新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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40話 UC0079年3月 第二次降下作戦①

オデッサ基地 上空グワダン

 

突如空から舞い降りたジオンの死神「モビルスーツ」の威力の前に連邦ヨーロッパ方面軍は敗走しつつあった。

 

その理由はジオンの奇襲戦法による部分も大きかったが、何より大きかったのは当時の連邦軍にはモビルスーツに有効な兵器が61式戦車と対MS重誘導弾“リジーナ”くらいしかなかったのが最大の理由であった。

 

そんな状況の中で、ある連邦軍士官は自ら指揮する対MS小隊に近づきつつあるジオンの一つ目を迎え撃とうとしていた。

 

「ザクの予想侵入経路、正面の丘。各分隊状況を知らせ。」

 

「此方A分隊、射撃準備が完了しました。」

 

「同じくB分隊も配置完了です!また、目標の姿を確認!」

 

「C分隊、標的をリジーナの射程に捉えました。何時でも撃てますぜ。」

 

無線が使えないため、慌てて倉庫から引っ張りだした旧式の有線電話から射撃準備完了の報告が次々と入る。

 

「焦るんじゃないぞ、お前ら。相手が大きいから近く見えるだけで、まだかなり距離がある。

攻撃が外れて場所を知られたら終わりなんだからな?」

 

そう部下達に注意を促しながら、標的のザクの様子を窺う。

 

どうやら仲間とはぐれて迷子になった機体のようで、辺りには近づきつつある1機のザク以外に敵の姿は見あたらなかった。

 

「こいつは運が良い、敵は目の前の1機だけのようだ。仲間を探しているようだし、俺達で地獄にいる仲間の所まで送ってやるぞ。各分隊、対MS誘導弾直接照準!」

 

「セーフティよし!」

 

「目標との距離1100!誘導弾ステータスよし!」

 

「緒元よし、ジャイロ安定!まもなく射程に入ります!」

 

「ようし!一挙に仕掛けるぞ!

A分隊は水平射、膝を狙って足を止めろ、

B分隊も同じく膝、外すなよ!

C分隊はトップアタック、ランドセルを吹き飛ばせ!」

 

「「「了解!」」」

 

返事とともに部下達はリジーナの最終調整を行う。

 

「A分隊、B分隊水平射開始!」

 

A、B両隊から同時にリジーナが発射され、A分隊の放ったリジーナがザクの右膝を吹っ飛ばして足を止める事に成功した。

 

「よし、ザクの足を止めたぞ!C分隊とどめにランドセルを吹き飛ば……。」

 

そう言おうとした瞬間だった。

 

動きを止めたザクが手に持ったマシンガンを乱射する。

 

ザク・マシンガンなどと呼ばれてはいるものの、120mmという口径はほとんど戦車の主砲であり、そんなものを乱射されては歩兵などひとたまりもなかった。

 

「小隊長!A分隊が……。」

 

「くっ、構うな!それよりもとどめが先だ!C分隊、撃て!」

 

動きの止まったザクのランドセルを、C分隊の放ったリジーナが直撃する。

 

モビルスーツの数少ない弱点のひとつであるランドセルに直撃を受けた機体は、一度大きく爆発すると、そのまま事切れたかの様に動きを止めた。

 

「よし、やったぞ!B、C両分隊は撤収準備、我々はA分隊の状況を確認しに向か……。」

 

ジオンの一つ目を撃破した事を喜びながら撤退しようとした時、「それ」は現れた。

 

「小隊長!空から何か降ってきます!」

 

「あれは…降下ポッドか!しかし、いったい幾つあるんだ……。」

 

空を見上げると、其処には大量のHLVが流星群のように地上へ向けて落ちてくる光景があった。

 

我々の目の前に着地したその流星群は、HLVの側面に備えられたハッチを開くと、

先ほど苦労して倒した”一つ目の巨人”が姿を現した。

 

「小隊長!」

 

「あんなのに勝てるハズないだろ…。」

 

先ほどたった1機相手でも苦戦した敵が、複数の降下ポッドから次々と姿を現す光景を見た部下達はパニックに襲われる。

 

「落ち着け、すぐに撤退する!リジーナ等の重装備は全て放棄!各員分散して逃げろ!」

 

そう部下達に告げると、自分も建物の側に駐めてあった高機動車両「ラコタ」に飛び乗ってそのまま一目散に逃走を開始する。

 

「くそ!あんなの相手にどうやって戦えと言うんだよ!チクショウ!!」

 

そんな悪態をつきながら逃げる俺の後ろでは、20機近い緑の巨人がマシンガンを片手に我が物顔で地上を歩き、一緒にHLVで降りてきたジオン軍の歩兵達がバイクやワッパに乗り込み進軍を開始しつつあった……。

 

 

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

まずは現在の戦域図を見てもらおう。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ご覧の通りこの1ヶ月で黒海沿岸部やコーカサス地方といった東ヨーロッパの制圧に成功し、今はギリシャをはじめとする南ヨーロッパを制圧するための準備を進めている。

