サイド3 ジオ・マッド社研究所
やあ…諸君。新年あけましておめでとう。ギレン・ザビである。
……何故か最近こればかり言っている気がするが、後一度位なので大目に見てくれると嬉しい。
昨年から始まったジオンの軍備増強の流れは加速の一途をたどっている。
そのため昨年4月にはそれまでア・バオア・クーとアクシズの2ヶ所だったMS-06の生産拠点を、サイド3とソロモンにも拡大していた。
ただ、ここまで生産規模を拡大すると情報の秘匿が困難になってくるため、動力系をバッテリー方式に変更して外装をザクⅡに似せたザクⅠを民間向けに販売して情報撹乱をおこなったりしている。
まあ後で生産ラインを転用できるし、部品の多くはザクⅡにも使えるからな。
ただ、モビルスーツ用のOSを搭載していない上に、性能にリミッターをかけたモンキーモデルだから使いにくくて仕方ないと思うが。
6月にはザンジバル級機動巡洋艦の1番艦が就役した。
これは史実と違い、ミノフスキークラフトを搭載しているので地上での運用性が大幅に向上している。
また、昨年末から開発を始めた機体については、グフは試作機が完成して既に地球で運用テスト中。
ドムは生産性を高めるために、ザクⅡと可能な限り部品の共通化を図った影響で開発が遅れていたものの、なんとか設計が完了し現在試作機を製造中。
一番開発が難航すると思っていた水中用モビルスーツについては、旧MIP社のメンバーを中心にザク系ではないモビルスーツを造ってみたい変人…じゃなかった、技術者が集まって昼夜を問わず開発に励んだ結果、まもなく試作機がロールアウトする予定である。
…正直ドムより先にハイゴッグの試作機が完成するとは思わなかったよ。
さて今日は、先日の演習で必要性を感じた兵器の開発を依頼するためギニアスの下を訪れていた。
「久しぶりだな、ギニアス。地上用MAを開発していると聞いていたが、開発状況はどうなっている?」
「は。アプサラスは試作2号機が現在地上で運用テスト中です。」
ああ、陸ガンのバルカンで暴走して最後は自爆させられたやつね。アプサラスシリーズは攻撃力は十分なんだが、耐久力にちょっと難があるよな。
「そうか。私が色々と開発を頼んだせいで時間をとらせてしまい、すまなかったな。」
「とんでもございません。参考となった研究も数多くあり、先日開発に参加したモビルフォートレス・ゾックの開発では、私が試作していた拡散メガ粒子砲が頭部の対空兵装として採用され、大変興味深い経験となりました。」
それは良かった。…と言うか、原作でゾック開発したやつは頭のフォノンメーザー砲をどうやって使う気だったんだろう?
「そうか。ではまたひとつ頼み事をしても良いか?」
「何なりとお申し付けください。ギレン閣下。」
「ウム。いずれ訪れる連邦艦隊との決戦に備え、連邦艦隊の射程外から攻撃可能な核融合プラズマビーム砲を造って欲しくてな。」
「核融合プラズマビーム砲…でありますか?」
うん。君の好きなメガ粒子砲じゃあないから間違えないでね。
「そうだ。我々の仮想敵は言うまでもなく連邦軍である。先日、連邦艦隊との決戦に備えて戦闘シミュレーションを行ったのだが、マゼラン級の長距離砲撃に悩まされてな。
それに対抗する手段として、マゼラン級の射程外から一撃でマゼランを沈めうる威力をもつ核融合プラズマビーム砲を造って欲しくてな。
無論数が揃わなければ話にならないので、生産性や運用コストに重点をおいて開発してくれると助かる。」
「は…しかし閣下。それほどの威力を出すためにはどうしても大出力のジェネレーターが必要となります。そのため、どうしてもそれなりのコストがかかるものと思われますが……。」
「ああ、その事か。エネルギー供給については他の艦船からおこなうのでジェネレーターは搭載しなくてよい。」
「は?」
別に他の艦艇にもジェネレーターがついてるんだから、エネルギーが必要な時はそっちから貰えばいいよねw
「ついでにアウトレンジ攻撃に使うので装甲は不要だし、砲の運搬も他の艦に牽引させるので移動については照準を合わせる為の微調整ができるくらいでいい。」
「……。」
いっそのこと強度も削って、決戦の間だけ使う使い捨て式にしても良いかもしれない。
「速射性については必要だが、冷却の問題もあるだろうし、複数の砲身を束ねて使うのが良いかもしれんな。後は……。」
ガトリングとか多砲身って燃えるよね。
「射程や威力よりも生産性や運用コストを重視せよ。でありましょうか?」
「ほぅ…その通りだ。流石だなギニアス。相手は物量に勝る連邦軍。此方もまずは数を揃える事を第一に考えよ。」
「は!」
戦いは数だよ!兄貴!…って兄貴俺じゃねえか。
でもビグザムって、絶対リックドム10機よりも戦果をあげたよね?
