新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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何度か書き直しているのですがなかなか満足のいく話が書けません…。
一応形になったので投稿させて頂きますが後で変更を入れるかも知れません。


51話 UC0079年7月 MS-14 ゲルググ◼️

地球の衛星軌道に展開したパプア級輸送艦から多数のミサイルを納めたコンテナが引き出され、ザクの手によって軌道上へと運ばれていく。

 

パプアの護衛を務める三隻のムサイ級軽巡洋艦の下には、ザクの手によって運び出されたコンテナが音速の20倍程の速度で漂っており、その内に秘めた力を解き放つ瞬間を待ちわびていた。

 

UC0079年6月末日

軌道上に並んだミサイルの最終調整が終わったジオン艦隊によって、地表の建造物に対するミサイル攻撃が開始された。

 

ロケットモーターと重力によって音速の数十倍の速度にまで加速した宙対地ミサイルは、その莫大な運動エネルギーによって目標としていた地上施設を瞬時に吹き飛ばし、後に残っていたのは月面を思わせるようなクレーターのみであった。

 

この軌道上からのミサイル攻撃は地上の連邦軍部隊や軍事拠点ではなく、橋やトンネル、高速道路といったものを狙って実施されたため、当初ジオン側の意図が理解できずに首をかしげた連邦軍であったが、交通インフラの損壊によってあらゆる物流網が停止した事によってジオンの目的を知り戦慄する事になる。

 

農業、鉱業、工場といったあらゆる産業は物流網が正常に稼働する事で初めて意味を為すものである。

 

何故ならば、例え農場に大量の食料があったとしても、物流が止まってしまえば都市に届かず、市民は飢えるしかない。

 

鉱山で掘り出した資源が採掘場にどれだけあったとしても、資源が工場に届かなければ何も造る事はできない。

 

例え工場設備が無傷だったとしても、完成した製品を必要とする場所へ運ぶことができなければ、それはゴミを造る事と同義でしかない。

 

ジオンの攻撃は、都市や工場を直接攻撃して連邦市民から怨みを買うような事を避け、国家の大動脈である物流網を締め上げる事で連邦経済へ打撃を与え、併せて連邦軍の補給線に過大な負荷を与える事を目的として行われたのである。

 

ジオンの目的に気がついた連邦軍は、ボール搭載型のサラミスを中心としたパトロール艦隊をジャブローから打ち上げ、ジオンの地上攻撃に対する阻止戦闘を展開する。

 

宇宙作業用のスペースポッドを拡大設計して開発されたRB-79 ボールは、ガンタンクの主砲をベースに開発された低反動キャノン砲によって高い砲戦能力を持ち、燃料電池で駆動する事から運用に特殊な設備を必要としないため、実践テストに投入した部隊がジオンの新型機によって壊滅させられたにもかかわらず量産が進んでいた。

 

だが、10隻のサラミス級巡洋艦とそれに搭載された60機のボールで構成された連邦のパトロール艦隊は、たまたまテストに来ていたたった三機のモビルスーツによって壊滅する事になる。

 

 

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

サイド3に来る途中で受けたグワダンの損傷を修復するためにオデッサに戻る途中にアクシズへと立ち寄ったのだが、修理が完了するまでの間にアクシズで開発していた「ゲルググ」の性能テストを行う事になり、手隙のムサイで地球軌道まで来たところで連邦のパトロール艦隊と鉢合わせして現在交戦中である。

 

ゲルググは頭部の鶏のようなトサカと、ドム同様にボリュームある体型が特徴的なジオンの次期主力モビルスーツである。

 

現在の主力機であるザクは、極めて高い汎用性と操縦性、生産性、整備性を兼ね備えた名機であるものの、それだけに機体の改良による性能の向上には限界が見え始めていた。

 

特にジェネレーターの出力不足は如何ともし難く、今後現れるであろう連邦のモビルスーツと戦うのに必要となるビーム兵器の運用が不可能なため、ザクを上回る機動力・運動性の獲得とビーム兵器の標準装備を目標として開発されたのがゲルググであった。

 

新型の大出力ジェネレーターの搭載とドム同様にスカート及び脚部へ推進器を設置した結果、ゲルググはビーム兵器の運用に十分なエネルギー出力とバックパック無しでも高機動用装備のザクを上回る程の機動性の獲得に成功していた。

 