 

オデッサ一帯を一挙に制圧したジオン軍であったが、北米から向かっている大規模な増援部隊が到着するまでの間、持久戦に徹する事を決めた連邦ヨーロッパ方面軍は、トランシルバニアの山岳地帯を利用したゲリラ戦を展開していた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

このため我が軍でも宇宙、地上両方からの同時攻撃による敵勢力の分断を計画、

 

 

【挿絵表示】

 

 

衛星軌道上のジオン艦隊からの支援とシーマ艦隊の活躍もあり、無事にギリシャ一帯の分断に成功、現在は包囲した敵の掃討戦に入っている。

 

 

【挿絵表示】

 

 

しかし、それでも各地で建物の陰に隠れたMS特技兵による対MS重誘導弾による攻撃と、61式戦車による待ち伏せが繰り返されており、それによる損害が続いていた。

 

一応、モビルスーツの投入前にパーソナル・ホバー・バイク「ワッパ」による機動偵察を実施してから進軍するように命じてはいるのだが、それでも待ち伏せによる被害が多発している以上、やはり地上は連邦の領域なのだろう。

 

対策として高度な熱源探知機能をもつ偵察用のE型装備のザクを小隊に組み込むように命じてみたが、いったいどれだけ効果が見込めるやら。

 

さてそれとは別に、間もなく開始される第二次降下作戦の指揮をとるガルマから作戦開始前の通信が入っていた。

 

「流石は兄上です!こうも容易くオデッサを制圧して見せるとは!」

 

「油断は禁物だぞ、ガルマ。工業地帯であったオデッサ周辺とは違い、北米は連邦軍の庭のようなものだ。オデッサのように容易くはいかないだろう。」

 

「もちろん承知しております。ですが私もザビ家の男。親の七光りではない事を証明して見せねば。」

 

「フン、アクシズ戦役を見事に指揮してみせた貴様を親の七光りなどと思うジオンの兵など私を含めて何処にもおるまいよ。

まあ良い、間もなく第二次降下作戦が始まる。補佐につけたランバ・ラルの助言にはよく耳を傾けるんだぞ。」

 

「はい。兄上。お任せください。」

 

「それではな。」

 

まもなく月面からのマスドライバー攻撃が開始され、それを陽動に水中用モビルスーツによる地上の港湾施設やレーダー設備への奇襲が始まる。

 

連邦は宇宙にばかり目を向けている状況なので、ハイゴッグによる海からの奇襲はほぼ間違いなく成功するだろう。

 

その後、北米大陸の静止衛星軌道へと移動したアクシズからのマスドライバーによる攻撃で地上の連邦軍主力に打撃を与え、混乱している所にMS特殊部隊のバリュート降下によって橋頭堡を築き上げて実施する降下作戦は高い確率で成功が見込まれている。

 

しかし北米大陸の防空網はジャブローに次ぐ規模を誇っており、配備されている連邦軍も兵器の質は高く決して油断出来る相手ではない。

 

如何に成功率が高かろうと賽の目は振ってみるまで何が出るか誰にもわからないのだ。

 

そんな事を俺がグワダンの寝室で考えていると、突然隣で寝ていたララァがむくりと起きあがり話しかけてきた。

 

「大丈夫です。総帥。」

 

「どうした?ララァ?」

 

突然話しかけられた事に驚いた俺がそう問い返すと、ララァから返ってきたのは今悩んでいる事に対する答えであった。

 

「ガルマ様が勝ちますわ。」

 

「……。私の考えている事が解るのか?」

 

「総帥は解りやすいですから。」

 

「そうか…。ララァは賢いな。だがララァにそう言って貰えると助かる。なかなか自分の決定に自信が持てなくてな。」

 

「そういう言い方、嫌いです。でもお役に立てたのなら良かった。」

 

そう言って微笑むララァの頭を軽く撫でると、作戦の推移を確認するためブリッジへ向かう準備をはじめるのであった。

 

一一一一一一一一一一一一

 

 

side 連邦軍キャリフォルニアベース 防空指揮所

 

 

北米大陸の沿岸部に位置するキャリフォルニアベースは、旧アメリカ合衆国カリフォルニア州に存在する連邦の軍関連施設の総称である。

 

連邦軍本部ジャブローが建設される前は連邦軍本部が置かれていたその場所は、陸軍駐屯地、軍港、空軍基地、研究施設、弾薬庫、潜水艦用の地下ドックなど様々な施設を有する一大拠点であり、北米大陸における地球連邦の象徴ともいえる基地であった。

 

「状況は?!」

 

「月面のマスドライバーから質量弾の射出を確認!現在地対宙ミサイルにより迎撃を実施中です!」

 

「きおったな宇宙人どもめ!この北米大陸への降下軌道付近に連中のHLVが数多く確認されている。この攻撃に合わせて降下してくる可能性が極めて高いため、全軍に対空監視を徹底させろ!」

