新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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47話 UC0079年6月 ジャベリン・トライデント作戦

ハワイ上空

 

ハワイ諸島は太平洋の中心に位置している事から長らく連邦軍太平洋艦隊の本拠地として使用されており、現在も太平洋艦隊の主力艦200隻近くが駐留していた。

 

そしてそれらを守る為の防空網は、連邦軍本部ジャブローに匹敵する規模であり、ジオン軍の侵攻を阻み続けていたのである。

 

オセアニア一帯を制圧したジオン公国軍は、アジアとジャブローを繋ぐ海路を遮断するため、新たに設立した戦略海洋軍をハワイ周辺に集結させてオアフ島攻略に向けた準備を進めていた。

 

UC0079年6月1日

ハワイ攻略に向けた作戦の第1段階「ジャベリン」作戦が開始される。

 

これは東南アジア各地の連邦海軍基地へ、月面からのマスドライバーと軌道上に展開したジオン艦隊からの対地ミサイルによる攻撃を同時に行い、飽和攻撃によって基地の防空網を無力化し、これに乗じて降下したザンジバルと搭載モビルスーツによる攻撃で駐留部隊と基地施設を破壊してジオン勢力圏へ離脱するというものであった。

 

ただ、このジャベリン作戦は想定以上に苦戦する事になる。

 

度重なるジオン軍の攻撃により衛星軌道への警戒を強めていた連邦軍は、月からのマスドライバーのほぼ全てと軌道上から放たれた対地ミサイルの50%の迎撃に成功する。

 

また、連邦は滑走路や格納庫を増設して航空機を分散配置したり、基地の敷地外に退避壕を造り、そこに部隊を避難させる事でかなりの戦力の保持に成功しており、各地に降下したジオン軍は想定以上の数の連邦軍に苦しめられる事になる。

 

特に連邦軍フィリピン基地ではアジア各地で量産されたガンタンクが多数配備されていた事から、降下したリリー・マルレーンのエンジンにガンタンクの砲弾が直撃して不時着する事態に陥ってしまう。

 

幸いリリー・マルレーンに搭乗していたのはシーマ大佐率いる親衛隊の精鋭であったため、不時着したリリー・マルレーンの追撃に出てきた連邦軍部隊をシャア少佐率いるモビルスーツ隊が壊滅させ、無事にジオンの勢力圏まで離脱する事に成功した。

 

UC0079年6月8日

この一連の攻撃によりジオン軍の次なる攻撃目標が東南アジアにあると判断した連邦軍首脳部は、ハワイに駐留する連邦海軍第7艦隊を増援として派遣する。

 

第7艦隊はヒマラヤ級大型戦闘空母エベレストを旗艦とし、ヒマラヤ級大型戦闘空母10隻、ジュッドランド級戦艦2隻、アルバータ級ミサイル巡洋艦18隻、モンブラン級ミサイル駆逐艦36隻、U型潜水艦18隻で構成される連邦海軍有数の戦闘集団であり、その戦力は実にハワイに駐留する連邦艦隊の実に四割にも及んだ。

 

UC0079年6月10日

オアフ島の沖合いで連邦軍の動向を窺っていた戦略海洋軍の主力は、潜伏させたスパイ107号からの報告により第7艦隊が出撃した事を知ると、戦力が大幅に低下したハワイ基地の攻略のため部隊の展開を開始した。

 

12隻のユーコンと2機のモビルフォートレスから出撃した56機のハイゴッグは、連邦の哨戒ラインにかからないよう警戒しながら静かに開戦の時を待った。

 

モビルスーツ隊に先んじて特殊潜航挺で出撃したランバ・ラル率いる特殊工作隊は、オアフ島に上陸するとスパイの手引きにより連邦軍基地へと潜入し、レーダーサイトを始めとした指揮通信施設に爆弾を設置すると、そのまま連邦軍に気付かれる事なくオアフ島を後にした。

 

UC0079年6月11日 0000

ランバ・ラル率いる特殊工作員が仕掛けた爆弾が、連邦軍のレーダーサイトや指揮通信施設を吹き飛ばすのと同時にハワイ攻略作戦「トライデント」が開始された。

 

深夜の敵襲により大混乱に陥るハワイ基地に対して、浮上したユーコンから無数の対地ミサイルが発射され、連邦軍の混乱に拍車をかけた。

 

同時に展開を完了していたハイゴッグ隊が一斉に行動を開始する。

 

フラナガン・ブーン大尉率いる戦略海洋軍 第1大隊はオアフ島南の海上で哨戒に出ていた連邦軍警備艦隊に襲いかかった。

 

ヒマラヤ級空母3隻、アルバータ級巡洋艦6隻、モンブラン級駆逐艦12隻、U型潜水艦6隻で構成された警備艦隊は決して油断していた訳ではなかったものの至近距離から突然28機ものハイゴッグに襲われてはどうしようもなかった。

 

