当面は週1更新を目処に書いていこうと思います
U.C.0079年8月
連邦軍はジオンのオセアニア方面軍と対峙する極東方面軍の中に、モビルスーツを主力とした初めての部隊である第1機械化混成連隊を創設した。
第1機械化混成連隊は、本部大隊と2個MS大隊、混成歩兵大隊の4つの大隊で編成されており、MS大隊にはジャブローから運ばれた機材を使ってアジアで量産されたジムが大量に配備されていた。
連邦のMS大隊は、2個のMS中隊とそれらの火力支援を担当するガンタンク小隊2個で編成されており、1個MS中隊は4個のMS小隊で構成されている。
また、連邦のMS小隊は戦闘経験が豊富なジオンのモビルスーツに対抗するため、4機のRGM-79を支援戦闘車両のブラッドハウンドが支援する形をとっていた。
その移動手段からホバートラックとも呼ばれるブラッドハウンドは、トラックというよりも装甲車に近い形状をしており、ホバーで移動するためどんな地形も走行する事ができた。
武装は車体上部のタレットに据えたガトリングガン一門のみと貧弱だったものの、その真価は全く別のところにあった。
非常に高度な通信・電子戦設備を搭載しており、前線部隊と司令部との通信を中継したり、車体に備えたアンダーグラウンド・ソナーによって周囲の振動をキャッチしてミノフスキー粒子散布下における広域索敵を担当するなど、前線での通信や管制、索敵などモビルスーツ戦闘に必要な情報支援をたった1両で可能としていたのである。
また、簡易的な移動司令部や補給車両としての機能も有しており、地味ながら地上でのモビルスーツ運用の要となる存在となっていた。
そんな多数の新兵器を装備した部隊を前に、二人の連邦軍将校が出撃に向けた最後のミーティングを進めていた。
「ほぉ、新型のRGM-79が64機にRX-76が16両とはずいぶんと豪勢ですな。ライヤー准将。」
「コジマ君に担当してもらうマレー半島は、極東方面軍のアキレス腱だからな。
ジャブローからの海上輸送による補給線に対し、ジオンの連中はマレー半島やスマトラ島を根拠地とした水中用モビルスーツによる洋上襲撃を繰り返しており、我々はそれを防ぐために海軍の主力を輸送船の護衛に動員する事態に陥っている。
現状打破の為の支援は惜しまんよ。」
「ジオンの水中用モビルスーツはそれほどの性能なのですか?」
「1機だけならドン・エスカルゴが5機もあれば撃破は可能だろう。だが連中は最低でも3機編成で運用しているので此方もそれなりの数が必要になるし、ドン・エスカルゴの運用に必要な大型空母を全ての輸送船団につける訳にもいかんのでな。」
「それでこれだけの規模の部隊を編成して、陸上からジオンの活動拠点を叩こうという訳ですか。」
「無論それもあるが、それだけではないぞ?」
「と、言われますと?」
「今後各地で同様の機械化混成連隊を多数編成する事が決まっている。私が知っているだけで、北米、南米、北欧、南欧、ロシア、アフリカ、インド、アジアの各方面軍にそれぞれ最低2つは機械化混成連隊が作られるそうだ。」
「それは…かなりの規模ですな。」
「おかげで民間の工場まで総動員してモビルスーツを製造していると聞く。噂ではジオンの支配地域から秘密裏に部品を密輸をしているものまであるらしい。」
「少し前に機甲師団の増強を図っていたと記憶しておるのですが、兵員は足りるのですか?」
「先日法案が可決された、従軍者の家族への特別配給制度について告知したところ、食料が不足している地域に住む難民や貧困層の住人などの応募が殺到しているよ。」
「……そのような事が許されるのですか?」
「ちゃんと連邦議会を通過した法案なのだ。何も問題あるまい。どのような手段を使おうと我々は勝たねばならんのだよ。」
「……はっ。」
「マレーを落とせば君もジャブローだ。連隊の活躍を期待する。」
オデッサ方面軍
やあ……諸君。ギレン・ザビである。
地球降下作戦でオデッサ一帯を制圧して以降、第1地上機動師団の戦力を使ってヨーロッパ各地への侵攻とオデッサの防衛を同時に行っていたのだが、各サイドの防衛のために派遣していた兵とサイド共栄圏からの義勇兵を中心とした大規模な増援を得た事で、今回新たにオデッサ防衛隊を編成した。
オデッサ防衛隊の装備はザクとマゼラタンク、歩兵にセイバードップという我が軍の基本編成だったが、連邦から鹵獲したRX-76やその部品を流用して造られた現地改造機(通称ザクタンク)で編成された長距離砲撃部隊も配備されており、我が軍に不足気味だった長距離砲撃能力を補完する形となっていた。
また、オデッサ防衛軍の設立に伴い、第1地上機動師団も従来の編成から大きく姿を変えており、
重モビルスーツであるドムと圧倒的な火力を持つヒルドルブ、そしてそれらを運用するギャロップ陸戦艇で編成された機動打撃連隊、
グフとS.F.Sで編成され、ガウ(ミデアのコピー品)によって高速展開を可能とする航空機動大隊、