まあゲルググが完成したといってもまだ肝心のビーム・ライフルの小型化ができていないので完全とは言えない状況なのだが、それでも本体の性能は俺の想定を超える完成度を見せていた。

 

「ハマーン・カーン……ゲルググ・インペリアル、発進します!」

 

その通信と共に、白い陶磁器を思わせる体色と流麗なボディラインを併せ持つモビルスーツが、星の海へと躍り出る。

 

 

【挿絵表示】

 

 

次期主力モビルスーツである「ゲルググ」をベースに開発されたその機体は、接近戦用に開発された高機動バックパックを装備する事で非常に高い機動力を持っていた。

 

その白く優雅な姿が目をひいたのか、ボールの展開を完了させた連邦のパトロール艦隊から、ハマーンの機体に向けてメガ粒子砲と低反動キャノン砲による弾幕が雨のように降り注ぐ。

 

しかし、ハマーンの操る白い機体は連邦艦隊が繰り出す砲火をものともせず、その圧倒的な速度によってまるで何もない平原かのように宇宙を翔んだ。

 

その姿はまるで戦場を自由に舞う一匹の蝶のようであった。

 

連邦艦隊がハマーンの機体に意識をとられている間に、ララァの操る緑の機体が戦場へと姿を顕す。

 

 

【挿絵表示】

 

 

ハマーンと同じゲルググ・インペリアルを緑をベースに塗装した機体は、ミノフスキー博士が開発したサイコミュユニットを背中に搭載する事で、遠距離からの精密射撃を可能としていた。

 

「お行きなさい、ビット達!」

 

その指示に従い、ムサイから射出されたビット・キャリアーに搭載されていた8基のビットが次々とパトロール艦隊に向け飛び立っていく。

 

サイコミュによってミノフスキー粒子散布下でも無線誘導を可能にしたこの兵器は、ララァの意思に従って連邦艦隊へと近づくと、至近距離から光弾を放ち、二隻のサラミスと6機のボールを火球へと変えた。

 

突然味方が爆発して大混乱に陥った連邦艦隊を、今度は赤く塗られた機体が装備した中距離支援用のビーム・キャノンが襲う。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「慣れていくのね、自分でもわかるわ。」

 

そんな台詞と共に放たれたビーム・キャノンでサラミスを次々と大破させた赤い機体は、連邦艦隊の前衛を務めるボールを射程に収めると、装備したガトリングシールドで嵐のような砲弾の雨を降らせて次から次へと穴だらけにした。

 

個人的には「おい、モビルスーツの操縦に慣れるのがいくらなんでも早すぎだろう。」とか色々言いたい事はあるのだが、本来兄の為に用意されていた機体を見て、「可愛いからこの機体は私が使う!」と言ってシャアの機体を奪っていくようなジオンの姫君に逆らえるはずもないので大人しく黙っておく事にした。

 

僅か二機のモビルスーツによる攻撃で大損害を被った連邦艦隊は、射撃の密度を上げる為に陣形の変更を試みる。

 

だが、その選択は接近戦用に開発された高機動バックパックを装備した白い機体が間近にいる状況では最悪の選択であった。

 

その白い機体は連邦艦隊が陣形を変更している間に密集した艦隊の内側に入りこむと、手にしたビームナギナタでボールやサラミスを次々と一刀両断にしていく。

 

 

【挿絵表示】

 

 

数ではまだ大きく勝る連邦艦隊だったが、機動力に特化した機体に至近距離まで入り込まれてしまってはサラミスにできる事などほとんどなく、機銃による対空砲火と展開させたボールで必死の抵抗を行ったものの機動力が違いすぎて勝負にならなず、僅か20分余りの戦闘で連邦のパトロール艦隊は宇宙の藻屑へと姿を変える事になった。

 

 

 

……いや、我が軍のモビルスーツの性能が良いに越した事はないのだが、ゲルググ・インペリアルって何よ?

 

どうやら俺がメイの誕生日プレゼントとして送ったキュベレイのガンプラをモデルにエースパイロット用のゲルググを開発したそうなのだが、装甲部材をアクシズで開発されたガンダリウムβ(俺が命名)に変更して、大型化したショルダーアーマーに多数ブースターを搭載した姿は最早ゲルググよりもキュベレイに近い印象となっていた。

 

まあ機体にサイコミュを搭載していないので、実際はリゲルグが一番近いんだろうが。

 

また、今回出番はなかったものの、一般兵向けに開発された通常型のゲルググも機動力や運動性が高いレベルで纏まっており十分に実戦で活躍できる性能だったので、本国のザクの生産ラインをゲルググに切り替える指示を出しておいた。

 

量産があと1か月早ければ一年戦争の行く末が変わっていたかも知れないとも称されたゲルググだが、果たしてこのタイミングで量産が始まる事で戦局はどう変わってゆくのだろうか?

