新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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ギレン独立戦争記 第1話 一週間戦争

1年戦争が始まったのはUC0079年が明けて間もない1月3日である。

 

開戦に向けて準備を万端に整えていたジオン公国軍は、宣戦布告と同時に月と各サイドの駐留艦隊に対して一斉に攻撃を開始した。

 

ソロモン近海に集結していたジオン艦隊へ注意を向けていた連邦軍にとってこれは完全な奇襲となり、ミノフスキー粒子によってその身を隠していたジオン艦隊と、密かにコロニー内へ潜伏していたジオン特殊部隊との間に挟み撃ちにあった連邦軍駐留艦隊は、反撃に転じることもできぬまま壊滅した。

 

ただ、これは連邦の油断というよりジオン側が一枚上手だったというべきであろう。

 

連邦軍とてジオン艦隊の戦力をある程度掴んでおり、その戦力の殆どがソロモン近海に集結している事を確認していたが故に生じた隙をついたものであった。

 

後に公開されたジオン側の資料によると、当時ソロモンに集結していたジオン艦隊の約半数はダミーであり、残りの半数は各地に展開し様々な任務にあたっていた事がわかっている。

 

結局、開戦から僅か四十時間でサイド1、2、4、6、四つのサイドの駐留艦隊が壊滅し、補給と連絡が途絶した状況で最後まで抵抗していたサイド5の駐留艦隊も七十二時間後には降伏した。

 

一方連邦も5日になって、ルナツーから第四、第六艦隊をティアンム中将を総司令としてソロモン近海に向け発進させた。

これは駐留艦隊こそ壊滅したものの、コロニーや月都市への被害がほとんどなかった事から、先にジオンの主力艦隊を叩くべきとの意見が大勢を占めた為である。

 

8日に入ると、ソロモン近海で人類初の大規模宇宙戦が勃発する事になる。

 

この戦いはミノフスキー粒子の登場により連邦のレーダー神話が崩れた戦いであり、同時にモビルスーツが戦いの趨勢を決めた初めての戦いでもあった。

 

ジオン軍は開戦と同時に大量のミノフスキー粒子を散布する事で、連邦艦艇のレーダーや通信機器を麻痺させ、同時にミサイルなどの誘導兵器による攻撃を封じることに成功する。

続いてD型装備(ビーム攪乱幕展開用装備)のザクを展開して連邦のメガ粒子砲による攻撃を無力化したジオン艦隊は、艦隊決戦砲「バハムート」と「ヨルムンガンド」による一方的な遠距離攻撃を開始した。

 

これはメガ粒子砲と違い、核融合プラズマビームがビーム攪乱幕の影響を受けない事を利用したジオン必勝の策であった。

 

ミサイルによる攻撃をミノフスキー粒子で、メガ粒子砲による砲撃をビーム攪乱幕で防がれた連邦艦隊に、遠距離から核融合プラズマビームによる砲撃を繰り返すジオン艦隊を倒す術はなく、連邦軍の指揮官であったティアンム中将はこの状況を打破する為に近距離からの直接砲撃をおこなう事を決意し、セイバーフィッシュ隊を展開すると同時にジオン艦隊へ向け突撃を開始した。

 

ただ、その選択はドロスという大型空母と、モビルスーツという切り札をもつジオン軍に対して最悪の選択であった。

 

ドロスやムサイから出撃したジオン軍のモビルスーツ部隊は、数が少ない上に小回りの利かない連邦軍のセイバーフィッシュ隊を圧倒し、僅か十数分の戦闘でこれを壊滅させる。

次にミノフスキー粒子の影響によりLFCSDS(大規模艦隊統制防宙システム)が機能しない連邦艦艇に接近すると、その圧倒的な機動力を武器に次々と連邦艦艇を血祭りにあげていった。

 

その結果、開戦より五時間後には連邦艦隊は戦力の80%を失い撤退する事になるのである。

 

この戦闘結果を聞いて色めき立つ連邦軍首脳部であったが、諜報部から入った情報により更なる衝撃を受ける事になる。

 

地球圏に向けて移動していたアクシズが、当初の予定であった月軌道で停止せず、そのまま地球へと向かっている事が判明した為である。

 

そして情報部から報告された到達予想地点は、連邦軍本部ジャブロー、今自分達がいるその場所であった……。

 

 

 

35話 UC0079年1月 一週間戦争

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

開戦から今日までの流れを戦記風に纏めるとこんな感じだろうか。

 

まずは、想定していたよりも順調に戦局が推移しているので一安心している。

 

特に8日の大規模戦闘では、ミノフスキー粒子とビーム攪乱幕の効果を警戒されて、そのままゲリラ戦に徹されたらどうしようかと思っていたので、ティアンムが接近戦を挑んでくれて助かった。