多数のザクで構成され、配備されたHLVに搭載する事で地球上の何処にでも展開を可能とする戦略機動連隊、
といったモビルスーツを重視した編成に変化していた。
開戦から半年もの間戦い続けてきた精鋭で編成され、多数のドムやグフといった新型機を装備した第1地上機動師団は、その全力を投じれば即座に連邦ヨーロッパ方面軍を壊滅させられるほどの戦力を有していたものの、今はその力をオデッサの地を守る事に使用していた。
「まあ、ヨーロッパ全土を制圧する予定などないのだがな。」
「そうなのですか?」
頭の中で考えていた事を何気なく呟くと、昨日の夜に愛人としての役割を果たしてくれたララァがベッドの上で体を起こしていた。
「ああ、起こしてしまったか。すまんな、ララァ。」
「いえ…、私の方こそなんとなく気になってしまって……。」
「構わんよ。ヨーロッパの市街地を制圧したところで、レジスタンスへの対処や生活物資の供給など我が軍への負担が増えるだけだからな。そんなところをわざわざ制圧する必要などなかろう?」
「でも、それでは連邦との戦いが終わらないのではありませんか?」
「以前父上達にも言ったが、このまま進めば来年の後半には連邦は深刻な食料不足を迎えるだろう。そうなれば連中も講和を考えざるをえまい。
既に現時点でも食料自給率が著しく低い極東の島国などでは食料危機の兆候が現れているのだ。」
俺が何でもない事のようにそう話すと、突然ララァがベッドからおりて側まで来ると、唐突に俺の頭を撫ではじめた。
「……どうしたのだ?」
「わかりません。でも、何処か貴方がつらそうにしているように見えたの。」
……。誰にも伝えていないものの、計画通りアジアで食料危機が起きつつあるとの報告を受けた時、ギレンとなる前に生まれた国が飢えに苦しんでいると知り、俺の中に強い罪悪感が生まれたのは事実だった。
「……確かに今進めている作戦で私の知っている土地が飢えに苦しんでいる事を知って思うところはある。だが、だからと言って助ける訳にはいくまい?」
「???、どうして助けてはいけないんですか?」
まるで理由がわからないといった感じで、ララァが首を傾げる。
「それは、連邦の統治下にある場所を助けても仕方ないだろう?」
「どうして?私は連邦の支配するインドで助けられて貴方の事を好きになった。だから連邦の人だろうと困っている所を助けて貰えばきっと仲良くなれると思うの。
それに貴方はジオンを影から支配する独裁者なのでしょう?助けたい人達を助けないで苦しむ位なら、好き放題に助けて開き直ってしまえば良いと思うわ。」
そう言って頬笑むララァに対し、俺は明確に反論できる言葉を持ち合わせていなかった。
「ああ、そうだな。たまには独裁者らしく振る舞うのも良いかもしれん。ありがとう。ララァ」
確かに合理的な思考でいえば、連邦の勢力下の人達を助ける事には何のメリットもないだろう。
だが、イソップ童話にあるように、旅人の心を開いたのは冷たい北風ではなく暖かな太陽だった。
ならば自分に縁のある場所の人達を助け、それが戦局にどのような影響を与えるか試してみるのもいいだろう。
何せ俺はジオンを影から支配する悪の総帥なのだから。
……それに一部の地域がジオンの支援を受ける事は連邦内部で軋轢を生むだろうし、上手くやればアジア方面軍に亀裂を入れることも不可能ではない。
そう思った俺は、具体策について協議するためサスロに連絡を入れるのだった。
一一一一一一一一一一一一
side グラナダ
「キシリア様、少しよろしいでしょうか?」
「ん……マ・クベか?入れ。」
「は、失礼します。」
「ああ…わかった。V作戦の進捗に関する情報はできるだけ伏せておこう。ではな。」
「どなたかとお話し中でしたか?」
「連邦内部の協力者と連絡をとっていたのだ。後で総帥府に送るV作戦関連のデータを精査するので持ってきてくれ。」
「……かしこまりました。キシリア様、少しよろしいでしょうか?」
「どうした?」
「総帥府や内務省でジオン内部の連邦スパイの存在が囁かれており、先日このグラナダでも内務省の調査官と思われる者の出入りが確認されております。不要な疑いを招くような行為は極力慎まれた方が良いのではないかと思いますが……。」
「そうだな……、まあ貴様なら大丈夫か。マ・クベ、ジオンにとっての勝利とは何だと思う?」
「勝利…でありますか?やはり連邦との戦いに勝利し、スペースノイドの独立を勝ち取る事ではないでしょうか?」
「だいたいの者にとってはそうだろう。だが、私にとっての勝利の定義は少し異なるのだ。
無論連邦に勝利する事は大事だが、それ以上に重要なのが戦後のジオンが正しい道を進んで行けるかという事なのだ。」
「正しい道、でありますか…。」
「サイド共栄圏の誕生によりジオンの勢力は大幅に増したものの、それは同時にザビ家単独による政治的な舵取りが難しくなった事を意味している。
ムンゾ単独であればザビ家の支配は万全だったが、サイド共栄圏全体への影響力はさほど大きなものではないからな。」
