新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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何時も感想等ありがとうございます。

アンケートについてはある程度傾向がわかりましたので一旦終了させて頂きました。

また、CBさんをはじめとして様々な方に誤字の修正をして頂きとても助かっています。


48話 UC0079年6月 舞台裏での激闘

サイド3への帰還の途にあったジオン軍のグワダン級大型戦艦に対し、サイド5付近の暗礁宙域に潜んでいた連邦艦隊が突如として襲いかかった。

 

もとはジオン軍の補給線妨害の為に派遣された連邦艦隊は、マゼラン級戦艦3隻とサラミス級巡洋艦12隻、それにコロンブス級輸送艦に搭載されたパブリク突撃艇32機で構成されており、非常に高い対艦攻撃力を備えていた。

 

特にパブリク突撃艇が搭載する大型対艦ミサイルは直撃すれば一発でムサイ級を撃沈する程の威力をもっており、この戦いの主力となるべく暗礁宙域に布陣して開戦の瞬間を待ちわびていた。

 

戦いはマゼランとサラミスによるメガ粒子砲の一斉砲撃と、それにあわせて暗礁宙域から飛び出したパブリクの突撃によって始まった。

 

突然の連邦艦隊の奇襲により敢え無い最期を迎えるかと思われたグワダンであったが、何故かギレン・ザビの命により戦闘配置についていた事もあり、最初の一斉射撃こそ数発被弾したものの、即座にビーム攪乱幕を展開するとモビルスーツ隊を出して反撃を開始する。

 

反撃を受けた連邦艦隊は勇敢に戦ったものの、もともとジオンの補給艦隊にハラスメント攻撃をかけるために編成された対艦戦闘向けの編成で、ハマーン率いる50機を超えるモビルスーツ群にかなうはずもなく、僅か数分の戦闘でパブリク隊は壊滅し、残る艦隊も次々とモビルスーツによって撃沈され、僅か30分後にはジオンの降伏勧告を受け入れる事になる。

 

 

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

全く想定外の攻撃だったのでララァが教えてくれなければ危ないところだった。

 

一緒に寝ていたらララァが突然「総帥。敵がきます。」と教えてくれたので何とか撃退できたがあのまま奇襲を受けていたらどうなっていたことか。

 

これでアイナ、メイに続きララァにも頭が上がらなくなってしまった。

 

まてよ?そもそもハマーンにもいつも助けて貰って頭が上がらないし、アルテイシアが何か言ってきても勝てる気がしないぞ?

 

……。あまり気にしないようにしよう。

 

まあそれはさておき、こんな場所で連邦艦隊から奇襲をうけるとは、やはり情報が漏れているな。

 

通信だとどこで情報が漏れるかわからないので、直接デギンやサスロと相談しようと思い補給のついでにわざわざサイド3まで帰ってきたのにこれである。

 

なのでサイド3に戻ると、すぐにデギン達の待つ屋敷に向かう事にした。

 

「只今戻りました。父上。」

 

「地上での活躍は聞いている。ご苦労だったな、ギレン。戦局はどうだ?」

 

「初期の作戦目標であったオデッサ、北米、オセアニア一帯の制圧はほぼ完了しました。また、現地の工場を使ったモビルスーツの量産も開始しており、宇宙からの補給を必要としない戦争体制が整いつつあります。」

 

「フム。だが当初の計画と比べると随分と進軍のペースが遅いが本当に大丈夫なのか?」

 

「父上、月や各サイドの大半を勢力下においた我々は大幅に国力を増しており、地上の物資を供給する事で各サイドのジオン支持率も日々高まっています。

それに伴い各サイドから続々と義勇兵が集まっており、無理な短期決戦に拘る必要はもうありません。

時間は既に我等ジオンの敵ではないのです。

それに地上の過酷な環境は兵達にかなりの負担となっております。急激な戦線の拡大は得策ではないかと。」

 

「しかし、それではいつまで経っても戦争が終わらんぞ?ギレン」

 

