新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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誤字修正や感想ありがとうございます。感想返しよりも次の話を書くことを優先しているのでなかなかお返事できませんが、大変励みになっております。




42話 UC0079年4月 第三次降下作戦

シドニー上空 旗艦グワダン

 

連邦軍による迎撃を避けるため、あえて砂漠地帯に降下したジオンの降下部隊と、何故か砂漠に展開して待ち伏せていた連邦オーストラリア方面軍との戦いは、ホバー推進により砂漠でも高い機動力を持つ重モビルスーツ「ドム」を有するジオンの優位で進みつつあった。

 

 

 

砂丘の稜線に沿って布陣した61式戦車からの砲撃を、白を基調にピンクのラインで塗装されたドムがホバーでジグザグに走行する事で避けながら砂上を駆ける。

 

そしてその少し後ろを全身緑色に塗装されたドムが、自分に当たりそうな砲弾のみを避けながら並走していた。

 

「敵陣に突入します。ララァさん援護を!」

 

「お手伝いします。ハマーンさん、そこ!」

 

後ろを走る緑のドムが砂上を駆けながら、両手で構えた135mm対艦ライフルのトリガーを一発、二発と引き絞る。

すると銃口から放たれた高速の徹甲弾が、砂丘の稜線の影に隠れた61式戦車を砂丘ごと貫通して撃破した。

 

遮蔽物に隠れているにもかかわらず、次々と味方を撃破されて混乱する連邦軍に、更なる悲劇が訪れる。

上空から白を基調にピンクのラインで塗装されたドムが舞い降りたのである。

 

前線を構成する61式戦車の列を一気に飛び越えてその後ろにいたホバートラックの真上に着地すると、61式戦車の薄い背面装甲を右手に持ったMMP-80マシンガンで撃ち抜いてゆく。

 

対モビルスーツ戦を想定して開発されたMMP-80マシンガンにとって61式戦車の背面装甲など紙に等しいもので、三分に満たない時間で2個小隊、8両もの61式戦車が鉄屑へと姿を変えた。

 

そこへホバートラックより後ろに布陣していた3両のRX-75 ガンタンクが現れ、白いドムめがけて砲火を集中する。

 

ドムは次々と立ち昇る爆炎を舞うように躱しながら、MMP-80マシンガンで反撃を試みるものの、艦砲でさえ貫通できないとされたガンタンクの前面装甲は、あちこち損傷しながらもその攻撃になんとか耐えた。

 

すると白いドムは、左手に着けたガトリングシールドからヒートソードを引き抜き、ガンタンクのコックピットめがけて投げつける。

すさまじい重量の金属の塊をドムのパワーで投げつけられた中央のガンタンクは、一度だけ激しく震えると動きを止めた。

 

そこに砂丘の上へと姿を見せた緑のドムが、残った2両のガンタンクのうち左側の機体に向けて対艦ライフルを放つ。

重装甲の戦艦さえ撃ち抜く対艦ライフルの威力にMMP-80マシンガンで損傷した装甲が耐えられるハズもなく、動力系統を破壊された機体はそのまま機能を停止した。

 

最後に残った右側のガンタンクめがけて白いドムが砂上を進む。

先程破壊した中央のガンタンクを利用して右側の機体の射線を遮って近づくと、先程投げつけたヒートサーベルを引き抜いて新たな獲物に向け突き立てる。

そうして出来上がったのは、まるで昆虫の標本ように大地に縫い付けられたガンタンクの残骸だった。

 

 

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

我がジオン公国軍は第二次降下作戦から1ヶ月が経過したUC0079年4月14日、オセアニア大陸の攻略を目的とした第三次降下作戦を開始した。

 

 

【挿絵表示】

 

 

オデッサから宇宙に上がっていたグワダンとザンジバルで構成されたジオン機動艦隊と第四地上機動師団は、降下して早々に連邦オーストラリア方面軍の待ち伏せにあったものの、それを撃退してからは順調に進軍していた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

というかオーストラリア大陸の内陸部は生活に適さない広大な砂漠が広がっており、人口の90%以上が沿岸部にある5大都市に集中しているため、シドニーやメルボルンと言った大都市以外は大半が砂漠か荒野か草原なので進軍を阻むものがなにもなかったからである。

 

当初の計画では平野部を大々的に進軍する事で敵の主力を釣りだして野戦で決着をつける予定だったのだが、砂漠で降下部隊の迎撃に失敗して痛い目にあったせいか、オーストラリア方面軍はシドニーやメルボルンなどの5大都市に立て籠ったまま動く気配を見せなかったのでこの目的は果たせずに終わった。

 

まあ北米防衛のために戦力を引き抜かれたオーストラリア方面軍が野戦を挑んでも勝負にならないので、妥当な対応ではあるのだが。

ただ、5大都市に立て籠るという事は、ただでさえ減少している兵力を更に5分割する事を意味していた。

 

これに対してジオン降下部隊は、連邦軍が各拠点から動かない事を確認すると、シドニー近郊に全軍を集結させて包囲下におくと、陸、海、空全方位からの同時侵攻を開始した。

 

連邦軍の幾重にも及ぶ防衛線をモビルスーツの性能と数によって粉砕したジオン軍は、瞬く間にシドニー全域を支配下におくと、次なる獲物に向け軍の移動を開始した。

 

その後、メルボルン、アデレードと重要拠点が次々と各個撃破されるのを見た連邦軍首脳部は、防衛戦に向かないオーストラリアの地を守る事を断念して、残存部隊をインドやアジア太平洋地域に向けて撤退させていった。