「……。確かにサイド共栄圏から人や物の支援こそあれど、連邦への宣戦布告などはいまだに見送られております。ですが、それとどのような関係が?」
「そんなサイド共栄圏を率いてダイクンの唱えたコントリズムを実現するには、高いリーダーシップと強固な信念が必要となるだろう。
特に地球に暮らす人類を空にあげ、地球を人類全体の聖地とする事など並大抵の覚悟ではできまい?」
「ギレン総帥ではキシリア様の望みを実現するのは難しいと?」
「そもそも南極での条約交渉を見る限りあの男にコントリズムを実現する意志があるとは思えん。
連邦の宇宙艦隊を片付けたぐらいで地球の聖地化など不可能だというのに、奴は本気で停戦に向けて動いていた。
キャスバルとアルテイシアをふたりとも手の内に収め、開戦の際もダイクンの遺志を引き継ぐような演説をしておきながらだぞ?」
「それはそうかもしれませんが……。」
「なので私は地球侵攻作戦の指揮を執ることで戦後の主導権を握ろうとしたのだが、奴の妨害によりそれも叶わなかった。
故に私が正しくジオンを導く為には、あの男に地球侵攻作戦を失敗してもらうか、連邦に直接奴を除いてもらう必要があるのだよ。わかるか?」
「……はっ。キシリア様がそのようにお考えなのであれば、その願いを叶える事こそ私の使命であります。」
「そうか。貴様の忠誠嬉しく思うぞ、マ・クベ。それでお前から見て真に信頼のおける者はどのくらいいると思う?」
「マレット率いるグラナダ特戦隊やグール隊、マッチモニード隊などはキシリア様個人に忠誠を誓っておりますので何があっても大丈夫でしょう。あとはフラナガン博士の所で調整を受けている者達位でしょうか。」
「使えるのか?」
「低レベルNTを薬物と催眠で強化する過程でキシリア様への忠誠心を植え付ける事に成功しています。専用の新型機の開発も進んでおり、必ずお役にたてるかと。」
「ほう、秘密裏に確保した資源衛星ペズンで開発中のザクを連邦の技術で強化した機体か?それとも私が直々にデザインしたモビルアーマーか?」
「ザクを強化した機体については八割方完成しており、試作機によるテストが終わり次第、先程あげた部隊のザクと順次入れ換えていく予定であります。」
「ほう、もう試作機が完成するのか?」
「裏取引によって連邦から入手した技術を用いる事で、連邦の新型機並みの機動力の獲得に成功しました。火力についても脱出装置を外してジェネレーターを大型化させる事でビームライフルの運用を可能としております。」
「OSについてはどうするのだ?例のエグザムとやらを使うのか?」
「OSについてはザクに搭載されているものをそのままのせかえて使用します。エグザムシステムについては同士討ちに関する問題がどうしても解決出来なかった為、少数の特殊部隊に配備して後方撹乱や特攻に使用する見込みであります。」
「という事はOSによる数の縛りはそのままという事か。」
「はい。ですのでそれを補う為にキシリア様にデザインして頂いたモビルアーマーの量産を考えております。
此方については既に試作機が完成しており、警備用宇宙艇という名目で量産を開始しようかと。」
「フム…。思ったより可愛くないが、まあ良いだろう。で、これをNT部隊に使わせるのか?」
「いえ、NT部隊にはアクシズから流れてきた情報を基に開発を進めている『ビショップ』を配備する予定であります。
ただ、肝心のサイコミュシステム等に関する設計図等をアクシズから入手出来なかった為、現在フラナガン博士に開発を急がせております。」
「そうか、NT部隊は我々の切り札とでもいうべき存在だ。情報が漏れたりしないようにフラナガンの研究所もペズンに移動させておけ。」
「かしこまりました。他にも何かございますか?」
「低レベルNTに行った処置を一般兵にも行って忠誠心を植え付けられないかテストしておけ。それが可能であれば色々な用途に使えるからな。」
「…なるほど。直ぐに手配致します。」
なんとなく感想がキシリア様逮捕で荒れそうな気がするもので一応説明を…。
side でしている会話等はギレン達には伝わっていません
なのでギレン側が現時点で持っている情報としては
レビルの逃亡を支援した(疑い)
グラナダの防衛圏をレビルに突破された(事実)
降下作戦の情報を流出させた(疑い)
連邦に情報を流出させている(疑い)
といったところです
まあ更迭されてもおかしくない気もしますが、ザビ家の身内なので踏み切れてない状況です。
出来るだけ説得力のある展開を考えていますが、もともと考えていたプロットに沿って書いているもので多目に見て頂けると助かります
アイナ様に似合いそうな機体は?
-
アプサラス
-
ビグ・ラング
-
ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
-
アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)