという意味だ。一般兵用の機体についてはどうなっている?」
「YMS-06 ザクⅡについては現在試作機を製作中です。ザクIのジェネレーターを改良する事で大幅な出力の向上に成功しており、それによって生じた余力を性能向上に使う事で2割程度の性能向上が見込まれています。」
「汎用性についてはどうなっている?」
「汎用性についてはほぼ無改造で宇宙、重力下、短時間なら水中戦にも対応可能となる予定です。試作機が完成次第、アクシズと地上で運用テストを行う予定です。」
十分な性能だとは思うが、ザクとしてまだ完璧ではない。どうせ「ザク」の名を冠する機体を開発するなら、宇宙世紀以外からも良い部分を取り入れねばな。
「フム…、それではまだ不十分だな。」
「不十分…でありますか?」
突然の言葉に戸惑うギニアスに向かい言葉を続ける。
「そうだ。環境への適応力という意味では十分な性能だが、単一の機種で様々な戦局に対応させるという意味ではまだ不十分だ。」
「しかし閣下、モビルスーツは既にマニュピレーターの採用により様々な装備に換装可能であり、それによりどのような戦局にも対応が可能です」
まあそれはそうなんだけどね。
「確かにモビルスーツは人型の兵器だが、それに囚われすぎる必要はない。例えば背中のバックパックに高機動戦や砲撃戦向け等の特化機能を付与し、その任務に適したバックパックに換装する事で、あらゆる戦局に柔軟に対応させることが可能になるのではないか?」
「確かに技術的には十分可能だと思いますが…。」
正史でも高機動型ゲルググで実用化されている技術なので間違いなく可能である。
だがどうせバックパック換装機能を持たせるならば、やはりジオンの主力になるザクⅡに持たせるべきだ。
「そうすればバックパックひとつ換装するだけでモビルスーツに機動歩兵や砲兵、工作兵、偵察兵、降下猟兵といった様々な特性を付与する事ができようになる。
それは今後色々な戦局に対応せねばならない我が軍の助けに必ずなるだろう。」
「……。設計を一からやり直す必要があります。
また、開発の為に色々なデータを追加で取得せねばなりません。それ故にかなりお時間を頂く事になると思いますが…よろしいでしょうか?」
まだ開戦まで6年近くあるし、量産する時間を考えてもまだ大丈夫…のハズだ。
「3年を目処に量産に至れるように開発を進めよ。無論途中経過については逐次報告するように。」
「はっ!ジーク・ギレン」
さて…それじゃ家に帰ってリアルモビルスーツを操縦して遊ぶ…じゃなかった。テストパイロットとしてモビルスーツ用OSの為のデータ収集をするかな。
いやぁ忙しいなぁー。?え、どうしたメイ?テストパイロットについて相談がある??
一一一一一一一一一一一一
side
ギニアス・サハリン
「ザクⅡの設計を一からやり直すだと!?」
ミノフスキー博士から出た悲鳴はある意味当然のモノであった。私が彼の立場であっても恐らく同様に悲鳴をあげていただろう。
博士が声を上げる程に、ザクⅡの設計は高いレベルでバランスがとれており、恐らく名機と呼ばれてもおかしくない程の出来映えであったからだ。
「そうです。本日ギレン閣下に設計案をお見せしたところ、基本的な性能は十分だが汎用性が不足しているとの判断を下されました。」
「宇宙、地上、短時間なら水中でも稼働できる機体で汎用性が足りないとは、次は空でも飛ばせと言うのか!?」
「それも悪くないと思いますが、ギレン閣下から頂いたアイデアは、背中のバックパックに様々な任務に対応した特化機能をもたせ、それを換装する事で様々な戦局に対応できる汎用性をザクⅡに持たせるという事でした。
そうする事でザクⅡは、単一の機体でありながら白兵戦から砲撃戦まで様々な任務に対応可能な真の万能機となります。」
ギレン閣下から伺ったアイデアを説明すると、ミノフスキー博士と一緒になって抗議の声を上げていたスタッフの中にも理解を示す者が現れはじめた。
納得して貰えたか…、私がそう思ったその時、ミノフスキー博士の口から予想だにしない言葉が発せられた。
「……。確かに素晴らしいアイデアだ。技術的にも十分に可能であろう。しかしギニアス、我々は研究者だ。
いつもギレン閣下が出される『答え』のようなアイデアに頼るのではなく、未知へと挑み、ひとつひとつ自分たちの力で問題を解決していく事が大切なのではないか?」
ミノフスキー博士の問いかけは、確かにひとつの真実を示していた。
ジオ・マッド社の誕生以降、モビルスーツをはじめとして完成したもののほとんどは、ギレン閣下から示された具体的なイメージを基に開発が進められてきたものばかりだった。
それらは本来、研究者が試行錯誤の上で形にしていくべきものであるにもかかわらず、閣下から具体的な形で「アイデア」が示され、それに基づいて進められた研究は、どれもが最初からそうなる事が決まっていたかのように成功を収めてきた。
故にミノフスキー博士の懸念には私も理解できる部分があった。しかし……。
「私も研究者として、博士の懸念には理解出来る部分があります。しかし博士、ギレン閣下は博士の言う未知への挑戦を禁止されている訳ではありません。
現に私が提案させて頂いた、メガ粒子砲とミノフスキークラフトを搭載した地上用大型機動兵器の研究も始まっています。」
「それは…そうなのだが……。」
「ザクⅡのバックパック換装システムについても、より良い案を提示することができればそちらを採用して頂く事も可能になるでしょう。
閣下の案と並行して改良案を検討していくという形で納得して頂く事はできませんか?」
「……。そうだな。詮無き事を言ってしまった。忘れてくれ。」
多少ひっかかりはあるようだが、なんとか納得してくれたようだ。しかし博士があのように思っていたとは……。大丈夫だとは思うが念のため閣下へ報告を入れておくとしよう。
全てはギレン閣下の為に。
アイナ様に似合いそうな機体は?
-
アプサラス
-
ビグ・ラング
-
ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
-
アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)