「いえ。我が軍による北米、オーストラリア、オデッサといった地上の穀倉地帯の制圧により連邦の食糧自給率は60%近くまで低下しています。

今計画中のインフラへの攻撃と、ハイゴッグを使った連邦側船舶への襲撃が始まれば連中の食糧事情は更に悪化するでしょう。

無論備蓄があるので暫くは大丈夫でしょうが、今は戦時です。不足しはじめるのは時間の問題で、一度不足してしまえば連邦も講和を考えざるをえないでしょう。」

 

「無制限潜水艦作戦をおこなうというのか?兄貴。」

 

「違うぞ、サスロ。無制限ではない。

我らジオンに航路と積み荷を申請し、許可を受けた船舶以外は全て攻撃対象とするだけだ。

まあ連邦側の船が我等の許可なく航行するというなら無制限潜水艦作戦と同じような結末を迎えると思うがな。」

 

「……兄貴は連邦がそんなことを許すと思っているのか?」

 

「思わんさ。だが重要なのは我々に従わない全ての船舶は我が軍の攻撃対象となり、連邦海軍は我々からそれらを守るため各地に分散して活動しなければならなくなるという事だ。」

 

「各地の軍港に引き籠もっている連邦艦隊を引きずり出せる上に、戦力を分散させられるという事か!」

 

「そうだ。海上艦艇の数でこそ連邦に大きく負けているが、個々の質では水陸両用モビルスーツという連中にはない武器のお陰で圧倒的に我が軍が勝る。

後は輸送船を守るためにノコノコ出てきた連邦艦隊を各個撃破してやれば良い。」

 

「……。兵糧攻めに通商破壊、そしてそれらを利用しての連邦海軍への攻撃か。ギレン、貴様はいつから悪魔に魂を売った?」

 

「それはこの戦争を始めると決めた瞬間に。そんな事でジオンに勝利をもたらせるのならいくらでも売ります。

ただ、そんな悪魔に魂を売り渡した私が今懸念している事があります。父上。」

 

「なんだ?」

 

「我が軍の情報がかなりの規模で連邦側に漏れています。」

 

「なんだと?!」

 

「これをご覧ください。」

 

「これは…第三次降下作戦の初期の作戦計画か?」

 

「そうです。ただ、問題はこれが発見されたのが制圧したシドニーの連邦軍基地のコンピュータの中だという事です。」

 

「連邦に作戦が漏れていたというのか?!」

 

「はい。幸い敵の反応を見て即座に作戦を変更したので、大した障害にはなりませんでしたが。」

 

「……。わかった。至急キシリアに調査させよう。」

 

「それは認められませんな。」

 

「何故だ?」

 

「これだけ詳細な作戦計画を入手できる者はかなり限られます。ガルマやドズルでさえこれほど詳細な計画は持っていないでしょう。

もっているとすれば、実際に降下作戦を指揮した親衛隊の首脳陣か、この計画を作った者達……。」

 

「……キシリアが漏らしたと言いたいのか?」

 

「わかりません。キシリアの部下という可能性もありますので。

しかし親衛隊の者が情報を流していたというならば変更後の作戦に関する情報が全くないのはおかしい。」

 

「それは…そうだが……。」

 

「また、今回サイド3へと戻る際に連邦艦隊の奇襲を受けました。同じ船に乗っていた親衛隊の首脳陣が情報を漏らしているとはいささか考えにくいかと。」

 

「……。わかった。サスロ、内務省の者を使って秘密裏に戦略諜報軍の内偵を行え。ギレンもそれでよいな?」

 

「いえ、既にキシリアにはレビルの逃走を幇助した疑いもあります。出来ればこれ以上の情報の流出を防ぐため、戦略諜報軍の指揮官からキシリアを外したいと思うのですが?」

 

「……それはならん。キシリアは我等ザビ家の身内なのだぞ?何の物的証拠もないのに推測だけで罪に問う事などできん。あれを裁きたいのであれば確たる証拠を持ってくるが良い。」

 

そう言うと、証拠無しでキシリアを処断しようとした事がよほど腹に据えかねたのか、突如デギンが立ちあがり、杖をつきながら部屋を退室していった。

 

「父上も老いたな。そう簡単にキシリアが証拠を残すようなら、このような相談などする筈あるまいに。」

 

デギンはもともとガルマの次にキシリアと仲が良かったから、信じたい気持ちが強いのだろう。

 

