新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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50話 UC0079年6月 ギレン昇天

赤いチベ級と6隻のムサイで構成されたジオンの小艦隊は、補給物資を満載したパプア級10隻を中心とした輪形陣を組みながら漆黒の宇宙を地球に向けて進んでいた。

 

このジオン艦隊は、地上への補給物資を輸送するのと併せて最近補給線上に出没するようになった連邦艦隊を相手に新型モビルスーツのテストをする事を目的としており、その新型機の主であるジオン軍中将は獲物が自分の前に現れる瞬間を今か今かと待ちわびていた。

 

「閣下、そろそろ前回連邦の襲撃があった宙域です。」

 

「うむ、報告通り一週間戦争で破壊された連邦軍の残骸が多いな。E型装備のザクと直掩の機体を出して警戒に当たらせろ。」

 

「はっ!」

 

その命令に従いムサイからE型装備とF型装備のザクがそれぞれ3機ずつ発進し、E型装備のザクは周囲の偵察に、F型装備のザクは艦隊に並走して直掩に当たる。

 

「連邦の奴等は現れると思うか?コンスコン。」

 

「さて、私としてはドズル閣下が乗艦されている時に無用な危険は避けたい所ではありますが……。」

 

「ふん。それでは無理を言ってこの船に乗ってきた意味がなくなってしまうではないか。」

 

「指揮官が無用な危険を冒されるのはどうかと思いますがな。ただ、先週もこの辺りの警戒に出ていたムサイが消息を絶っております。連邦の連中が現れる確率は高いかと。」

 

「うむ。そうだな。では私は機体のコックピットに行っている。連邦の襲撃があったらすぐに教えてくれ。艦隊の指揮は貴様に任せる。」

 

「はっ!…くれぐれもお気をつけて!。

ふぅ……。連邦軍を相手に試作機のテストをしたいなどとドズル閣下も無茶をおっしゃる。」

 

「コンスコン提督、ドズル閣下のお相手お疲れ様でした。コーヒーでもどうですか?」

 

「ああ、オペレーターのケルゲレン子君。ありがとう。ありがたくいただこう。」

 

「もー。ケルゲレン子は止めてくださいって言ってるじゃないですか。」

 

「仕方なかろう。ギレン閣下の特命なのだから。そのために君には特別手当も出ているじゃないか。」

 

「それはそうなんですが……。何で私がケルゲレン子なんですかね?」

 

「それは君の本名が蹴毛 蓮子だからではないかね?

私も本名が魂 酢昆だからコンスコンと呼ばれているだろう?

それよりも周囲の状況はどうだ?」

 

「今のところ異常なしです。このまま何事もなく進んでくれたら嬉しいんですけどね……。」

 

「そうだな。ドズル閣下との約束で、前線でのテストは敵が出ても出なくても今回限りという事になっている。私としても是非そう願いたいよ。」

 

「お疲れ様です。そういえば先日ガルマ様が前線で試作機のテストをされたとかで、ドズル閣下の悪い癖がガルマ様に移ったとお付きのランバ・ラル隊の人がぼやいてましたよ。」

 

「そうか。まあランバ・ラル中佐程の人ならばガルマ様の護衛など難なくこなしてしまうだろうが。」

 

「……!!申し訳ありませんが、提督の願いはかないそうにありません。偵察に出ていたザクから連邦艦隊を発見したとの報告です!」

 

「数は!?」

 

「暗礁宙域の中にマゼラン級戦艦1隻、サラミス級巡洋艦10隻を確認、さらに後方に位置するコロンブス級輸送艦8隻から艦載機が多数発艦中との事です!更に球形の新型機動兵器を複数確認!」

 

「全艦にコンディションレッド発令、モビルスーツ隊全機発進準備!

くっ…、此方より数が多い上に新兵器だと!?

いや、此方は地上向けの物資を満載したパプアを守りながら戦わねばならない分、戦力差は更に大きいと考えるべきか…?」

 

「ふん、何を狼狽える必要があるコンスコン。」

 

「ドズル閣下!」

 

「あの程度の数、俺が造り上げた新型機の力をもってすれば敵ではないわ!」

 

「しかし!?」

 

「良いから出せ!俺は元々そのためにここへ来たのだ!」

 

「…わかりました。ただし、マツナガ少佐を護衛に付けさせて頂きます。そしてマツナガ少佐が危険と判断した場合は直ぐに撤退して頂きますよ?」

 

「ふん、いいだろう。ギャンクリウス、ドズル・ザビ出る!」

 

艦のカタパルトが起動し、右手に円型のシールド、左手にMMPマシンガン、背後に雷神の太鼓のようなものを装備した赤いボディの機体が艦の前方に向け射出されていく。

 

「連邦軍など恐れるに足らん!直掩の機体以外は全機俺に続け!」

 

