新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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23話 UC0075年2月 ×YMS-06 ザクⅡ ◯水着回

ハワイ ワイキキビーチ

 

やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。

 

今日はついに完成したYMS-06 ザクⅡの運用試験視察のために地上へと来ている。

 

え?ハワイで試験をしているのかって?

 

運用試験はここから南にあるキリスィマスィ島という無人島でおこなっている。

 

もともとは有人の島だったのだが、連邦の棄民政策により住人は全て宇宙にあげられてしまい、今はアナハイム社の所有する実験場となっている。

 

そこにサイアム・ビストの協力でザクⅡやマゼラタンクといった地上戦用の装備を運び込み、地上での戦いに向けたデータ収集をおこなっていた。

 

アナハイムとは様々な形で交流を続けており、先日サイアムに伝えた「予言」が現実のものとなった暁には「箱」の引き渡しも可能となるだろう。

 

出来れば防ぎたい事故の事なのだが、原因となった艦の名前や、事故が発生した日時もわからない以上、事故を防ぐ手段がない。

 

まさか連邦に農業ブロックに艦が衝突するといけないので、サイド3に近寄らないでくれ。と言う訳にもいかないだろうし。

 

そうである以上、我々にできる事は「事故がおきる」という情報を最大限利用する事くらいのものだ。

 

なので、もし事故が起きても食糧が不足したりしないように農業ブロックを拡大するとともに、人手不足を解消するため他のサイドから農業留学生の受け入れ枠を増やす等の対応をおこなっていた。

 

まあ……人手不足の解消は建前でしかないが。

 

さて、話が大きく逸れた上に脱線してしまったが、今日の主役はYMS-06 ザクⅡである。

 

YMS-06 ザクⅡはジオン公国軍の主力となる量産型汎用モビルスーツである。

 

既に宇宙で使用するA型、B型装備についてはア・バオア・クーで試験が完了しており、今回地上ではC型、F型、M型装備について運用試験をおこなっていた。

 

え?それじゃ意味がわからないって?

 

ザクⅡは、バックパックとオプション装備を換装する事で様々な機能を持たせる事ができる。

 

具体的に言うと、

 

A型装備

ザクⅡの核兵器運用装備。核兵器の使用を前提としているため、コックピットブロックの周囲は放射線遮断液により覆われている。

 

B型装備

ザクⅡの宇宙用高機動装備。推力を大幅に強化したバックパックと脚部の追加スラスターにより高い機動力を持つ。

 

C型装備

ザクⅡの中距離支援用装備。大型のバックパックに180mmキャノン砲と照準用センサーを、両肩上部に多目的ミサイルポッドを装備し、砲撃支援や戦域防空を担当する。

 

D型装備

防御用装備 ※機密

 

E型装備

ザクⅡの偵察用装備。大型のバックパックにレドームと各種センサーを搭載しており、長距離偵察用のカメラガンを内蔵した専用のスナイパーライフルは、高い命中精度を持つ。

 

F型装備

ザクⅡの汎用装備。バックパックにプロペラントタンクと2本のサブアームを備えており、長い稼働時間と汎用性の高さから様々な任務で使用される。なお、通常サブアームは武器や盾の保持に使われ、精度は低いものの保持している武装から弾を発射する事も可能である。

 

G型装備

地球降下用装備 ※機密

 

H型装備

地上用高機動装備 ※試作中

 

I型装備

ザクⅡの近衛師団用装備。B型ベースのバックパックに120mmガトリング砲を2門装備しており、専用の大型シールドとショットランサーを装備する事で高い近接戦闘能力を持つ。

 

M型装備

ザクⅡの水中用装備。水流エンジンを搭載したバックパックと、腕部と脚部に補助推進機を装備する事で水中での姿勢制御を可能としている。「水中用」と銘打っているものの水中性能は低く、主に上陸作戦や諸島部での戦闘で使用する。

 

……といった感じだ。

 

新型のモビルスーツ用OSの性能と相まって、テストを担当している親衛隊のメンバーから絶賛されており、既に量産に向けた準備が先行的に進められていた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ただ、ザクで空を飛びたいと言われても困るぞルーデル。流石にバックパックを換装した位で空は飛べない。やはりドダイの開発を急がせるしかないか。

 

他にもザクウォーリアを見習って、盾を右肩から左肩に移して半自律可動式にする等の改良もしたのだが、そちらについては特に誰からもコメントは貰えなかった。

 

解せぬ。

 

脱出装置を搭載した事といい、ここまでくると最早違う機体の気もするが、元は同じ機体なのであまり気にしない事にする。

 

さて、それでは視察の疲れをゆっくりビーチで癒す事にするか。

 

こらこらメイ、そんなにはしゃぐんじゃない。

 

 

一一一一一一一一一一一一

 

 

side メイ・カーウィン

 

 

変じゃないかな?

