サイド5 テキサスコロニー
「こちらハンターリーダー、各隊の状況送れ。」
「こちらマンハンター1。古の巨星へ送った荷物の回収に成功、現在目的地付近の森にて潜伏中。
アジテーターによる陽動が完了次第、目標への襲撃を開始する。」
「こちらアジテーター1。各地から送り込んだ反ザビ家勢力とのコンタクトに成功。
ハンターリーダーの指示があり次第、目標への誘導を開始する。」
「ハンターリーダー了解。先ほど古き巨星からの目標G到着の合図があった。
よって現時刻よりG暗殺計画を開始する。第一目標・Gの暗殺、第二目標・Dの娘Aの確保、第三目標・古の巨星抹消による証拠の除去である。
本作戦は今後の連邦の行く末に関わる重要な任務である。各隊はいかなる損害を出そうとも標的Gを殺害せよ。
各員の幸運を祈る。」
「「了解。」」
やあ…諸君。ギレン・ザビである。
今日は連邦との開戦に備えてアストライア達にサイド3への避難を勧めにきたのだが、テアボロの屋敷に入ってから襲ってきた暴徒達への対応に追われている。
少し前ならここの警護のために駐留している特殊部隊を呼んでそれで終わりだったのだが、連邦との開戦に備えて部隊の大半が出払っており、仕方なくテアボロの屋敷の使用人を総動員して防戦に当たっていた。
本当なら俺もアストライア達と一緒にパニックルームに入って救援を待つべき所なのだが、防戦の指揮をとれそうな人材を連れてきていなかったのが仇となり、自ら特製の防弾チョッキを着て防戦の指揮をとる羽目になっていた。
まあここのパニックルームはそんなに頑丈に造ってないので、外の守りを抜かれるとむしろ逃げ場がなくなって危険だというのもあるんだけどね。
幸い連邦の襲撃に備えて対人迎撃システムを設置していた事と、元軍人の使用人が数人いたのでその者達を中心として防衛線を構築し、なんとか暴徒達の侵入を食い止めていた。
いたのだが……、暴徒側に増援が到着してからは正直かなり危険な状況になりつつあった。
……というか最初に襲ってきた暴徒と、後からきた連中の動きがあきらかに違うのですが!
「報告します!西の森から現れた暴徒達の増援に西館の壁を破壊され侵入されました!現在食堂付近で食い止めておりますが劣勢です!至急増援を!」
「東側に新たな暴徒が現れました!バイクに乗って火炎ビンを投擲してきており、対応できません!」
「正面にも新たな暴徒が現れました!敵の攻撃で負傷者が続出しており、このままでは持ちません!」
いかん……。増援と言われても人手がない。もう少しでハマーン達が来ると思うが、それまで持ちそうにないぞ……。
もうダメか…。俺がそう思いかけた時だった。
「ギレンおじ様!」
その声を聞いて振り返ると、パニックルームに退避していたはずの少女が自動小銃を手に立っていた。
アルテイシアが何故ここに?
「危険だぞ。アルテ…セイラ。ドン・テアボロについていてあげなさい。」
「お父さんにはお母様が付いているから大丈夫よ。それよりも私も一緒に戦うわ!」
ダイクンの血筋のせいか、こう見えてセイラの戦闘能力は高い。原作でも自ら銃をとって戦っていたしな……。
「良いのか?セイラ。危険だぞ?」
「私はもう子供じゃないのよ?ギレンおじ様。おじ様の子供だって産んであげる事ができる年なんだから。」
「な……。」
セイラの言葉を聞いて思わず口ごもった俺に、わざと上目遣いでこちらを見る仕草は、まだ幼さの残る娘には不似合いなものだった。
「だから何でも私に命じてください。ギレンおじ様。」
くそ…、可愛いすぎるぞ……。じゃあちょっとベッドへ……。
はっ……いかん!そんな事をしている場合ではなかった!
「……。大人をからかうものではないぞ、セイラ。東側の暴徒への対応を頼む。」
「ウフフ。わかったわ。おじ様が珍しく緊張しているからいけないのよ。大丈夫、あなたなら出来るわ。」
「ふん。醜態をさらしたな。そこのお前!西側の防衛を指揮している者に伝えろ。西館は放棄、食堂に火をつけて炎を防壁がわりに使えとな。正面への増援には私が向かう!」
もう少しで港の船から出撃したモビルスーツが到着する。そうなれば外の連中や、西館に侵入した連中をまとめて吹き飛ばして、形勢は一気に此方に傾く。
これ以上セイラに恥ずかしい所を見せずにすむように、それまで何とか持ちこたえなければ。
そうして俺は手にした自動小銃に弾を込めると、目の前で繰り広げられる防戦に加わるため正面玄関へと向かうのだった。
一一一一一一一一一一一一
side セイラ
火炎ビンを持って近づいてくるバイクに向け、手に持った自動小銃の引き金を引き絞る。
すると鳴り響く銃声とともに銃口から放たれた弾丸にタイヤを貫かれたバイクは転倒し、乗っていた暴徒は手に持った火炎ビンを自分に向け使う事になった。
「これで四人目……。」
私はそう呟きながら物陰に身を隠すと、燃え盛るバイクの向こうにいる暴徒達の様子を伺う。
見える範囲に乗り物に乗った暴徒はもういなかったけど、新たに徒歩で近づいてくる暴徒の集団が見えた。
ふう…。ギレンのおじ様が緊張する気持ちもわかるわね。数が多すぎる……。
おじ様に促されてお母様達とパニックルームへと避難した私は、設置された無線機から聞こえるおじ様の焦った声に居ても立っても居られなくなり、パニックルームにあった銃を手に飛び出していた。
それから危険を承知で助けに来た私に意地悪を言うおじ様をやり込めると、今はこうして東館の入り口を守っている。
ふふ……。今思い出しても、私の言葉で慌てたおじ様は普段とは別人のようでちょっと可愛かった。
でもあの時おじ様には冗談と言ったけど、もう子供を作れる年なのは本当だし、おじ様の子供なら産んであげても良いと思っているのも本当の事なのだけど。
ランバのおじ様曰く、アイナさんという侍女の方と良い雰囲気らしいので私も負けないように頑張らないといけないわね。
まあギレンおじ様はあんな悪人顔だけど、なんとなく押しに弱そうなので、もしもの時は押し倒してお母様みたいに愛人になってしまえば良い。
そんな事を考えながら、近づいてきた暴徒に狙いを定め、引き金を引こうとした時だった。
目の前に次々と砲弾が炸裂し、無数の爆発が暴徒達を吹き飛ばす。
思わず空を見あげると、そこには白地にピンクのラインが入ったモビルスーツがライフルのようなものを構えて宙に浮かんでいた。
その戦闘力は圧倒的であり、ライフルから放たれた砲弾が西館を粉砕すると、それを見た暴徒達は武器を捨て一目散に逃げ出していった。
……ふう、どうにか生き延びたみたいね。
そう思った私は辺りに暴徒の姿がなくなった事を確認すると、正面玄関にいるはずのおじ様の元へと向かった。
だけど……。
だけど、そこで私を待っていたのは、周囲の人間に取り押さえられ狂気に満ちた表情で喚きちらすジンバ・ラルと、胴から血を流して倒れる愛しい男の姿だった。
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