新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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45話 UC0079年5月 V作戦

オデッサ基地

 

一週間戦争、アクシズ戦役、地球降下作戦と立て続けに大規模な軍事行動をとったジオン公国軍は、無意味な占領地域の拡大を嫌うギレンの方針もあって北米大陸の制圧を契機として進軍を一時停止すると、各サイドや占領した地域を使って戦力の増強を開始した。

 

ジオンがまず最初に行ったのは戦前から調整を進めていた各サイドとの同盟の締結である。

 

一週間戦争、アクシズ戦役で連邦宇宙艦隊を壊滅させたジオン公国は、各サイドに対して正式にサイド共栄圏の設立を打診する。

 

親連邦議員の抵抗によって条約締結は難航したものの、地上で続くジオンの快進撃が親ジオン派の背中を押し、UC0079年4月1日に各サイドと月で構成された地域同盟「サイド共栄圏」は成立した。

 

サイド共栄圏としての地球連邦への宣戦は見送られたものの、各サイドからサイド3への人や物の流れには制限がなかったため、各サイドから義勇兵や物資が次々とサイド3に向けて流入する事になった。

 

特にジオンが各サイドに対して「自衛用」としてザクのライセンス生産を認めたため、その代価として各サイドで生産されたモビルスーツを始めとした様々な軍需物資がジオンへと流れ込み、地上での戦いを支えていく事になる。

 

連邦からは「明らかな戦時国際法違反だ!」と激しい非難の声が上がったものの、各サイドで正式に宣戦布告を求める声が上がり始めると、徐々にこの声は小さくなっていった。

 

また、オデッサの制圧により地上から豊富な鉱物資源が宇宙へと供給されるようになり、ガルマによって全土を支配される事になった北米大陸では、都市部での戦闘を避けた事が高く評価され、協力的になった各地の工場から地上で必要な物資が供給されはじめたことにより、補給線への負担が軽減されつつあった。

 

更に、連邦のテラフォーミング政策によって地上でも有数の食料生産地帯となっていたオーストラリア大陸の失陥は、平時でさえ不足ぎみだった連邦の食料事情をより悪化させ、特に世界最大の人口を抱えるアジア圏において深刻な食料危機を迎えようとしていた。

 

また、北米での戦いで海を経由して多くの連邦兵の離脱を許したジオン軍は、海上戦力の増強に力を入れる。

 

カリフォルニアの占領時に入手した潜水艦やオデッサで手に入れた大型輸送船を改修して、グラナダやソロモンで生産したハイゴッグの搭載を可能にしたのである。

 

某アナハイムを通じて事前に設計図を入手していた事もあって改修はスムーズに進み、僅か数週間でジオン潜水艦隊が各地で活動を始める事になった。

 

一方ジオンの地球侵攻作戦により喉元にナイフを突きつけられるような形になった連邦軍だったが、北米での戦いで現有戦力による反攻作戦は困難と判断すると、各地で軍備の増強に専念した。

 

特に連邦最大の規模を誇るジャブロー工廠では毎日のようにサラミス級巡洋艦やマゼラン級戦艦が就役し、豊富な人口により高い生産力をもつアジアでは、アフリカ大陸から運ばれた資源を用いて61式戦車5型やガンタンクといった既存の兵器の増産が進められていた。

 

ジオンと連邦が共に戦力増強に力を入れた事によって両者の間に少しだけ静かな時間が訪れたものの、それは新たなる戦いに向けた序曲でしかなかった。

 

 

 

……やあ…諸君。ギレン・ザビである。女性とは恐ろしいものだな。

 

誰から聞いたのかわからないが、本国のアイナにララァとハマーンに手を出した事を知られてしまい、弁明するのが大変だった…。

 

慣れない戦場の空気で参っていた私を心配し慰めてくれたララァ嬢や、真っ赤になりながらも精一杯の勇気を出して告白してくれたはにゃーん様の勢いに負けて手を出してしまった事を後悔している訳ではないが、ずっと私を支えてくれているアイナに申し訳ないと思う気持ちがある事も紛れもない事実だった。