 

接近されたらLFCSDSで迎撃すれば良いと考えていたんだろうが、飛んで火に入る夏の虫である。

 

ただ、あれだけ艦艇を沈めたのにティアンムが乗るバーミンガム級戦艦であるタイタンを沈める事ができなかった。

 

流石は0083当時としても有数の戦闘能力を誇っていた新鋭艦である。

 

まあ、第六艦隊の旗艦の方をランバ・ラルが白兵戦で制圧してきたので後で研究させて貰うとしよう。

 

さて、今頃連邦は我々の流したアクシズ落としの情報に色めき立ち、慌ててルナツーから宇宙艦隊を出撃させているころだろう。

 

此方は、アクシズの民間人を乗せたモウサをサイド3宙域で分離させ、各地で作戦目標を完了させた艦隊が続々とアクシズ周辺宙域に集結しつつあり、後は連邦艦隊が来るのを待つばかりだ。

 

一度しか使えない手なので、できるだけ多くの連邦艦が集まってくれると助かるのだが。

 

さて、それではジャブローから出撃した第一陣を潰したら、我々もアクシズに帰るとしよう。

 

ハマーン、ララァ、ダミーを使った奇襲は頼んだぞ。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side 名もなき連邦士官

 

ジオンのアクシズ落としに対抗するため、慌ててジャブローから宇宙に上がった第二地球軌道艦隊を待ち構えていたのは、単艦で連邦艦隊と戦えるように建造されたジオンの怪物艦であった。

 

赤く塗装された巨艦の放つメガ粒子砲が漆黒の宇宙を切り裂く。

 

我々の射程の外側から放たれたその砲撃は、重装甲を誇るマゼラン級戦艦の装甲をいとも容易く貫通し、その内部に高温のメガ粒子を撒き散らしてその姿を巨大な火球へと変えてしまった。

 

「くそっ。また一隻喰われた!まだ此方の射程に入らないのか?!」

 

「駄目です!大気圏離脱するために限界までエンジンを酷使しているため、これ以上無理をさせればエンジンが壊れます!」

 

「このまま沈められるよりはマシだ!爆発しても構わんので何としてでも此方の射程に入るまで敵艦に近づけ!」

 

「……了解です。どうなっても知りませんよ?!」

 

士官学校を首席で卒業した私であるが、このような戦況での適切な対処法など、士官学校では全く教えてくれなかった。

 

「ぐっ!」

 

先程沈んだ僚艦がデブリとなって本艦にぶつかる。最新鋭艦である本艦がこの程度の事で沈む事などあり得ないが、敵艦の主砲が直撃すれば自身もデブリの仲間入りする事は間違いなかった。

 

「これでマゼラン二隻、サラミス八隻だと?!まだ我々は一発も敵艦に当てていないのだぞ?!対艦ミサイルは発射できないのか?!」

 

「発射はできますが、例のミノフスキー粒子とやらのせいでほとんど誘導できません!当たりませんよ?」

 

「構わん!牽制になれば良い。撃て!」

 

艦隊の主力を構成するサラミス級巡洋艦とレパント級ミサイルフリゲート艦から、次々と長距離対艦ミサイルが発射される。

40隻近い艦艇から発射されたミサイルの雨は相手がどんな巨艦であってもデブリに変えてしまうだけの破壊力を秘めていた……当たりさえすればの話であるが。

 

「駄目です。ミサイルが明後日の方向に!」

 

「くそっ!」

 

ミノフスキー粒子とかいう悪魔の兵器のお陰で、ミサイルばかりか電子機器類も多大な影響を受けろくに機能しない。

もしその効果を否定していたという科学者に会うことができたなら、きっと俺はそいつを殺して軍法会議行きになる事だろう。

だがそうなるためにもまず生き残らねば。

 

「構わん!弾がある限り撃ち続けろ!」

 

「艦長!間もなく本艦のメガ粒子砲の射程に入ります!」

 

「ようし!我が艦の力を見せてやれ!撃て!」

 

本艦の連装メガ粒子砲が宇宙を切り裂いて敵艦に向かうものの、目視による手動照準に馴れていないせいか敵艦には掠りもしない。

 

「何をやっている!落ち着いてよく狙え!」

 

思わずそう怒鳴ってみたものの、まず自身が落ち着けていない事に気がつき大きく深呼吸をする。

 

「落ち着け、慌てて撃っても当たりはせん。それに間もなく他のマゼランやサラミスも敵艦を射程に収めるのだ。そうなれば此方の優位は揺るがない。」

 

そう言った途端、敵艦が猛烈な勢いでメガ粒子砲を連射したかと思うと、今度はモビルスーツを射出し始めた。

 