最初のハイゴッグからのハンドミサイルによる一斉攻撃によりヒマラヤ級空母2隻とアルバータ級巡洋艦2隻、モンブラン級駆逐艦5隻を失った連邦艦隊は、すぐさまドン・エスカルゴ対潜哨戒機や対潜ヘリを離陸させ残存艦艇による反撃を試みるものの、ハイゴッグの水中性能は圧倒的であり、態勢を立て直せないまま次々と沈んでいった。

 

また、ギュンター・プリーン大尉率いる戦略海洋軍 第2大隊はオアフ島北の海岸に上陸すると、背中に装着したジェットパックを用いてオアフ島の陸地を一気に飛び越え内陸部から港に停泊する連邦艦隊を襲撃した。

 

戦時下という事もあり、どの船も最低限運航するのに必要な乗員は乗船していたものの、突然の襲撃に対応できた船はほとんどなく、全く想定されていなかった陸地側からの攻撃により湾内の連邦艦隊は次々と撃破されていった。

 

それでもオアフ島に駐留している連邦軍海兵隊員の対MS重誘導弾「リジーナ」やガンタンクを用いた反撃で数機のハイゴッグの撃破に成功したものの、対地、対潜攻撃の要となるべき航空隊が拠点としているヒッカム空軍基地が上陸したハイゴッグによって破壊されてしまってはこれ以上の逆転は望めなかった。

 

その後、秘密裏に衛星軌道上に展開していたグワダンが降下してきた事を契機として連邦軍残存部隊はハワイからの撤退を開始。

 

海兵隊の残存部隊が殿を務める中、離脱可能な航空機や残存艦艇を用いて次々とアジアに向けて離脱していった。

 

やあ…諸君。この戦いが終わったら一度本国に帰る予定なのだが、アイナに怒られるのが怖いので帰るのを延期しようか迷っているギレン・ザビである。

 

というかララァに手を出してからというものララァが二人きりになるとメッチャ甘えてきたり、ハマーンが護衛と称してモビルスーツのコックピットで膝の上に座ってきたり、メイが向けてくる視線が何かいいたげなのに、こっちから声をかけると何故かそのまま走って行ってしまったりでハワイ攻略の指揮をとっている間も気になって仕方なかった。

 

お陰でハワイから脱出した連邦艦艇を追撃させるのを忘れていた位である。

 

まあ下手に追撃していたら連邦の第7艦隊と正面からぶつかる事になっただろうから、追撃させなくて良かったと言えなくもないのだが。

 

そのまま即座にハワイの奪還に動くと思われていた連邦軍第7艦隊だったが、我々の予想に反してオアフ島から脱出した残存艦艇を守りながらアジアに向けて撤退していった。

 

正直万全な状態の第7艦隊と正面からぶつかった場合、かなりの損害を覚悟しなければならないところだったので助かった。恐らく離脱した艦艇からの情報でハイゴッグの性能を高く評価して警戒しているのだろう。

 

さてこれでハワイの制圧も概ね完了し、地上の戦況も一段落したのでデギン公王への報告やグワダン乗組員の休養も兼ねて一度本国に帰る予定なのだが……まあ私個人の感情で皆が楽しみにしている帰国の機会を奪う訳にもいかない。

 

どうせ延期したところで何時かは戻らねばならないのだし、大人しく帰って怒られるとしよう。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side 連邦宇宙軍 ヘリオン作戦参加艦隊旗艦

 

「艦長!全艦、暗礁宙域内への配置が完了しました。」

 

「ウム。ご苦労。」

 

「しかし艦長、本当に我々だけであの怪物艦に仕掛けるんですか?

味方は本艦を入れてもマゼラン級3隻とサラミス級12隻、それに4隻のコロンブスに載せてきたパブリクが32機ばかりあるだけです。

相手は1隻なので少ないとは言いませんが、あの船には第2地球軌道艦隊がまるごと壊滅させられているんですよ?」

 

「仕方なかろう。情報が入った時点でこの宙域に到達可能だったのが我々だけだったのだ。それにどんな相手だろうと油断している所を襲撃できれば充分に勝機はある。あの怪物艦とギレン・ザビを同時に始末できる可能性があるのならば多少のリスクはやむを得ん。」

 

「それは…そうなのですが……。」

 

「それにこの任務は上層部からの特命でな。残念ながら我々に拒否権はないのだ。すまんな。」

 

「いえ、艦長の下であれば別に私は構いません。良い歳ですし守るべき家族もいませんから。

ただ、コロニー出身の部下の中には例の石碑やダイクン暗殺の件を聞いて連邦に対して不信感を持っている者も少なくありません。

それでも艦長の下なら、とついてきてくれた者達ですので、せめて若い家族もち位は何とかしてやりたいのですが……。」

 

「……。あまり大きな声では言えんが、艦隊主力が壊滅した後は、後方のコロンブスにはその時点で降伏するよう指示してある。開戦に向けた準備は副長に一任するので好きに人を動かすと良い。

但し最低限戦闘に必要な人員は残すようにな。」

 

「了解しました!……やはり貴方の部下で良かった。」

 

「その台詞は是非とも目標を沈めてから改めて聞きたいものだな。」

 

「はは、最もですね。」

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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