 

いやあ各個撃破って響きが良いね。

 

因みにキシリアの立案した当初の計画では、オセアニアと一緒にアジア全域に降下して同時侵攻をおこなう予定だったのだが、急速な戦線の拡大に伴う補給線への負担増加を嫌った俺の判断で、アジアへの攻撃は海上交通の要衝であるシンガポールやマレー半島を中心とした地域に留める事になった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

勝手に侵攻計画を変更した事についてキシリアから激しく抗議されたものの、森林や山岳ばかりでモビルスーツの運用が困難な地形に自分から攻め込むなど正気の沙汰ではないので気にしない事にした。

 

やはり地図だけで考えられた作戦には限界があるな。

 

…というか東南アジアだけで約6億、中国を含めれば20億人以上の人が住んでいるのだ。

 

それだけの人数を統治するにはとてもではないが人手が足りないし、それに見合うだけの価値があるとも思えない。

鉱物資源はオデッサで必要な量が確保できるし、工業力が必要なら北米だけでも十分だからな。

 

無論資源や工業力が多くあるに越したことはないが、それを維持するために膨大な量の人的資源と物資を必要とするのであれば話は違ってくる。

 

そんな所に投入する兵力があるのなら、北米や欧州の攻略に使った方がよほど効果的というものだ。

 

なのでアジア太平洋地域やインド洋については、マレー半島を拠点にグラナダで量産中のハイゴッグを使って海路を寸断する位で許してあげるとしよう……。

 

 

【挿絵表示】

 

 

一一一一一一一一一一一一

 

side キシリア・ザビ

 

「何の用だキシリア。何度言われようと当面は東南アジア一を攻める気などないぞ。」

 

モニターに我が兄ギレンの姿が浮かびあがる。第三次降下作戦を失敗に追い込むため、当初の作戦案をそのまま連邦に流したにもかかわらず、柔軟な対応であっさりと作戦を完了させた怪物だ。

 

「いえ、本日連絡させて頂いたのは先日指示されたハイゴッグの量産についてです。なぜこのグラナダに地上専用機の量産を命じられたのですか?」

 

「なんだそんな事か。ザクⅡならともかく、最新鋭機であり軍事機密の塊である機体をどこにスパイがいるか分からない地上で量産する事などできるはずがないだろう?」

 

「それはそうですがグラナダは兄上の命により防衛網の強化を開始したばかり。とても戦力として使えない地上専用機を量産している余裕はありません。」

 

「ふん、一応筋は通っているな。よかろう、サイド3とソロモンからある程度艦隊を回す。ハイゴッグの量産を行っている間はその艦隊で防備を固めるが良い。」

 

「ありがとうございます。あとひとつ兄上にお願いがあります。」

 

「貴様が俺に頼み事とは珍しいな。言ってみるがいい。」

 

「現在我が軍で運用している機体は、ジオンの絆で蓄積されたデータを基に開発されたモビルスーツ用OSをブラックボックス化した特殊なパーツに入れて使用しています。」

 

「そうだ。機体の構造は鹵獲した機体を調べればすぐにわかってしまうだろうが、全ての機体の鹵獲を防ぐ事など不可能だ。

だがモビルスーツ用OSのデータ流出を防ぐだけなら、データを吸い出そうとした瞬間に自爆する特殊なパーツに入れてブラックボックス化してしまえば良い。」

 

「ですがそのOSデータは味方であるはずの我々にも公開されておりません。」

 

「仕方なかろう。あのモビルスーツ用OSは我が軍の強さを支える機密のひとつなのだ。レビルの情報が漏れていた事といい、どこから情報が漏れているのかわからない現状で容易に渡す事などできんよ。」

 

「兄上の懸念はごもっともです。しかしOSデータが開示されていないためパイロット特性に応じたカスタマイズや新たな機体の開発が一切できない状況に陥っております。そしてこれは私だけでなくドズルや地上のガルマからも同様の話を聞いております。」

 

「新たな機体の開発を各拠点で独自に行う必要などないのだがな。だがドズルとガルマも同意見であるというなら無視する訳にもいくまい……。よかろう、コピーができないように特殊なプロテクトをしたデータを何本か送ろう。それを機体の開発やカスタマイズに使うが良い。」

 

「しかし、それでは開発した機体を量産する事ができません。」

 

「その場合は開発した機体のデータを送れ。テスト結果が良好であるのならば量産に向けた対応を約束しよう。」

 

「…わかりました。ではそれで結構です。艦隊の派遣の件もよしなに。」

 

そう言うとギレンとの通信を切る。

 

何とかOSデータを入手する事ができそうだが完全なものが手に入らないのは痛いな。

 

モビルスーツの生産数を秘密裏に増やしても、機体をコントロールするのに必須なブラックボックスユニットはア・バオア・クーとアクシズの機密区画でしか製造しておらず、ギレンに黙って戦力を増やす事ができない仕組みとなっている。

 

なので何とかモビルスーツ用OSのマスターデータを手にいれたかったのだが、これ以上粘ると反意を疑われかねん。

 

当面はサイド6に秘密裏に作らせたクルスト博士の研究所に、モビルスーツ以外の兵器の研究もさせる事にしよう。




ソンネン少佐に通り名については

深緑の孤狼64
戦狼の導き手66
甦りし王者110

という数でしたので「甦りし王者」にしたいと思います

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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