新・ギレンの野望(笑)   作:議連・座備

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この作品のメインヒロインは一応アイナ様なのですが、作品中の存在感としてはメイちゃんの方が大きかったりします。


64話 UC0079年11月 メイ・ザビ◼️

サイド3 ズム・シティ

 

「キシリア様、内務省からの連絡にはサイド3に到着次第、内務省の庁舎へ出頭するようにありましたが、本当にデギン公のお屋敷に向かってよろしかったのですか?」

 

「無論だ。公王である父上さえ押さえてしまえば他の兄弟達も強く出る事はできまい。地上からギレン達が戻る前に公王を味方につけるのだ。急げ。」

 

「は、かしこまりました。」

 

 

 

公邸に着いたキシリアは、屋敷の使用人達を押し退けて強引にデギンの私室へと押し入ると、椅子に座ったまま難しい表情を顔に浮かべるデギンへと詰め寄っていた。

 

「父上!体調の優れぬ私を無理やり本国に召喚するとは、いったい私が何をしたと言うのですか?!」

 

「キシリア…。それは、お前が一番よくわかっておるのではないか?」

 

「何の事でしょう?レビルに月の防衛網を突破されたのは確かに私の不手際でしたが、それについては反省し月の戦力増強に努めております。

戦略諜報軍についても先日も連邦による北米侵攻に関する情報をお伝えしたばかり。オデッサへの攻勢に関しては確かに情報をつかみ損ねていましたが、全ての情報を掌握するなど不可能な以上、多少の漏れは仕方ないでしょう。」

 

「だ、そうだ。貴様はどう思う、ギレン?」

 

「まあ、全ての情報を掌握する事が不可能な点については同意しましょう父上。我々もまさかテスト用に配った我が軍のOSが連邦へ流れている事は掴めませんでしたからな。」

 

デギンがギレンの名を呼ぶと、そんな言葉と伴にギレンとサスロが奥の書斎から姿を現した。

 

「な…。何故ここに兄上達が……。」

 

「それは此方のセリフだぞ?キシリア。サイド3に着いたらすぐに内務省へ向かうように伝えたはずだが?

地上から戻った報告を父上にしているところにお前が無理やり押し入って来ているとの連絡を受けたので、少し隣の部屋にいただけの話だ。」

 

「ぐ……。私とてまずは父上に現状をお伝えしようとここに来ただけの事です。此度の召喚、いったい私に何の罪があると言うのですか?!」

 

「予想通りの反応だな、キシリアよ。貴様には我が軍の情報を連邦へ流出させた疑いがかかっている。」

 

「バカな、何故私がそのような事をしなければいけないのです!」

 

「理由は此方が聞きたい位だ。キシリア、何故我が軍のOSデータを連邦へと流したのだ?」

 

「何の証拠があって私からの流出を疑われるのですか!OSに関する情報はギレン兄上のところで集中管理されているのです!連邦へ流出したのであれば、まずは自分のところを疑われるのが筋では?!」

 

「そうだな、私も流出したのが通常のOSであればそうしただろう。だが、鹵獲した連邦のモビルスーツに入っていたのは貴様からの提案で配ったテスト機用のOSだった。これはいったいどういう事だ?」

 

「…っ!私が知るはずないでしょう!そもそもテスト用のOSであればドズルやガルマのところにも配布されたはず!そちらからの流出という可能性もあるのでは?!」

 

「フン、貴様はそう言うだろうと思っていたぞ?キシリア。

我が家の娘は優秀でな。万が一の情報流出に備えてドズル、ガルマ、キシリアのところに配ったテスト用のOSは全て違う構成になっていたのだよ?後は言わなくともわかるな?」

 

「く、配られたテスト用OSにそんな仕掛けがされていたと言うのですか?!

身内である我々にそんな小細工を弄するなど、やはりあのような小娘はザビ家に相応しくなかった!」

 

「だまれ!!それ以上汚ならしい口を開くのならばくびり殺すぞ!」

 

普段の仏頂面を何処かに投げ捨てたギレンが、キシリアに向け殺気交じりの怒声を放つ。

 

「万が一に備えデータに情報流出対策を施す事と、自らの提案で受け取った機密データを連邦に流出させる、どちらがザビ家に相応しくないのかは誰の目にもあきらかだろうが!」

 

「わ、私は連邦に渡してなど…。」

 

「それは最早お前が決める事ではない!

貴様のところに配ったデータが連邦に流出した以上、お前自身が関与していようがいまいが責任をとるのはキシリアお前だ。」

 

「まっ、」

 

「現時刻をもって戦略諜報軍及びグラナダ基地に関する指揮権を剥奪、内務省で拘束する。両組織の長についてはサスロが就き、並行して内部調査を行うものとする!」

 

「待ってください!父上、私は本当に連邦に情報を流出させてなどおりません!」

 

「キシリア、お前が流出させていないとすれば、お前の部下の誰かが連邦へと流したのだろう。

組織の長である以上、部下がしでかした事に対する責任はとらねばならんのだ。」

 

「く……。」

 

「お前が本当に何の関与もしていないのならばギレンやサスロも命まではとったりはせんだろう。大人しくしておけ。」

 

「……。わかりました……。」

 

「ギレン、サスロもキシリアに直接手荒な真似は禁ずる。これでも貴様達の兄妹なのだからな。」

 

「…良いでしょう。キシリアが無実である限り、手荒な真似はしないと約束しましょう。無実である限りはね…。」

 

 

 

やあ…諸君。ギレン・ザビである。

 

先程は不快な話を聞かせてしまってすまない。

 

全くメイがザビ家に相応しくないだと?!