 

「はっ!了解しました。ところで先ほど、近海で水色の潜水艦らしきものを目撃したとの報告がありましたが、巡洋艦を確認に向かわせますか?」

 

「バカ者!今は対空戦闘に全戦力を集中させろ。連中のミノフスキー粒子とかいう悪魔の兵器のせいでレーダーによる対空監視に支障が出ているのだ。」

 

「は!申し訳ありません!地対宙ミサイル一番から十番、目標の質量弾に着弾…いえ!三番と五番それに七番が目標物から外れました!発射された質量弾のうち三発が依然として接近中です!」

 

「くそっ!ミノフスキー粒子の影響か!地対宙レールガン全門発射用意!」

 

「レールガンと射撃統制システムとの連動よし。何時でも発射可能です!」

 

「ようし。撃…!?!今の音は何だ?」

 

「地上のレーダー設備が何者かの攻撃を受けたもようです!」

 

「何だと!?」

 

「バスク大佐!港の艦隊が正体不明の敵からの攻撃を受けています!」

 

「何だ?この水色の機体は?!くそっ!全軍に非常警報を発令!港の艦隊及び周辺の警備部隊は正体不明機の迎撃に当たれ!…!?そう言えば質量弾はどうなった!」

 

「レーダー損傷により目標物ロスト!現在地不明です!」

 

「予測データを地対宙レールガンに送り目測で迎撃を開始させろ!港の艦隊のレーダー情報は送れないのか?!」

 

「艦隊は正体不明機への防戦に手いっぱいでそれどころではありません!既に戦艦トランプとマケインが轟沈!他にも巡洋艦や駆逐艦に多数の損害が発生しています!」

 

「この短時間にそれだけの損害だと?!」

 

「敵機はメガ粒子砲を乱射しており手がつけられません!!また一部の敵機は上陸して、地上の防空施設にも攻撃を開始しました!」

 

「出港可能な艦は全て港の外に出港させろ!港に泊まっている状況では単なる的になってしまう!」

 

「大佐!質量弾三発のうち一発は迎撃に成功しましたが、残りの二発が中央格納庫と滑走路に直撃しました!

出撃準備中だった第201師団司令部との連絡が途絶し、滑走路も使用不能です!」

 

「付近に駐屯している第204、205、208、209師団に応援を要請しろ!今攻められたら一溜まりもないぞ!」

 

「大佐!地下ドックの入口を敵機に破壊されました!このままでは潜水艦隊が出港できません!」

 

「地下ドックなどほうっておけ!基地を守り抜ければ後で修理すれば良い!」

 

「た、大佐!」

 

「ええぃ!今度は何だ?!」

 

「近郊に駐屯している各師団がマスドライバーによる攻撃を受けています!」

 

「何だと!?もう月から次のマスドライバー攻撃がおこなわれたというのか?」

 

「いえ!報告によれば月ではなく上空のアクシズから発射されたものによるようです!」

 

「おのれジオンめ……!!アクシズにマスドライバーを隠していたとは……。

いかん!これだけ攻撃を集中させてくるということは連中は間違いなくここに降下してくる気だぞ!防空部隊はどうなっている!?」

 

「敵の攻撃で滑走路に甚大な被害が発生したため、大半の戦闘機が離陸出来ません!地対空ミサイル部隊については各個に迎撃準備を完…いえ!現在降下してきた敵モビルスーツ隊と交戦している模様!」

 

「HLVの降下を許したのか?!」

 

「違います!どうやらモビルスーツが直接大気圏を突破してきた模様!第201師団の残存している61式戦車とファンファン、それに歩兵大隊がそれぞれ必死の抵抗を続けていますが増援がなければ支えられそうにありません!」

 

「く…近郊の師団は!?」

 

「…。同様に敵のモビルスーツ隊による奇襲を受けている模様で、むしろ向こうからも此方に増援要請を出してきています。」

 

「何としても敵を突破し増援に来るよう伝えろ!!」

 

「敵のHLV群の降下が始まりました!基地の東30キロの地点に向け多数のHLVが軌道上を降下中!」

 

「誰でも何でもいい!迎撃しろ!」

 

「大佐…今のこの基地に敵部隊を迎撃する事が可能な戦力は残されておりません…。」

 

「まだだ!まだここに私がいる!私がいる限りこの基地を落とさせたりはせんぞ!残存する部隊で一番規模が大きいのはどれだ?」

 

「最早この防空司令部警備大隊が最大の部隊であります…。」

 

「フン。それは部隊を探す手間が省けた。各員ワタシに続け!」

 

UC0079年3月11日2300

この日、キャリフォルニアベースは、衛星軌道から降下してきたジオン公国軍第三地球機動師団により制圧された。この後、キャリフォルニアベースはジオン地上軍の重要拠点として運用されていく事になる。

 

 

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