まあ、俺も状況証拠だけでハマーンが裏切っているとか言われても信じないだろうから、デギンの気持ちが全く分からない訳ではないのだが……。

 

「どうする?兄貴。俺達だけで強引にキシリアを拘束する事も不可能ではないが?」

 

「いや、それは止めておこう。父上が反対している状況で強引に進めて、物的証拠が出てこなかった場合、父上がキシリア側につきかねん。これ以上のザビ家の分裂は何としても防がねばならん。」

 

証拠を捏造すれば良いかとも思ったが、そういった工作のプロである戦略諜報軍を誤魔化せるか怪しいものだし、俺を敵視しているダイクン派の強硬派が真犯人の可能性もゼロではない。

 

「……確かにそうだな。だが証拠が出てくるまで放置する訳にもいかんだろう?」

 

「無論だ。まずは親衛隊からも戦略諜報軍の内偵のため人員を出す。

そしてこれを使って情報の流出の防止と犯人探しを並行して行う。」

 

そう言うと俺はメイに頼んで作ってもらったプログラムの入ったデータディスクと小さな冊子をサスロへと渡す。

 

「これは?」

 

「新型の暗号化ソフトだ。秘密裏に送りたいデータを他のデータと合成して偽装する事ができる。」

 

「偽装したデータはこの冊子に書いてあるキーワードを入力する事で解除できるが、キーワードは使い捨てなので気を付けるようにな。」

 

「なるほど。これを使って秘密を守りながら、偽の作戦を流したりして犯人の尻尾を掴もうという魂胆だな?」

 

「よくわかったな、サスロ。もしこれを使っても俺への襲撃が続くようなら犯人は親衛隊の中にいるという事になるだろう。

重要なデータは全てお前宛に直接送るので必ず自分で確認するようにしてくれ。」

 

「わかった。しかし、妹を疑わねばならんとは我等兄弟も業が深いな…。」

 

全くだ。このような戦時に身内の裏切りを疑わねばならんとは。

 

しかし私もアイナを裏切ってララァやハマーンと関係を持ってしまった。

 

人の事は笑えんな……。

 

一一一一一一一一一一一一

 

side アイナ・サハリン

 

ギレン様が地球降下作戦の指揮をとるために地球に降下されると聞いた時、私が最初に思ったのは、地上でもちゃんとギレン様のお世話をできるかという心配でした。

 

ですが、続いてギレン様の口から出た言葉は、私にサイド3の屋敷で待っていて欲しいというお言葉でした。

 

もちろん私は地球へ一緒に行かせて欲しいとお願いしましたが、

 

「メイと一緒に私の帰る場所を守っていて欲しいのだ。危険な地球侵攻作戦にメイを連れていく訳にはいかんのでな。

それにサイド6から避難してきたテアボロ一家の面倒を誰かが見なければならん。

セキュリティの事などを考えると私の屋敷に住んでもらうのが一番なのだが、安心して世話を任せられるのはお前しかいないのだ。頼む。」

 

そう言われてしまっては、私には無理を押し通す事は出来ませんでした。

 

その後はルヴィアさんやセイラさんと仲良くなりながらメイちゃんと一緒にサイド3のお屋敷を守っていたのですが、ある日、護衛としてギレン様に付いていったララァちゃんとハマーンさんから手紙が届きました。

 

その手紙には「戦場」という慣れない環境に苦しむギレン様を見ていられず関係を持ってしまったというララァちゃんのお詫びの言葉と、戦場で助けられ、胸に秘めてきた想いをギレン様に伝えてしまったというハマーンさんの告白が綴られていました。

 

その手紙を読んだ時、私がショックを受けなかったと言えば嘘になります。

 

ですがそれ以上にララァちゃんがギレン様の事を思い、私の大事な人が苦しんでいる時に一緒になって支えてくれた事が嬉しかったのです。

 

ずっと一緒にギレン様を支えてくれたハマーンさんが秘めてきた想いが叶った事が嬉しかったのです。

 

だから私は許しましょう。

そこの扉の影でどんな顔をして入ったら良いか迷っている私の愛しい人を。

 

手書きの手紙で何度も何度も詫びの言葉を伝えてきた可愛いらしい娘達の事を。

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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