新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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32話 UC0078年8月 開戦前夜

サイド3 ギレン邸

 

やあ…諸君。先日フルフロンタル氏の演説をパクったゼンラ・ザビである。

 

…って誰が全裸やねん!

 

確かに先日アイナと二人でいる時に服を着ていない姿になったが、私はそれ以外で全裸になった事などない!

 

まあそれはさておき、先のサイド共栄圏構想の演説は各方面に大きな影響を与えた。

 

連邦からはこれはサイド3による連邦への宣戦布告かとの問い合わせがあった程だ。

 

え?勿論俺個人の考えだと返しましたよ?

 

連邦は言論の自由を認めているハズなのに、俺の思想を話す事さえ認められないと?

 

これをきっかけに連邦から開戦してくれればスペースノイドの支持は貰ったも同然だったのだが、流石にそうはならなかった。

 

まあ我々も開戦準備が完全に整っている訳ではなかったので、それはそれで助かったのだが。

 

只、これにより建設中のサイド7以外のサイドでは反連邦の動きが更に活発化し、連邦がそれを武力で鎮圧する事で更に反連邦の運動が盛り上がるという悪循環に陥っていた。

 

こんな情勢下であっても連邦政府はスペースノイドに対して何一つ譲歩する姿勢を見せず、駐留部隊の撤兵と関税の撤廃、それにスペースノイドへの参政権付与の要求はいずれも連邦議会で否決され、それどころか治安維持を理由にサイド2宙域へ宇宙艦隊を派遣して恫喝する有様であった。

 

この連邦の動きを脅威とみなして、ジオン公国は国家総動員令を発令し開戦に向けた最後の段階に入った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

フェンリル隊やサイクロプス隊などの特殊部隊を各サイドへ密かに送り込み、開戦と同時に奇襲をかけるための準備を密かに開始したのである。

 

連邦の駐留艦隊は半数が宙域のパトロールをおこない、その間残りの半数は各サイドのベイで整備と補給をとる形で運用されている。

 

なのでパトロールしている艦隊を宇宙攻撃軍の分艦隊で襲撃し、潜伏させている特殊部隊でベイの艦隊を制圧する予定だ。

 

ベイの中にいる艦艇などモビルスーツの敵ではないので、少なくとも駐留艦隊の半数は初動で撃破できる見込みだ。

 

月については、サイアムの協力によりアナハイム社の倉庫へ少しずつモビルスーツを搬入しており、開戦時にはMS一個師団で奇襲をかける予定だ。

 

まあここの艦隊は開戦間近な状況だと宇宙に上がっていそうな気もするが、仮にそうなっても月面の制圧には使えるので問題無いだろう。

 

「箱」の提供や地上での活動の支援などサイアムには本当に頭が上がらない。

 

お礼に曾孫が大きくなった際には、もうすぐ産まれてくるミネバとの結婚が認められるようにドズルに頼んであげよう。

 

まあ、現時点ではどちらも産まれてさえいないがw

 

また、各サイド首脳部とは、駐留艦隊とルナツーの宇宙艦隊の撃破が完了した段階でサイド共栄圏として軍事同盟を締結する事で内諾がとれている。

 

まあ…後者が難題だが。

 

さて、後はルナツーとジャブローにいる連邦の主力がどう動くかだ。

 

戦略諜報軍の活動により現時点での連邦の準備計画は入手しているが、あくまで計画なので指揮官次第でいくらでも変更の余地があるのでどうなる事やら。

 

……コロニー落としをしなかったとしても、恐らく俺は人類史上最大規模の戦争を始めた愚か者として歴史に名を残すのだろう。

 

だが、そうしなければ連邦政府がその植民地たるコロニーの支配権を手放す事などないだろう。

かつて地上における大英帝国がそうであったように。

 

で、あるならば俺は戦おう。この戦いはザビ家と地球との戦争ではない。ジオンが、宇宙に住む人々が地球の支配から独立する為の戦争なのだから。

 

さて、一段落したらアストライア達の所へ行って避難を促さねばならんな。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side

アイナ・サハリン

 

家事をしながら部屋の時計に目をやるとその針は22:00時を越えようとしていた。

 

そろそろお戻りになる時間かしら?