 

幸いと言って良いのか、一通りお説教が終わってからはそれほど怒ってはいないようで、「手を出したならキチンと最後まで幸せにしてあげてくださいね。…私を含めて。」と言ってくれた事には救われた。

 

全く、女性陣への対応を考えるよりも連邦相手の戦略を練る方が遥かに簡単とは、何か間違っている気がする。

 

まあそういった精神的疲労でヘロヘロになり、やっとの事で横になって眠っているところに、

 

「ギレン閣下!ドズル様とガルマ様から緊急の通信が入っています!」

 

こんな通信が入ったら君達はどう思うだろうか?

 

てっきり私は、ソロモンかキャリフォルニアが連邦軍にでも急襲されたのかと思い、慌てて通信に出てみればそこで聞いたのは予想だにしない内容であった。

 

「聞いてくれ兄貴!」

「聞いてください。ギレン兄さん!」

 

「二人して急に連絡してくるとは何事だ?連邦の二点同時襲撃か!?」

 

「いや、そういった事じゃない。兄貴にモビルスーツ用OSのデータを貰ったので自分専用機を作ろうと思いガルマと話していたのだが、俺の作ろうとしている機体について猛反対されてな。」

 

「当たり前です!聞いてくださいよギレン兄さん。ドズル兄さんは自分の専用機を格闘戦専用機にするとか言っているんですよ?!指揮官が危険な格闘戦を積極的にしてどうするんですか!」

 

「ガルマよ。お前の言いたい事はわかるが戦場に危険ではない場所などない。であるならば俺が先陣を切って突入して味方の士気を上げた方が良いではないか!」

 

「戦場が危険なのはわかっています!ですが我々ザビ家の者が同じ戦場にいるだけで十分士気高揚は望めます。であるならば多少なりとも安全な後方から支援に徹するべきです!」

 

「とまあこんな感じで二人で話していては全く話が進まなくてな。それでモビルスーツ開発の第一人者である兄貴に決めて貰おうと思い連絡した訳だ。」

 

「……。緊急の連絡だというから何事かと思えば…。あと別に私はモビルスーツ開発の第一人者という訳ではないのだが…まあ用件はわかった。専用機くらい好きに作れば良いだろう。ではな。」

 

「ま、待ってくれ兄貴。何をそんなに怒っているんだ?」

 

「時差があるので気がつかないかもしれないが此方は深夜だ。そこを緊急連絡という事だったので慌てて出てみればこれだ。私の気持ちがわかるか?」

 

「そ、それは申し訳ありません兄上…。」

 

「サイド3とは違い地球は広い。その事を忘れるなよ。ガルマ。」

 

「はい!肝に銘じます。」

 

「ふん、ならばよい。要は格闘戦専用機と射撃専用機のどちらが優れているかという話だろう。

ジオ・マッド社が次期主力機を開発するためのテスト機として開発したギャンという試作機がある。ちょうど二機あるので一機ずつくれてやるから好きに改良するがいい。そして改良した機体同士で戦わせ勝った方の意見を採用すればよかろう。」

 

「なるほど!勝者が正しいという事だな!」

 

「少し違う気もしますが良いでしょう。私の実力をご覧にいれて見せましょう。」

 

全く、人が疲れて休んでいるところをくだらん用件で起こしおって…。まあ良い、丁度次期主力機の開発のために格闘戦専用機と射撃専用機の開発データが欲しかったところだ。せいぜい利用させて貰うとしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side とある政府高官と連邦軍大将

 

「将軍、どうなっているのだ!君が地の利がある地上でならジオンに勝てると言うから、ルウムで惨敗した君を連邦軍の総司令官に抜擢したのだ。

それにもかかわらず、地上でもジオンに押されてばかりではないか!」

 

「以前にもお話しした通り、我が軍の劣勢はジオンのモビルスーツの威力によるものです。

対MS用重誘導弾や61式戦車5型、ガンタンクなどによって一定の戦果は上がっておりますが、ジオンに勝利するには我々も相手と同じ土俵に立つ必要があります。」

 

「なんだね?その資料は?」

 

「ジオンのモビルスーツに対抗する為の唯一の手段、我々がV作戦と呼んでいる新型モビルスーツの開発計画です。」

 

「将軍はモビルスーツのあるなしが大局に影響すると?今の我々の苦戦はジオンの奇襲戦法によるものではないのかね?