 

首を傾げながら、鏡に映るのは、生まれて初めて着る水色のワンピースの水着を着た自分の姿。

 

一緒に買いにいったアイナお姉ちゃんやハマーンさんは似合っていると誉めてくれたけど、こうしていざ着てみるとやっぱりちょっと不安になる。

 

だって水着なんて着たことないから恥ずかしいし、お姉ちゃん達みたいにスタイル良くないし…。

 

「メイちゃん着替え終わった?」

 

やばっ。アイナお姉ちゃんを待たせてた!

 

外から聞こえてくる声に、私は一気に現実に引き戻される。

 

念願の地球に来ているのに、恥ずかしさのあまり思考が変な方向にいってたみたい。

 

せっかくの地球。それも今や世界有数の高級リゾートとして有名なワイキキビーチに来ているのだから、精一杯楽しまなきゃ。

 

メンバーは、私とアイナお姉ちゃんとハマーンさんとおまけのギレンさんの4人。

 

元々私がモビルスーツ用OSを開発したご褒美としてギレンさんに海へ連れていって貰えることになったんだけど、私が「ギレンさんと二人で海に行ってもつまらない!アイナお姉ちゃん達と一緒じゃないなら行かない!」って言ったので、結局このメンバーになった。

 

その時にギレンさんが落ち込んでいる姿は、なんか哀愁が漂っている感じでちょっと可愛かったな。二人で海に行ってもつまらないなんて言ってゴメンね。

 

「メイちゃんどうかした?」

 

「あ。うんっ!!ごめん、今出るね!」

 

また変な方向に思考が飛んでいた私は、大急ぎで着ていた服をスーツケースにしまうとホテルの部屋から外に出た。

 

するとそこに飛び込んできたのは、白いビキニ姿のアイナさん。

 

肩紐の部分には手の平ぐらいの大きさの花のコサージュが施されていて、一見するとシンプルな水着なのに、アイナさんが着るととても華やかだ。

 

……というかあの胸は反則だ。私が同じ水着を着ても絶対あんな風にはならないもん。

 

「あら可愛い。やっぱりメイちゃんにはそういう可愛いらしい水着が似合うわね。」

 

「アイナお姉ちゃんもステキだよ!すっごくスタイル良いし羨ましい!」

 

本当にスタイルが良くて羨ましい。アイナさんの水着を見た後に自分の水着姿を見るとなんかちょっとへこんじゃうもん。

 

神さまちょっとこの差は酷くないですか?!

 

「うふふ…ありがとう。とても嬉しいわ。でも準備が出来たならそろそろ行きましょ?きっとロビーでギレン様やハマーンさんが首を長くして待ってるわ。」

 

あ、そうだった。ギレンさん達をロビーで待たせてるんだっけ。

 

このホテルは貸し切りらしいので他に人はいないだろうけど、この格好でギレンさんの前に行くのは何か緊張するなぁー。

 

「ほら、行きましょ。」

 

「あ、うんっ!!」

 

私がアイナさんの後を追いかけてホテルのロビーへと向かうとギレンさんとハマーンさんの二人が水着姿で待っていた。

 

「ギレン様。メイちゃんをお連れしましたわ。」

 

「あ、アイナさん!?」

 

アイナさんの後ろに隠れていた私の肩にアイナさんの手がのせられ、ギレンさんの前へと押し出される。

 

ギレンさんの水着は黒一色の飾り気のないトランクスタイプ。

 

普段服で隠れているお腹は予想外に鍛えられており、綺麗に6つに割れた腹筋が見えちゃっている。

 

男の人にしては細いなぁ…なんて思ってたけど、脱いでみると筋肉質というか、やっぱ男の人だなぁといった感じで。

 

うぅ…どこに視線を向けたらいいのかちょっとわからなくなってしまった……。

 

ついさっきは自分の水着姿を見て恥ずかしくなってたけど、今はそれ以上にギレンさんの方を見るのが恥ずかしい。

 

だって、水着だよ!?