あ、そうだ。せっかくだからビグザムも造っておいて貰おう。
コレクション用に一機くらいは欲しい。
「後もうひとつ、これはプラズマビーム砲が完成してからでかまわないのだが、多数のメガ粒子砲と防御用のIフィールド・ジェネレーターを内蔵したMAを開発して欲しくてな。」
「??。それは…エース用の機体という事でしょうか?」
「それは……。」
どうしよう…。ドズルじゃないんだからビグザム量産は流石に悪手だとわかる。あ、そうだ。
「ギレン閣下?」
「そうだな、お前には真実を話しておこう。戦場で私が乗るための機体だ。」
「総帥自らですと!?」
「指揮官が自ら戦場に行くなど、本来あるべきでない事は承知している。
だが、それでも私が自ら戦場に立つことで兵達の士気が上がり、我らジオンに勝利が訪れるのならば私は喜んで戦場に赴くだろう。
故にどうせ戦場に行くのであれば、私が最も信頼する技術者の造った機体に乗っていきたいのだ。」
俺専用機という事にしておけば何機も造られたりはしないだろう。
「…私の事を最も信頼する技術者だと?」
「おかしな事を聞く。私の出した難題に、お前は期待以上の成果を出し続けてきたのだ。そんなお前を信頼せず、一体誰を信頼するというのだ。」
「全身全霊をかけて、総帥に相応しい機体を造り上げてご覧にいれます。ジーク・ギレン!」
「ウム、期待している。ああそうだ。稼働時間に問題を抱えていたり、鈍重すぎる機体は止めてくれよ。
もし、兵装のコントロール等に問題がありそうならミノフスキー博士に相談してみてくれ。」
万が一本当に戦場で乗る事になったら困るので、わかっている問題点は避けておかねば。
一一一一一一一一一一一一
side ギニアス・サハリン
技術者にとっての喜びとは何だろう?
想定外の苦労を乗り越えた瞬間だろうか?
自分の手掛けたものが多くの人に使われているのを見たときだろうか?
それは人それぞれ違うものであり、以前の私にとって喜びとはサハリン家の失った栄光を取り戻す事であった。
だが、私が人生の目標としていたその命題は、ある日突然現れた一人の人物によってあっけなく叶ってしまう。
ジオン公国総帥ギレン・ザビ。今や我らジオン公国において最も権力をもつ人物である。
そんな人物に妹であるアイナ共々見出だされた事により、我がサハリン家は既に過去の繁栄を取り戻す事に成功していた。
だが、こうして過去の繁栄を取り戻してみるとわかる。自分が本当に取り戻したかったのは過去の「繁栄」などというものではなく、周囲の人達から自分への信頼だったという事が。
そして今の自分は、尊敬する人物から自身の命を預ける機体の製作を依頼するに足る人物という信頼を手に入れているのだ。
ならばその信頼に応えよう。閣下の御身を預けるに足りる機体を、私の持てる全てをかけて造り上げる事で。
アイナ様に似合いそうな機体は?
-
アプサラス
-
ビグ・ラング
-
ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
-
アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)