現にオーストラリアでの戦い以外は、全て敵の奇襲が最大の敗因となっているではないか。

一からモビルスーツを造るより、現行の兵器の性能を向上させるなどして対抗した方が良いのではないかね?」

 

「戦場を地上に限定するのであれば、それで対応する事も可能でしょう。

しかし宇宙空間でのモビルスーツの優位は圧倒的で、多少既存の兵器を改良した程度で埋まるものではありません。」

 

「……。それほどのものかね?」

 

「ミノフスキー粒子散布下の戦闘で、厚い装甲と高い機動性をもつザクに勝つにはブースターを装備したセイバーフィッシュが5機は必要となります。そして高機動機であるヅダに至っては何機必要になるかすらわかりません。」

 

「それほど性能に差があるのならば、確かにモビルスーツを開発する必要があるかもしれんな……。

だがそう簡単に開発出来るのか?」

 

「アクシズ戦役で鹵獲したザクを使って行っていた機体構造の解析は完了し、現在それを基にした新型モビルスーツの開発を進めております。

またジオンは各サイドやオデッサ、北米大陸でザクの量産を開始しており、情報部の人間を潜入させる事で製造方法についての情報収集も進めています。」

 

「おお、それならば直ぐにザクの量産が開始できるではないか!我が軍でもザクを量産すればジオンに勝てるのではないかね?」

 

「いえ、ただ同じザクを量産するだけではパイロットの技量が違うため我々に勝機はありません。無論ザクの外観を多少変えただけのコピー機の製造を既に始めさせておりますが、並行して我が軍の特性に合わせた機体を開発中です。

 

現在様々な開発プランが進行中ですが、最も開発が進んでいる機体は、ザクをベースに装甲の強化と砲戦能力の付与をおこなった中距離支援機の試作機がまもなくロールアウトする見込みです。ただ……。」

 

「何か問題があるのかね?」

 

「鹵獲したザクを解析してわかったのですが、機体を動かすOSデータがブラックボックス化されており、データを取り出せない構造になっていました。

このままでは機体は量産できても動かすOSがないという事態に陥ります。」

 

「それでは機体を製造しても意味がないではないか!」

 

「はい。ですので現在ジオンの内通者にOSのデータを入手できないか交渉中です。向こうでも大変貴重なものらしく、幾つかの条件を呑めるのならば渡しても良いとの返答が来ました。」

 

「その条件とは?」

 

「技術情報や鉱物資源の提供といったものもありますが、最も大きいものは連邦軍が戦争に勝利した場合における一部のジオン高官の助命です。」

 

「ジオンの高官とはザビ家の人間か?」

 

「はい。ただ、全員という訳ではなくザビ家の中の一名のみです。」

 

「フム。まあ一人ぐらいなら見逃してもよかろう。戦後のジオンを纏めさせる人間も必要だしな。」

 

「では至急内通者と連絡をとってデータの入手に努めます。コピーできないように強力なプロテクトがかかっているそうですが、我が軍の技術部であればプロテクトの解除も可能でしょう。

また、ジオンよりOSが手に入らなかった場合に備えて、教育型コンピュータを用いたOS開発も並行して行っております。ご安心ください。」

 

「うむ。わかった。V作戦の追加予算が通るよう私からも根回しをしておこう。だが将軍、これが最後のチャンスだと思いたまえ。この計画に失敗するようであれば君には責任をとってもらう事になる。」

 

「…承知しております。ではビンソン計画共々根回しをよろしくお願い致します。」

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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