 

最後にドズルとガルマから送られてきたギャン?の改良データをミノフスキー博士へ渡して親衛隊用の機体の開発を依頼すると、修理が完了したグワダンに乗り地上へと向かうのだった。

 

 

 

一一一一一一一一一一一一 

 

 

side ジャブロー

 

「さてV作戦について重大な報告があるとの事だが何かね?テム主任?」

 

「はい将軍。お忙しい所に時間を頂き申し訳ありません。V作戦で開発しておりましたRX-78-1「プロトタイプガンダム」が完成しました。」

 

「ほう!もう完成したのかね?!」

 

「はい。通常の2倍の予算を投入して頂いたおかげで月や各サイドのモビルスーツ工場と裏取引を行いザクの設計データを入手する事に成功しました。

それをベースに開発を進め、当初予定していたコアブロックシステムの採用を見送ることで大幅な開発期間の短縮に成功しました。」

 

「ほう、思いきった決断をしたな。テム主任。」

 

「はい。ジオンの新型との戦闘記録を見て一刻も早くモビルスーツを実戦に投入する必要を感じましたので。

今後はガンキャノンシリーズの新規開発は中止し、その分のスタッフをガンダムのデータを基にした量産型モビルスーツの開発に振り分けたいと考えております。」

 

「フム…。それではガンキャノンが担う予定だった中距離支援はどうするのかね?」

 

「宇宙においては中距離支援の重要性が低いため、装甲材をルナ・チタニウムから超硬スチールに変更する事でコストダウンを図ったボールを増産する事で間に合わせます。

また、地上においてはガンタンクに中距離支援用のロケットランチャー等を搭載するとともに、モビルスーツの携行武装にバズーカや180mmキャノンなど中距離戦闘用の火器を開発する事で対応します。」

 

「なるほど。全ての兵器をモビルスーツに置き換えるのではなく、既存の兵器と組み合わせて使うというのだな?」

 

「はい。前衛をモビルスーツが担当し、既存の兵器がそれを支援する、といった編成を考えております。」

 

「なるほど。それならば既存の戦力も活用出来るという事か。悪くない案だ。だがそれならはガンダムの開発チームも量産型の開発に振り分けた方が良くないかね?」

 

「いえ将軍。ガンダムの開発は継続したいと思います。」

 

「それは何故かね?」

 

「現在我が軍のモビルスーツを動かしているOSは秘密裏にジオンより入手したものです。コピーにこそ成功しましたがプロテクトの完璧な解除はできておらず、プログラムの更新が困難な状況にあります。」

 

「敵の新たな兵器などが現れた時にOSが対応できないという事か。」

 

「はい。ですので我が軍専用のOSを学習型コンピューターを搭載したガンダムで開発していきたいと考えております。」

 

「君の考えは理解した。その方向で進めて行くとしよう。何か必要な支援はあるかね?」

 

「は…。ではプロトタイプガンダムの設計データを送信しますのでジャブローでも生産し、地上での運用データ収集をお願いします。

また、私はこのままサイド7で量産型機の開発とガンダムのデータ収集に努めたいと思います。一月もあれば必要なデータが集まると思われますので迎えの船を出して頂ければと思います。」

 

「ウム。わかった。モビルスーツの回収も視野に入れ新鋭のペガサス級を迎えに出そう。そのまま開発に励んでくれ。」

 

「はっ!」




ゲルググ・インペリアルについて

私がギレンの野望と同じくらい好きなゲームにGジェネェDSというものがあるのですが、そこで出てくる機体にインペラトールというのがあります。
チートも良いところなので本作には出せませんが、名前だけでも出したかったものでギレンの野望随一のチート機(偏見)であるキュベレイの外見で出させて頂きました。

シーマ様が普通に仲間入りしたり、原作で悲恋に終わったりするパイロットが仲間入りしたりする素晴らしい作品なので是非一度プレイする事をオススメします(布教活動)

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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