 

うん。そりゃ海に来たんだから水着になるのは当然だけど、でも――

 

男の人の裸の上半身を見るのなんて、たぶん大昔にお父さんと一緒にお風呂に入った時以来なのだから。

 

そのせいかギレンさんの前にいるだけなのにとても緊張してきた。こんな風に緊張しすぎているのを見られて変に思われちゃったらどうしよう…。

 

「どうですか?ギレン様。メイちゃんの水着姿は?」

 

「フム…良く似合っているぞメイ。なかなかに愛らしくて良い。」

 

こちらの気も知らず、ギレンさんがいつものまゆ無し顔で無表情を装いながらそんな台詞を言ってくる。

 

でもそれなりに長く一緒に暮らしてきた私にはわかる。あの顔は緊張している時の顔だ。

 

だってよく見るとちょっと視線が泳いでいるし。

 

そう思うと一人で変に緊張しているのがなんかバカらしくなってきた。

 

「それでは閣下。そろそろ海に向かわれますか?」

 

そんなやり取りをしているとハマーンさんが私達に声をかけてきてくれる。

 

ハマーンさんは紺色のウェットスーツみたいな感じのスポーティーな水着姿だった。

 

手足長いし、胸は…そこまでないけど、それでもなんかとても大人っぽくて格好いい。

 

きっと早くも浮き輪を手にして、海の方をチラチラ見てなければもっとカッコよかっただろう。

 

「ウム。それではビーチに向かうとしよう。」

 

そんなギレンさんに連れられて向かった先の海は、とても言葉ではいいあらわせないくらい広大だった。

 

何処までも広がっている透き通るような青。

宇宙から地球に降りる時に一度見てたけど、こんなに大きな水の塊を間近で見るのは初めてで、そのあまりの広大さに私は不思議な感動を覚えていた。

 

この海の先には、他の島やいろんな大陸が広がっているらしいけど、海を見るのもはじめてな私にはそこがどんな風になっているのか想像さえも出来ない。

 

サイド3という狭い世界でずっと育っていた私にとって、海という大いなる自然との出会いはとても衝撃的なものだった。

 

いつか、この先にある他の場所にも行ってみたいな。不思議とそんな思いが自然に湧いてくる。

 

「メイ、砂浜に行くぞ。」

 

「うん!」

 

ギレンさんや他の皆と一緒に砂浜に降りてみる。私がおっかなびっくり砂浜を歩いていると

 

「相変わらず海は広いな。」と、遠い目をしながらギレンさんが呟いていた。

 

「ギレンさんは前にも海に来たことあるの?」

 

ギレンさんもコロニーの住人だし、どことなくインドア風のイメージなので、海に行くようなタイプじゃない気がして思わず聞いてみた。

 

「ずいぶん昔にな。特にアジア地方にある日本にはそれなりに思い入れもある。まあ今どうなっているかはよくわからないが。」

 

すると何故かとても懐かしそうにそう言ったギレンさんが、一瞬別の誰かのように見えてしまった。

 

まあよく考えればメイよりずっと歳上だし、前に海へ来たことがあっても別に不思議じゃないけど。

 

「それじゃ海に入ってみようかな。」

 

私が浜辺でサンダルを脱ぐとざらざらした砂が、足の指の間をすりぬけていく感覚が心地よかった。

 

泳げるかどうかわからないので、そのままゆっくりと足を波打ち際へと進めていく。

 

初めて触れる海はひんやりとしていて、これが地球の七割を覆っていると思うと不思議でしょうがない。

 

「世界は広いなー。もっといろんな所に行けたらいいのに。」

 

そんな風にさっき心の中で思っていた事をなんとなく呟くと、

 

「行きたい所があれば言ってみろ。可能な限り叶えてやろう。」

 

なんてギレンさんが言ってきた。思わず「本当に?」と聞き返した私に

 

「娘はわがままを言うものであり、父親はそれを叶えるためにいるのだ。遠慮せず行きたい所があれば私に言うが良い。」

 

などと言ってくれ、嬉しくて仕方なかった私は、照れ隠しで浅瀬を走り回っているうちに岩につまずいてしまい、しこたま塩辛い海水を飲んでしまうのでした。

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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