 

あの紫ババア、言うに事欠いてそんなふざけた事を言いやがって、思わず殴りかかるところだった。

 

あいつを殴っても俺の心は痛まないだろうが、目の前で暴力沙汰をおこすとデギンがキシリアを庇いそうな気がしたのでなんとか自分を抑えたものの、腹立ち紛れに壁を殴って穴を開けてしまったくらいだ。

 

やはり物に当たるのはいかんな。

 

だが、ザビ家がメイに相応しくないのは事実かも知れない。

 

キシリアの失脚と同時に総帥府と内務省の合同調査隊が戦略諜報軍等のオフィスを一斉捜査した際、キシリアの関与に関する物的証拠は出なかったものの、違う件に関する証拠が出てきたのだ。

 

そう、メイの父であるケイン・カーウィン議員が起こしたとされる爆弾事件についての資料である。

 

戦略諜報軍に残されていた資料によると、あの事件はキシリア配下の治安部隊による完全な捏造であり、カーウィン議員は無実にもかかわらず自白を強要する過程で亡くなったようだった。

 

……そんな実の父を殺した一族の養子に入っている事など、いくらメイが優しくともできまい。

 

サスロの反対を押しきって、カーウィン議員に関する全ての資料を公開し、テレビでザビ家の者による行為への謝罪会見を終えた私がメイにザビ家に残りたいかと聞いたところ、「できれば養子縁組は解消して欲しいな…」との事だった。

 

その足で役所に寄って養子縁組の関係を解消の手続きをおこなってきたので、明日にはメイは私の娘ではなくなる。

 

……仕方あるまい。メイの気持ちは尊重せねばならん。

 

例え義理の娘ではなくなるといっても、私がメイを大切に思う気持ちに変わりはないのだ。

血の繋がりだけが家族を作る訳ではないように、戸籍だけが家族の全てという訳でもないだろう。

 

まあ頭の中ではそう思っても、10年一緒に暮らしてきた関係なので、寂しく思う気持ちはなかなか消せないなぁ……。

 

はぁー。

 

そんな事を考えているうちに、時計が零時を回った。これでメイも他人か…。

 

いかん、そんな事を考える位なら早く休まねば。明日には各サイドの代表と会談をした後に、地球へ向けて出発せねばならんのだ。

 

ん?こんな時間にノックだと?アイナには今晩は独りになりたいと言ってあるのでこないだろうし、いったい誰だ?

 

 

一一一一一一一一一一一一

 

 

side メイ・カーウィン

 

 

プログラムに関する証拠の提示のためにギレンさんと一緒に宇宙へと戻ってきた私は、内務省の担当者へ必要な資料の提示を終えると、ズム・シティにあるギレンさんのお屋敷へと戻った。

 

アイナさんと二人で一緒にテレビを見ながら寛いでいると、突然番組が切り替わりテレビに見慣れたギレンさんの仏頂面が映し出される。

 

ギレンさんがテレビに出るなんてなんだろ?オデッサの勝利に関する宣伝放送とかかな?

 

そんな風に思いながら番組を見ていると、そこで放送されたのは何と私の父の死に関する真相だった。

 

一部の治安部隊の暴走によってムンゾの民に偽りの疑惑を植え付け、死に至らしめた事をジオンの総帥として謝罪したギレンさんは、本件と連邦との開戦を防げなかった事に対する責任をとる形で連邦との終戦後に総帥を辞任する事を発表する。

 

何で、何でギレンさんが辞任しなきゃいけないの?!

 

そんな風に狼狽する私へ向けて、隣からアイナさんが「落ち着いて、メイちゃん。」と声をかけてくれる。

 

「これはきっとあの人の望みなの。戦争が終わったらジオンの総帥なんていう責任の重い地位から引退して、何処かで楽隠居でもしてのんびり暮らしたいんだと思うわ。」

 

その後に「まあそう簡単にはそれが叶うとは思えないけど。」なんて言いながら微笑む姿を見て、やはりアイナさんには勝てないなぁ…。なんて少しだけ思ってしまった。

 

でも、私が一番辛かった時に救いの手を差し伸べてくれ、その後もずっと私を助けついには父の冤罪まではらしてくれたあの人への気持ちを抑えたくない。

 

なので少しずるいと思ったけれど、私の気持ちを直接アイナさんに相談してみた。

 

アイナさんは少しだけ困った顔をした後に、

 

「メイちゃんの人生はメイちゃんだけのものだもの。どんな結果になっても私は応援するわ。でももしメイちゃんがギレンさんの奥さんになった時は、お家の隅っこに私が住む事を許してくれると嬉しいわね。」

 

そんな言葉と笑顔で私の背中を押してくれた。

 

……ギレンさんを言いくるめるのは簡単そうだけど、アイナさんにはやっぱり勝てそうな気がしない……。これはハマーンさんやララァちゃんとの共同戦線も考えないといけないかなぁ…。

 

 

 

その日の夜の某総帥の部屋でのやり取り

 

「ま、まて、メイ。仮にも私達は親子だぞ?!」

 

「違うよ?ギレンさん。30分前まではそうだったけど、今の私はもう違うの。

私の名前はメイ・カーウィン。ギレンさんが無実を証明してくれたケイン・カーウィンの娘で、貴方に恋する一人の女の子なの。」




この後に何があったかについては各自のご想像におまかせ致します。

因みに翌日の朝ご飯はお赤飯でした。

アイナ様に似合いそうな機体は?

  • アプサラス
  • ビグ・ラング
  • ビグ・ラング(ビグロの部分がビグザム)
  • アプ・ラング(ビグロの部分がアプサラス)

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