「サラミス級巡洋艦、アシヤ、クレ轟沈!敵艦モビルスーツを展開し始めました!」

 

そして射出された緑色の敵兵器は、まるで盾になるかのように敵艦の甲板上に展開していった。

 

「ふん!この距離でモビルスーツなど何の役に立つというのだ。構うな!そのまま撃ち続けろ!」

 

他のマゼランやサラミスが敵艦を射程に捉えはじめた事により急速に増える味方の砲撃と、何故か突然敵の砲撃が途絶えたことにより敵艦への至近弾が増え始めた瞬間にそれはおきた。

 

敵艦に直撃した!そう思ったメガ粒子砲が敵艦に当たる直前で拡散して宇宙の霧となって消えたのだ。

 

「バカな!なんだこれは?!」

 

第四艦隊との交戦記録から、敵が何らかのメガ粒子砲に対する防御手段をもっている事は聞いていたが、正直今まで半信半疑だった。

 

だがモビルスーツを持つジオン相手の接近戦は無謀な事も分かっている。ここは一度距離をとってルナツーを目指すべきか……。

しかしそれではアクシズの落下を阻止できない。そんな風に考えた次の瞬間だった。

 

「艦隊の左翼を隕石群が通過します。」

 

宇宙世紀においで隕石は特に珍しい存在ではなかったが、ブリッジ要員のその報告を受けて何気なく私がそちらを見た次の瞬間、隕石が弾け中からモビルスーツが姿を現した。

 

「左翼!敵機!」

 

私がそう叫ぶのとほぼ時を同じくして、我が艦隊の左翼は、白を基調にピンクのラインで塗装された機体と全身緑色に塗装された機体の2機を先頭に突入してきた高機動モビルスーツにより蹂躙された。

 

本来なら防空識別圏に入ると同時にLFCSDSにより自動的に迎撃されるはずの防空網がミノフスキー粒子のせいで全く機能せず、個々の艦が放つ対空砲で迎撃するには敵の機体は余りにも速すぎた。

 

敵のモビルスーツは左翼外周部のレパント級を無視して艦隊防空圏の内側に入り込むと、手に持った大型ライフルにより次々とサラミスのメインエンジンを撃ち抜きながら艦隊中央部に向け進攻を開始した。

 

これに対して我が艦隊は、味方の艦が障害となり火力を集中することができず、各艦が個別に対空砲火で対応するしかなかったが、敵機はそんなもので落とせるほどなま易しいものではなかった。

 

「左翼艦隊散開!できるだけバラけて逃げろ!中央及び右翼は左翼からできるだけ距離をとる!急げ!」

 

「提督!右翼に敵艦が!」

 

その副官の声に思わず右翼をみれば、先程まで艦隊の正面にいた敵大型戦艦がモビルスーツ隊を射出しながら急速に右翼に向かって接近していた。

 

「バカな。一体何機搭載していると言うんだ!」

 

左翼を食いつくし、今や中央部に襲いかかりつつある高機動型モビルスーツだけでも20機近くあり、そして今、右翼を崩壊させつつある機体は少なく見積もっても50機はいるだろう。

 

「バカな!!なぜあの白い機体はあんな機動ができるのだ?!モビルスーツがこんなに速いなんて聞いてないぞ!!」

 

「あの緑の機体は未来が見えているとでもいうのか?なぜこれだけの砲火をいとも容易くかわせるのだ?!」

 

「こちらマクドナルト、航行不能。艦を放棄する。繰りか…」

 

「来た!青いやつだ!青い奴らの一つ目の群だ!!」

 

「こっちには緑のやつの群もいるぞ!セイバーフィッシュは何をやって…」

 

「いやだ!死にたくない!いやぁぁぁぁぁぁ…」

 

ミノフスキー粒子散布下でかすかに聞き取れる我が軍の通信は完全なパニック状態だった。

 

エンジンを撃ち抜かれて爆散する艦艇に一刀両断にされる艦載機。

逃げ出す巡洋艦に、情報部に「作業用」と言われていた兵器によって沈められていく戦艦。

 

もはや軍隊として機能していない。

 

「提督……。ほぼ全ての戦闘艦が航行不能になりました。我が艦も砲塔の大半が使用不能です……。」

 

「そうか…。」

 

「提督!ジオン艦より通信です!貴君らの勇戦に敬意を表し、残余のコロンブスで現宙域より離脱するのであればこれ以上追撃はしない。以上です……。」

 

「……。艦長、総員退艦だ。」

 

「了解です……。ってっ提督?!」

 

こうして連邦軍、第二地球軌道艦隊は、ジャブロー上空で、1隻の敵艦に捕捉され何もできないまま壊滅した。




あ、タイトルは次回から元の風に戻る予定です

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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