猛将ドズル・ザビの率いるモビルスーツ隊と正面から激突した連邦艦隊は、新兵器「ボール」を多数投入してジオン軍を迎え撃ったものの、その圧倒的な格闘戦能力により完敗を喫する事となる。

 

 

 

や、やあ…諸君。精力的な意味でセイラに搾られ、買い物から帰ってきたアイナに精神的な意味で絞られて危うく昇天しそうになったギレン・ザビである……。

 

帰ってきたアイナ達にセイラとの情事を知られた時はどうしようかと思ったが、事前にセイラから俺への想いを相談されていたルヴィアが仲裁に入ってくれたお陰でなんとか死なずにすんだ。

 

アイナからは、「二人が三人に増えてもあまり変わらないので私は構いませんが、セイラさんはこんな女性にだらしのない人が相手で本当に良かったのですか?」と大変厳しいお言葉を頂き、返す言葉のない私は小さくなる他なかったのだが、セイラが「そんな駄目なところも可愛くて好きなの。」と言ってくれたのは嬉しかった。

 

その後、今後について協議しているところにドズルから連邦艦隊との交戦についての報告が入り、渡したギャンが魔改造されてメリクリウスもどきになっている事を知ったのだった。

 

装甲材をアクシズで開発された新合金(ガンダリウムβと私が命名)に換装して、背中にプラネイトディフェンサーの代わりの小型ビーム攪乱幕発生機10機を雷神の太鼓のように搭載した機体はオリジナル同様に「最強の盾」とも呼べる機体に仕上がっていた。

 

そのお陰で連邦艦隊に正面から突っ込んだにもかかわらず、艦艇からのメガ粒子砲をビーム攪乱幕で、新兵器であるボールの攻撃をガンダリウムβの装甲で防ぎきり、クラッシュシールド風の盾から伸ばしたビームサーベルでボール三機を串刺しにするなど一方的な戦いだったようだ。

いや、初回くらいボールに活躍させてあげようよ……。

 

ガルマはガルマでこっそりとギニアスから技術供与を受けたようで、ギャンの背部に大型の円形ジェネレーターを搭載し、そこからバイパスチューブを通してエネルギー供給する事でモビルスーツに大型のビーム砲を携行させる事に成功していた。

 

ガンダムさんモビルスーツに携行型メガ粒子砲を初めて装備した機体という栄誉を奪われ涙目である。

 

なお、ガルマの方はドズルよりやり方が悪辣で、ランバ・ラル中佐が新兵器テスト中の連邦軍基地に潜入してテスト中の新型機を強奪して逃走。

 

慌てて追撃してきた連邦軍のザニーを、待ち伏せしていたギャンエイトのビーム砲で遠距離から一方的に攻撃するというエグイものだった。

 

戦うこともなく盗まれてきたガンキャノンさん、活躍するまもなく散ったザニーさんは泣いて良いと思う。

 

因みにガルマが強奪してきたガンキャノンをサンプルとしてくれたので、現在メイが分解して解析中である。

 

これから色々わかってくるだろうが、連邦がモビルスーツの生産を始めたとなるとこれからの戦いが厳しくなるな……。

 

一一一一一一一一一一一一 

 

side テム・レイ

 

「地上でテスト中のガンキャノンが盗まれただと!?」

 

「はい、テム主任。申し訳ありません…。」

 

「申し訳ないですむか!あれは我が軍の最高機密なのだぞ!警備には量産したザニーを当てていたのに、いったい何をしていたのだ!」

 

「盗まれたガンキャノンをすぐザニー隊に追撃させたのですが、敵の新型機の待ち伏せにあって逆に壊滅してしまいました……。此方が破壊された機体から回収した戦闘データになります。」

 

「くっ…。とにかく周辺の部隊にも増援を要請してなんとしてでも試作機を取り戻すのだ!いいな!」

 

実験部隊との通信を一方的に切ると、側にあったザクの模型を破壊して気持ちを落ち着かせた。

 

気分転換のつもりで実験部隊から送られてきた戦闘データを見ると、そこに映っていたのは我々の遥か先を進むジオン脅威のメカニズムであった。

 

我が軍で極秘裏に開発中の機動歩兵「ガンダム」。その主兵装として現在開発中なのが巡洋艦の主砲並みの威力を持つ次世代兵器「ビームライフル」である。

 

現在ガンダム本体と並行して開発中の新兵器であるが、この映像に映っているジオンの新型のビームはあきらかにそれを上回る威力を持っていた。

 

盾を構えたザニーが盾ごと一撃でやられていることから推測して、戦艦の主砲クラスかそれ以上か。

 

どちらにしろ確実に言えるのは短期間でこれを上回る兵器を開発する事は不可能という事。

 

連邦の技術でモビルスーツ「ザク」をあらゆる意味で上回る兵器を開発する事を目標にしていたが、そんな事にこだわっている場合ではなくなった。

 

ジオンの技術も導入して1日でも早く、1機でも多くのモビルスーツを量産して数で戦えるようにしなければならん。

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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