 

私がそんな事を考えていると、正門から入ってきた公用車が玄関に停車して、その中からゆっくりとギレン様が降りて来られた。

 

「お帰りなさいませ。ギレン様」

 

「うむ……。」

 

執務を終え総帥府から戻られたギレン様はひどくお疲れのようだった。

 

「お食事はおとりになられましたか?それともお風呂になさいますか?」

 

「そうだな…食事にしようか。

だがその前に少しだけ休ませてくれ。一時間程したら起こして貰えるか?。」

 

「はい。ごゆっくりお休みください。」

 

そう私が答えるとギレン様は少しおぼつかない足取りで寝室へと向かわれた。

 

閣下を部屋までお送りすると、護衛としてギレン閣下と一緒にいたハマーンさんに声をかける。

 

「護衛のお仕事お疲れ様。疲れてない?」

 

「ありがとうございます。疲れてはいますが、ジオンの、いえ、スペースノイドの未来を背負っておられる閣下の事を思えば、たいしたものではありません。

アイナさんには黙っているように言われたのですが、実は今日執務中に一度お倒れになりました……。」

 

「え、そんな……。」

 

「お医者様の見たてでは疲労が原因との事でしたが、閣下は今がジオンにとって重大な時期だからとおっしゃってそのまま執務を……。」

 

「わかりました。私からもあまりご無理をなさらないようにお願いしてみます。なので貴女も早く休んで。ハマーン。」

 

「はい……。閣下をお願いします。アイナさん。」

 

そう言ってハマーンさんが自室へ帰るのを見送ると、お粥を作るためキッチンに向かった。

 

「ギレン様。失礼します。」

 

「ん…アイナか?」

 

「お粥をお持ちしました。ご加減はどうですか?」

 

「ハマーンから聞いたか。まあよい。少し仕事に集中しすぎただけだ。大したことはない。」

 

そう言いうとギレン様は、私から受け取ったお粥を美味しそうに食べ始めた。

 

「久しぶりに食べたが、これも食べやすくて良いな。」

 

「ありがとうございます。……。私にももう少しお手伝いできる事があれば良かったのですが……。」

 

「フム…。そうだな。では少し私の独り言を聞いてくれるか?」

 

「はい。」

 

そうして語られたのはギレン様が総帥として抱えておられる苦悩でした。

 

連邦政府との駆け引き、連邦軍へのスパイ活動、キシリア様との派閥争い、各サイドへの内部工作など、今日まで政治の裏側や派閥争いにあまり関わってこなかった私には初めて聞く話ばかりでした。

 

「……すまないな。どうにも愚痴が溜まっていたようで、つまらない話をした。」

 

そうギレン様が謝罪される。

 

確かに愚痴まじりにお聞かせ頂いたお話はどれも衝撃的で、特に反連邦勢力の支援や連邦側スパイの粛清などを指示されていたことには、大きなショックを受けました。

 

しかしお話し頂いた言葉には、どれもギレン様が抱えておられる葛藤が滲み出ていました。

 

そして私はそんなギレン様にお仕えして、その理想の達成のお手伝いをすることを望んだ者。それならば、ギレン様を信じてお支えする事が今の私にできるせめてものお手伝い。

 

そう思った私は、ギレン様の手を握りしめると、驚いた表情を見せるギレン様に向けて私の思いを伝えました。

 

「……。ギレン様。私で良ければいつでもお話を聞かせて頂きます。ですので、そんなに一人で抱え込まないでください」

 

「…すまない。開戦間近で少し弱気になっていたようだ。また愚痴が溜まってきたら聞いてもらっていいか?」

 

「はい。何時でもお聞かせください。私やメイちゃん達はどんな事があっても貴方の味方です。なのであまり負の意識に囚われすぎないでくださいね。」

 

私がそう伝えるとギレン様は顔を伏せながら「ウム。」と短く頷かれたのでした。

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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